2023-06-08(Thu)

カホフカ・ダムを破壊したのは誰か

ウクライナにとってもロシアにとっても、深刻なダメージとなるカホフカ・ダムを、一体だれが破壊したのか。
こちらの記事が、非常に詳しく報じている。


記事中で橋の中央部が決壊した様子が分かるツイートを紹介している。
6/4の写真で取水口になっているあたりが、決壊後の流れの中心になっている。


さらに、BBCが崩壊する4日前にすでに兆候があったと写真を公開している。


20230608-3.jpg

カーブしている部分の橋が4日前に落ちていたと言うのである。ここは上のツイートの写真の取水口の上部に当たる。たしかに、6/4の写真もよく見ると橋がなくなっている。

ところで、同じJSF氏の記事で、昨年11月のものがある


この記事では、昨年11月にウクライナ軍がダムの上にかかる橋を攻撃し、補給のできなくなったロシア軍がダムよりも北西側のヘルソンから撤退したときのことが書かれている。
ウクライナ軍がミサイルでダムの上部の橋を攻撃し、最後にはロシア軍が爆薬で橋を落としてヘルソンからウクライナが追撃してくるのを防いだ。

まず、ウクライナ軍がミサイルを集中させた箇所はこの部分だという。

20230608-2.jpg
(JSF氏の記事より引用)

直線の橋の部分は、ダムの真上にあるのでミサイルが貫通するとダムが壊れるが、丸印のとこだけは真下にダムがないので、そこをウクライナのミサイルは集中して狙った、という意味。
中央の丸は、まさに6/2に橋が落ちた箇所であり、ダムが決壊した箇所の直近だ。

そして、ロシア軍がヘルソンから撤退した後に破壊したのはこの部分だという。


この写真は最初のツイッターと方位が反対で、下が北だ。左側の写真の右端で橋がなくなっているので、ロシア軍が橋を爆破したのはウクライナ軍が攻撃した部分とは反対側である。
直下にダムがあるけれども、ミサイルではないのでダムには影響させずに壊したようだ、と書いてある。

以上から分かることは、ウクライナ軍がミサイルを集中させた箇所の直近でダムの崩壊は始まったということと、その部分はロシア軍は11月には橋の爆破をしていない、ということだ。

いくら命中精度の高いミサイルでも、集中的に攻撃したときに橋のカーブの部分は崩壊寸前の状態になり、ダム本体にもダメージを与えていた、と常識的には考えざるを得ない。
損傷を受けたダム本体が徐々にたわみを生じ、弱っていた橋が変形に耐えられずに崩落し、その後にダム本体が決壊した、というのが時系列の写真から推測されることだ。

ロシアは橋の一番ウクライナ側で11月に橋を爆破したので、今回の崩壊地点はロシア側になる。もし人為的な破壊だとすると、大量の爆薬を抱えてウクライナの工作員がどうやって侵入したのかという問題はあるので、ロシア側の疑いが濃くなるが、これも4日前から前兆があったことを考えると、人為的な爆破というのは考えにくい。

現段階で確定はできないが、昨年11月のウクライナ軍によるミサイル攻撃で損傷した箇所が、時間をかけてたわみを増大させ、決壊に至ったのではないか、と私は考える。


いずれにしても、この被害が甚大なものであり、戦争で苦しめられている国民をさらに追い詰めていることは間違いない。

反転攻勢をさけぶウクライナも、その惨状は一般に報じられいる戦闘の被害にとどまらない。


2022年のGDP(国内総生産)は前年比マイナス30.4%。かろうじて保たれているのは公共輸送機関やライフラインと、食料品店やレストラン、カフェなどの生活まわりのサービス分野ぐらいで、その他は農業を除いてほぼ麻痺状態にあると見てよいだろう。
(引用以上)

一刻も早く停戦、休戦を実現し、昨年だけで1600億ドルにのぼった軍事支援を、すべて生活再建のための支援とすることが求められる。
もっとも、アメリカは軍事費は天井知らずで出すけれども、生活再建には雀の涙しか出さないだろうが。




2023-06-07(Wed)

政党は急成長できるのか 大阪5区のことなど

今国会での衆議院解散はたぶんない、と前の記事で書いた

自民党内でも慎重論が強いようだし、あの山口3区戦争が決着つかないと、解散はできないだろう。

首相「非常に難しい判断」 山口新3区の候補者調整
2023年6月7日 産経新聞

山口県は選挙区がひとつ減るため、4区の安倍晋三の後継と、3区の岸田派の林芳正外相が公認争いをしている。
岸田は何が何でも林を推して安倍派を屈服させるだろうが、そう簡単ではない。時間がかかる。

