2011-10-29(Sat)

「食べ物から放射能100mSv」って安全???【追記あり】

食品安全委員会なるところが、食品からの放射能は生涯累計で100mSv以下にすべき と言い出したらしい。

食品からの被曝「生涯100ミリシーベルト」安全委答申
2011.10.27 朝日

こうした新聞記事を読むと、まるで生涯に100mSvまでは安全だと 食品安全委員会が言っているように見える。
たとえば、こんな書き方だ。

「生涯累積100ミリシーベルト」(原発事故由来ではない自然放射線などを除く)は、新たな正式基準をつくる根拠になる。」

■■100mSv以下は安全 なんてどこにも書いてない

しかし、当の安全委員会は、じつはそんなこと言っていない。ずる賢く逃げ回っているだけで、どこまでが安全とか、基準値がいくらなんて、全く言っていない。

食品に含まれる放射性物質の食品健康影響評価について


この委員長談話の中では、冒頭に
「年間何mSvまでは安全」と言った明確な線を引いたものにはなりませんでした
とある。

また、100mSvという数字についても
放射線による健康への影響が見いだされるのは、およそ100mSv以上
とか
100mSv未満の健康影響について言及することは困難
などと言っている。

つまり、100mSv以上は明らかに影響があるが、未満については わかりましぇ~ん ということだ。
安全だとか影響がないなどとは、決して言っていない。

■■外部被曝とは別枠で内部被曝100mSv なんてどこにも書いていない

内部被曝についても、新聞の見出しを見ていると、外部被曝とは別に、内部被曝だけの許容量が100mSvかのように見える

内部被曝「生涯100ミリシーベルト」が目安 食品安全委が答申

2011.10.27 日経

しかしこれも、委員長談話をよく見れば、外部被曝については わしゃしらん と言っているに過ぎない。他のところで別に検討してよ と言っているのであって、外部被曝もしたうえに、プラスして内部被曝が100mSvまでOKよ なんて全く言っていない。

■■内部被曝も外部被曝も影響は同じ なんてどこにも書いていない

さらに、上記の日経の記事には見過ごしがたいことが書いてある

「人体への影響は外部被曝も内部被曝も同じ」としたうえで(以下略)

この台詞は、委員長談話の中には見当たらない。
どちらも人体に影響があるという点では同じかもしれないが、影響の質は全くちがう。

後から書くように、①持続性という意味と、②アルファ線やガンマ線の影響という意味で、外部被曝と内部被曝はまったく別物だ。低線量の場合、内部被曝は外部よりもずっと怖い。
それを、まるで内部も外部も同じような影響かのような印象付けを新聞は行う。

委員長談話の最後には、またまた100mSvという数字について、「おおよその値だ」「閾値(いきち)ではない」と言い訳を並べている。
要するに、食品安全委員会が鳴り物入りで発表したことは、「生涯で100mSvとを超えると、健康に影響が出る可能性がある。」ということだけであり、それ以外の言葉は、すべて言い訳と責任逃れに終始している。
いやほんとうに、大げさではなくそうなのだ。

こうした、ほとんど何もいっていないに等しい食品安全委員会の発表を、マスメディアは意図的に拡大解釈、あるいはわざと誤解を与えるような書き方をして、まるで
「内部被曝は外部被曝と別枠で、生涯100mSvまで安全だ。その影響は外部被曝と同じだ。」
と思わせようとしている。

■■内部被曝は外部被曝よりも、桁違いに深刻

すでに見られた方も多いかもしれないが、琉球大学の矢ヶ崎克馬先生の小論を紹介したい。

内部被曝についての考察

先生は3.11以降も精力的に発表をされているが、内部被曝についての系統的な説明は、少し古いけれどもこちらがわかりやすいように思った。

詳細は読んでいただくとして、この中から、一目でわかる内部被曝というような図表を引用させてもらう。


ほとんど説明の必要もない。外部被曝の場合は、ガンマ線がまばらに体を突き抜けていく。その際に細胞を傷つける。アルファ線やガンマ線は、体まで届かないので、影響はほとんどない。

内部被曝は、ガンマ線もあるけれども、それ以上にアルファ線やベータ線の影響が大きい。なにせ体の細胞に密着しているので、いかに影響範囲の狭いアルファ線やガンマ線でも届いてしまうのだ。

でも、こんなに弱っちいアルファやベータなんて、大したことないだろうとおもったら大間違い。狭いということは、めっちゃ濃いということ。
変なたとえで恐縮だが、体中のあちこちを10カ所ほど蚊にかまれるのと、鼻の頭だけ10匹集中してかまれるのの違いというか。

