2015-02-13(Fri)

【珍しく建築ネタ】完成見学会のお知らせ

安倍総理の暴走は留まるところを知らず、何をしていても気持ちは気持ちは落ち着きませんが、そうは言っても毎日の生活はちゃんと続けていかなければなりません。

雨露をしのぐ家だって必要です。
できれば、雨露をしのぐだけでなく、家に帰れば少しは気持ちが明るくなる、そんな家であってほしい。

ということで、大阪市東住吉区で建築中の家の、完成見学会のお知らせです。

3月12日(木) ①13時 ②15時
3月15日(日) ①11時 ②13時半 ③15時半
最寄り駅:御堂筋線 西田辺駅 または JR南田辺駅
申込方法: 希望時間 お名前 ご住所 電話番号 を
       info@mei-getsu.com 山岸 まで
      折り返し、詳しい場所などお知らせします

かなり日当たりの悪い土地で、いかに明るく開放的な空間を作り出すか、がテーマとなった家です。
合板を使わず、ほぼ自然素材で作っています。
準防火地域ではなかなかできない、外壁の板貼りも実現しています。

家を建てる方はもちろん、当分建てる予定のない方もどうぞお越し下さい。



■■

前日におこなう 「3/14 今中哲二さん 学習交流会@生駒」もよろしく

詳しくは→ http://seikatu-forum.blog.jp/archives/22314289.html



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2013-10-21(Mon)

希望

日曜日に行った孫崎享さんと糸数慶子さんの講演会は、なんと160人近い方に集まっていただきました。

9条国際会議とか色々な企画とバッティングしていたのでどれだけ来てもらえるか心配していたのですが、おかげさまで熱気溢れる良い会になりました。なかでも糸数さんのおっしゃっていた言葉は胸に刺さりました。
「解釈改憲で戦争をするような日本に復帰したつもりはない。」
「精神的には独立をしたいという思いは大きな課題になっている。」
「大きな兆しは沖縄の言葉を復活させようという流れになっています。」
「自立するためには、その民族の言葉をもたなければならない。」
「まず精神的に自立して、それから経済的な自立につなげていく」

平和の国、日本に復帰したい と熱望した沖縄。熱望された日本。その「平和の国」はどこへ行ってしまったのでしょう。日本に生きる私たちには重い重い言葉でした。

と同時に、糸数さんは何回もこの言葉を言われました。
「現状は厳しいですよ。ですけど希望を持てると思っています。」

今、真っ暗闇にいるような気分の私たちにも、なにか光が差し込んでくるような気がしました。夜は西から明けるのかもしれません。
関西の私たちも、小さなことからできることを捜したいと思います。「私たちの言葉」を取りもどしたいと思います。

講演の詳しい内容は、IWJさんが配信して下さっているので、ご覧下さい



Video streaming by Ustream

ちなみに、日本の市民メディアの先頭を走る岩上安身さんのIWJは、現在、最低ラインの会員5000人を割り込んで資金難、存亡の危機にあります。
IWJの無い日本を想像してみて下さい。こんな恐ろしいことがあって良いのでしょうか。

いくら温和しい日本人でも、たった5000人で市民メディアを支えることができるのです。1万人いれば、もっと自由に報道することができるのです。
会員じゃない人はすぐ登録を。私も会員コンテンツ見ている時間ないけど最低限のカンパと思って登録済みです
詳しくは → http://iwj.co.jp/join/

これもまた、希望をつなぐための行動です。

話を少し戻します。
糸数さんの言われた「自分たちの言葉」「希望が持てる」
この発言をこの1週間ずっと考えています。
そして、集会とか運動のレベルではなく、自分たちの日常のレベルで「自分たちの言葉」を取り戻すことなんじゃないか と思い始めています。

私の日常は、木の家の設計をすること。
「木の家プロデュース 明月社」という事務所を作って、かれこれ8年半。一体全体、どうやって食いつないできたのか自分でも不思議ながら、何故かお客さんに恵まれて、どうにかこうにか家族ともどもこれまで生きてきました。

そんな私であれば「家づくり」として、あるいは食べ物を扱っている方であれば食べ物として、あらゆる仕事や日常を送っている人たちが、そのことを通して小さくても「希望」をもてる何かを実現していくこと。
上司に気に入られ、顧客の目をくらまし、下請けを叩きまくらなければ生きていけないこの世の中で、「あれ、もしかしたら」という希望の欠片を作り出すこと。

そんな希望の家、木の家だけじゃなくて希の家がつくれないか、本気で考え始めています。
これまでこのブログにも、木の家なんて経済的にとても建てられない人が多いんだ というような指摘はかなりありました。たしかにそれはその通りです。かくいう私自身、土地を買って家を建てることなどできずに、中古のマンションに木を貼りつけて暮らしています。

しかし反面、賃貸と持ち家を比較した場合、賃貸のほうが限りなくホームレスに近いという現実もあります。
借家法が改正されてしまった今日、賃貸は家賃が払えなくなったら即ホームレスになるリスクと隣り合わせです。しかし、持ち家の場合、金利だけでも払うということと高価に処分できないという条件があると、そう簡単に路頭に追い出されない可能性もあるのです。

これは極論としても、賃貸は家主の利益を住人が負担するわけですが、持ち家の場合は負担するのは銀行の金利です。やりようによっては、持ち家のほうが負担が少なくてすむはずです。

人が生きるための道具であるはずの家。ところが現代は、家を「買う」ことが人生の目的という逆転現象が起きています。この構図を壊すことが、希望の家の第一歩なのではないかと思っています。

と、きれい事の希望ではなく、こうした赤裸々な実態に即した希望の家、希の家を作りたい。
もちろん、こんな経済的なことだけではなく、あんまりいいことがなくても、朝起きると、あるいは家に帰ってくると ちょっとがんばってみようかな と思ってしまう そんな家を作りたいと思っています。

