2011-07-12(Tue)
原発や新エネルギーをめぐる構図を読み解く

原発やいわゆる自然エネルギーについて、誰がどういう立場で、なにを本当に欲しがっているのか、非常にわかりにくくなっているからだ。
最初に一言書いておくと、わかりにくくなっているのは、偶然や結果論ではなく、意図的にわかりにくくされている ということ。
3.11以前のような、「原発推進・自然エネ消極的」VS「反原発・自然エネ積極的」という単純な構図のままでは、本当に原発をなくさなくてはならない。
それを避けるために、わざと混乱させ、「脱原発という名の原発推進」とか、「新エネという名の原発維持」というような、鵺(ヌエ)の連中を大量生産しているのである。
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まず、とっても地味だけれども、このウォールストリートジャーナルの記事から見てみたい。
日本政府、2段階の安全評価を実施―原発再稼働で
2011.7.12 WSJ
(略)
政府の新たな安全評価プログラム実施では、原子力安全・保安院よりも、政府から部分的に独立している内閣府の原子力安全委員会の役割が拡大される。保安院は、福島第1原発事故以降、主導的な役割を果たしてきたが、組織上、経済産業省の一部で、日本の原子力技術の輸出も推進している。
福島第1原発事故についてはこれまで、原子力安全委員会のほうが保安院より率直に事態の深刻さを訴えてきた。保安院のある当局者は「新たな安全評価計画は原子力安全委員会に対する国民の信頼の深さを反映していて、保安院とは対照的だ」と述べた。
(引用以上)
気持ちの悪いくらいの、安全委員ヨイショである。
いったい1億2000万国民のうち、何人が安全委員会を深く信頼しているのだろう。
だいたい、あのデタラメハルキ委員長自身が、「(安全委員会は)運転再開とかそういう話とは無関係」と言い放っているのである。
ここで見ておきたいのは、ウォールストリートジャーナルって何なのかということ。
あのメディア王といわれるルバート・マードックに買収され、紙面構成に至るまで口出しされているという。
ウォール・ストリート・ジャーナル陥落の内幕
マードックは、FOXテレビでイラク戦争を煽ったり、典型的な戦争好きであり、アメリカ産軍複合体とほぼ立場を同じくしていると思われる。親イスラエルとも言われる。
ありもしない安全委員会への国民の深い信頼を褒め称えると言うことは、とりもなおさず経産省(保安院)を排除しようということだ。
日本に大きな影響力を行使し、実質的に支配しているアメリカの利権集団(ジャパンハンドラーズ)は、アメリカの中でも産軍複合体の流れにあると言われる。
オバマが進めたがっている、世界に展開する米軍を縮小し、各国からカネを巻き上げて経済の立て直しをしようという流れとは異なる。
アメリカの産軍複合体や親イスラエルをバックにする勢力は、日本の経産省を排除するために、内閣府の安全委員会をヨイショしているということを、まず押さえておきたい。

副島隆彦氏によれば、震災直後から官邸にIAEAのアメリカ人高官が常駐しているという。
複数のそれらしい証言もあり、また、実際そうであってもまったく不思議ではない。
そうであれば、菅直人の暴走とも言えるこの4ヶ月間の言動は、実はアメリカの指示であったと見ることが妥当だ。
3.11までは、増税とTPPという、日本のサイフをアメリカに差し出す準備に夢中だった菅直人が、一転して脱原発かのようなポーズを取り、エネルギー問題が最重要課題だと言い出したのも、アメリカの指示であったという可能性が高い。
そして、旧来の原発利権の総本山である経産省を排除し、官邸主導で「新エネルギー政策」を進めだした。
これには、大きく三つの意味があると思われる。
ひとつは、日本国原子力村の住人は、あまりにも洗脳されすぎてしまって、自分たち自身が「原発は安全」と信じている節がある。麻薬を売っている売人が、自分で中毒になってしまうようなものだ。
だから、福島の深刻さを、専門家と言われる原子力村の住人は、いまだに理解できていないようだ。
脳の入り口で、原発を否定する情報を自動的にシャットアウトしてしまうので、いくら専門知識があっても、どんなに悲惨な現実が目の前にあっても、それを理解することができない。
しかし、シャブ中の売人は早晩使い物にならなくなる。
いま、経産省をはじめとする原子力村民は、その段階に来ている。
一刻でも早く収束させたい、危険を回避したい住民の立場からも、もちろん原子力村の村民たちは百害あって一利無しであるが、実は、反対の立場からのそうなのである。
つまり、福島を冷酷に食い物にしようとしている日米利権集団から見ても、事態の後追いすら満足にできない「専門家」など、邪魔者以外の何者でもない。
少なくとも、危機は危機と、危険は危険と自覚できているものでないと、どんな立場であったとしても、役立たずなのである。
そこで、経産省・保安院を排除して、アメリカ直轄の首相官邸・安全委員会のサイドで仕切ることにした。
保安院のシンボルだった西山審議官の、女性問題のスキャンダルが流出したのも、その流れにある。

