2013-12-11(Wed)

どうしよう これからの3年間 (その2)

まえの記事の続き

前を読んでいない方は こちらを

今回の秘密保護法をめぐって、「やばい」「なんとかしなくちゃ」と思っていた人たちの中にも漠然と存在していたアイマイさが吹っ飛んだのではないだろうか。

アイマイさとは、ひとつは、社会党があった時代(55年体制)のような自民党の妥協を期待する気持ち。もうひとつは、「~~するべき」という正論をぶつければ少しは響くのではないかという期待。

秘密保護法に対しては、原発に対するよりもはるかに広い範囲から反対の声が上がった。海外のマスコミからも手厳しく批判された。
それでも、安倍と自民党の決意はまったく揺るがなかった。一片の妥協もなく、ついでにみんなの党の解体まで付録にして突き進んだ。

社会党があった時代は、少数野党でもそれなりに意見は通すことができた。5%か10%は自民党も妥協することで、騒ぎにならずに国会が進むことを優先した。また、それができる経済的な余裕もあり、米国も鷹揚に構えていた。
しかし今は状況がまったく違う。まず親分である米国にまったく余裕がない。日本への要求は常に待ったなしだ。政府が閉鎖されるという瀬戸際を綱渡りし、軍事予算も自動的に毎年削減される。少数野党の要求に妥協しながら、ノラリクラリと進めることなど許しはしない。
また、自民党自体もかつての盤石の体制ではない。公明党創価学会の助けが無くては選挙を戦えないほどに、実態はボロボロだ。だから、アベノミクスと称して、札を刷って刷って刷りまくって国民を買収しようとしているが、いくらやっても成長率1.2%。国民の生活の実態はどんどん苦しくなる。
もはや自民党には、妥協を基本戦術にする「良識派」は残っていない。

これは1990年ごろからすでに分かっていた話だ。政治家の中でその構造転換にいち早く気がつき、行動を起こしたのが小沢一郎だ。彼の20数年にわたる政治活動の根本には、そうした認識がある。もう、自民党では国民の生活を守れない という。

しかし、それに気がつく人は少なかった。国民の大多数はもちろんそんなことに気がつかず、自民党のわずかな「良識」にすがった。また、いわゆる革新系の人は、55年体制の幻想から抜け出せずにここまで来てしまった。その結果、妥協を引き出せない少数政党は、国民からは「役に立たない」存在として見捨てられ、少数の固い支持者だけが残った。
社民党や共産党が、どう考えても国民には有利なことをどれだけ言っても、支持が伸びないのはそのためだ。

それに対して、少数政党では妥協は引き出せない。政権交代しかない。と、うって出たのが小沢一郎だ。
その一定の成果が2009政権交代だったわけだが、第1ラウンドは内部からのクーデターであえなく潰えてしまった。
その結果、国民のなかに諦めと無力感が広がってしまい、現在の自民党圧勝につながった。

繰り返しになるが、自民党が圧勝してしまう条件はみっつ。
① 国民の大半が自民党がある程度は妥協する「良識」を信じていること
② 反自民もまた、自民党が妥協すると思いながら、実際は何も引き出せないこと
③ 国民がほとんど諦めていること

この三つの条件が相まって、自民党のなし崩しの圧勝という現象が生じるのだと、私は考えている。

■■

今回の秘密保護法をめぐる、安倍晋三の暴走は、少なくとも①と②については、かなり揺れ動くことになったのではないか。この期に及んで、まだ自民党の「良識」を期待するのは、もはや利敵行為と言わなければならない。
これは、ナンボ何でも政権交代しか手はないぞ、と思い知ったはずだ。

ただ、ここで私はひとつ書いておきたい。
政権交代は、そう簡単じゃない ということ。そのために どうすんねん という話抜きに、政権交代という絵空事を口にするだけでは、結局55年体制の幻想に溺れているのと大差ないことになってしまう。

もちろん、誰もその答は分からないけれども、そこから逃げてはいけないということ。
そのために、この試論を書いている。

話を戻す。
自民党圧勝の3条件をどうやって崩すのか。ひとつ考えられるのは、自民党がもっともっとどんどん酷い政治をやって、さすがの従順な日本人も辛抱たまらんということになる という状況だ。
その時に、自民別働隊以外の野党がちゃんと連携していて、地道にある程度の組織も作っていれば、受け皿として国民が期待をかけるということもあり得る。

しかし、このコースは余りに過酷であることと、それ故に③の国民の絶望がどんどん進行していく。それは、恐ろしいことにファシズムに突っ走る危険が高くなるということだ。日本人はその傾向が強いのは、歴史が証明しているとおりだ。