もちろん木の力を借りることになるでしょう。
私の中古マンションの家は、壁一面に杉の木を貼っています。とくに廊下は狭い空間に杉が張り巡らされ、1個100円の間接照明がそれをホワッと照らしています。
明日の分からぬ不安にさいなまれたとき、この壁に両手をついてじっとしていると、「なんとかなる」そんな気持ちが湧いてくるのです。

子どもたちもこの壁に両手を突っ張り、登ったり降りたりしながら大きくなりました。節穴を覗き、指を突っ込みながら、自分なりの「わがまま」を言える子に育ってくれたように思います。

希の家プロデュース と言えるように、今猛烈に考え中です。
希望 それがすべての源なのだと 思えてなりません。

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2013-07-19(Fri)

日本の隠された二つの難題

原発、被曝、TPP、そして憲法 いまや日本はこれまでの日本では無くなろうとしている。

と言っても、世の中の見た目は当分は変わらない。ファッションとお笑い、ビジネスとスポーツが、日本人の脳みそを占領し続けるだろう。
悲惨な歴史は、世の中が真っ暗闇になってから始まるのではない。気がつかないうちに始まって、暗闇になったときには手遅れになっている。

そんな時代の先行きに、実はさらに追い打ちをかける問題が二つ隠されている。
ひとつはコンクリート、もうひとつは山 だ。

■■

今年は2013年。50年前は1963年で高度経済成長が加速し始めた頃だ。
橋やトンネルや下水道や団地などの膨大な公共のコンクリート構造物が作られていった。

1970年代になると、民間でもコンクリートのマンションが雨後の竹の子のように建ち始める。
今や、日本中に40年以上を経過したコンクリートが、現役のままひしめいている。

これらが、実はとんでもないお荷物であることを、一般にも気がつかせるきっかけになったのは、山陽新幹線のトンネルがはがれ落ちた事故だった。

20130719-1.jpg

これは中国新聞が、1996年から1999年までにコンクリートの崩落事故があった場所をまとめたものだ。
→ 元記事

その後も、阪神高速など多くのコンクリート構造物で自然崩壊する現象が続いた。
この現象について、詳しいことが知りたい方は、このブログの右サイドにある「コンクリートが危ない」という本を読んでいただきたい。

コンクリートだけではなく、よく破裂して大噴水を吹き上げる古い鉛の水道管など、著しい劣化で余命幾ばくもないにもかかわらず、その実態が隠されている公共社会資本は、遠からぬ将来、表に出てくることになるだろう。

また、民間のマンションも、築50年が近づくにつれ、コンクリート自体の劣化、プランニングの古くささ、設備配管の劣化などから、高額の負担を強いられることになり、それでも資産価値の低下には歯止めがかからない。

さらに言うと、こうした公共や民間の古いコンクリート構造物を、大金をかけて建て替えや作り替えを下としても、こんどは壊したコンクリートの行き場に困るという問題もある。

コンクリートには寿命があるという自明のことを見ないふりをして、それ行けドンドンで作り続けてきたツケは、遠くない将来に支払わされることになる。

日本に仕込まれた時限爆弾のような物である。

■■

日本の国土の67%が森林です、という決まり文句は聞いたことがあるかもしれない。
驚くべきは、その森林のうち、41%余りが人工林、つまり人間が植林した山だと言うこと。

つまり、日本の国土の27%、3割近くは、人間がせっせと植林をした森林なのである。
どんだけ植えたんだ、、、と私も最初に知ったときは驚愕した。

その多くは、第二次大戦直後から高度経済成長期まで。
何せ、戦争で焼かれたり壊されたりした家を建てるため、木材は不足し、高騰した。
また、1ドル360円だった当時、木材を輸入することはままならなかった。

そこで、どんどん建築用材になる杉と桧を植えろ、と国が音頭を取り、高騰する木材価格に目を奪われて我も我もと植林した。
米国のゴールドラッシュは有名だが、日本ではフォレストラッシュだったのである。

もちろん、平地に植えたのではなく、元々は広葉樹などが植わっていた場所や、場合によっては先祖が石垣を組んで苦労して棚田をつぶして、じゃんじゃん杉の木を植えてしまったりもした。
本来は北斜面でじっくり育てなくてはならない杉の木を、そんなのお構いなしで南斜面にも植えてしまったので、やがてこれが大量に花をつけ、膨大な花粉をまき散らす一因にもなっていったともいう。

しかし、木材の大量消費は一段落し、1970年代の後半からは円がどんどん切り上がるのに比例して、木材の輸入が増えていった。
当然のことながら、濡れ手に泡だった時代は終わり、国産材の木材価格は急速に下落していく。

ほどなく、国産材は輸入材にとってかわられ、木材は山から切り出す物ではなく、商社のコンテナから運び出す物に代わっていった。
その急速な変化に、ほとんどの山はついていくことができなかった。
また国は、米国からの木材輸入圧力を受けていたので、あれだけ拡大造林を煽っておきながら、シラッとして日本の山を放置した。

その結果、もう日本の山は再生できるかどうかの瀬戸際だ と言われてからもすでに20年近くが経とうとしている。
瀬戸際からすでに20年も放置しているのだから、はっきり言って、すでに手遅れというのがシビアな見方だろう。

20130507-1.jpg 精神的にも物質的にも、絶対に日本を自立させない、という米国(占領軍)の支配方針は、こうしたところまで及んでいる。
国土の27%に汗水垂らして植林しながら、それを再生できないところまでほったらかしにして、輸入材を使うばからしさと言ったらない。

 そして、その結果としての、大災害の増加である。
人工的にたくさんの苗木を植え、本来ならば間伐をして育てていくはずだったものを、間伐せずに放置している。
それは細い木々が密集してほとんど草も生えず、地面が露出した山となり、そこに大雨が降ると土石流になったり、地層によっては深層崩壊という深刻な事態になったりする。