「安心なんかできるわけないじゃないですか。あんな不気味なもの」
大失言!【原発儲かる】原子力安全委員長 【最後は金】2005年班目
だったら止めろよ! と言いたいのは私だけじゃない。
無茶苦茶な御仁だ。
危険を承知で国民に押しつける確信犯だ。
福島の事故を奇貨として、徹底的に食い物にしてやろうと企む日米利権集団は、こういう確信犯を求めている。
■■
経産省が排除される理由の二つ目は、「新エネルギー問題」を焦眉の課題かのように祭り上げるためだ。
そのためには、ニセ脱原発のポーズを取る必要があり、既存の原発利権を仮想的にする必要がある。
海江田と経産省を生贄にして、菅直人が脱原発のポーズを取ってきたのは周知の通り。
玄海原発の再開問題など、典型的だ。
では、なんで「新エネルギー問題」が新たな利権になるのかというと、これもいくつかの理由があって、
① 太陽光発電など、「新エネ」自体があらたな産業であり、利権になる
② 新エネはむしろ口実で、実はスマートグリッドのほうが儲かる
③ 原発を維持するためには、新エネで国民を欺く必要がある
など、新エネルギー問題を菅直人が声高に語るのは、こうした裏があるのである。
■■
日米利権集団が経産省を排除する理由のみっつめは、実はこれが最大の理由だと私は睨んでいるのだが、本来ならば復興問題が最大最高の課題なのに、そこから国民の目をそらし、利権集団が好き勝手できるようにするため。
「新エネルギー問題」と裏表の関係でもある。
考えずとも分かる話だが、今日本で第一級の政治課題は、被災地の救済・復旧・復興だ。
ところが、復興構想会議とか言う、恐ろしくお粗末な会議が有名人の顔だけ並べて井戸端会議を繰り広げ、挙げ句の果てに抽象的な言葉を並べて終わってしまった。
復興の問題は、住民自治の問題でもあり、かつ、何十兆円という税金を投入する国民全体の問題だ。
生きる死ぬかの瀬戸際の問題でもあり、日本という国の将来のあり方を真剣に考える機会でもある。
戦後に憲法や日本のあり方をめぐって、百家争鳴、喧々がくがくの議論が通津浦々であったように、復興については被災者が中心となって、しかし、日本中で大議論があってあたりまえの問題のはずだ。
ところが、日本中どころか、被災者自身にすら考える機会すら与えられない。
宮城県の復興計画 野村総研が全面関与 知事「地元の人 入れない」

ちなみに、宮城県震災復興会議の議長は、「新エネ利権」を代表する三菱総研理事長の小宮山宏だという。
村井のお許しを得て新復興大臣になった は、さっそく
復興相、水産特区を支持
こうして、漁民や地元住民の意見を踏みつぶし、日米利権集団は好き放題を進めている。
こうしたときに、全国が被災地に注目し続け、被災地の明日を自分たちの将来と思って、真剣に議論したらどうなるか。
村井を筆頭に、ジャパンハンドラーズが雁首そろえて利権あさりに励んでいるのが、丸わかりになってしまう。
被災地の復興問題は、こっそりと、誰の目にも触れないように進めたいのである。
不器用にも、そこに切り込もうとした松本ドラゴンは、一瞬で返り討ちにされ、切り捨てられてしまった。
次に来るのは、9.11岩手県知事選だ。
日米利権集団は、強力な対抗馬をたて、謀略のかぎりを尽くして小沢氏の側近でもある達増知事を葬り去ろうとしてくるだろう。
これらの親玉がこの人
内なる力、結集を
米戦略国際問題研究所上級顧問・日本部長 マイケル・グリーン氏
2011.6.22 日経新聞
ここで書かれている言葉をピックアップすると