とは言え、当分選挙はないよと高をくくっているわけにもいかず、少し足下の分析をしてみようと思う。
足下というのは、いまこの文章を書いている大阪市東淀川区を含む、大阪5区(東淀川、淀川、西淀川、此花)である。

自分の設計事務所があるという意味でも足下だし、前回の衆院選ではかなりがんばって活動したと言う意味でも、しばらく議員事務所で仕事をしたという意味でも、私にとっては足下と感じている。

前回、2021年10月の衆議院選挙では、以下のような結果だった。

20230607-3.jpg
朝日新聞より引用)

見ての通り、現職が3人もいる。普通に考えると、現職がどっか行くことはないので、次回も3人は立候補すると考えられる。

さらに、大阪ではこんな事情が生じている。

維新、公明の「金城湯池」で主戦論 衆院関西6選挙区、関係に揺らぎ
2023年5月14日 毎日新聞

これまで大阪で4つ、兵庫で2つの選挙区は、自民も維新も候補者を出さずに公明候補が議席を得てきた。
公明は、自民とは国政で、維新とは大阪で協力関係をとってきたからだ。
しかし、4月の地方選で大勝ちした維新は、もう公明とは組まない、と宣言したのである。
地方選での維新の票数を見ると、6選挙区すべてで公明は議席を失う可能性がある。

大阪5区もその一つであり、現職3人と維新候補の四つ巴になる可能性が高い。
そうなった場合、どのようなことが想定されるのか。

昨年7月の参院選の比例では、維新81332票、公明31853票で、約10:4の比率だったが、これには自民票が入っていない。(自民は自民に投票しているから)

今年4月の府議選では、東淀川と淀川は、維新、公明、その他の3候補だった。そのなかで維新は75000票、公明は31000票である。自民がでない場合でも、だいたい10:4程度になっている。自民票は連立を組む公明よりも維新に多く流れていることがわかる。(もちろん地方選だからという要素は強い)

次に共産だが、宮本の48000票は、比例票の投票先でいうと共産21000、社民2000、民主系の約半分で12000、それに維新から13000票程度が流れていると、私は推測している。

問題はれいわだ。大石の34000票は、比例でれいわに投票した1万の3.4倍もある。つまり、他党が候補を立てると、非常に苦しくなるということだ。
これも私の見立てだが、比例では民主系に入れた人が1万、維新が14000、程度が選挙区では大石に入れているのではないか。よって維新が候補を立てると、単純計算では 大石はかなり苦しくなる。

それに加えて、参政党が候補を出してくることが考えられる。参政党はれいわを狙い撃ちにしているようなところがあるうえに、大阪5区は参政党の本拠地である吹田の隣でもあり、おそらく出してくるのではないか。

詳細は明かせないが、これまでの数年間の分析から、各陣営の努力を考慮せずに、単純な票の流れを考えたときの私の見立ては以下の通り。

20230607-4.jpg
(クリックで拡大)

このままでは、れいわは議席を失う可能性がある。

では、どう努力するべきなのか。
次に挙げるのは、2019年からのれいわ票の動きだ。

20230605-1.jpg
(クリックで拡大)

こちらは右から左に時系列となっている。れいわの比例票の得票率は、2019年から見れば微増しているとは言え、全国平均とほぼ変わらない。(大阪の中では明らかに高い方だが)
現職議員の地元で、なぜ支持が広がっていないのか。私自身の反省も踏まえて、検証してみよう。

地元活動をしてこなかったかというと、必ずしもそうではない。
昨年の3月から5月は、怒濤のような「カジノ住民投票署名」で、れいわはよく奮闘した。事務所スタッフもボランティアも、本当によくがんばったと思う。署名運動の主体となった住民活動家のなかでも、れいわの評価はずいぶん上がったのは間違いない。
ただ、署名運動が終わるやいなや7月の参議院選に向けて走りだすことを余儀なくされ、運動を成果として集約することが十分にできなかった憾みはある。

参院選挙は、残念な結果ではあったが、れいわの知名度を上げるためには役に立ったはずだ。
だが、数字を見ると愕然とする。
2019年参院選の時と比べて、大阪府内の比例票の得票率は全く同じ、数にしてもわずか8%しか増えていない。
参政党に奪われた分を、新たに獲得したとも言えるが、大局的な党の支持というのは、そう簡単に激変するものではないのである。

