2011-05-11(Wed)
原発鬼を退治して人間をとり戻そう【数値訂正】
今、福島の人びとと、原発内の作業員の人たちは、日本中に散らばる50基の原発を続けるための人柱にされようとしている。
5年10年をかけて、真綿で首を絞めるように多くの人を殺していくとは、鬼も涙する所業だ。
犬猫に対してですら、このような残酷なことはできるものではない。
それを、自分たちと同じ人間に対してできる、菅直人たちや東電・原発ムラに巣くう連中とは、一体何者なのだろう。
人間の皮をかぶった、原発鬼という化け物ではないのか。
いや、鬼だって俺はこんなに非道くないと文句を言うに違いないが、他に言葉が浮かばないので、原発ムラに生息する生き物たちを、原発鬼と呼ぶ。
■■
原発労働者に対する扱いは、原発鬼がまぎれもなく鬼であることを証明している。



これらは、日本の新聞では報じられない、体育館で防護服を着たまま寝泊まりしている作業員の人たちの写真だ。
http://gb.cri.cn/27824/2011/04/21/782s3225078.htm (中国国際放送局)
布団や簡易シャワーやまともな食事くらいは、その気になれば東電の力をもって手配できないわけがない。
4月16日の段階で、ボロボロの原子炉が爆発するかどうかのギリギリの運命を握っている彼ら作業員に、まだこんな生活をさせて何とも思っていない。
それは、事故が起きる前から長年にわたって、東電や東芝などは、原発労働者を人間だと思ってこなかったからだ。
ソ連のやり方も非道かったが、それでも60万人を超える作業員(リクビダートル)は、国家的英雄とされ、(当初は)一生の厚遇が約束された。
たしかにリクビダートルはマトモに防護服も着けずに作業させられ、とんでもない被ばくを受けた。
東電はそこまで非道くないと思うだろうか。
今、原発内の作業員は700人くらいといわれている。
交代はあったにしても、合計でせいぜい数千のオーダーだ。
すでに、周辺に降り積もった放射性物質はチェルノブイリを超えている。
原子炉そのものに穴が空いていることも、ほぼ間違いない。
こうしたものの処理を、チェルノブイリの場合の数百分の一の人数でやらなくてはならないのだ。
これがどういう結果を招くか、政府も東電もよく分かっているはずだ。
だから、線量計を持たせなかったり、ホールボディカウンターをなかなか用意しなかったり、できるだけ被ばく量を労働者に知らせないようにしている。
新聞などの記者クラブメディアは、こうした状況をほとんど伝えないが、以下の週刊誌の記事が生々しい状況を書いている。
「そこは〝死の灰〟が降る戦場だった」作業員が語る福島第一原発の内部! フライデー
福島第一原発作業員が激白!「恐怖と疲弊、過酷な場当たり労働」フライデー
平成の特攻隊「フクシマ50」に突入命令を出せますか 大量被曝の危険性が分かっていながら 週刊現代
この700人の中にも、「序列」があるはずだ。
少数の東電や東芝などの正社員、一次下請けの社員、このくらいまでは一応保障もあるだろう。
が、二次下請け三次下請けの臨時雇いになれば、法律ですらあってないような扱いを受ける。
保障なんて運次第 という状況だろう。
なにせ、被ばく量の証明になる原発手帳を持たされていないのだから、あとで癌になっても「因果関係が証明できない」とかいわれて「たばこの吸いすぎ」「酒の飲み過ぎ」などと罵詈雑言を浴びせられて、放り出されるのが目に見えている。
■■
原発鬼が鬼であることは、こどもにまで原発作業員並みの放射線を浴びせて、平然としていることにも端的に表れている。
外部被ばく(だけ)で年に20mSvということが、何を意味するのか。
他ならぬ文科省が発表しているSPEEDIのデータを見てほしい。
3月12日から4月24日までの累積内部被ばく量データ(試算)がある。

http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/0312-0424_in.pdf
凡例をよく見て欲しい。
最低が 100mSv だ。
一番外側の薄オレンジの線が、内部被ばく100mSvのライン。そこから内側へ行くともっと高い。
その外側だって、1ヶ月余りで数十mSvだ。
ただし、この100mSvは甲状腺等価線量 というもので、これを実効線量に直すと、1/20で5mSvになる。
それでも充分すぎるほど、おつりがくるほど高い数値だ。
では、この地域の外部被ばく量はどうか。

