2014-01-15(Wed)
天敵コイズミと組む細川をなぜ応援するのか
昨日、細川護熙さんが、よりによって小泉純一郎とツーショットで出馬会見を行った。
そしてこれについて私は、このようにツイートした
スーパーに行けば「放射能と農薬 どっちがましか」と悩み、都知事選になれば「安倍と小泉 どっちがましか」と悩む。でも何も食べなきゃ死んじゃうし、誰も選ばなきゃ自民が勝っちゃう。かなりコイ農薬がすみズミまでかかってるけどできるだけ洗い流して食うしかない。
しかし、実は数日前にはこのようにもツイートしている
細川さん立候補は支持できず。①遅すぎる ②コイズミと連携 ③政権放棄の前科。勝ち負けじゃなく脱原発訴えたいのなら宇都宮さんの応援すればいい。コイズミにそそのかされたのか?と疑う
なんやいい加減なヤツやと思われるかもしれないが、今でもどっちもそう思っている。
あるべき姿は、前回次点で、今回もいち早く出馬表明した宇都宮さんを、保守リベラルも含めた統一候補として闘うべきだろう。
しかし、べき論はべき論に過ぎない。本当に残念ながら、「べき」の通りには現実は進まない。進まないその現実の中で、次の一歩を選択せざるを得ないのだ。
このブログのコメント欄にも 書きたい放題を書いてくれる人がいる。
基本的に匿名でホストまで隠したコメントには反応しないのだけれど、今回はそれなりに的を射ているのでここにも引用する。
(以下コメント欄より引用)
このブログがこの5年間書いてきたことは、要するに米国=コイズミとどう戦うか、ということだったと理解している。その先頭に立つのが小沢一郎、というわけだ。
それを知っているだけに、都知事選を巡るツイートを見ていて、なんだか悲しくなってくる。ついにオバマと共闘、と言い始めた。前後の伊波さんのツイートが泣いている。苦し紛れに小沢なら橋渡し出来る、などといってお茶を濁しているけれど、まったく意味不明。
小泉の話もそう。ちょっと前まで、「小泉に騙されるのは馬鹿だ。しかし小沢さんはさすがだ、小泉と連携はしないといっている」、なんていってきたけれど、細川で見事に裏切られた。それで銃弾か毒か、などといって言い訳する。
小泉の言動を読めば、アメリカの意向がわかるんでしょ?貴方は常にそう書いてきた。それなら、今の小泉の行動はどう説明できるのかね。言ってることがずいぶん変わってきているようだけれど。こうもズルズルと発言の趣旨を変えていくのっていかがなものか。突如として小泉が米国の軛から離れたのかね?
普通の人なら、「これまでは小泉に批判的だったけれど、今回は一緒にやろう」、でいいかもしれない。しかしこのブログが「小泉」について書いてきたことを振り返ると、到底それじゃあ、済まないと思うけれど。
コイズミの原発ゼロ
http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-1299.html
なにをなすべきか
http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-1302.html
(引用以上)
そんなことは、コメントで書いていただかなくても、筆者である私自身が骨身にしみて分かっている。
5年間とあるが、このブログは2005年9月21日から8年4ヶ月やっている。その一番のキッカケは小泉純一郎が日本の派兵を決めたイラク戦争だ。コイズミというこれまでの保守とは違う危険な政治家が暴れ出したことに、黙っていられなくなって「反戦な家づくり」を書き始めた。
当初は数人の読者だったけれど、きっこさんはじめ多くのブロガー仲間に育ててもらってかなり多くの人に読んでもらえるようになった。
また、いろいろあってネットに匿名は通用しないと知り、途中からは明月社の山岸飛鳥という正体も連絡先も全部オープンにして、それなりに自分の言葉には責任を持って書いてきた。