ではどうするか。
私は、自民党の「良識」とは別の妥協を探るべきではないかと思う。敵陣営の中にある構造的な矛盾や対立を、うまく使うべきなのではないか。

それを考えるためには、ひとつ大きな思い切りをしておく必要がある。
日本は属国だ、という認識を明確にするということ。
良い悪いではなく、いくら嫌でも当分はそういう存在でしかない と一度観念しておくことだ。

これは、原発がいくら嫌でも、今すぐにこの世から消滅させられないのにも似ている。現実としてそこに有るものは、観念的にいくら否定してもそこに有るのだ。
その上で、本来はこうあるべき、という理念と、今はこれしかどうしようもない、ということを区別して進めていく訓練をしなくては、諦めか妄想かの二者択一ではどうにもならない。

そういう観念をしたうえで考えると、一番のチャンスは安倍とオバマの矛盾と対立だ。
前の記事でも書いたように、オバマは安倍のファシスト体質を嫌っているし、そういう政策を苦々しく思っている。しかし、属国を思い通りに動かすためには、背に腹は替えられない と我慢している。

秘密保護法についても、せめて米国並みとか、ツワネ原則を踏まえたものにすることは、米国は何の問題も無いし、むしろ歓迎することだろう。米国は、自衛隊を米軍の下請けで使い回せればいいのであって、その目的から外れた治安維持法的な部分は必要ない。
オバマか、代理人のケネディが、そのようなことを漏らせば、事態は激変していただろう。

そうしたパイプをもって、米国側と交渉を誰かしたのか。おそらくしていないだろう。
ここが、政治家の出番ではないのか。みんなの党や維新のような、修正したら悪くなるような修正ではなく、治安維持法の機能を削除できれば、それは合格点ではなくとも30点くらいは獲得したことにならないだろうか。

当然ながら、本来はこのような法律はまったく、影も形も必要ない、と私は思っている。反対していた人たちの少なくとも半分はそう思っていたはずだ。
しかし、あと半分の人々は、秘密保護は必要だが、中身と手続きが悪すぎると言っていた。そういう人たちからすれば、治安維持法部分が削除されれば、80点くらいになるだろう。

こうした妥協を勝ち取ろうと思えば、残念ながら現状では「国民の声」だけでは無理だ。その現実を一度厳しく受け入れよう。
だが、「国民の声」が背景に無ければ、いくらオバマ側が苦々しく思っていたとしても、政治家が交渉に走り回っても、話にならない。「問題」になるから、初めて交渉が成り立つのだ。
だから、集会をやり、デモで大声を上げ、署名をし、著名人が声明を出す。そうしたことは、前提として絶対に必要なことだ。

そうしながら、玉砕ばかりを重ねるのではなく、敵の矛盾に乗じて、小さな果実を確実に勝ち取っていくこと、それを国民に見せていくことも大事なことだと思うのである。

この厳しい現実を前に、バラ色の夢物語を語っているばかりでは、日々現実に向き合っている国民に見放されるばかりだ。

■■

ただし、この戦略は、結果としてわずかな果実しか手にすることはできないし、その小さな果実が目的になってしまったら本末転倒だ。
あくまでも、国民が絶望しないため、少数野党に期待をしてもらうための手段でしかない。

だから、本筋の戦略は、やはり受け皿作りということになる。

と、ここで本日も時間いっぱいです。

その3へつづく




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嫌韓のフィギュアスケートファンに

「ラターシュに魅せられて」のレギュラーの一人が管理人である気弱な地上げ屋さんに嫌韓のフィギュアスケートファンに媚びて支持を獲得しようというとんでもない提案をしています(しかも彼等は反中の自民党支持者というオマケ付き)
場合によっては気弱な地上げ屋さんがそれを受け入れ小沢一郎氏に進言してそれを小沢一郎氏が採用してしまうかもしれません(気弱な地上げ屋さんは影響力が大きい)
たとえ彼等を取り込み支持を拡大しても下手をすれば維新の会や自民党のような政党に成り下がってしまいます・・・
票を多数獲得せねばならないのは分かります、しかし彼等に媚び過ぎれば一般の無党派層はドン引きして離れるでしょう(維新の会や自民党のような極右政党として認知されてしまう)
小沢一郎氏の魅力はアジアに軸足を置き器の大きい外交をする事です
嫌韓なフィギュアスケートファンに媚びて嫌韓路線および反中路線を取れば生活の党は彼等にまとわりつかれて破滅してしまいます(嫌韓反中に不安を抱く国民も多いです)
お願いします!気弱な地上げ屋さんが嫌韓なフィギュアスケートファンに媚びるという提案を受け入れないように止めてください!
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