ウクライナにとってもロシアにとっても、深刻なダメージとなるカホフカ・ダムを、一体だれが破壊したのか。
こちらの記事が、非常に詳しく報じている。
記事中で橋の中央部が決壊した様子が分かるツイートを紹介している。
6/4の写真で取水口になっているあたりが、決壊後の流れの中心になっている。
さらに、BBCが崩壊する4日前にすでに兆候があったと写真を公開している。
カーブしている部分の橋が4日前に落ちていたと言うのである。ここは上のツイートの写真の取水口の上部に当たる。たしかに、6/4の写真もよく見ると橋がなくなっている。
ところで、同じJSF氏の記事で、昨年11月のものがある
この記事では、昨年11月にウクライナ軍がダムの上にかかる橋を攻撃し、補給のできなくなったロシア軍がダムよりも北西側のヘルソンから撤退したときのことが書かれている。
ウクライナ軍がミサイルでダムの上部の橋を攻撃し、最後にはロシア軍が爆薬で橋を落としてヘルソンからウクライナが追撃してくるのを防いだ。
まず、ウクライナ軍がミサイルを集中させた箇所はこの部分だという。
(JSF氏の記事より引用)
直線の橋の部分は、ダムの真上にあるのでミサイルが貫通するとダムが壊れるが、丸印のとこだけは真下にダムがないので、そこをウクライナのミサイルは集中して狙った、という意味。
中央の丸は、まさに6/2に橋が落ちた箇所であり、ダムが決壊した箇所の直近だ。
そして、ロシア軍がヘルソンから撤退した後に破壊したのはこの部分だという。
この写真は最初のツイッターと方位が反対で、下が北だ。左側の写真の右端で橋がなくなっているので、ロシア軍が橋を爆破したのはウクライナ軍が攻撃した部分とは反対側である。
直下にダムがあるけれども、ミサイルではないのでダムには影響させずに壊したようだ、と書いてある。
以上から分かることは、ウクライナ軍がミサイルを集中させた箇所の直近でダムの崩壊は始まったということと、その部分はロシア軍は11月には橋の爆破をしていない、ということだ。
いくら命中精度の高いミサイルでも、集中的に攻撃したときに橋のカーブの部分は崩壊寸前の状態になり、ダム本体にもダメージを与えていた、と常識的には考えざるを得ない。
損傷を受けたダム本体が徐々にたわみを生じ、弱っていた橋が変形に耐えられずに崩落し、その後にダム本体が決壊した、というのが時系列の写真から推測されることだ。
ロシアは橋の一番ウクライナ側で11月に橋を爆破したので、今回の崩壊地点はロシア側になる。もし人為的な破壊だとすると、大量の爆薬を抱えてウクライナの工作員がどうやって侵入したのかという問題はあるので、ロシア側の疑いが濃くなるが、これも4日前から前兆があったことを考えると、人為的な爆破というのは考えにくい。
現段階で確定はできないが、昨年11月のウクライナ軍によるミサイル攻撃で損傷した箇所が、時間をかけてたわみを増大させ、決壊に至ったのではないか、と私は考える。
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いずれにしても、この被害が甚大なものであり、戦争で苦しめられている国民をさらに追い詰めていることは間違いない。
反転攻勢をさけぶウクライナも、その惨状は一般に報じられいる戦闘の被害にとどまらない。
2022年のGDP(国内総生産)は前年比マイナス30.4%。かろうじて保たれているのは公共輸送機関やライフラインと、食料品店やレストラン、カフェなどの生活まわりのサービス分野ぐらいで、その他は農業を除いてほぼ麻痺状態にあると見てよいだろう。
(引用以上)
一刻も早く停戦、休戦を実現し、昨年だけで1600億ドルにのぼった軍事支援を、すべて生活再建のための支援とすることが求められる。
もっとも、アメリカは軍事費は天井知らずで出すけれども、生活再建には雀の涙しか出さないだろうが。