2013-07-19(Fri)
日本の隠された二つの難題
原発、被曝、TPP、そして憲法 いまや日本はこれまでの日本では無くなろうとしている。
と言っても、世の中の見た目は当分は変わらない。ファッションとお笑い、ビジネスとスポーツが、日本人の脳みそを占領し続けるだろう。
悲惨な歴史は、世の中が真っ暗闇になってから始まるのではない。気がつかないうちに始まって、暗闇になったときには手遅れになっている。
そんな時代の先行きに、実はさらに追い打ちをかける問題が二つ隠されている。
ひとつはコンクリート、もうひとつは山 だ。
■■
今年は2013年。50年前は1963年で高度経済成長が加速し始めた頃だ。
橋やトンネルや下水道や団地などの膨大な公共のコンクリート構造物が作られていった。
1970年代になると、民間でもコンクリートのマンションが雨後の竹の子のように建ち始める。
今や、日本中に40年以上を経過したコンクリートが、現役のままひしめいている。
これらが、実はとんでもないお荷物であることを、一般にも気がつかせるきっかけになったのは、山陽新幹線のトンネルがはがれ落ちた事故だった。
これは中国新聞が、1996年から1999年までにコンクリートの崩落事故があった場所をまとめたものだ。
→ 元記事
その後も、阪神高速など多くのコンクリート構造物で自然崩壊する現象が続いた。
この現象について、詳しいことが知りたい方は、このブログの右サイドにある「コンクリートが危ない」という本を読んでいただきたい。
コンクリートだけではなく、よく破裂して大噴水を吹き上げる古い鉛の水道管など、著しい劣化で余命幾ばくもないにもかかわらず、その実態が隠されている公共社会資本は、遠からぬ将来、表に出てくることになるだろう。
また、民間のマンションも、築50年が近づくにつれ、コンクリート自体の劣化、プランニングの古くささ、設備配管の劣化などから、高額の負担を強いられることになり、それでも資産価値の低下には歯止めがかからない。
さらに言うと、こうした公共や民間の古いコンクリート構造物を、大金をかけて建て替えや作り替えを下としても、こんどは壊したコンクリートの行き場に困るという問題もある。
コンクリートには寿命があるという自明のことを見ないふりをして、それ行けドンドンで作り続けてきたツケは、遠くない将来に支払わされることになる。
日本に仕込まれた時限爆弾のような物である。
■■
日本の国土の67%が森林です、という決まり文句は聞いたことがあるかもしれない。
驚くべきは、その森林のうち、41%余りが人工林、つまり人間が植林した山だと言うこと。
つまり、日本の国土の27%、3割近くは、人間がせっせと植林をした森林なのである。
どんだけ植えたんだ、、、と私も最初に知ったときは驚愕した。
その多くは、第二次大戦直後から高度経済成長期まで。
何せ、戦争で焼かれたり壊されたりした家を建てるため、木材は不足し、高騰した。
また、1ドル360円だった当時、木材を輸入することはままならなかった。
そこで、どんどん建築用材になる杉と桧を植えろ、と国が音頭を取り、高騰する木材価格に目を奪われて我も我もと植林した。
米国のゴールドラッシュは有名だが、日本ではフォレストラッシュだったのである。
もちろん、平地に植えたのではなく、元々は広葉樹などが植わっていた場所や、場合によっては先祖が石垣を組んで苦労して棚田をつぶして、じゃんじゃん杉の木を植えてしまったりもした。