■■

すでに手遅れになっているところも多いとは言うものの、それで諦めてしまったら日本の山間地域は危なくて住めない場所になってしまう。
日本から田舎がなくなってしまうかもしれない。

じゃあどうすれば良いのか、という話になると、なが~~~い話になるので、これはまた別稿にしたい。
少なくとも自分たちでできることは、まだ間に合うところは、切って使う ということ。

手遅れなところは経済的に成立しないから、政策的に対応するしかない。
拡大造林を進めながら、米国に圧力をかけられたらアッサリ日本の山を見捨てた自民党に任せているうちは、絶対に解決の糸口も見つからないだろう。

そんな中でも、とにかくできることはやろう、と思って、本当にわずかな試みだけれども、ここ15年ほど国産材を使って家を建てることを仕事にしてきた。
最近は、縁あって奈良県十津川村の木を使わせてもらっている。

20130409-4.jpg十津川村のことについては
 → 紀伊半島大水害と十津川の木の家プロジェクト


このプロジェクトの一環として、昨年12月、雪の降る中を自ら十津川の山に木を伐りに施主さんの家が竣工する。
場所は大阪市福島区、都会のど真ん中。

「木の家」というと、そういう系統の雑誌に出てくるような家を想像されるかもしれないけれども、この家はちょっと変わっている。
都会で木の家を楽しむため、施主さんの希望や設計上の工夫が色々とある。

20130717-1.jpg7月21日(日)に完成見学会をやらせていただく。
①11:00~ ②14:00~ ③16:00~ の3回あるので、見学希望の方は
info@mei-getsu.com まで 住所・電話番号・お名前・希望時間 をご連絡いただきたい。
折り返し、詳しい場所等をお知らせします。

言うまでもないですが、当日は投票を済ませてからお越し下さい。



 



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2013-05-30(Thu)

【お仕事告知】6月1日と2日にセミナーやります

この1週間ほど、瞬間風速的になんじゃこりゃというほど忙しくて、ブログの更新できてません。

数日中に、重大なお知らせを発表しますので、そのときはよろしく!!!

本日は、お仕事(家づくり)のセミナーのお知らせを。

2013年6月1日(土)&2日(日)13:30~ @万博ディリパ

「ナチュロジー住宅と十津川復興支援」

以下は参考記事です

紀伊半島大水害と十津川の木の家プロジェクト


奈良県十津川村を視察して、筆者の、これまでの国産材への取り組み環境が恵まれていた事を実感した
(ブログ Rin Moku Ka)

ご興味のある方はどうぞ来てください!

2013-05-08(Wed)

紀伊半島大水害と十津川の木の家プロジェクト

あまりにも巨大な災害の陰に隠れて、注目されない大災害がある。

東日本大震災の翌日におきた長野北部地震と、半年後におきた紀伊半島大水害である。

栄村で震度6強を記録した長野県北部地震は、人口密度の低い地域で死者3名、重軽傷数十名という、かなりの大きな災害だった。

20130507-2また、紀伊半島大水害は死者行方不明者が80人近い大災害だった。その傷跡は未だに目に痛い。深層崩壊により山ごと崩れ落ちた斜面。大量の土砂に埋まった川。

2枚目の写真、左端の家の壁に小さな黄色いものが見える。これは近寄ってみるとビールケースだった。つまり、ここまで水かさが上がっていたのである。
ここは奈良県天川村の天河辨財天社のすぐ近く。家を流されたという方に当日の写真を見せてもらったが、20130507-3信じられない光景だった。その方は、たまたま街に出かけていて帰れなくなり、おかげで命は助かったと言っておられた。

3枚目は、奈良県十津川村が発行している 台風12号災害記録写真集「十津川村・大水害の記録」 の中から。(詳しくは こちらから購入していただきたい。)
こうした巨大な深層崩壊が、いたる所にある。車で走ってみれば、まさに山と川が崩壊したという様子が実感できる。20130507-4

人口密度が低いために、人的な被害は比較的に少なかったが、山と川の破壊という意味では、紀伊半島大水害は東日本の津波被害に匹敵するほどの大災害だったのである。

■■

奈良県のことばかり書いたが、被害は実は和歌山県側のほうが大きかった。ただ、私が奈良県側のことに詳しいのは、この地域から伐りだした木で、家を作っているからだ。

天の川~十津川~熊野川 と名前を替えながら太平洋に流れ下るこの流域は、平地がほとんど無いために、主要産業はほぼ必然的に林業と観光になる。
そして、大水害はこの二つの産業に大打撃を与えた。

長年育ててきた杉や桧への被害もあるが、何よりも作業用の林道をズタズタにした。いくら木が助かっても、作業道がないと切り出すことができない。作業道は林業のライフラインなのである。
現在は、ある程度復旧して搬出もされているが、一時期は木材の供給がストップしてしまった。

かれこれ6年ほどこの地域の木にお世話になってきたこともあり、何か役に立つことはないかと考えてきたが、結局は「木を使う」ことが一番だということに行き着いた。
木が売れることが、復興への何よりの処方箋なのである。

そんな折り、たまたま十津川村の施設で相談員を引き受けることになった。十津川村は、橿原市のショッピングモールの敷地内に「木灯館」という十津川材の家の公営モデルハウスのような施設を持っている。
そこで、月に2回ほど見学者に説明をしたり、セミナーを開催するお役目だ。

そんなわけで、いよいよこの地域ともつながりも深くなり、本腰を入れて十津川材を売り出そうと考え始めた。
まだ計画の全体は固まっていないのだが、頭を整理する意味で一部ここで書いておきたい。