http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/0312-0424_ex.pdf
内部被曝で100mSvだったラインと、ほぼ同じ地域が 1mSvのラインになっている。
つまり、文科省の試算では、内部被曝の累積は、外部被曝の累積の100倍 5倍 だということ。
ここから推測すると、福島の子どもたちに浴びせられるかもしれない20mSvとは、内部被曝を含めると、年間2シーベルト 100mSvに相当するということだ。
ミリもマイクロもない。2シーベルト だ。
これまで原発を推進してきた小佐古のような人が、涙ながらに抗議するわけが ここにある。
こどもは大人よりも何倍もリスクが高い。
ガン発症はもちろん、急性障害だって引き起こす放射線量だ。
こんな恐ろしい放射線量を、ICRPは認めているのだろうか。
いや、ここにとんでもない誤魔化しがある。
■■
20mSvの根拠とされているのは、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告(109)だ。
ここに、緊急時被曝の参考値として、20~100mSvと書いてある。
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html
(原文の日本語仮訳)
さらに、「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル」として、同じくICRPが1~20mSvという声明を出した、という。
(この声明の全文は見つからない)
ここで、大注目すべきは、いくらICRPといえども、内部被曝をカウントせずに、外部被曝だけで20mSvなんて言ってない、ということ。
上記日本語訳の、やや後のほうに、「付属書A.予測線量に対するさまざまな被ばく経路による被ばくの寄与の評価」という文章がある。
ここには、
事故後の最初の1年間に防護措置がとられない場合、予測線量の最大成分は汚染食物から受ける(内部被ばく)線量であり、環境汚染による被ばくがこれに続き、プルーム拡散中の放射性核種又は再浮遊放射性核種の吸入摂取及びプルームからの外部照射によって生じる線量が最も少なくなるであろう。
と書いてある。
明らかに、内部被ばくを含めての「参考値=20~100mSv」であることが分かる。
(プルームとは空気中の汚染のことらしい)
しかもこれは2007年に書かれたものであり、チェルノブイリ型の最初にドバッと放射性物質が放出されるモデルを使っている。今回の福島のように、ダラダラと毎日毎日150兆ベクレル余りもの放射性物質を放出し続けることは想定されていない。
ドバッと放出されて、それが徐々に減っていくというモデルでない以上、ICRPの想定よりも、食品や吸入による内部被ばくは深刻になるはずだ。
それはともかく、ここで確認しておくべきは、日本政府が根拠としているICRPの勧告(109)は、内部被ばく込みで、20mSvであるということだ。
次に、日本政府が言う20mSvについて見てみる。
その元になっているのは、原子力安全委員会でのこの「助言」だ。
http://www.nsc.go.jp/info/20110502.pdf
(P4~7に原文)
ここには、以下の通り書いてある
16時間の屋内(木造)、8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると、20mSv/年に到達する空間線量率は、屋外3.8μSv/時間、屋内木造1.52μSv/時間である。
はっきりと、空間線量だけのカウントであると明記されている。
当然ながら、作業員のようなガチガチの防護服を身につけない限り、内部被ばくは避けられない。
原発内で働いていた女性職員ですら、内部被ばくは外部被曝の3.5倍もあった。
外部被曝がヒドイ場所で、しかもある程度内部被ばく対策をしていた人でも、内部被ばくは外部被ばくの3.5倍なのだ。
免震重要棟で放射性物質吸い込む 福島原発で内部被曝の東電女性社員 マスクも不足
2011.4.27 産経
女性社員は、女性の3カ月で5ミリシーベルトという国の限度の3倍以上となる17.55ミリシーベルトを被曝。うち13.6ミリシーベルトが内部被曝だった。
(引用以上)
まして、外部被ばくは(原発敷地内に比べれば)低く、内部被ばくはまったく無防備な状態では、内部被ばくの比率ははるかに高くなるのは当然と言える。