にもかかわらず、なぜ今、前言を翻すようにして「細川に投票しよう」と言うのか。小泉純一郎の毒を飲めと言うのか。
■■
その理由は大きくふたつある。
ひとつは、安倍晋三の動きは単純な対米隷属ではなくなったということだ。
もともと安倍は対米従属と、国内的な利権勢力との板挟みという立ち位置を持っている。第一次内閣の時は、それに耐えられずに政権をほっぽり出した。
国粋右翼の顔と、対米従属の顔を使い分けるのはそう簡単ではない。もしコイズミがやって見せたようなプレスリー踊りを安倍晋三がやったなら、安倍の支持者は安倍を許さないはずだ。そういう層が安倍を支えている。
見せかけだけでなく、経済的にもTPPなどの経済的な隷属は国内の利権を破壊する。集団的自衛権で自衛隊を米軍に献上するのは、まだしも右翼としての体面を保つこともできる。しかし、ひたすらカネを出せ、カネカネカネと要求してくるオバマのやり方は、安倍の支持基盤をたたき壊すことにつながる。
素直に言うことを聞かず、右翼ポーズを止めない安倍に対し、オバマは徹底した冷遇を繰り返し世界のさらし者にした。おそらく安倍は歯ぎしりをして悔しがったことだろう。
その安倍の前に光が射したのは、オバマのレームダック化だった。戦争よりも国内経済を優先するオバマに対し、米国内の産軍複合体が反撃を始めた。
アルカイーダをはじめとする反政府軍に肩入れしてシリアの内戦を激化させ、なんとかして米軍を引きずり込もうとした。軌を一にするように安倍晋三も時間のかかる改憲を棚上げにして集団的自衛権を声高に言い始めた。
シリアへ自衛隊を送り込むことで、右翼ポーズも対米従属も両立させる絶好の機会にするつもりだったに違いない。
しかしオバマは安倍に自衛隊の出兵を求めず、あくまでもカネを要求したと思われる。これまでは外務省がいくらお願いしても会ってくれなかったオバマが、ロシアまで追いかけてきて安倍に戦費を要求した。当ての外れた安倍は逃げまくり、そうこうしているあいだに最後はロシアの仲介によってオバマはギリギリのところでシリアへの軍事介入を回避した。
こうした過程を見ても分かるとおり、政府機関を閉鎖するほど危機的な財政状況の中で戦争を始めることを、オバマは徹底的に避けようとしている。イランともなんとか話をつけようとしているし、イスラエルに対してはその見返りで、なんと前イスラエル中銀総裁を米FRBの副議長に据えている。(一心同体を誓っているようなもの)
オバマが平和主義だとかいうことではなく、これほどに米国の財政は危機にあるということだ。オバマはその状況に米国の利益に沿って合理的に対処しようとしているに過ぎない。
話を日米にもどす。
こうして、とにかくカネを要求するオバマと、軍事貢献で応えたい安倍のすれ違いは、安倍の靖国参拝で一線を越えた。安倍は戦争を回避しようとするオバマと手を切り、ポストオバマを狙う産軍複合体に寄り添うことを決断した。オバマのカネ出せ要求にはノラリクラリと対応しつつ、戦争体制を急ピッチで進めていくつもりだ。
こうした安倍の右翼的、排外的なやり方に、あるいみ意外な効果が現れた。安倍政権への若者の支持がうなぎのぼりになったのである。
半分が正社員になれない。就職できても過労死するほど働かされる。定期昇給も終身雇用も夢の夢。そんな先の見えない若者が、戦争へと突き進む安倍に期待をかけ始めた。
退職金と年金で悠々自適の団塊世代がいくら反戦平和を唱えても、彼らは何の恩恵も感じられない。正論であればあるほど腹が立つだろう。それよりも、戦争で何もかもひっくり返った方が、ずっと展望がひらける。そう若者が思ったとしても不思議はない。