私は色々合計すると足かけ15年ほど産直住宅に関わっている。
高知県土佐町、梼原町、大正町(現四万十町)、奈良県天川村、十津川村など、多くの山にお世話になってきた。

その経験から感じるのは、産直住宅が生産者の都合が優先されすぎることだ。
もともと林業の復興のために始まった産直住宅だから、生産者の都合が優先されるのはある意味当然ではある。
しかし、それでは住宅に住む人がかわいそうだ。というか、そこまでボランティア精神で大枚はたいて家を建てる人は滅多にいない。

やはり、家は住む人のものだし、林業の都合だけで何もかも決められてしまってはかなわない。
納期、価格、品質はもちろん、設計や施工の体制が充分に確保されているか。住み手の都合によって選択する幅が担保されているか。などなど、既存の産直住宅にはかなり問題は多い。

木の伸縮やひび割れを完全に無くすことはできないが、かと言って「木は生きている」などと、技術的に克服できるはずの欠点まで開き直ることは問題だ。
切り刻んで高温処理した木材が、生きているわけはない。情緒的な面と、材料工学とは別の次元で考えなくてはならない。

また、材料は良くても、設計や施工がおざなりでは、当たり前だがまともな家はできない。ちなみに、イマドキの普通の工務店や設計事務所では、国産の無垢の木材を使いこなすことは、かなり難しい。
それなりのノウハウやら経験やら技術などが必要になる。

そうしたハードルを越えたとしても、設計者や施工店の選択肢が一つしかないのでは、色んな住み手に対応することができない。
やはり、人間はセンスとか相性というものがあるので、供給側にも色んなメンバーがそろっている必要がある。

その上で、やはり大事なことは、設計者も施工店ももちろん住まい手も、関係する人々が山を想うことだ。
想うだけでなく、実際に山に行き、林業の現場を体験し、継続的に山との関係を続けていくことだ。

山の木を売る側は住まい手のことを思いやり、住まい手は山に想いを馳せる。そうした相互関係があって始めて、産直住宅は成立する。
(だから、私が設計してきた家のほとんどは、住まい手が山に行き、自分で木を伐る体験をしてもらっている。)

■■

こうした考えから、復興支援・十津川材の家プロジェクトは、3つの柱で構成される。

①ナチュロジー(ナチュラル+テクノロジー)住宅

②厳選された設計者&施工者のグループ

③十津川サポータークラブ

 

自然素材の良さはもちろん活かしつつ、それを言い訳にして材料や工学としての技術面をなおざりにしない。
特に、建築構造という点では、自然だからという言い訳は一切通用しない。
天然の木材であっても、一本一本材料強度を測定したグレーディング材であること。
家全体は、かならず構造計算によって耐震強度を確保すること。

そんなことは当然だと思われるかもしれないが、国産の木材でちゃんと強度測定されているものはほんのわずか。構造計算されている住宅も、3階建て以外ではこれまた極々わずかなのである。

その他、ナチュロジー住宅の具体的なことは、近々にモデルプランを描いてみる予定。

 

施工店については、現時点でも関西圏でそれなりの数を確保している。
価格面でのバラツキが問題だが、モデルプランを用いて調整していく。

設計者は実は不足している。
アベノミクスなんてどこ吹く風の不景気で、設計事務所はあり余っているのだが、国産材を使いこなし、技術的に信頼でき、住み手とのコミュニケーションが充分にとれて、山側との付き合いを楽しむ設計者となると、これがいるようでいない。

我こそはと思われる方は、ぜひご連絡いただきたい。
(構造計算はこちらでやるので自前でできる必要はありません。また、当然ながらこれで仕事が増えるかどうかは神のみぞ知る です。期待してもらっても、何も保証はできかねます。)

2ヶ月に1回程度、設計者・施工店のグループが様々なテーマでシンポジウムや討論会を開催し、そこで住み手とのコミュニケーションをはかることになる 予定。

 

そして、復興支援のもう一つの要は、サポーターを増やすこと。
サポータクラブは、住み手や関係者はもちろん、住宅とは直接関係ない人ももちろん募集していく。
林業作業や熊野古道の道普請などの楽しみながらやるボランティア作業から、2年間程度の契約社員(もちろん有給)まで、やることは多種多彩。
作業ばかりではなく、サポーターを集めるための情報拡散も重要なお仕事だし、放射能の心配のない十津川の原木シイタケを食べるなんていうのもアリだ。

さまざまなプログラムを用意して、とにかく積極的に楽しみながら十津川村と関わってもらい、最終的には過疎化を食い止めることが、中山間地域の本当の復興になる。

 

と、まあこんな感じで復興支援・十津川の木の家プロジェクトは進行していく はず。
あとは、どれだけ賛同してくれる人が集まるかにかかっている。

今日のところは、このへんで。





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2013-03-07(Thu)

【日程変更3/31】古民家再生の完成見学会

【先日発表した見学会の日程変更です】
3月31日(日)になります
***********************************

ひ~さしぶりの家づくりネタです。

古い友人からの紹介で、この1年半とり組んでいた古民家再生の仕事が、どうやら今月で目処がつきそう。
ということで、お施主さんの了解をいただいて完成見学会をさせてもらうことになった。

日時 3月24 31日(日)11:00~16:30
    説明できる人間が私一人なので、いずれかの時間に来ていただけると助かります
    ①11:00 ②14:00 ③15:30

場所 奈良県宇陀市 (近鉄大阪線 榛原駅 徒歩10分)

申込 info@mei-getsu.com まで お名前、ご住所、電話番号、来訪予定時間 を
    申込みいただいた方には、詳しい行き方などをお知らせします


思いおこせば、一昨年の10月に実測調査に入り、設計に半年余りを費やし、昨年6月から解体工事に。
ところが、解体してみると思った以上に傷みが激しく、シロアリの害が2階まで広がっていた。