下記のグラフは、自民党と社会党ができた55年体制以降の、衆議院の議員数の推移だ。ウィキペディアの表をすこし分かりやすく再構成した。

20230607-2.jpg

これを見てわかるのは、各党の議員数が大きく変わるのは、合併や分裂のときだけで、それ以外にはおよそ20%以内の変動に収まっているということだ。
唯一の例外は2009年の政権交代と、それが崩壊した2012年のときだけである。

つまり、有権者は「ちゃんと見て選んでいる」ということだ。
党、Party というのは読んで字のごとく、あるPart(部分)の代表ということ。得票≒議員数その党が言っていることに共感し期待してくれる人の数にほぼ比例している。
社会情勢や党の努力によってもちろん変動するけれども、その幅はほぼ20%以内。一気に何倍にもなるということはない。

唯一例外の2009年はリーマンショックを背景に、民主党が約3倍に、自民党が約1/3になったけれども、その過剰な期待を裏切った民主党は、3年後にわずか1/5以下に激減する。
そして、約2000万人の有権者が、政治に絶望し、選挙に行かなくなってしまった。無関心なのではなく、棄権しているのであり、良い悪いは別にして、これもまた選択なのだ。

特定の政党を大好きな人は、得票が伸びないのは「まだ知られていないからだ」と考えがちだが、実際は必ずしもそうではない。今訴えている内容を支持してくれる人は、これくらいしかいないのである。支持を広げるためには、何を訴えるのか、を考え直さなくてはならない。

こうして見てみると、2022年の参院選で、得票数を8%伸ばしたというのは、結構すごいことだったということがわかる。

問題は、参院選後である。
署名運動と参院選の成果を、組織化という果実に実らせる段階を、どう闘ったか。

れいわは、地方選で組織作りをする、という方針を立てた。
これ自体は、間違いでは無かったと思う。しかし、なかなか思うようには進まなかった。

とくに大阪5区においては、れいわが大阪市議選に公認した予定候補が二人そろって反旗を翻すという事態になった。
詳細は省くが、公認時点であきらかだったことを蒸し返して、恨みつらみをぶちまけて「反れいわ」の尖兵となってしまった。ただ単に、個人的な事情を優先するために責任をれいわに押しつけたのか、もともと候補を引き受けておいて、やり直しがきかない時点で卓袱台返しを狙っていたのか。。。。

とにかく、この事態のおかげで、れいわは最重点区である淀川区と東淀川区で地方選の候補を立てることができなかった。地方選を唯一の方針としていた中では、ほとんど流血の損失といえる。
(あの2人たちは、その流血を見てほくそ笑んでいるのだろうが)

いずれにしても、今言えることは以下のことだ。
まず、一つの政党が独自で伸ばせるのはせいぜい20%程度である。
そして、大阪5区においては独自勢力をつくるための大きな機会損失があった。

ここから導かれるのは、野党共闘しかないだろう、ということだ。

れいわは極端に野党共闘を嫌う。独自性を失って、自死に等しいと思っているのだろう。
しかし、共闘というのは、同じ組織になることでも、ずっと一緒になることでもない。
特定の目的のために、一時的に手を結ぶ契約にすぎない。

それに、れいわはもっと自信を持っていい。
自分たちこそが主流派なんだと胸をはって、共闘の軸になればいいのだ。
共闘したら自分たちが霞むなどと、情けないことは言わないでほしい。

共産党は比例順位をつけるので、惜敗率にかかわらずその順位通りに比例復活する。
つまり、宮本は選挙区に出る必要もなければ、どんな数字でも上がれるときは上がれるのである。

それでもなぜ選挙区に出るかというと、地方選のためだ。
組織の活性化を図って、地方選の票を固めるために、国政に候補者を立てるのである。
2015年までは、そのために全選挙区に候補を立ててきた。

先方の要望が分かれば、交渉の余地はある。
今やるべきは、れいわ大石を大阪5区の野党統一候補にすることだ。

と、私は思うのだけれども、賛同は少なそうだなあ・・・

2023-06-02(Fri)

韓ドラの隆盛と明るくない日本の未来

韓ドラがすごく面白い。

最初は、家族が見ていたラブコメを横から眺めていたのだけれども、なんだか日本のドラマと違うなあ、と思っているうちにどんどん気になりはじめた。
ドラマの要素をいくつか上げるならば、脚本、演出、役者、が3大要素だろう。
そのどれもが、日本のドラマとは大違いなのだ。

そもそも日本のドラマも家族に付き合ってみたくらいで、自分から進んでみたことはほとんど無いけれども、受動的とは言え結構な数のドラマは目にしてきた。
韓ドラの多くはそれらとは、まったく別物。