本来は北斜面でじっくり育てなくてはならない杉の木を、そんなのお構いなしで南斜面にも植えてしまったので、やがてこれが大量に花をつけ、膨大な花粉をまき散らす一因にもなっていったともいう。
しかし、木材の大量消費は一段落し、1970年代の後半からは円がどんどん切り上がるのに比例して、木材の輸入が増えていった。
当然のことながら、濡れ手に泡だった時代は終わり、国産材の木材価格は急速に下落していく。
ほどなく、国産材は輸入材にとってかわられ、木材は山から切り出す物ではなく、商社のコンテナから運び出す物に代わっていった。
その急速な変化に、ほとんどの山はついていくことができなかった。
また国は、米国からの木材輸入圧力を受けていたので、あれだけ拡大造林を煽っておきながら、シラッとして日本の山を放置した。
その結果、もう日本の山は再生できるかどうかの瀬戸際だ と言われてからもすでに20年近くが経とうとしている。
瀬戸際からすでに20年も放置しているのだから、はっきり言って、すでに手遅れというのがシビアな見方だろう。
精神的にも物質的にも、絶対に日本を自立させない、という米国(占領軍)の支配方針は、こうしたところまで及んでいる。
国土の27%に汗水垂らして植林しながら、それを再生できないところまでほったらかしにして、輸入材を使うばからしさと言ったらない。
そして、その結果としての、大災害の増加である。
人工的にたくさんの苗木を植え、本来ならば間伐をして育てていくはずだったものを、間伐せずに放置している。
それは細い木々が密集してほとんど草も生えず、地面が露出した山となり、そこに大雨が降ると土石流になったり、地層によっては深層崩壊という深刻な事態になったりする。
■■
すでに手遅れになっているところも多いとは言うものの、それで諦めてしまったら日本の山間地域は危なくて住めない場所になってしまう。
日本から田舎がなくなってしまうかもしれない。
じゃあどうすれば良いのか、という話になると、なが~~~い話になるので、これはまた別稿にしたい。
少なくとも自分たちでできることは、まだ間に合うところは、切って使う ということ。
手遅れなところは経済的に成立しないから、政策的に対応するしかない。
拡大造林を進めながら、米国に圧力をかけられたらアッサリ日本の山を見捨てた自民党に任せているうちは、絶対に解決の糸口も見つからないだろう。
そんな中でも、とにかくできることはやろう、と思って、本当にわずかな試みだけれども、ここ15年ほど国産材を使って家を建てることを仕事にしてきた。
最近は、縁あって奈良県十津川村の木を使わせてもらっている。
十津川村のことについては
→ 紀伊半島大水害と十津川の木の家プロジェクト
このプロジェクトの一環として、昨年12月、雪の降る中を自ら十津川の山に木を伐りに施主さんの家が竣工する。
場所は大阪市福島区、都会のど真ん中。
「木の家」というと、そういう系統の雑誌に出てくるような家を想像されるかもしれないけれども、この家はちょっと変わっている。
都会で木の家を楽しむため、施主さんの希望や設計上の工夫が色々とある。
7月21日(日)に完成見学会をやらせていただく。
①11:00~ ②14:00~ ③16:00~ の3回あるので、見学希望の方は
info@mei-getsu.com まで 住所・電話番号・お名前・希望時間 をご連絡いただきたい。
折り返し、詳しい場所等をお知らせします。
言うまでもないですが、当日は投票を済ませてからお越し下さい。