リベラルと思われる人でも、高齢者はおどろくほど今の若者の現状に理解がない。自分たちの若い頃と比べてしまうから、前提が大きくかわっていることを見ずに、目の前の姿だけを見て「最近の若いもんは」と憤慨している。中には若者の貧困に目をむける人もいるが、結局は安全地帯からの同情ではないかと、思われている。
この状況は、これまでとは一線を画する事態になっている。
従米の政治家が官僚とグルになってシロアリよろしく国民の働いたあがりを米国に献上し、自分たちも懐を暖める、というこれまでの悪政とは、次元が変わってしまった。
そうした、平時の悪政から、戦時のファシズムへと一気に突き進む危険が、すでに目の前にある。
安倍晋三は、どこまで自覚的かはわからないが、そのファシズムのスイッチを押してしまったのだ。
これからおきる怒濤のような排外主義と戦争への渇望とも言える渦は、おそらく安倍自身ですら予測していないに違いない。安倍晋三のようなお坊ちゃまを吹きとばしつつ、橋下のようなタフなファシストが先頭に立って熱の渦を率いていくに違いない。
オバマは、米国利益の観点から当然ながらそのようなファシズムの勃興を歓迎しない。歓迎しないどころか、なんとしても封じ込めたいと思っているはずだ。彼が望むのは、あくまで日本のカネであり資産であり経済だ。TPPであり、規制緩和と経済特区であり、公共資産の売却である。
米国にすらコントロールがきかなくなる日本のファッショ化など、オバマだけでなく産軍複合体を含めた米国全体は望んでいない。
こうした安倍政権と日本社会の危機に対し、米国の意を体して再浮上してきたのが小泉純一郎だ。熱病のようなファシズムではなく、温和しく食われる従米日本を取りもどすべく特命をうけたのが、あのコイズミ脱原発だったのではないか。
あまりにも唐突なコイズミ脱原発は、そう考えるのが一番分かりやすい。
これは、小泉純一郎とワンセットの竹中平蔵を見ても分かる。パソナの会長にして森ビルの都市戦略研究所の所長におさまっている竹中は、規制緩和で日本をハゲタカのエサ場にすることには懸命だが、戦争経済にはまったく触れようとしない。アベノミクスの理論的支柱と言われる浜田宏一は、「私はもしかしたら竹中平蔵氏の考えに近すぎるかもしれない」と言っている。
ところが、アベノミクスの仕掛け人である山本幸三(自民党)は、日本会議のメンバーであり独自核武装論者にしてTPPにも反対の立場だ。アベノミクスにしてからが、実はその内部で従米派と国内利権派との熾烈な争いがあると思われる。
さて米国の特命を受けた小泉純一郎にすれば、当面最大の政治的なイベントである都議選を無視することは出来ない。マスゾエを抱き込むことも出来たはずだが、大局の見えない口先男であるマスゾエは愚かにも安倍と組むことを選択した。安倍の勢いに乗るのが当選の近道だという程度の判断に過ぎない。タモガミが出てきたことで、安倍がそちらに付くのを警戒したのかもしれない。
そこで、安倍の勢いを止めるための方策として、小泉は細川との脱原発連合を画策した。
細川さんへのアプローチは、おそらく小沢さんが先に始めていたのではないだろうか。何も情報はないけれども、20年前の関係を思い出すと、そんな気がしてならない。しかし、なかなか決断しないうちに宇都宮さんが先に出馬表明。それでもウダウダしていたところに小泉が乗ってきたことで、細川さんは俄然やる気になったのではないかと思われる。
表向きは脱原発がテーマと言われているが、本当のテーマは反ファシズムでありストップ安倍である。
小泉の意図が国民の生活を守ることではないのは明らかである。小泉と組んだ以上、相当の毒を飲む覚悟が必要なのも確かである。
しかし、ここで潔い敗北を喫することが、ファシズムの熱を一気に吹き上げさせることになりはしないか、その危機感の方が私は強い。
■■
もちろん、宇都宮さんが浮動票を集めて勝つ可能性があるならば、そちらにかけるべきだろう。