先にあげたSPEEDIの 100倍という数字も なるほど ということになる。
いや、なるほどではすまないかもしれない
ICRPの勧告では、食物からの内部被ばく > 環境汚染からの被ばく > 吸入摂取の被ばく と書いてあった。
しかし、SPEEDIの内部被ばくデータは、主にヨウ素の吸入を計算している。
原子力施設等の防災対策について 原子力安全委員会 H15
(P110にSPEEDIについて以下の記載あり)
希ガスからの外部被ばくによる線量、ヨウ素の吸入による甲状腺線量等をコンピュータの画面上に図示することができる。
(引用以上)
ICRPの想定パターンでは被ばく量が多いとされる、食物と環境汚染が、SPEEDIでは考慮されていない。
ただでさえ恐るべき数字を示しているSPEEDIのデータに、さらに多いと思われる食物と環境汚染を加えたら、どんな被ばく量になるのか。
考えるのも怖い。
■■
整理しよう
SPEEDI のデータは
<外部被ばく>については、空気中の放射性物質からの被ばくを計算しており、降り積もった放射物質からの被ばくは計算していない。
<内部被ばく>については、空気中の放射性物質を吸い込むことによる被ばくを計算しており、食物からの被ばくを計算していない。
どちらも、ICRPの基準で言うと、少ない方の数字だけをカウントしているのである。
だから、本当の被害を想定するためには、ただでさえ恐ろしいSPEEDIのデータを、何倍かするくらいのことが必要になる。
では、降り積もった放射線物質についてのデータはないかと探してみると、こんなものが出てくる。
文部科学省及び米国DOEによる航空機モニタリングの結果
これについては、きっこさんが詳しく書かれているので参照してほしい
チェルノブイリを超えた放射能汚染
結論だけ言うと、福島第一原発の周辺に降り積もったセシウムは、チェルノブイリのレベルをはるかに超えてしまったということ。
どうやら、原発鬼どもがひたすら隠している放射能汚染は、私の悲観的な想像をすら上回る酷いレベルにあるようだ。
広島でゲンバク被爆者の治療にあたった経験から福島の現状を語る、肥田舜太郎先生の言葉が重い。
空気中に浮遊している放射性物質の影響だけでもすでに100mSvを超える地域があるのだから、以下の指摘は本当に重い。
「東北では下痢が始まっている。下痢は(放射性障害の)最初の症状です。」
「(今は)元気な者も含めて放射線の病気が始まるのは、おそらくこの秋から来年の春にかけて」
言葉が継げない
■■
それにしても、なんでここまで非道いことを、菅内閣も東電も原発ムラの原発鬼どもはするのだろうか。
元は人間だったはずの連中を、鬼に変えてしまったのは、何なのだろうか。
もちろん利権という理由はある。
しかし、利権をむさぼるには、取らなければならないリスクがあまりに大きい。
想定外とか何とか言っているが、利権をむさぼってきた内部の鬼たちにとっては、原発の事故なんて日常茶飯事で、何時大惨事になってもおかしくないことは、ヤツらが一番分かっていたはずだ。
現に、今回の事故が起きたとき大阪にいた東電の清水社長は、新幹線に乗れば大阪から東京にすぐ帰れるのに、夜中の11時まで逃げ回っていた。
最後は自衛隊機に押し込められて、東京本社に連れ戻されたが。
その際の自衛隊の右往左往がニュースになったが、本当の問題はそこじゃない。
午後3時から11時までの間、東電の社長は東京に帰ろうとしなかった、ということだ。
おそらく、電源の完全喪失と聞いて、大爆発→東京も危ない と判断したのだろう。
内部の人間だからこそ、危険は一番良く分かっている。
また、こういう事態を想定していたからこそ、責任の所在が不明確になるように、ちゃんと準備されている。
そして、こういうことだけは着々と、東電の実質的な免責を決定した。
東電、政府の支援条件受諾 賠償枠組み13日閣議決定へ
2011.5.11 朝日
色んなことを言っているが、会社は存続させて株主を守り、最終的には電気料金に上乗せするのだから、ほとんど免責するのと同じだ。
これほどに、今回のようなカタストロフィを想定していた原発ムラのトップたちが、単に利権だけで動いていたとは、私には考えられない。
下っ端の鬼どもは、たしかに利権に釣られて、人間を投げ捨てて生きてきた。
しかし、原子力政策の行く末を決定するレベルのトップたちは、目先の利権だけでない、もっと凶悪な意図を持っていたとしか考えられない。
