2012-04-07(Sat)
天の恵みを使う家
今日は家の話
先日からチラチラと書いていたように、大阪の堺市で工事中の「天の恵を使う家」がまもなく竣工します。
ついては、完成見学会を行いますので、興味のある方は家の立てる予定のある人もない人も、どうぞ見に来て下さい。同業者の方も歓迎します。

4月22日(日) 10:30
4月29日(日) 11:00
〃 13:30
いずれかの時間におこし下さい。所要時間は毎回1~1.5時間程度です。
なお、22日は若干工事中の部分が残っていると思います。
申込は、左サイドのメールボックス「明月社へのご連絡」からお願いします。
詳しい場所などをお送りします。
■■
さて、一体何が「天の恵み」なのか、少し書いておきたい。
天から降りてくるものと言えば、やはりお日様と雨だ。
それに、空そのもの。
それらを、できるだけ効率的に、人様に迷惑かけずに活用しようという試み。
この家は、住まれる方がこうしたことにとても積極的に関心を持っておられたので、いろいろと提案して採用していただいた。
まずはお日様から。
最初に言っておくと、この家に太陽光発電は ない。
理由はハッキリしていて、太陽光発電はまだペイできるレベルに達していないから。
巨額の税金と太陽光発電促進付加金というほぼ全国民から強制徴収したオカネを投入して、どうにか採算がとれるようにしているのであって、太陽光発電だけではまったくの贅沢品である。
詳しくは以前の記事に書いたので、「太陽光発電を使わないとはけしからん!」と思われる方は、ぜひ読んでみていただきたい
太陽光発電の怪
脱原発の家づくり 太陽光発電は救世主か?
太陽光発電は1/6のコストになるか
とは言え、太陽光発電を取り付けてはいけないのかといえば、そこまで言うつもりはないが、同じ太陽光の装置をつけるのであれば、だんぜん太陽熱温水のほうをお勧めする。

少し前に○○ソーラーという会社が強引な営業をやらかして、いたく不評を買ってしまったソーラー温水だが、これはその会社が悪いのであって技術が悪いのではない。むしろ、この技術を貶めるために、ことさらに○○ソーラーの悪行がクローズアップされたような形跡もある。
とにかく、この装置はエネルギー効率が断然いい。太陽光の50%くらいを熱エネルギーとして活用できる。太陽光発電は変換効率が半分以下である上に、電気を熱に変換する際にまた大きな無駄が出るから、まったく比較にならない。
各部屋に光が入るようにして、かつ照明をできるだけLEDにする。暖房は太陽熱温水床暖房。大型テレビは置かない。もちろん、IHクッキングヒーターなんて使わない。真冬以外は暖房便座をオフにする。
できるだけ電気使用を減らし、太陽熱温水で足りない分だけをガスで補う。
薪ストーブも良い選択肢だけれども、こちらの家の場合は施主さんの生活パターンが薪ストーブには合わなかったので採用していない。
■■
太陽の次は雨である。
雨水タンクは安価でもあり、最近設計した家にはほとんど取り付けている。
タンクの下の方に蛇口が付いていて、じょうろに汲んで庭や菜園の散水に利用している。
この家にもその機能はついているが、実はもっとパワーアップしている。
タンクの横に小さなポンプをつけて、トイレと屋上に送っている。
屋上庭園の芝生に自動灌水するのと、トイレを流すのに雨水を使ってるのである。
水道代がもったいないということもあるけれども、水が豊富なように見える日本でも、実は真水は貴重なのだと言うことを意識できるというメリットもある。
水問題は大きな問題で、砂漠化はオンダンカなどよりも急激で深刻な問題になっている。日本だって、食料という形で実は膨大な水を輸入しており、水の自給なんてぜんぜんできていない。
砂漠化については
私が国産の木材を使う理由
もっとも、小さいとは言え電動ポンプを使っているので、停電や故障するとトイレが使えなくなってしまう。これは困るので、そんなときは便器に座ったままでも上水に切り替えができるようになっている。
■■
もうひとつ、この家の目玉とも言える雨水利用装置が付いている。
それが、壁面冷房
と言うと大層だが、じつは外壁面に雨水をポチポチ垂らして、気化熱で冷やすという仕組み。
壁面打ち水といった方が正確かも知れない。
西日の当たる大きな壁面の一番上に特殊なホースが付いていて、そこから雨水をタラタラと落とすのである。さて、どのくらいの効果が出るかは、この夏にデータを取らせてもらおうと思っている。
気化熱はびっくりするぐらい大きなエネルギーなので、一定の効果は確実にあるはずだ。
気化熱がどのくらい大きいかというと、仮に完全断熱された6畳の部屋があるとすると、その中で10ccの水が蒸発すると、部屋の気温が約1℃下がるという計算になる。
この外壁冷房は、壁面に水を染みこませるのがミソなので、全然染みこまないサイディングなどの今時の壁では効き目が弱い。また、染みこみすぎるモルタル壁では多用するとメンテナンス上の問題があるかも知れない。
それに、水の染みた範囲と染みてない範囲では色が少し変わるので、見た目をあまり気にする方には向かない。
そんなことよりも、天の恵みを使っていることに喜びを感じる人にお勧めしたい。
■■
天の恵みの太陽と雨の両方を使うのが、屋上庭園。
屋根の半分を平らな屋上にして、芝生を貼っている。今時は屋上庭園の技術も進んでおり、安心して使うことができるようになった。
屋上緑化も、きわめて断熱効果が大きく、気化熱による冷却効果も期待できる。
これも、緑化している下の部屋と、通常の屋根の下の部屋でデータ取りをさせてもらうつもり。
(通常屋根の下は、天井を高くして熱気を少しでも遠ざけるようにしているが)
屋上庭園は、こうした熱環境だけでなく、空そのものを楽しむという余録もついてくる。
とにかく、気持ちいい。
適度な手摺り高さにすることで、近隣との相互のプライバシーも守られ、望遠鏡を据えれば夜の空も楽しむことができる。
ちなみに、補助金はなくてもやる価値のある屋上緑化だが、堺市の場合は施工費の50%が補助された。やってみたい方は、自治体に問い合わせてみるといいと思う。
■■
と、自然エネルギーのことばかり書いたけれども、家そのものも吉野杉をふんだんに使った、なかなか見応えのある家に仕上がったと思っている。
工務店も大工さんや職人さんたちも、良いものにしようという気持ちを持って取り組んでくれたので、現場に行くと「良い気」が満ちている。
ぜひとも、見学会に来てみて下さい
申し込みは、このブログの左サイドにあるメールボックス「明月社へのご連絡」からお願いします。
また、明月社については、右サイドのバナーからHPへリンクしています
日程は
4月22日(日) 10:30 (若干工事中の部分あり)
4月29日(日) 11:00
〃 13:30
原発のない社会にむけた小さい実践として、賛否両論に評価していただければ幸いです