まず、脚本やストーリー。
何が違うと言って、長さが違う。
日本のドラマは実質40分くらいが10回なので、計400分。
対して韓ドラは、実質60分が(最近多いのは)16回で、計960分。2.4倍である。
ちなみにNHKの朝ドラが実質14分x130回で1820分。

朝ドラの半分もあるものを、わずか2ヶ月で集中して放送される。(韓国は週2放送なので)
しかも、途中にコマーシャルが入らない。(最近は入るケースもあるらしいけど)
めっちゃ濃厚に、小説1冊分くらいの物語が詰め込まれている。

伝統的ラブコメのストーリーは、努力する女性と財閥の御曹司のありえないロマンスみたいな、なんとなくお決まりのパターンがあったのだけれども、最近の作品は、もっと現実的になっている。
多くの作品には、格差社会への問題意識が通奏低音のように埋め込まれている。それがメインテーマではなくても、とってつけた逸話ではなくて、全体を通したサブテーマになっていることが多いように感じる。
もはやシンデレラストーリーが共感されないほどに、韓国での格差は厳しいのだろうと思う。

財閥と庶民の格差だけでなく、正社員と契約社員の格差やインターンの過酷さなど多くの作品で描かれている。
有名どころでは「未生(ミセン)」という作品がある。



もっと極端な格差を正面から描いたのが、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん」
題名からは想像できない物語だった。



どちらも、ドラマなので悲惨な結末ではないけれども、実際にどれほど大変なのか実感する。
韓国の自殺率は10万人あたり25人前後でOECDで最悪。10代~30代が増えているという。


ちょっと韓ドラからは外れるが、こちらのグラフを見ていただきたい

20230602-1.png
(Wikipediaより クリックすると拡大)

韓国の自殺者数が1998年頃から急増しているのがわかる。
1998年に何があったか。アジア通貨危機と、IMFによる支援(支配)である。
(正確には1997年末から)
IMFによる極端な新自由主義と緊縮財政を強いられた。
記事を引用する。


 韓国に乗りこんできたIMFは構造改革と称し、金融、貿易の保護政策をすべて撤廃させました。韓国人は経済の国家主権を失ったと嘆き、日本による植民地化に続く「第2の国恥」と呼んだのです。
 韓国人が失ったのは面子だけではありませんでした。IMFが実施した厳しい緊縮政策で、多くの人が職を失いました。
 経済が回復した後も、企業は非正規職の比率を高めたうえ、正規職に対しても「名誉退職」の名の下、40歳代定年制を導入するなど、厳しい姿勢を維持しました。
 IMF危機を境に韓国経済の国際競争力は格段に高まり、サムスン電子や現代自動車など世界に冠たる企業が登場しました。しかし同時に雇用の不安定、貧富格差など現在、韓国が抱える問題も生んだのです。
(引用以上)

ここから25年を経て、確かに韓国は一人あたりGDPで日本を抜き、大きく経済成長を果たした。
その裏側で、極めて厳しい社会格差が広がっていった。

韓ドラが面白いのは、その社会状況と無縁ではない。
というか、裏表の関係にあると言える。

あまりにも厳しい経済状況のなかで、世界で売れる商品を作る、という執念、根性、情念でもって韓国のエンタメは作られている。ジャニーズと吉本でお茶を濁しておけば、とりあえず日本人は見てくれるという、ふやけた日本の芸能界とは、根本が違う。

K-POPにしても、歌がうまい。数年間の徹底した訓練を勝ち抜かないと、デビューはできないからだ。
日本の自称「アーチスト」のような、音程さえ合わないくせに、格好つけて謳ってる連中は、そもそもデビューさえできない。
もっとも、あまりに厳しいので、K-POPアイドルの自殺者が絶えないのだが。


韓ドラの話に戻ろう。

韓ドラの演出で特徴的なのが、美しい映像と、あるあるの作法である。
ストーリーもさることながら、画面に見入ってしまうのは、どの場面をとっても切り取って壁に貼っておきたいような美しい映像が続いているからだ。
CGで作っている夜景ばかりでなく、場末の路地の場面でも、うまくぼかして色を調整し、光を使って美しい映像にしてしまう。

20230602-2.jpg
(愛と、利と より)

なにやら、使ってるカメラが映画用で、日本のドラマとは別格なのだとか。
だが、たぶん原因はそれだけではない。以下は映画の話だが、ドラマにも同じ流れはあるのでなないだろうか。