目先の利権をむさぼるには、あまりにもリスクが大きすぎるのだ。
それを分かっていながら、なんで原子力は特別の地位を与えられてきたのか。
そうやって考えていくと、やはりこの答えに行き着く。
原発推進の正体は「日本列島を核の墓場にする計画」だったのではないか
まだこの記事は読んでいないけれど、今日はもういい加減よみ疲れた という方は、日をあらためてでも目を通してみて欲しい。
決して陰謀論とかではなく、現実的な問題として、検証してみてほしい。
陰謀論どころか、非常に現実的な問題であることは、この記事を見てもわかる。
「原発のごみ」最終処分場、福島・楢葉町が誘致検討
2009.3.15 朝日 (元記事のリンクなし)
東京電力の福島第二原子力発電所が立地する福島県楢葉(ならは)町の草野孝町長が、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致を検討していることがわかった。 (後略)
■■
原発鬼が支配するところに、私たち人間の暮らしはない。
原発鬼を退治して、人間の暮らしを取りもどそう。
そのためには、良心を全うできる根拠地が必要だ。生きのびるための”よすが”を手に入れるなくちゃならない。
会社やオカネに100%頼り切った暮らしは、言いたいことを言えなくなる。
そのために、私たちは「郊外楽園プロジェクト」を提案し、実行しはじめている。
(郊外楽園プロジェクトについては、このブログのサイドメニューから カテゴリー「郊外楽園」をクリックしてもらえば、関連記事が出てきます。)
先日、六甲山の麓に100坪あまりの菜園もオープンした。


(この時の詳しい報告は、また改めて)
そろそろ本気で「楽園生活」を考えよう という方をお待ちしています。
ともに耕しながら、暮らしのこと、家のこと、そして脱原発の生き方について話し合いましょう。
連絡先 info@mei-getsu.com (←小文字で) 明月社・山岸
※SPEEDIの内部被曝のデータについて、甲状腺等価線量で書いてあるものを、実効線量と間違えて記事を書いていました。甲状腺等価線量で100mSvは、実効線量で5mSvです。お詫びして訂正します。文中は青字で訂正しました。
もっとも、それでも吸入だけで内部被曝は外部被曝の5倍ですが。 (2011.5.12)

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5年10年をかけて、真綿で首を絞めるように多くの人を殺していくとは、鬼も涙する所業だ。
犬猫に対してですら、このような残酷なことはできるものではない。
それを、自分たちと同じ人間に対してできる、菅直人たちや東電・原発ムラに巣くう連中とは、一体何者なのだろう。
人間の皮をかぶった、原発鬼という化け物ではないのか。
いや、鬼だって俺はこんなに非道くないと文句を言うに違いないが、他に言葉が浮かばないので、原発ムラに生息する生き物たちを、原発鬼と呼ぶ。
■■
原発労働者に対する扱いは、原発鬼がまぎれもなく鬼であることを証明している。



これらは、日本の新聞では報じられない、体育館で防護服を着たまま寝泊まりしている作業員の人たちの写真だ。
http://gb.cri.cn/27824/2011/04/21/782s3225078.htm (中国国際放送局)
布団や簡易シャワーやまともな食事くらいは、その気になれば東電の力をもって手配できないわけがない。
4月16日の段階で、ボロボロの原子炉が爆発するかどうかのギリギリの運命を握っている彼ら作業員に、まだこんな生活をさせて何とも思っていない。
それは、事故が起きる前から長年にわたって、東電や東芝などは、原発労働者を人間だと思ってこなかったからだ。
ソ連のやり方も非道かったが、それでも60万人を超える作業員(リクビダートル)は、国家的英雄とされ、(当初は)一生の厚遇が約束された。
たしかにリクビダートルはマトモに防護服も着けずに作業させられ、とんでもない被ばくを受けた。
東電はそこまで非道くないと思うだろうか。
今、原発内の作業員は700人くらいといわれている。
交代はあったにしても、合計でせいぜい数千のオーダーだ。
すでに、周辺に降り積もった放射性物質はチェルノブイリを超えている。
原子炉そのものに穴が空いていることも、ほぼ間違いない。
こうしたものの処理を、チェルノブイリの場合の数百分の一の人数でやらなくてはならないのだ。
これがどういう結果を招くか、政府も東電もよく分かっているはずだ。