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と言っても、世の中の見た目は当分は変わらない。ファッションとお笑い、ビジネスとスポーツが、日本人の脳みそを占領し続けるだろう。
悲惨な歴史は、世の中が真っ暗闇になってから始まるのではない。気がつかないうちに始まって、暗闇になったときには手遅れになっている。
そんな時代の先行きに、実はさらに追い打ちをかける問題が二つ隠されている。
ひとつはコンクリート、もうひとつは山 だ。
■■
今年は2013年。50年前は1963年で高度経済成長が加速し始めた頃だ。
橋やトンネルや下水道や団地などの膨大な公共のコンクリート構造物が作られていった。
1970年代になると、民間でもコンクリートのマンションが雨後の竹の子のように建ち始める。
今や、日本中に40年以上を経過したコンクリートが、現役のままひしめいている。
これらが、実はとんでもないお荷物であることを、一般にも気がつかせるきっかけになったのは、山陽新幹線のトンネルがはがれ落ちた事故だった。

これは中国新聞が、1996年から1999年までにコンクリートの崩落事故があった場所をまとめたものだ。
→ 元記事
その後も、阪神高速など多くのコンクリート構造物で自然崩壊する現象が続いた。
この現象について、詳しいことが知りたい方は、このブログの右サイドにある「コンクリートが危ない」という本を読んでいただきたい。
コンクリートだけではなく、よく破裂して大噴水を吹き上げる古い鉛の水道管など、著しい劣化で余命幾ばくもないにもかかわらず、その実態が隠されている公共社会資本は、遠からぬ将来、表に出てくることになるだろう。
また、民間のマンションも、築50年が近づくにつれ、コンクリート自体の劣化、プランニングの古くささ、設備配管の劣化などから、高額の負担を強いられることになり、それでも資産価値の低下には歯止めがかからない。
さらに言うと、こうした公共や民間の古いコンクリート構造物を、大金をかけて建て替えや作り替えを下としても、こんどは壊したコンクリートの行き場に困るという問題もある。
コンクリートには寿命があるという自明のことを見ないふりをして、それ行けドンドンで作り続けてきたツケは、遠くない将来に支払わされることになる。
日本に仕込まれた時限爆弾のような物である。
■■
日本の国土の67%が森林です、という決まり文句は聞いたことがあるかもしれない。
驚くべきは、その森林のうち、41%余りが人工林、つまり人間が植林した山だと言うこと。
つまり、日本の国土の27%、3割近くは、人間がせっせと植林をした森林なのである。
どんだけ植えたんだ、、、と私も最初に知ったときは驚愕した。
その多くは、第二次大戦直後から高度経済成長期まで。
何せ、戦争で焼かれたり壊されたりした家を建てるため、木材は不足し、高騰した。
また、1ドル360円だった当時、木材を輸入することはままならなかった。
そこで、どんどん建築用材になる杉と桧を植えろ、と国が音頭を取り、高騰する木材価格に目を奪われて我も我もと植林した。
米国のゴールドラッシュは有名だが、日本ではフォレストラッシュだったのである。
もちろん、平地に植えたのではなく、元々は広葉樹などが植わっていた場所や、場合によっては先祖が石垣を組んで苦労して棚田をつぶして、じゃんじゃん杉の木を植えてしまったりもした。
本来は北斜面でじっくり育てなくてはならない杉の木を、そんなのお構いなしで南斜面にも植えてしまったので、やがてこれが大量に花をつけ、膨大な花粉をまき散らす一因にもなっていったともいう。
しかし、木材の大量消費は一段落し、1970年代の後半からは円がどんどん切り上がるのに比例して、木材の輸入が増えていった。
当然のことながら、濡れ手に泡だった時代は終わり、国産材の木材価格は急速に下落していく。
ほどなく、国産材は輸入材にとってかわられ、木材は山から切り出す物ではなく、商社のコンテナから運び出す物に代わっていった。
その急速な変化に、ほとんどの山はついていくことができなかった。
また国は、米国からの木材輸入圧力を受けていたので、あれだけ拡大造林を煽っておきながら、シラッとして日本の山を放置した。
その結果、もう日本の山は再生できるかどうかの瀬戸際だ と言われてからもすでに20年近くが経とうとしている。
瀬戸際からすでに20年も放置しているのだから、はっきり言って、すでに手遅れというのがシビアな見方だろう。

国土の27%に汗水垂らして植林しながら、それを再生できないところまでほったらかしにして、輸入材を使うばからしさと言ったらない。
そして、その結果としての、大災害の増加である。
人工的にたくさんの苗木を植え、本来ならば間伐をして育てていくはずだったものを、間伐せずに放置している。
それは細い木々が密集してほとんど草も生えず、地面が露出した山となり、そこに大雨が降ると土石流になったり、地層によっては深層崩壊という深刻な事態になったりする。
■■
すでに手遅れになっているところも多いとは言うものの、それで諦めてしまったら日本の山間地域は危なくて住めない場所になってしまう。
日本から田舎がなくなってしまうかもしれない。
じゃあどうすれば良いのか、という話になると、なが~~~い話になるので、これはまた別稿にしたい。
少なくとも自分たちでできることは、まだ間に合うところは、切って使う ということ。
手遅れなところは経済的に成立しないから、政策的に対応するしかない。
拡大造林を進めながら、米国に圧力をかけられたらアッサリ日本の山を見捨てた自民党に任せているうちは、絶対に解決の糸口も見つからないだろう。
そんな中でも、とにかくできることはやろう、と思って、本当にわずかな試みだけれども、ここ15年ほど国産材を使って家を建てることを仕事にしてきた。
最近は、縁あって奈良県十津川村の木を使わせてもらっている。

→ 紀伊半島大水害と十津川の木の家プロジェクト
このプロジェクトの一環として、昨年12月、雪の降る中を自ら十津川の山に木を伐りに施主さんの家が竣工する。
場所は大阪市福島区、都会のど真ん中。
「木の家」というと、そういう系統の雑誌に出てくるような家を想像されるかもしれないけれども、この家はちょっと変わっている。
都会で木の家を楽しむため、施主さんの希望や設計上の工夫が色々とある。

①11:00~ ②14:00~ ③16:00~ の3回あるので、見学希望の方は
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