しかし、前回からどんなに上乗せしても160万票しかないことは、参院選の結果からほぼ見えている。自民系がいくら割れても、少なくとも200万はとらなくては当選は覚束ない。まして細川・小泉連合が出てしまった以上は、共産党+社民党1/2+αしか期待出来ない。
それが、「細川に投票すべき」と言う二つ目の理由だ。
この現実を前にして何をすべきか。最善の策は何か。
それは、すこしでも有力なキャスティングボートを握ることだ。
小泉人気だのみの細川陣営も、決して楽観など出来ない。電力総連を抱える連合東京は実質的にマスゾエにつくだろう。そうなれば、本音では宇都宮さんとの一本化は望んでいるはずだ。
一本化すれば、共産党票は無理でも、30~40万票は上乗せされ、ギリギリの細川陣営にすれば勝敗を決することになる。
そのポジションを保っている今ならば、宇都宮さんは細川陣営と政策と人材登用などを含めた協議を行い、少しでも小泉の毒を薄めることができるはずだ。
それが、もっとも現実的で、いちばんマシな、最悪よりもちょっとだけマシな選択ではないのか。
こうした意見は私のみならず、あちらこちらから出ているから、長くは書かない。
潔い敗北を尊しとする思想は、支配者によって植え付けられてきたものではないかと、一度疑ってみる必要はある。状況に応じて変幻自在に連合を組んだり解いたりする能力は、絶対的な支配力をもったものには非常に都合が悪い。そして、そういう能力は国民が場数を踏んで歴史的な訓練を重ねなければ獲得することは出来ない。
今回の都議選で細川・小泉陣営に加担することは、まさにその訓練だと考えるべきだろう。これまで、ほとんど政治的な試練を経ず、いつも誰かが決めてくれた日本人にとって、いきなり難易度の高い試験問題ではあるが、逃げてしまってはこれまでの繰り返しであり、結果はこれまでとは比べものにならないダメージを受ける。
もちろん、連合というのは「自分をたもったまま、他者と連携する」ことだ。小泉に同化するということではない。水に流すと言うことでもない。小泉が日本国民の生活資源を米国に献上するために、虎視眈々と狙っているということをガッチリと認識しながら、だからこそしのぎを削りながら同じ選挙をたたかうのである。
細川陣営にしても、殿様気分の上から目線で宇都宮陣営を無視しているようだが、そんな余裕がどこにあるのか?
本当に勝つ気なら、共産党だろうが何だろうが頭を下げて説得に行くべきだ。共産党だって幹部はともかく支持者は一枚岩の岩盤じゃないし、何より共産党に対しても礼を尽くすことで、有権者に対して本気度が伝わる。
そして、細川陣営でこういう覚悟を持っているのは、小沢さんしかいないのではないか。小沢さんは、この局面でこそその存在感を示すべきだ。
■■
だからといって、勝てなくても宇都宮候補で潔く闘うべきだという人に、私は罵詈雑言を投げかけるつもりはまったくない。ツイッターをみていると、ここでも感情的に叫ぶ人が多いが、まったくもって日本人の政治的な未熟さを思い知らされる。なんですぐに感情的になるのか。
正直言って、私の中でも 49:51だ。細川で行けという思いが51だからこんな論考を書いている。
後につながる負け方ということもある。妥協しすぎて運動自体が瓦解するよりは、負けても運動を残した方がいいという判断も、決して間違いというわけではない。
ただ、今このとき、安倍の暴走がファシズムのスイッチを押してしまった今このとき、私の心のギリギリ過半数が「小泉の毒を飲んでも細川でいけ」と言っている。
ファシズムは誰にもコントロールが出来なくなる。その波頭に乗って走る現代のヒットラーでさえも、大破滅へ向かうサーフボードから降りることも向きを変えることも出来はしない。
ファシズムを食い止めること。そのためには、潔い敗北がいいのか、汚い勝利がいいのか、よくよく考えてみてもらいたい。