一度工事を止めて、1ヶ月間悩みに悩んで方針を決め、あれやらこれやら どうにかこうにか今日に至る、というかなり苦心した現場だった。文句なしに、今までで一番大変だった。
それだけに、思い入れも強く、ぜひ多くの方に見ていただきたい。

以前の姿
              (以前の姿)

この家は、築100年は超えるだろうといわれている。
古い家を、元の通りに復元するのではなく、現代の生活ができるように、かなり手を入れている。
主な部分の意匠は残しながらも、かなり大胆な改造を施した。

もちろん、構造的にもイマドキの家として遜色のないレベルにまで補強した。
家が建ったままで基礎を作りかえるのは、実に大変だった。

基礎を作っている
          (作り直した基礎)

文化財として古いまま残すことも大事だとは思うが、やはり家は住んでナンボ。新旧を融合させて住まいとして復活させることを、私としては優先させた。

シロアリに食われなかった柱や梁はそのまま使い、できるだけ見せるようにした。
一方で、窓は以前のままではすきま風がビュービュー入るので、これは現代のものに入れ替え。ただし、いわゆるアルミサッシでは台無しなので、いろいろと工夫をした。

できあがりつつある
          (できつつある部屋)

キッチンも、民家の内装に馴染むインテリアとして、アイランド型の木のキッチンにした。
総じて、古民家の意匠を大事にしつつ、それを住む人に押しつけないデザインに、なんとかなったのではないかと思っている。

大阪からだと1時間以上かかる場所ではあるけれども、ご興味のある方はぜひともお越しください。

                          2013.3.7
                          木の家プロデュース明月社 山岸飛鳥


3月24日は、下記のイベントも

第1回 政経ミニフォーラム ー経済の真相シリーズ1
講師  岩本沙弓氏  中村てつじ元衆議院議員
詳細 → 政治と生活を考える会ブログ

こちらもぜひご参加下さい



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2012-10-11(Thu)

家を建てるなら

今週は、なんやかんやと仕事が忙しい。お金がない割に・・・

「政治を市民の手に!プロジェクト」について、近日中に発表しますと言いながら、最初に思い立ってから1ヶ月が経とうとしている。気ばかり焦るが、これで行こうと決まりかけのところで軌道修正が入ってしまい、そのまま仕事モードに突入で、一次停車を余儀なくされている。

今週中にはナントカ、と思いつつ、とりあえず今日はビッグテーマをおいといて、家の話を。

家を~建てるーなら~ 家を~建てるーなら~ああ というという○○ホームのコマーシャルがあった。あの歌、びっくりしたことにブレッド&バターの歌だったのだ。

http://www.panahome.jp/company/tvcm/song/song_full_q.html

よく聞いてみるとなかなか良い歌なのだが、それが何故か○○ホームと結論に至ってしまうのが誠にもって不可思議・・・
(歌詞の中には○○ホームは出てこないけど)

それはともかく、今家を建てる方にひとこと言っておきたい。
家を資産と思ってはダメですよ と。

今の時代、家は道具であり、手段であり、砦である。
その家を道具や手段や砦にして、実現したり守ったりすることがないのだったら、建てない方が良い。
家を作ることが目的ではなくて、家を作るなら~の後が目的なんだということを、はき違えないように。

資産として家を持つ時代は、とりあえずどんな家でも作ることに意味はあった。
しかし、これほど先の見えない時代で、中途半端な資産、しかも時間と共に目減りする資産を持つことは決して得策ではない。
その意味では、特別立地が良いものでないかぎり、新築マンションというのは一番手に負えない。

目的が賃貸でも果たせるのであれば、リスクの少ない賃貸に住み続けるのも良い方法だ。自分のものにならないと言われるが、資産の目減りや総支出を冷静に計算してみれば、どっちが得と言うことはほとんどない。

何かの目的のために、自分の一生で使い切る家が必要で、そのコストとして納得できるのであれば、との時はぜひ、家を建ててもらいたい。建ててくれる人がいないと、私らはミイラになるしかないし。(なりかけてるけど)

住宅メーカーやら立派な工務店も数多くある中で、私らのような生き物が存在している意味は、実はその点くらいだ。
家ありきではない、ということ。建てる人が目的の意志を持って能動的に家を建てる。そのサポートをするというのが、実は設計という作業。

そして、飛躍するように聞こえるかも知れないが、そうして能動的に生きる人が増えることが、日本をちょっとづつマシにしていくことにもなると思っている。

てなことで、少々こじつけつつ、今日はこれくらいで



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2012-04-07(Sat)

天の恵みを使う家

今日は家の話

先日からチラチラと書いていたように、大阪の堺市で工事中の「天の恵を使う家」がまもなく竣工します。
ついては、完成見学会を行いますので、興味のある方は家の立てる予定のある人もない人も、どうぞ見に来て下さい。同業者の方も歓迎します。

4月22日(日) 10:30
4月29日(日) 11:00
  〃       13:30

いずれかの時間におこし下さい。所要時間は毎回1~1.5時間程度です。
なお、22日は若干工事中の部分が残っていると思います。

申込は、左サイドのメールボックス「明月社へのご連絡」からお願いします。
詳しい場所などをお送りします。

■■

さて、一体何が「天の恵み」なのか、少し書いておきたい。

天から降りてくるものと言えば、やはりお日様と雨だ。
それに、空そのもの。

それらを、できるだけ効率的に、人様に迷惑かけずに活用しようという試み。
この家は、住まれる方がこうしたことにとても積極的に関心を持っておられたので、いろいろと提案して採用していただいた。


まずはお日様から。
最初に言っておくと、この家に太陽光発電は ない。

理由はハッキリしていて、太陽光発電はまだペイできるレベルに達していないから。
巨額の税金と太陽光発電促進付加金というほぼ全国民から強制徴収したオカネを投入して、どうにか採算がとれるようにしているのであって、太陽光発電だけではまったくの贅沢品である。

詳しくは以前の記事に書いたので、「太陽光発電を使わないとはけしからん!」と思われる方は、ぜひ読んでみていただきたい

太陽光発電の怪

脱原発の家づくり 太陽光発電は救世主か?