今回の危機をきっかけに、明確なビジョンを示し、総選挙で国民に信を問うことで自らの政治生命を賭すことを厭わない、勇敢なリーダーが現れること
税の優遇措置や新たな情報技術(IT)インフラへの投資を通じ、海外直接投資を呼び込める
自衛隊は国際平和に貢献し、米国やオーストラリア、インドなどと協力して日本の海洋権益を守るという、これまでよりも大きな役割を担う
国内での原子力発電への信頼を回復する
などなど
経団連側の記事
CSISとの懇談会開催
そうしたマイケル・グリーンやアーミテージや経団連の動きの一切合切を、国民の目にできるだけ触れさせないようにするための煙幕が、菅直人のニセ脱原発であり、「新エネルギー問題」なのである。
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日米利権集団が、既存の原発利権派をいったん排除する理由の最後は、核処分場問題だ。
これまで、核廃棄物の最終処分場は、世界中に一つもなかった。
現在、フィンランドのオンカロに一つだけ作られている。
日本でも、もちろん不断の「努力」で処分場探しは続けられてきた。

あと10年以内には、処分地を決定するつもりらしい。
しかし、これまでの原発利権派の「努力」は、かの斑目氏が言うとおり、「最後はカネでしょ」だった。
目がくらむほどのカネを出せば、田舎の人間は落ちる という侮辱的な思想で、処分場探しを行ってきた。
ところが、いくらなんでも、なんぼなんでも、何十年何百年と高レベルの放射能を抱いて生きることは、世界中の人びとが拒否し続けてきたのである。
原発を受け入れている村や町であっても、さすがに最終処分場だけは受け入れOKにならない。
数々の候補地が、浮かんでは消え、浮かんでは消えしてきた。
これも、シャブ中ではない冷静な原子力推進派は、ものすごく深刻に考えていたはずだ。
当然のように、いやでも処分場になるような仕掛けを、つくっていたとしても 驚くに当たらない。
原発推進の正体は「日本列島を核の墓場にする計画」だったのではないか(2011.4.1)
「フクシマを核処分場にする計画」を改めて検証してみる(2011.6.21)
どちらも長い記事だが、まだ読んでいない人は、ぜひとも目を通していただきたい。
(自画自賛になってしまうが、処分場に関することは、これ以上のことを書いた文章はあまりないと思う。)
いよいよ、長年の宿願だった処分場計画が発動したいま、税金垂れ流すしか能のないシャブ中の原発推進派はお払い箱だ。
より冷酷な、確信犯の新たな原発利権集団が、仕切ることになる。
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菅直人が脱原発ポーズを取り、孫正義や飯田哲也が「新エネルギー」を叫ぶ裏には、こうしたことが流れていることを知っておくべきだ。

肝心なことはアイマイにして、後から逃げが効くようにしてある。
さすがである。
飯田氏などは、条件さえ揃えば、あの破綻した核燃料サイクルですら認めるというのである。
いったいどこが「脱原発」なのか。
原発の急速な縮小は不可避 今、大胆なエネルギーシフトをめざす理由
こうしたオイシイ立ち位置が創造され、多くの政治家もこぞってこのへんに駆け込んでいる。
カッコだけ脱原発が急増中。
被災地の復興も、即時の原発停止も、全ての廃炉も言わずに、エネルギーシフトだけを言う連中は、一人残らずこの類だ。
2020年になっても、同じことを言い続けていれば少しは認めても良いと思うが、残念ながら、2020年には全量買取制度FITは破綻する。
フルコースで進むならば、発電事業と、さらに巨額の費用がかかるスマートグリッドに、100兆円規模の投資がされる。
その費用は、サーチャージとして、もれなく国民のサイフから強制的に徴収される。
GDPの20%にもおよぶカネが、国民の懐から消えるのである。
エネルギーは再生可能かもしれないが、それを電気に変換するための国民の費用負担は、再生不能に陥る。
絞れるだけ搾り取って、「やはり再生エネでは代替できないので、新しくて安全な原発を作りましょう」と言い出すのが、2020年という年になるだろう。
今必要なことは、エネシフでも新エネでもなく、被災地の復旧・復興であり、全原発の即時停止・全基廃炉だ。
もう騙されるのはやめよう。
自分たちの足で歩こう。
自分たちの頭で考えよう。
生き方を、暮らし方を。
■■まいど 記事とは関係ないけど お知らせです
7月24日(日)に、大阪府豊能町で「構造見学会」を行います
南海・東南海地震も心配される昨今、明月社の家が、どんな耐震設計をしているのか、他とどう違うのか、実際に見てもらえます。
興味のある方は、 info@mei-getsu.com (明月社・山岸) まで連絡いただければ、詳細をお送りします。
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