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そしてこれについて私は、このようにツイートした
スーパーに行けば「放射能と農薬 どっちがましか」と悩み、都知事選になれば「安倍と小泉 どっちがましか」と悩む。でも何も食べなきゃ死んじゃうし、誰も選ばなきゃ自民が勝っちゃう。かなりコイ農薬がすみズミまでかかってるけどできるだけ洗い流して食うしかない。
しかし、実は数日前にはこのようにもツイートしている
細川さん立候補は支持できず。①遅すぎる ②コイズミと連携 ③政権放棄の前科。勝ち負けじゃなく脱原発訴えたいのなら宇都宮さんの応援すればいい。コイズミにそそのかされたのか?と疑う
なんやいい加減なヤツやと思われるかもしれないが、今でもどっちもそう思っている。
あるべき姿は、前回次点で、今回もいち早く出馬表明した宇都宮さんを、保守リベラルも含めた統一候補として闘うべきだろう。
しかし、べき論はべき論に過ぎない。本当に残念ながら、「べき」の通りには現実は進まない。進まないその現実の中で、次の一歩を選択せざるを得ないのだ。
このブログのコメント欄にも 書きたい放題を書いてくれる人がいる。
基本的に匿名でホストまで隠したコメントには反応しないのだけれど、今回はそれなりに的を射ているのでここにも引用する。
(以下コメント欄より引用)
このブログがこの5年間書いてきたことは、要するに米国=コイズミとどう戦うか、ということだったと理解している。その先頭に立つのが小沢一郎、というわけだ。
それを知っているだけに、都知事選を巡るツイートを見ていて、なんだか悲しくなってくる。ついにオバマと共闘、と言い始めた。前後の伊波さんのツイートが泣いている。苦し紛れに小沢なら橋渡し出来る、などといってお茶を濁しているけれど、まったく意味不明。
小泉の話もそう。ちょっと前まで、「小泉に騙されるのは馬鹿だ。しかし小沢さんはさすがだ、小泉と連携はしないといっている」、なんていってきたけれど、細川で見事に裏切られた。それで銃弾か毒か、などといって言い訳する。
小泉の言動を読めば、アメリカの意向がわかるんでしょ?貴方は常にそう書いてきた。それなら、今の小泉の行動はどう説明できるのかね。言ってることがずいぶん変わってきているようだけれど。こうもズルズルと発言の趣旨を変えていくのっていかがなものか。突如として小泉が米国の軛から離れたのかね?
普通の人なら、「これまでは小泉に批判的だったけれど、今回は一緒にやろう」、でいいかもしれない。しかしこのブログが「小泉」について書いてきたことを振り返ると、到底それじゃあ、済まないと思うけれど。
コイズミの原発ゼロ
http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-1299.html
なにをなすべきか
http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-1302.html
(引用以上)
そんなことは、コメントで書いていただかなくても、筆者である私自身が骨身にしみて分かっている。
5年間とあるが、このブログは2005年9月21日から8年4ヶ月やっている。その一番のキッカケは小泉純一郎が日本の派兵を決めたイラク戦争だ。コイズミというこれまでの保守とは違う危険な政治家が暴れ出したことに、黙っていられなくなって「反戦な家づくり」を書き始めた。
当初は数人の読者だったけれど、きっこさんはじめ多くのブロガー仲間に育ててもらってかなり多くの人に読んでもらえるようになった。
また、いろいろあってネットに匿名は通用しないと知り、途中からは明月社の山岸飛鳥という正体も連絡先も全部オープンにして、それなりに自分の言葉には責任を持って書いてきた。