こうした変化は、映画業界の労働組合が、スタッフの賃金上昇や保険加入などを要求し続けた結果だと思う。10年ほど前、最低賃金が厳守されるようになったり、時給計算してギャラを払うという方法が登場したりと、試行錯誤を繰り返していった。
大きく変わったのは15年。映画会社は「標準勤労契約書」を交わすことを義務づけられた。製作費をしっかりかけることで視覚的にも見栄えのある映像となり、ヒットにつながってきた。そのためさらに製作費をかけて、さらに見栄えのする映画を製作する流れは加速している。
(略)
疲れきった肉体状態で耐えるのが当たり前だった撮影現場が、今では人間らしい生活を維持しながら撮影を楽しめる環境になり、スタッフの笑顔が格段に増えた。肉体面と精神面の余裕が仕事の効率と柔軟なアイデアにつながり、クオリティー面にもいい影響を与えていると言える。
(引用以上)


韓ドラといえば。というような「あるある」が多い。
それを詰め込んだチャミスル(韓国の緑ボトルの焼酎)のコマーシャルがこちら。



これ以外にも、黒い帽子をかぶったら正体はばれない、とか、河原や橋の上で車で落ち合ったら絶対に敵に見つからない、とか、いろんな「作法」がある。
これらは、「これをやったらこういう意味」というお約束で、細かい話は省くという演出だ。
ただし、メインストリームを追っていくなかで、枝葉まで細かく描いてしまうと分かりにくくなるためだろう。
吉本新喜劇のように一番大事なギャグをお約束でお客さんに笑ってもらうのは論外だが、韓ドラの作法は、慣れてしまえばたしかに集中力が切られることがない。


役者の演技はどうか。
ド素人があれこれ言うのも失礼かも知れないが、韓国の役者には、なにか吹っ切れたものを感じる。
昨年話題になった「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」では、パク・ウンビンが自閉スペクトラム症を持つ天才新人弁護士を演じた。
解釈や演じ方によっては障がい者差別になりかねない難しい役を、かなり悩みながら演じたそうだが、映像を見ると吹っ切れている。



この人の演技を見たくて、1月に入院したときに何本かまとめて見てみたけど、ほんとに何にでもなれるのでは、と感じてしまった。
パク・ウンビンさんに限らず、韓ドラの役者さんは、格好つけずに役にのめり込んでいるように感じる。その辺は、制作側の情念と共通しているのかも知れない。

演技だけでなく、言葉の影響も大きいのだろう。
韓国語は日本語に比べると、極端に短い。
わたし が ネ だし、おなかがすいた が ペゴパヨ だ。
しかも、一気にしゃべるので、同じ意味を半分くらいの時間でしゃべっている。
その分、イントネーションが大事で、機関銃のようでありながら、歌のような抑揚があり、意味はほとんど分からないけれども、聞いていて気持ちが良い。

聞くと言えば、なんといってもOSTだ。
Original Sound Track の略で、挿入歌なのだけれども、もはやBGMの域ではなく、台詞や画面と一体のもうひとつの要素になっている。作品によっては、あたかもミュージカルのように歌詞が語りの役を果たしていることもある。

SONDIA とか イ・スヒョンなど、抜群に歌もうまい。



日本は曲を売るためにドラマとタイアップすることが多いが、韓ドラのOSTはほとんどドラマのために作られてオリジナルだし、OSTがひとつの音楽のジャンルになっているそうだ。
歌については、また気がむいたら、書いてみたい。


先ほどの自殺者数のグラフで、日本は10万人あたり20人未満となっているのだが、実はこれは誤魔化しだという見方が強い。


警察庁の「死体取扱数等の推移」を見ると、「変死体」の数は10年前には1万2747体だったが、一昨年は2万211体と約8000体増えている。比例するように自殺者数はこの10年間で8000人減っているのだ。
(略)
「ひと昔前は自殺に対する考え方も緩く、ある程度は自殺として処理していました。ただ、最近は、遺書などの具体的な証拠がなければ、自殺とは認めず、変死体として処理するようになったそうです。すると、見かけ上の自殺者数が減るだけでなく、司法解剖を行うので予算を要求しやすくなる。一石二鳥なわけです。このようなトリックは『統計の魔術』と呼ばれ、考え出した人が警察内部で出世していく」
(引用以上)

 だとすると、日本の自殺率は韓国を抜いてだんとつ1位だ。
緊縮財政に苦しめられながら、経済成長もできず、本気のもの作りもできない日本。
韓ドラの重苦しい通奏低音は、私たち自身の足下にこそ流れている。


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