だから、線量計を持たせなかったり、ホールボディカウンターをなかなか用意しなかったり、できるだけ被ばく量を労働者に知らせないようにしている。
新聞などの記者クラブメディアは、こうした状況をほとんど伝えないが、以下の週刊誌の記事が生々しい状況を書いている。
「そこは〝死の灰〟が降る戦場だった」作業員が語る福島第一原発の内部! フライデー
福島第一原発作業員が激白!「恐怖と疲弊、過酷な場当たり労働」フライデー
平成の特攻隊「フクシマ50」に突入命令を出せますか 大量被曝の危険性が分かっていながら 週刊現代
この700人の中にも、「序列」があるはずだ。
少数の東電や東芝などの正社員、一次下請けの社員、このくらいまでは一応保障もあるだろう。
が、二次下請け三次下請けの臨時雇いになれば、法律ですらあってないような扱いを受ける。
保障なんて運次第 という状況だろう。
なにせ、被ばく量の証明になる原発手帳を持たされていないのだから、あとで癌になっても「因果関係が証明できない」とかいわれて「たばこの吸いすぎ」「酒の飲み過ぎ」などと罵詈雑言を浴びせられて、放り出されるのが目に見えている。
■■
原発鬼が鬼であることは、こどもにまで原発作業員並みの放射線を浴びせて、平然としていることにも端的に表れている。
外部被ばく(だけ)で年に20mSvということが、何を意味するのか。
他ならぬ文科省が発表しているSPEEDIのデータを見てほしい。
3月12日から4月24日までの累積内部被ばく量データ(試算)がある。

http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/0312-0424_in.pdf
凡例をよく見て欲しい。
最低が 100mSv だ。
一番外側の薄オレンジの線が、内部被ばく100mSvのライン。そこから内側へ行くともっと高い。
その外側だって、1ヶ月余りで数十mSvだ。
ただし、この100mSvは甲状腺等価線量 というもので、これを実効線量に直すと、1/20で5mSvになる。
それでも充分すぎるほど、おつりがくるほど高い数値だ。
では、この地域の外部被ばく量はどうか。

http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/0312-0424_ex.pdf
内部被曝で100mSvだったラインと、ほぼ同じ地域が 1mSvのラインになっている。
つまり、文科省の試算では、内部被曝の累積は、外部被曝の累積の
ここから推測すると、福島の子どもたちに浴びせられるかもしれない20mSvとは、内部被曝を含めると、年間
これまで原発を推進してきた小佐古のような人が、涙ながらに抗議するわけが ここにある。
こどもは大人よりも何倍もリスクが高い。
ガン発症はもちろん、急性障害だって引き起こす放射線量だ。
こんな恐ろしい放射線量を、ICRPは認めているのだろうか。
いや、ここにとんでもない誤魔化しがある。
■■
20mSvの根拠とされているのは、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告(109)だ。
ここに、緊急時被曝の参考値として、20~100mSvと書いてある。
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html
(原文の日本語仮訳)
さらに、「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル」として、同じくICRPが1~20mSvという声明を出した、という。
(この声明の全文は見つからない)
ここで、大注目すべきは、いくらICRPといえども、内部被曝をカウントせずに、外部被曝だけで20mSvなんて言ってない、ということ。
上記日本語訳の、やや後のほうに、「付属書A.予測線量に対するさまざまな被ばく経路による被ばくの寄与の評価」という文章がある。
ここには、
事故後の最初の1年間に防護措置がとられない場合、予測線量の最大成分は汚染食物から受ける(内部被ばく)線量であり、環境汚染による被ばくがこれに続き、プルーム拡散中の放射性核種又は再浮遊放射性核種の吸入摂取及びプルームからの外部照射によって生じる線量が最も少なくなるであろう。
と書いてある。
明らかに、内部被ばくを含めての「参考値=20~100mSv」であることが分かる。
(プルームとは空気中の汚染のことらしい)