同じシーベルトであれば、アルファ線であれば10億倍も細胞を傷つける密度が濃い。40μmで10億だから、10mmに影響するベータの場合は64倍ということになる。
キズ1カ所の酷さを考えると、アルファ線は外部被曝の場合の10億倍、ベータ線でも64倍ということ。

小論の中の図では、以下のように説明している。

だから、内部被曝は怖いのである。
とくに、アルファ線を出すウランやプルトニウムは、ガンになる確率が桁桁違いに高い。
ベータ線を出す、セシウムやストロンチウムも、ガンマ線で被爆する外部被曝と比べると、ずっとずっと危ないのである。

※アルファ線について誤解を呼ぶという指摘があったので追記。
プルトニウムやウランの粒子から出るアルファ線は、40ミクロンしか飛ばない。けれども、プルトやウランの粒子自体は、場合によっては地球を回るくらい飛ぶ。今回も、少なくとも45kmは飛んでいる。
その違いは、ご理解あれ

■■「100mSv」を根拠につくられる食品新基準とは

こんなに危険な内部被曝を、外部被曝と同じ影響だとして、食品安全委員会ですら言っていない「生涯100mSvまでは大丈夫」というデマを根拠にして、食品の基準値を決めようとしている。

これまで、年間5mSvまではOKという考え方で暫定基準値が決められてきた。
あの500Bq/kgというやつだ。

世界最高、金メダルもののありがたい暫定基準値を、厚労省はようやく見直すという。
その際の根拠が、冒頭から議論している食品安全委員会の「100mSv」なのである。

今度は、暫定ではないので、一度決められたら、今後の日本の食べ物はずーとこの基準までは放射能OKになる。
具体的には、生涯100mSvだから、年に1mSvという話らしい。
暫定基準の1/5だから、100Bq/kg、水と牛乳は40Bq/kg ということなのだろう。

では、実際に基準ぎりぎりの食事を続けたら、どのくらいの内部被曝になるのか、考えてみたい。
最初に、日本人がどのくらい食事をするのかというと、


(ひとり一日あたりの食事の内訳 農水省HPより

牛乳以外が1125g、牛乳が254g である。
さらに、水が約2000gほどあるはず。

従って、(100x1.125+40x2.254)x365=56485Bq/年 ということになる。

では、5万6千ベクレルあまりの放射性物質を食べたとして、それがどのくらいの内部被曝になるのか。
実際は、食べた物質は徐々に減りながら何年も被爆し続ける。と同時に、新たな食べ物(放射能)が入ってくる。だから、非常に複雑な計算になるのだけれども、通常は「預託実効線量」という考え方で、単純化することになっているようだ。




日本分析センター HPより

ようするに、その年に食べた分はその年に被爆すると見なすわけだ。

さらに、放射性物質とっても、いろいろある。
ただ、今のところ大きいのはセシウム134と137だろう。

134は半減期が2年なので今後は減っていくかもしれないが、137は当分減らない。
また、ストロンチウム90も横浜で派遣されているくらいだから、ホウボウに飛び散っているはずだが、今のところ絶対量は少なそうだ。
ただし、ストロンチウムは、この後にかくように、体から出ていってくれないという、ひじょーに困った性質がある。

とりあえず、現時点では食品中の放射性物質はセシウム134と137が半分ずつということにする。
ICRPが、食べてしまった放射性物質の量と内部被曝の量の換算式というのを作っていて、それによると、セシウム134の場合、1ベクレルに付き1.9x0.01μSv。セシウム137の場合、1ベクレルに付き1.3x0.01μSv。

だから、先ほど計算した56485Bqならば、
56485x(1.9+1.3)/2x0.01=904μSv≒0.9mSv
というわけで、めでたく1mSvにおさまるということに相成る。

■■同じ場所が ずーと被爆し続けるということ

ああよかった、1mSvでおさまるやんか と安心するのはまだはやい。
たしかに、全食品が基準ギリギリである可能性は低いし、ぎりぎりであっても年に1mSv以下になることはわかった。
しかし、仮にこれの数分の一の内部被曝であっても、これで安心だ、安全だ なんて誰も補償してくれない。

先にも書いたように、食品安全委員会だって、100mSv以下については、知りません 関知しません、と言っているのだ。
しつこいようだけれども、安全だ なんて一言半句も言っていない。
マスメディアが、そういう風に誤解させよう必死こいているだけだ。

先ほどの矢ヶ崎先生の論文を思い出していただきたい。
セシウムが出すベータ線は、半径1センチのボール状の範囲に全て吸収される。その範囲の細胞を、集中的に傷つける。
物質の半減期だけでなく、体内から排出されて減っていくぶんもあるので、セシウム134で約70日、セシウム137で約半年くらいと言われている。あくまでも、半減であって無くなるわけではない。