太陽光発電は1/6のコストになるか

とは言え、太陽光発電を取り付けてはいけないのかといえば、そこまで言うつもりはないが、同じ太陽光の装置をつけるのであれば、だんぜん太陽熱温水のほうをお勧めする。
DSC06401 (Small)
少し前に○○ソーラーという会社が強引な営業をやらかして、いたく不評を買ってしまったソーラー温水だが、これはその会社が悪いのであって技術が悪いのではない。むしろ、この技術を貶めるために、ことさらに○○ソーラーの悪行がクローズアップされたような形跡もある。

とにかく、この装置はエネルギー効率が断然いい。太陽光の50%くらいを熱エネルギーとして活用できる。太陽光発電は変換効率が半分以下である上に、電気を熱に変換する際にまた大きな無駄が出るから、まったく比較にならない。

各部屋に光が入るようにして、かつ照明をできるだけLEDにする。暖房は太陽熱温水床暖房。大型テレビは置かない。もちろん、IHクッキングヒーターなんて使わない。真冬以外は暖房便座をオフにする。
できるだけ電気使用を減らし、太陽熱温水で足りない分だけをガスで補う。

薪ストーブも良い選択肢だけれども、こちらの家の場合は施主さんの生活パターンが薪ストーブには合わなかったので採用していない。

■■

太陽の次は雨である。

雨水タンクは安価でもあり、最近設計した家にはほとんど取り付けている。
タンクの下の方に蛇口が付いていて、じょうろに汲んで庭や菜園の散水に利用している。

この家にもその機能はついているが、実はもっとパワーアップしている。
タンクの横に小さなポンプをつけて、トイレと屋上に送っている。
屋上庭園の芝生に自動灌水するのと、トイレを流すのに雨水を使ってるのである。

水道代がもったいないということもあるけれども、水が豊富なように見える日本でも、実は真水は貴重なのだと言うことを意識できるというメリットもある。
水問題は大きな問題で、砂漠化はオンダンカなどよりも急激で深刻な問題になっている。日本だって、食料という形で実は膨大な水を輸入しており、水の自給なんてぜんぜんできていない。
砂漠化については

私が国産の木材を使う理由


もっとも、小さいとは言え電動ポンプを使っているので、停電や故障するとトイレが使えなくなってしまう。これは困るので、そんなときは便器に座ったままでも上水に切り替えができるようになっている。

■■

もうひとつ、この家の目玉とも言える雨水利用装置が付いている。
それが、壁面冷房

と言うと大層だが、じつは外壁面に雨水をポチポチ垂らして、気化熱で冷やすという仕組み。
壁面打ち水といった方が正確かも知れない。

西日の当たる大きな壁面の一番上に特殊なホースが付いていて、そこから雨水をタラタラと落とすのである。さて、どのくらいの効果が出るかは、この夏にデータを取らせてもらおうと思っている。
気化熱はびっくりするぐらい大きなエネルギーなので、一定の効果は確実にあるはずだ。

気化熱がどのくらい大きいかというと、仮に完全断熱された6畳の部屋があるとすると、その中で10ccの水が蒸発すると、部屋の気温が約1℃下がるという計算になる。

この外壁冷房は、壁面に水を染みこませるのがミソなので、全然染みこまないサイディングなどの今時の壁では効き目が弱い。また、染みこみすぎるモルタル壁では多用するとメンテナンス上の問題があるかも知れない。
それに、水の染みた範囲と染みてない範囲では色が少し変わるので、見た目をあまり気にする方には向かない。
そんなことよりも、天の恵みを使っていることに喜びを感じる人にお勧めしたい。

■■

天の恵みの太陽と雨の両方を使うのが、屋上庭園。
屋根の半分を平らな屋上にして、芝生を貼っている。今時は屋上庭園の技術も進んでおり、安心して使うことができるようになった。

屋上緑化も、きわめて断熱効果が大きく、気化熱による冷却効果も期待できる。
これも、緑化している下の部屋と、通常の屋根の下の部屋でデータ取りをさせてもらうつもり。
(通常屋根の下は、天井を高くして熱気を少しでも遠ざけるようにしているが)

屋上庭園は、こうした熱環境だけでなく、空そのものを楽しむという余録もついてくる。
とにかく、気持ちいい。
適度な手摺り高さにすることで、近隣との相互のプライバシーも守られ、望遠鏡を据えれば夜の空も楽しむことができる。

ちなみに、補助金はなくてもやる価値のある屋上緑化だが、堺市の場合は施工費の50%が補助された。やってみたい方は、自治体に問い合わせてみるといいと思う。

■■

と、自然エネルギーのことばかり書いたけれども、家そのものも吉野杉をふんだんに使った、なかなか見応えのある家に仕上がったと思っている。
工務店も大工さんや職人さんたちも、良いものにしようという気持ちを持って取り組んでくれたので、現場に行くと「良い気」が満ちている。

ぜひとも、見学会に来てみて下さい

申し込みは、このブログの左サイドにあるメールボックス「明月社へのご連絡」からお願いします。
また、明月社については、右サイドのバナーからHPへリンクしています

日程は
4月22日(日) 10:30 (若干工事中の部分あり)
4月29日(日) 11:00
  〃       13:30

原発のない社会にむけた小さい実践として、賛否両論に評価していただければ幸いです




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2011-10-22(Sat)