しかもこれは2007年に書かれたものであり、チェルノブイリ型の最初にドバッと放射性物質が放出されるモデルを使っている。今回の福島のように、ダラダラと毎日毎日150兆ベクレル余りもの放射性物質を放出し続けることは想定されていない。
ドバッと放出されて、それが徐々に減っていくというモデルでない以上、ICRPの想定よりも、食品や吸入による内部被ばくは深刻になるはずだ。
それはともかく、ここで確認しておくべきは、日本政府が根拠としているICRPの勧告(109)は、内部被ばく込みで、20mSvであるということだ。
次に、日本政府が言う20mSvについて見てみる。
その元になっているのは、原子力安全委員会でのこの「助言」だ。
http://www.nsc.go.jp/info/20110502.pdf
(P4~7に原文)
ここには、以下の通り書いてある
16時間の屋内(木造)、8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると、20mSv/年に到達する空間線量率は、屋外3.8μSv/時間、屋内木造1.52μSv/時間である。
はっきりと、空間線量だけのカウントであると明記されている。
当然ながら、作業員のようなガチガチの防護服を身につけない限り、内部被ばくは避けられない。
原発内で働いていた女性職員ですら、内部被ばくは外部被曝の3.5倍もあった。
外部被曝がヒドイ場所で、しかもある程度内部被ばく対策をしていた人でも、内部被ばくは外部被ばくの3.5倍なのだ。
免震重要棟で放射性物質吸い込む 福島原発で内部被曝の東電女性社員 マスクも不足
2011.4.27 産経
女性社員は、女性の3カ月で5ミリシーベルトという国の限度の3倍以上となる17.55ミリシーベルトを被曝。うち13.6ミリシーベルトが内部被曝だった。
(引用以上)
まして、外部被ばくは(原発敷地内に比べれば)低く、内部被ばくはまったく無防備な状態では、内部被ばくの比率ははるかに高くなるのは当然と言える。
先にあげたSPEEDIの 100倍という数字も なるほど ということになる。
いや、なるほどではすまないかもしれない
ICRPの勧告では、食物からの内部被ばく > 環境汚染からの被ばく > 吸入摂取の被ばく と書いてあった。
しかし、SPEEDIの内部被ばくデータは、主にヨウ素の吸入を計算している。
原子力施設等の防災対策について 原子力安全委員会 H15
(P110にSPEEDIについて以下の記載あり)
希ガスからの外部被ばくによる線量、ヨウ素の吸入による甲状腺線量等をコンピュータの画面上に図示することができる。
(引用以上)
ICRPの想定パターンでは被ばく量が多いとされる、食物と環境汚染が、SPEEDIでは考慮されていない。
ただでさえ恐るべき数字を示しているSPEEDIのデータに、さらに多いと思われる食物と環境汚染を加えたら、どんな被ばく量になるのか。
考えるのも怖い。
■■
整理しよう
SPEEDI のデータは
<外部被ばく>については、空気中の放射性物質からの被ばくを計算しており、降り積もった放射物質からの被ばくは計算していない。
<内部被ばく>については、空気中の放射性物質を吸い込むことによる被ばくを計算しており、食物からの被ばくを計算していない。
どちらも、ICRPの基準で言うと、少ない方の数字だけをカウントしているのである。
だから、本当の被害を想定するためには、ただでさえ恐ろしいSPEEDIのデータを、何倍かするくらいのことが必要になる。
では、降り積もった放射線物質についてのデータはないかと探してみると、こんなものが出てくる。
文部科学省及び米国DOEによる航空機モニタリングの結果
これについては、きっこさんが詳しく書かれているので参照してほしい
チェルノブイリを超えた放射能汚染
結論だけ言うと、福島第一原発の周辺に降り積もったセシウムは、チェルノブイリのレベルをはるかに超えてしまったということ。
どうやら、原発鬼どもがひたすら隠している放射能汚染は、私の悲観的な想像をすら上回る酷いレベルにあるようだ。
広島でゲンバク被爆者の治療にあたった経験から福島の現状を語る、肥田舜太郎先生の言葉が重い。
空気中に浮遊している放射性物質の影響だけでもすでに100mSvを超える地域があるのだから、以下の指摘は本当に重い。
「東北では下痢が始まっている。下痢は(放射性障害の)最初の症状です。」