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先日からチラチラと書いていたように、大阪の堺市で工事中の「天の恵を使う家」がまもなく竣工します。
ついては、完成見学会を行いますので、興味のある方は家の立てる予定のある人もない人も、どうぞ見に来て下さい。同業者の方も歓迎します。

4月22日(日) 10:30
4月29日(日) 11:00
〃 13:30
いずれかの時間におこし下さい。所要時間は毎回1~1.5時間程度です。
なお、22日は若干工事中の部分が残っていると思います。
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詳しい場所などをお送りします。
■■
さて、一体何が「天の恵み」なのか、少し書いておきたい。
天から降りてくるものと言えば、やはりお日様と雨だ。
それに、空そのもの。
それらを、できるだけ効率的に、人様に迷惑かけずに活用しようという試み。
この家は、住まれる方がこうしたことにとても積極的に関心を持っておられたので、いろいろと提案して採用していただいた。
まずはお日様から。
最初に言っておくと、この家に太陽光発電は ない。
理由はハッキリしていて、太陽光発電はまだペイできるレベルに達していないから。
巨額の税金と太陽光発電促進付加金というほぼ全国民から強制徴収したオカネを投入して、どうにか採算がとれるようにしているのであって、太陽光発電だけではまったくの贅沢品である。
詳しくは以前の記事に書いたので、「太陽光発電を使わないとはけしからん!」と思われる方は、ぜひ読んでみていただきたい
太陽光発電の怪
脱原発の家づくり 太陽光発電は救世主か?
太陽光発電は1/6のコストになるか
とは言え、太陽光発電を取り付けてはいけないのかといえば、そこまで言うつもりはないが、同じ太陽光の装置をつけるのであれば、だんぜん太陽熱温水のほうをお勧めする。