にもかかわらず、なぜ今、前言を翻すようにして「細川に投票しよう」と言うのか。小泉純一郎の毒を飲めと言うのか。
■■
その理由は大きくふたつある。
ひとつは、安倍晋三の動きは単純な対米隷属ではなくなったということだ。
もともと安倍は対米従属と、国内的な利権勢力との板挟みという立ち位置を持っている。第一次内閣の時は、それに耐えられずに政権をほっぽり出した。
国粋右翼の顔と、対米従属の顔を使い分けるのはそう簡単ではない。もしコイズミがやって見せたようなプレスリー踊りを安倍晋三がやったなら、安倍の支持者は安倍を許さないはずだ。そういう層が安倍を支えている。
見せかけだけでなく、経済的にもTPPなどの経済的な隷属は国内の利権を破壊する。集団的自衛権で自衛隊を米軍に献上するのは、まだしも右翼としての体面を保つこともできる。しかし、ひたすらカネを出せ、カネカネカネと要求してくるオバマのやり方は、安倍の支持基盤をたたき壊すことにつながる。
素直に言うことを聞かず、右翼ポーズを止めない安倍に対し、オバマは徹底した冷遇を繰り返し世界のさらし者にした。おそらく安倍は歯ぎしりをして悔しがったことだろう。
その安倍の前に光が射したのは、オバマのレームダック化だった。戦争よりも国内経済を優先するオバマに対し、米国内の産軍複合体が反撃を始めた。
アルカイーダをはじめとする反政府軍に肩入れしてシリアの内戦を激化させ、なんとかして米軍を引きずり込もうとした。軌を一にするように安倍晋三も時間のかかる改憲を棚上げにして集団的自衛権を声高に言い始めた。
シリアへ自衛隊を送り込むことで、右翼ポーズも対米従属も両立させる絶好の機会にするつもりだったに違いない。
しかしオバマは安倍に自衛隊の出兵を求めず、あくまでもカネを要求したと思われる。これまでは外務省がいくらお願いしても会ってくれなかったオバマが、ロシアまで追いかけてきて安倍に戦費を要求した。当ての外れた安倍は逃げまくり、そうこうしているあいだに最後はロシアの仲介によってオバマはギリギリのところでシリアへの軍事介入を回避した。
こうした過程を見ても分かるとおり、政府機関を閉鎖するほど危機的な財政状況の中で戦争を始めることを、オバマは徹底的に避けようとしている。イランともなんとか話をつけようとしているし、イスラエルに対してはその見返りで、なんと前イスラエル中銀総裁を米FRBの副議長に据えている。(一心同体を誓っているようなもの)
オバマが平和主義だとかいうことではなく、これほどに米国の財政は危機にあるということだ。オバマはその状況に米国の利益に沿って合理的に対処しようとしているに過ぎない。
話を日米にもどす。
こうして、とにかくカネを要求するオバマと、軍事貢献で応えたい安倍のすれ違いは、安倍の靖国参拝で一線を越えた。安倍は戦争を回避しようとするオバマと手を切り、ポストオバマを狙う産軍複合体に寄り添うことを決断した。オバマのカネ出せ要求にはノラリクラリと対応しつつ、戦争体制を急ピッチで進めていくつもりだ。
こうした安倍の右翼的、排外的なやり方に、あるいみ意外な効果が現れた。安倍政権への若者の支持がうなぎのぼりになったのである。
半分が正社員になれない。就職できても過労死するほど働かされる。定期昇給も終身雇用も夢の夢。そんな先の見えない若者が、戦争へと突き進む安倍に期待をかけ始めた。
退職金と年金で悠々自適の団塊世代がいくら反戦平和を唱えても、彼らは何の恩恵も感じられない。正論であればあるほど腹が立つだろう。それよりも、戦争で何もかもひっくり返った方が、ずっと展望がひらける。そう若者が思ったとしても不思議はない。
リベラルと思われる人でも、高齢者はおどろくほど今の若者の現状に理解がない。自分たちの若い頃と比べてしまうから、前提が大きくかわっていることを見ずに、目の前の姿だけを見て「最近の若いもんは」と憤慨している。中には若者の貧困に目をむける人もいるが、結局は安全地帯からの同情ではないかと、思われている。