「(今は)元気な者も含めて放射線の病気が始まるのは、おそらくこの秋から来年の春にかけて」
言葉が継げない
■■
それにしても、なんでここまで非道いことを、菅内閣も東電も原発ムラの原発鬼どもはするのだろうか。
元は人間だったはずの連中を、鬼に変えてしまったのは、何なのだろうか。
もちろん利権という理由はある。
しかし、利権をむさぼるには、取らなければならないリスクがあまりに大きい。
想定外とか何とか言っているが、利権をむさぼってきた内部の鬼たちにとっては、原発の事故なんて日常茶飯事で、何時大惨事になってもおかしくないことは、ヤツらが一番分かっていたはずだ。
現に、今回の事故が起きたとき大阪にいた東電の清水社長は、新幹線に乗れば大阪から東京にすぐ帰れるのに、夜中の11時まで逃げ回っていた。
最後は自衛隊機に押し込められて、東京本社に連れ戻されたが。
その際の自衛隊の右往左往がニュースになったが、本当の問題はそこじゃない。
午後3時から11時までの間、東電の社長は東京に帰ろうとしなかった、ということだ。
おそらく、電源の完全喪失と聞いて、大爆発→東京も危ない と判断したのだろう。
内部の人間だからこそ、危険は一番良く分かっている。
また、こういう事態を想定していたからこそ、責任の所在が不明確になるように、ちゃんと準備されている。
そして、こういうことだけは着々と、東電の実質的な免責を決定した。
東電、政府の支援条件受諾 賠償枠組み13日閣議決定へ
2011.5.11 朝日
色んなことを言っているが、会社は存続させて株主を守り、最終的には電気料金に上乗せするのだから、ほとんど免責するのと同じだ。
これほどに、今回のようなカタストロフィを想定していた原発ムラのトップたちが、単に利権だけで動いていたとは、私には考えられない。
下っ端の鬼どもは、たしかに利権に釣られて、人間を投げ捨てて生きてきた。
しかし、原子力政策の行く末を決定するレベルのトップたちは、目先の利権だけでない、もっと凶悪な意図を持っていたとしか考えられない。
目先の利権をむさぼるには、あまりにもリスクが大きすぎるのだ。
それを分かっていながら、なんで原子力は特別の地位を与えられてきたのか。
そうやって考えていくと、やはりこの答えに行き着く。
原発推進の正体は「日本列島を核の墓場にする計画」だったのではないか
まだこの記事は読んでいないけれど、今日はもういい加減よみ疲れた という方は、日をあらためてでも目を通してみて欲しい。
決して陰謀論とかではなく、現実的な問題として、検証してみてほしい。
陰謀論どころか、非常に現実的な問題であることは、この記事を見てもわかる。
「原発のごみ」最終処分場、福島・楢葉町が誘致検討
2009.3.15 朝日 (元記事のリンクなし)
東京電力の福島第二原子力発電所が立地する福島県楢葉(ならは)町の草野孝町長が、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致を検討していることがわかった。 (後略)
■■
原発鬼が支配するところに、私たち人間の暮らしはない。
原発鬼を退治して、人間の暮らしを取りもどそう。
そのためには、良心を全うできる根拠地が必要だ。生きのびるための”よすが”を手に入れるなくちゃならない。
会社やオカネに100%頼り切った暮らしは、言いたいことを言えなくなる。
そのために、私たちは「郊外楽園プロジェクト」を提案し、実行しはじめている。
(郊外楽園プロジェクトについては、このブログのサイドメニューから カテゴリー「郊外楽園」をクリックしてもらえば、関連記事が出てきます。)
先日、六甲山の麓に100坪あまりの菜園もオープンした。


(この時の詳しい報告は、また改めて)
そろそろ本気で「楽園生活」を考えよう という方をお待ちしています。
ともに耕しながら、暮らしのこと、家のこと、そして脱原発の生き方について話し合いましょう。
連絡先 info@mei-getsu.com (←小文字で) 明月社・山岸
※SPEEDIの内部被曝のデータについて、甲状腺等価線量で書いてあるものを、実効線量と間違えて記事を書いていました。甲状腺等価線量で100mSvは、実効線量で5mSvです。お詫びして訂正します。文中は青字で訂正しました。
もっとも、それでも吸入だけで内部被曝は外部被曝の5倍ですが。 (2011.5.12)

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