完成見学会のお知らせ

今日は、家づくり のほうのお話し

大阪の北の方で工事中だった住宅が、いよいよ完成します。
なんと2軒並びです。

コーポラティブのように、見た目には敷地境界がありません。
敷地を小割にしないと、どれほど広々するかという実例を見ることができます。

先日現場に行ったら、足場が外れていました。
ところが、打合せをしているウチに、日が暮れてしまったので、こんな写真しかありません

20111022-1.jpg

ということで、外構工事もほぼ終わった頃に、完成見学会を行います

2011年11月20日(日) ①11時~12:30 ②13:30~15時 ③15:30~17時

バラバラに来ていただいても、2軒あるので対応できません。
3回に分けて説明を行いますので、いずれかのいずれかの開始時間におこし下さい。

場所は、大阪府豊能町。能勢電鉄の「ときわ台」駅から徒歩10分とちょっと
詳細は、ご連絡いただいた方にお伝えします。

施主様のプライバシーもあるので、必ず見学希望の方の、お名前、ご住所、お電話番号と希望時間を書いて、申し込んでください。
左サイドの「明月社へのご連絡」からでも結構です。

直接メールの場合は、info@mei-getsu.com (@を小文字に) へお願いします

なお、建築関係者の方も歓迎しますが、その旨も書き添えてください。

********************

この2軒の家の骨組みは、奈良県天川村の木でできています。

天川村は、先日の台風12号で大きな被害を受けました。
隣村の十津川や野迫川ほどではないにしても、土砂ダムができ犠牲者も出てしまいました。

ここ数年、私が設計する家は、ほとんど天川村の木で作ってきました。
施主さんと一緒に天川の山に行き、天川弁財天の神職さんに伐採祈願祭を執り行ってもらい、施主自ら何本か伐採を行います。
その天川辨財天社も水害に遭い、山の中は林道がズタズタになっており、当面は木材の搬出が困難になっています。

天川村を流れる天の川(てんのかわ)は、今回大被害を出した熊野川の上流です。
もし、天川村で土砂ダムができていなかったら、その下流にあるダムが決壊し、熊野川流域の被害は桁違いに大きくなっていたのでは、と考える人もいます。


********************

国は激甚災害認定をしました。
たしかに、それで復旧費用はあるていど賄うことができます。

しかし、現地では補助金を受け取るための、膨大な書類作成に追われ、また、とりあえずの復旧工事をしてしまうと、補助金が下りなくなるため、正規の調査・設計・見積・申請 といった長~い手順を踏むまで、ほったらかしにしておかなくてはならない、という矛盾した状況も出ているようです。

とにかく、一刻も早い復旧を願うばかりです。

では、あたらめて、11月20日(日) 大阪府豊能町で完成見学会です

ご希望の方は、左サイドのメールフォームから、お名前、ご住所、電話番号、希望時間 を書いて、お申し込みください

お待ちしています

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2011-09-02(Fri)

これからの家づくり ③

野田内閣のことは、考えても良くなるワケじゃないので、しばらく頭お休み。
もうちょっと、気持ちが落ち着いてから、冷静に分析してみようと思う。

ひと言だけ印象を書いておくと、「重要な政策決定は、野田・前原ラインで行い、国会対策だけ小沢Gに責任を押しつける」というのが、野田新内閣の人事のキモだ。うまく行ってもいかなくても、野田・前原にすれば結果オーライという巧妙で狡賢い構成になっている。
仕上げはおそらく、輿石幹事長から、金庫の鍵と人事権を取り上げること。「ねじれ国会に専念して下さい」とか言って。


さて、昨日も書いた これからの家づくり② を続けたい。
前回は、コーポラティブという共住(きょうじゅう・ともすみ)の手法を使って、経済的に平均的な家庭でも郊外楽園を手に入れられる、ということを書いた。

ひとつの家計のモデルとして、世帯主年齢35歳くらい、世帯年収450万円、自己資金300万円という設定をしたのだが、35歳くらいの平均貯蓄額を調べてみると、全国平均で約600万円となっている。
総務省 H22年度家計調査

ところが、貯蓄額というのは、平均が必ずしも平均を意味しない。
下記のグラフを見ると分かりやすい



超金持ちがいるので、平均額は実は相当の金持ちになってしまうのである。
で、貯蓄額順に一列に並んで、真ん中の人を意味する中央値を使う。

上記の場合で中央値は平均値の約60%なので、先の30代平均600万円も中央値360万円としておく。
とすると、自己資金300万はギリギリすぎる感じがあるので、モデルケースの自己資金は200万円に修正する。

それと、借入額を1500万と書いたけれども、月に9万x20年だとフラット35の借入額はちょうど1600万になる。
こちらも訂正。

年齢35歳、夫婦と子ども1人の3人家族、世帯年収450万、自己資金200万、住宅ローンの借り入れ1600万円。

■■具体的にモデルを描いてみる

仮に上記のモデルをMさんとする。

Mさんと、ほぼ同じような条件の家族を探し、3家族で共住する土地を探す。
条件は、大阪市内の職場まで、ドアツードアで1時間ちょっと ということと、子どもが小学校に通えること が最低条件。

実際に不動産サイトで検索してみると、例えばこんな物件がある
http://www.o-uccino.jp/detail_0002169602_h/

所在地 :兵庫県三田市加茂  福知山線/広野駅 から徒歩6分
価格 :1,100万円  土地面積:376.42㎡ (約113坪)
(これは、たまたま検索にかかっただけのサンプルなので、どんな土地なのかは一切責任もちません)

JRの快速で大阪梅田まで50分だから、充分に通勤はできる。
850mくらいのところに広野小学校もある。

とにかく、ここが気に入ったとして、話を進める。
共有持ち分を3人で均等にすると、一人あたり土地代が367万円になる。

資金は200+1600=1800万円だが、消費税含めた諸費用に2割くらいかかるので、土地と建物の予算は1440万円。
土地代を払うと、残りは約1073万円と言うことになる。