そのくらいの期間、同じ1センチ四方くらいの箇所が昼も夜も、ずーーーーと集中的に細胞を傷つけ続ける。
つまり、内部被曝は、何シーベルトという数字も重要だけれども、長い時間一カ所に放射性物質がとどまり続けるということが問題のように思える。

修復しても壊され、修復しても壊され、ということを何年も続けていたら、いつか修復し間違え=ガンが発生してもおかしくない。
その意味で、横浜で発見されたストロンチウム90は、半減期が29年。体内から半分が排出されるのに、じつに50年かかる。

何ベクレルとか何シーベルトとか言う数字以上に、ストロンチウムが体内に吸収されるということ自体が、大問題であるということがわかる。

よく知られているように、ストロンチウムはカルシウムに似ていて、骨に吸収される。だから、なかなか排出されないわけだ。
量が少ないからと安心せずに、ストロンチウムのあるなしは、厳しくチェックしなければならない。
同時に、予防策として、カルシウム不足にならないようにすることも大事。

■■プルト君のゆくえ

セシウムやストロンチウムは、ベータ線の話だった。

プルトニウムは、アルファ線を出す。
このプルトニウムが、45キロ離れた飯舘村で発見されている。

プルトニウム、ストロンチウムの核種分析の結果について

プルトは重くて飛ばない、などとたわけたことを言っていた御用学者のいい加減さが実証された。

アルファ線は、ベータ線よりも150万倍も濃い。集中的に細胞を傷つける。
生物学的半減期も、骨で50年、肝臓で20年と言われている。
とくに、ホコリになって呼吸で吸い込むのがよろしくないらしい。

こいつは、ベクレルとかシーベルトとかいう話ではなく、体内に入ったか入らないか、オールオアナッシングの構えが必要だ。

文科省も新聞も、過去の核実験やチェルノブイリでばらまかれたものと比べて、そんなに多くない、みたいな言い方で、大丈夫大丈夫を繰り返している。
しかし、矢ヶ崎先生の小論でも、地上核実験やチェルノブイリで飛ばされたプルトニウムによる影響が書かれている。

過去のプルトより多くないから大丈夫なのではなくて、過去のプルトも大丈夫じゃなくて、さらにフレッシュプルトが追加されたのだ。
プルトだけは、ほんの少しでもあってはいけないのだ。

■■もっと いかりを

「脱原発」福島の女性ら660人 経産省前で座り込み



子どもたちを守れるのは、大人しかいない。

チェルノブイリの悲惨な教訓から目をそらしている場合じゃない。

食べ物を、飲み水を、子どもを守りたい

原発は今すぐ止めるべし
それがいやな連中は、核廃棄物を全部引き受けてくれ


<追記> 3.11前の食事の放射能

3.11前には、普通の食事から1年間にどのくらい放射能を受けていたのか、日本分析センターが測定している。

日常食から受ける放射線量

これによると セシウム137は 0.00023mSv 

新基準は、3.11前の平均の じつに4300倍以上なのである




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うーん、待てよ
書いてて思ったが
アルファ粒子は、飛距離よりも、
平均時間何秒で、空気中から電子を獲得し、無害なヘリウム4に変わる、
これを示すべきではなかろうか。
それとも空気中にわずかに含まれるNの2価の陰イオンやOの2価の陰イオンと結びつきHeNやHeOになると言うことか?このあたり説明してほしいな。

生体内では、電子を獲得するより先に、
細胞内小器官やdnaを傷つけるのが問題だと思う。

そして、しまいに、ヘリウム化炭化水素とか、妙な化合物を作ることになるのか?
その辺りまで、教えてくれるとより理解が深まるのではないか。

そして、アルファ粒子はヘリウムになるから安全と言うのではなく、
アルファ粒子という微小レールガンを何十年も撃ち続ける放射性物質の恐ろしさをより啓発すべきだろう。

今回のスレは、有意義だった。
それぞれの放射線がどのくらい飛ぶか、権威者による二次情報で、わかりやすい。
君たちは前から知っていたのだろうが、私はこれほど明快なものは初めて見た。
B層にとっても、よい教科書となるだろう。

しかしながら、アルファ線については疑義がある。
たしかに、アルファ線自体は、図の通りの距離飛ぶのだろう。
しかし、これは、アルファ線は飛ばない、と言っているに等しい。
そしてそれが、数々の誤解を生み出しているように思う。

福島由来のプルトニウムのごくごくわずかのものが北米に達していると聞く。超極微量だが検出されていると。

それはすなわち、アルファ線も北米に達すると言うのと同義である。

アルファ線、というが、アルファ粒子といったほうが正しくないか。

プルトニウムのような重い原子でも、超極微量が北米に届くなら、アルファ粒子が届かないわけがなかろう。
ただ、アルファ粒子はいろんな物質から出ているので、福島のものであると断定できないだけなのだ。
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