この状況は、これまでとは一線を画する事態になっている。
従米の政治家が官僚とグルになってシロアリよろしく国民の働いたあがりを米国に献上し、自分たちも懐を暖める、というこれまでの悪政とは、次元が変わってしまった。
そうした、平時の悪政から、戦時のファシズムへと一気に突き進む危険が、すでに目の前にある。
安倍晋三は、どこまで自覚的かはわからないが、そのファシズムのスイッチを押してしまったのだ。
これからおきる怒濤のような排外主義と戦争への渇望とも言える渦は、おそらく安倍自身ですら予測していないに違いない。安倍晋三のようなお坊ちゃまを吹きとばしつつ、橋下のようなタフなファシストが先頭に立って熱の渦を率いていくに違いない。
オバマは、米国利益の観点から当然ながらそのようなファシズムの勃興を歓迎しない。歓迎しないどころか、なんとしても封じ込めたいと思っているはずだ。彼が望むのは、あくまで日本のカネであり資産であり経済だ。TPPであり、規制緩和と経済特区であり、公共資産の売却である。
米国にすらコントロールがきかなくなる日本のファッショ化など、オバマだけでなく産軍複合体を含めた米国全体は望んでいない。
こうした安倍政権と日本社会の危機に対し、米国の意を体して再浮上してきたのが小泉純一郎だ。熱病のようなファシズムではなく、温和しく食われる従米日本を取りもどすべく特命をうけたのが、あのコイズミ脱原発だったのではないか。
あまりにも唐突なコイズミ脱原発は、そう考えるのが一番分かりやすい。
これは、小泉純一郎とワンセットの竹中平蔵を見ても分かる。パソナの会長にして森ビルの都市戦略研究所の所長におさまっている竹中は、規制緩和で日本をハゲタカのエサ場にすることには懸命だが、戦争経済にはまったく触れようとしない。アベノミクスの理論的支柱と言われる浜田宏一は、「私はもしかしたら竹中平蔵氏の考えに近すぎるかもしれない」と言っている。
ところが、アベノミクスの仕掛け人である山本幸三(自民党)は、日本会議のメンバーであり独自核武装論者にしてTPPにも反対の立場だ。アベノミクスにしてからが、実はその内部で従米派と国内利権派との熾烈な争いがあると思われる。
さて米国の特命を受けた小泉純一郎にすれば、当面最大の政治的なイベントである都議選を無視することは出来ない。マスゾエを抱き込むことも出来たはずだが、大局の見えない口先男であるマスゾエは愚かにも安倍と組むことを選択した。安倍の勢いに乗るのが当選の近道だという程度の判断に過ぎない。タモガミが出てきたことで、安倍がそちらに付くのを警戒したのかもしれない。
そこで、安倍の勢いを止めるための方策として、小泉は細川との脱原発連合を画策した。
細川さんへのアプローチは、おそらく小沢さんが先に始めていたのではないだろうか。何も情報はないけれども、20年前の関係を思い出すと、そんな気がしてならない。しかし、なかなか決断しないうちに宇都宮さんが先に出馬表明。それでもウダウダしていたところに小泉が乗ってきたことで、細川さんは俄然やる気になったのではないかと思われる。
表向きは脱原発がテーマと言われているが、本当のテーマは反ファシズムでありストップ安倍である。
小泉の意図が国民の生活を守ることではないのは明らかである。小泉と組んだ以上、相当の毒を飲む覚悟が必要なのも確かである。
しかし、ここで潔い敗北を喫することが、ファシズムの熱を一気に吹き上げさせることになりはしないか、その危機感の方が私は強い。
■■
もちろん、宇都宮さんが浮動票を集めて勝つ可能性があるならば、そちらにかけるべきだろう。
しかし、前回からどんなに上乗せしても160万票しかないことは、参院選の結果からほぼ見えている。自民系がいくら割れても、少なくとも200万はとらなくては当選は覚束ない。まして細川・小泉連合が出てしまった以上は、共産党+社民党1/2+αしか期待出来ない。