1073万円で家が建つか。
もちろん、建つのは建つ。安売りで有名な○○ホームなんかなら、一切オプションを頼まなければ、充分に建つ。

だが、新建材に包まれて、郊外楽園生活ができるのか・・・
せっかくの楽園計画が、なんだか色あせてくる。

やはり、木と和紙と漆喰で、なおかつ耐震性のしっかりした家にしたい。
となると、どんなに合理化しても坪あたり50万を下回るのは難しい。
1073万だと、21.5坪だ。

う~ん。これは微妙。
21.5坪70㎡は、マンションの平均の広さなので、平屋ならば充分に暮らしていける広さが確保できるし、物置や作業小屋はあとから自力で増築したりすれば、何の問題も無い。
とは言え、平屋は建築コストがかさむし、ちょっときびしすぎる条件かもしれない。

となると、もっと土地の安いところを探すか、人数を増やして土地の分担を小さくするか。
でも、坪10万を切るとだんだん通勤がきびしくなる。
土地の分担が狭すぎては、肝心の菜園のスペースが取れない。

う~~ん どうしたらいいだろうか。

■■定期借地権という考えかた

定期借地権付きマンションは、最近ではめずらしくなくなったので、家のことを考えている人ならば、これは聞いたことがあるだろう。
略して定借 なんて言ったりする。

定期借地権というのは、50年(以上)の年限を決めて、その間だけ住居用に土地を借りること。
普通の借地の場合は、一度貸してしまうとなかなか返してもらえないことが多く、立ち退き料を取られたりするので、地主は住宅用には土地を貸したがらない。
そこで、50年以上の契約年限が来たら、建物も壊して更地にして返します、と最初から決めているのが、定期借地だ。

そもそもは、バブルで土地が高騰して、一般の人は買いたくても手が出なくなった。
そんなときに、借地と売地の中間のような位置づけで考え出されたのが、この定借。

詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ
定期借地権の解説(国土交通省)

ところが、ご多分にもれずこの制度が施行されたときにはバブルははじけた後。1992年。
急降下する地価を前にして、思ったほど利用は増えなかった。

ところが、不況が長引くなかで、2007年頃には不動産ミニバブルがあり、地価が上昇。
そこで、定借は再び脚光をあび、定借付きマンション(特に賃貸)が激増した。
が、サブプライム問題やリーマンショックでミニバブルもあっけなく崩壊。
定借もまたまた影に隠れてしまった。

で、この定借というのは、具体的にどうなるのかということを、さっきの三田市の物件を例に考えてみる。

この土地の地主が、いくら待っても売れそうにないので、いっそ定借で貸そうかと思ったとする。
そこにタイミング良く、Mさんたち3人が「定借で貸して下さい」と頼んだとする。

定借の場合は、最初にある程度の保証金を払い、その後50年間は毎月地代を払う。
事例も少ないこともあり、はっきりした相場はないけれども、全国の平均では、
保証金が地価の18%、年間の地代が地価の1.3% となっている。

なので、1100万円のあの土地ならば、保証金が約200万円。地代が14.3万円、月に1万2千円だ。
これを3人で割るから、保証金が67万円、地代が4千円となる。
50年間で地代が240万円、保証金とあわせて300万円とちょっと。
(保証金は50年後には返してもらえるけれども、ほぼそのまま建物の解体費になるから、無いものと思った方が良い。)

大事なことは、50年(以上)の契約年限が来たら、無条件で出て行かなくてはならない、ということ。
かりに35歳で50年の契約をすると、85歳で追い出される。
これはたまらないので、年限を60年にするケースもある。

また、定借の家でも売買はできるけれども、年限があと10年などと迫ってくると、難しくなる。
10年で追い出される家を買う人は、あまりいない。

そのあたりを分かった上でならば、定借は自分一代の住まいを確保する方法としては悪くない。
あらためて、この方式で予算組をしてみると、

地代の分だけ住宅ローンの返済額が減るので、借入額が100万ほど少なくなり、総予算1700万。
1700x80%-保証金67万≒1293万

だいたい25坪。
これならば、合理的な設計をすれば、3~4人家族の住まいは作れる。

■■敷地全体としては

113坪の敷地に3家族だから、1家族あたり38坪くらい。
家を建てて駐車スペースをとると、残りは10坪くらい。これでも悪くはないけれど、コーポラティブの特性を生かすと、3軒で30坪の共用スペースができる。実際は、家と家の間を調整すると、もっと広くとれる。

畑と道具置き場と子どもの遊ぶ場所が40坪もあれば、これはスゴイ。
簡単な模式図で違いを見てみると



あくまで模式図なので、細かいツッコミは勘弁願いたい。

以上、郊外楽園生活を手に入れるための、最適のスキームは、定期借地権付きの戸建てコーポラティブではないだろうか、というのがここまでのお話。

もちろん、定借は地主の意向次第なので無理なこともある。
敷地の条件も色々であり、具体的にはケースバイケースで考えていくことになる。

ここで見ておきたいことは、年収700万以上、自己資金1000万以上などというやたらと恵まれた条件じゃなくても、モデルにしたMさんのケースでも、こんな感じの郊外楽園をあまり無理なく手に入れることができる、ということ。
家づくりを仕事にしている私が言うのもオカシイのだけれども、「住む」ということは、このくらい軽やかに考えるべきだとおもう。

次回は、郊外楽園のライフスタイルについて、少々提案をしてみたい。
ちょっとお節介に過ぎるかもしれないけど。

■■参考

郊外楽園について、以前の記事を見ていない方はこちらを

郊外楽園プロジェクト

郊外楽園プロジェクト その2

今回の大災害の反省から「郊外楽園」を考える







生活フォーラム関西
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