少し前に○○ソーラーという会社が強引な営業をやらかして、いたく不評を買ってしまったソーラー温水だが、これはその会社が悪いのであって技術が悪いのではない。むしろ、この技術を貶めるために、ことさらに○○ソーラーの悪行がクローズアップされたような形跡もある。
とにかく、この装置はエネルギー効率が断然いい。太陽光の50%くらいを熱エネルギーとして活用できる。太陽光発電は変換効率が半分以下である上に、電気を熱に変換する際にまた大きな無駄が出るから、まったく比較にならない。
各部屋に光が入るようにして、かつ照明をできるだけLEDにする。暖房は太陽熱温水床暖房。大型テレビは置かない。もちろん、IHクッキングヒーターなんて使わない。真冬以外は暖房便座をオフにする。
できるだけ電気使用を減らし、太陽熱温水で足りない分だけをガスで補う。
薪ストーブも良い選択肢だけれども、こちらの家の場合は施主さんの生活パターンが薪ストーブには合わなかったので採用していない。
■■
太陽の次は雨である。
雨水タンクは安価でもあり、最近設計した家にはほとんど取り付けている。
タンクの下の方に蛇口が付いていて、じょうろに汲んで庭や菜園の散水に利用している。
この家にもその機能はついているが、実はもっとパワーアップしている。
タンクの横に小さなポンプをつけて、トイレと屋上に送っている。
屋上庭園の芝生に自動灌水するのと、トイレを流すのに雨水を使ってるのである。
水道代がもったいないということもあるけれども、水が豊富なように見える日本でも、実は真水は貴重なのだと言うことを意識できるというメリットもある。
水問題は大きな問題で、砂漠化はオンダンカなどよりも急激で深刻な問題になっている。日本だって、食料という形で実は膨大な水を輸入しており、水の自給なんてぜんぜんできていない。
砂漠化については
私が国産の木材を使う理由
もっとも、小さいとは言え電動ポンプを使っているので、停電や故障するとトイレが使えなくなってしまう。これは困るので、そんなときは便器に座ったままでも上水に切り替えができるようになっている。
■■
もうひとつ、この家の目玉とも言える雨水利用装置が付いている。
それが、壁面冷房
と言うと大層だが、じつは外壁面に雨水をポチポチ垂らして、気化熱で冷やすという仕組み。
壁面打ち水といった方が正確かも知れない。
西日の当たる大きな壁面の一番上に特殊なホースが付いていて、そこから雨水をタラタラと落とすのである。さて、どのくらいの効果が出るかは、この夏にデータを取らせてもらおうと思っている。
気化熱はびっくりするぐらい大きなエネルギーなので、一定の効果は確実にあるはずだ。
気化熱がどのくらい大きいかというと、仮に完全断熱された6畳の部屋があるとすると、その中で10ccの水が蒸発すると、部屋の気温が約1℃下がるという計算になる。
この外壁冷房は、壁面に水を染みこませるのがミソなので、全然染みこまないサイディングなどの今時の壁では効き目が弱い。また、染みこみすぎるモルタル壁では多用するとメンテナンス上の問題があるかも知れない。
それに、水の染みた範囲と染みてない範囲では色が少し変わるので、見た目をあまり気にする方には向かない。
そんなことよりも、天の恵みを使っていることに喜びを感じる人にお勧めしたい。
■■
天の恵みの太陽と雨の両方を使うのが、屋上庭園。
屋根の半分を平らな屋上にして、芝生を貼っている。今時は屋上庭園の技術も進んでおり、安心して使うことができるようになった。
屋上緑化も、きわめて断熱効果が大きく、気化熱による冷却効果も期待できる。
これも、緑化している下の部屋と、通常の屋根の下の部屋でデータ取りをさせてもらうつもり。
(通常屋根の下は、天井を高くして熱気を少しでも遠ざけるようにしているが)
屋上庭園は、こうした熱環境だけでなく、空そのものを楽しむという余録もついてくる。
とにかく、気持ちいい。
適度な手摺り高さにすることで、近隣との相互のプライバシーも守られ、望遠鏡を据えれば夜の空も楽しむことができる。
ちなみに、補助金はなくてもやる価値のある屋上緑化だが、堺市の場合は施工費の50%が補助された。やってみたい方は、自治体に問い合わせてみるといいと思う。
■■
と、自然エネルギーのことばかり書いたけれども、家そのものも吉野杉をふんだんに使った、なかなか見応えのある家に仕上がったと思っている。
工務店も大工さんや職人さんたちも、良いものにしようという気持ちを持って取り組んでくれたので、現場に行くと「良い気」が満ちている。
ぜひとも、見学会に来てみて下さい
申し込みは、このブログの左サイドにあるメールボックス「明月社へのご連絡」からお願いします。
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日程は
4月22日(日) 10:30 (若干工事中の部分あり)
4月29日(日) 11:00
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