それが、「細川に投票すべき」と言う二つ目の理由だ。
この現実を前にして何をすべきか。最善の策は何か。
それは、すこしでも有力なキャスティングボートを握ることだ。
小泉人気だのみの細川陣営も、決して楽観など出来ない。電力総連を抱える連合東京は実質的にマスゾエにつくだろう。そうなれば、本音では宇都宮さんとの一本化は望んでいるはずだ。
一本化すれば、共産党票は無理でも、30~40万票は上乗せされ、ギリギリの細川陣営にすれば勝敗を決することになる。
そのポジションを保っている今ならば、宇都宮さんは細川陣営と政策と人材登用などを含めた協議を行い、少しでも小泉の毒を薄めることができるはずだ。
それが、もっとも現実的で、いちばんマシな、最悪よりもちょっとだけマシな選択ではないのか。
こうした意見は私のみならず、あちらこちらから出ているから、長くは書かない。
潔い敗北を尊しとする思想は、支配者によって植え付けられてきたものではないかと、一度疑ってみる必要はある。状況に応じて変幻自在に連合を組んだり解いたりする能力は、絶対的な支配力をもったものには非常に都合が悪い。そして、そういう能力は国民が場数を踏んで歴史的な訓練を重ねなければ獲得することは出来ない。
今回の都議選で細川・小泉陣営に加担することは、まさにその訓練だと考えるべきだろう。これまで、ほとんど政治的な試練を経ず、いつも誰かが決めてくれた日本人にとって、いきなり難易度の高い試験問題ではあるが、逃げてしまってはこれまでの繰り返しであり、結果はこれまでとは比べものにならないダメージを受ける。
もちろん、連合というのは「自分をたもったまま、他者と連携する」ことだ。小泉に同化するということではない。水に流すと言うことでもない。小泉が日本国民の生活資源を米国に献上するために、虎視眈々と狙っているということをガッチリと認識しながら、だからこそしのぎを削りながら同じ選挙をたたかうのである。
細川陣営にしても、殿様気分の上から目線で宇都宮陣営を無視しているようだが、そんな余裕がどこにあるのか?
本当に勝つ気なら、共産党だろうが何だろうが頭を下げて説得に行くべきだ。共産党だって幹部はともかく支持者は一枚岩の岩盤じゃないし、何より共産党に対しても礼を尽くすことで、有権者に対して本気度が伝わる。
そして、細川陣営でこういう覚悟を持っているのは、小沢さんしかいないのではないか。小沢さんは、この局面でこそその存在感を示すべきだ。
■■
だからといって、勝てなくても宇都宮候補で潔く闘うべきだという人に、私は罵詈雑言を投げかけるつもりはまったくない。ツイッターをみていると、ここでも感情的に叫ぶ人が多いが、まったくもって日本人の政治的な未熟さを思い知らされる。なんですぐに感情的になるのか。
正直言って、私の中でも 49:51だ。細川で行けという思いが51だからこんな論考を書いている。
後につながる負け方ということもある。妥協しすぎて運動自体が瓦解するよりは、負けても運動を残した方がいいという判断も、決して間違いというわけではない。
ただ、今このとき、安倍の暴走がファシズムのスイッチを押してしまった今このとき、私の心のギリギリ過半数が「小泉の毒を飲んでも細川でいけ」と言っている。
ファシズムは誰にもコントロールが出来なくなる。その波頭に乗って走る現代のヒットラーでさえも、大破滅へ向かうサーフボードから降りることも向きを変えることも出来はしない。
ファシズムを食い止めること。そのためには、潔い敗北がいいのか、汚い勝利がいいのか、よくよく考えてみてもらいたい。


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