2014-05-09(Fri)
みんなそろって金持ちになれるか? ~貧困の原因を探る 2~
前回の記事で、付加価値、新たな富を生み出す源泉は3つあると書いた。
1.原価がタダの自然エネルギー
2.余分の原価がかからない人間の工夫
3.再生のための原価を支払わない資源エネルギー
ようするに、新たな価値を生み出す力を持っているのにコストがかからないもの、ということだ。
自然エネルギーも無理にたくさん集めようとすると収拾コストかかさんでしまうが、農業のように基本的にコストゼロで利用する場合は、種を作物に変化させるという付加価値を生み出す。
人間の工夫は、人間が明日も生きるための衣食住などのコストはかかるけれども、それは工夫をしてもしなくても同じなので、工夫をすることによって余分なコストはかからない。
種を播くにしても、時期や条件を工夫することで収穫を多くすることができるわけで、これも明らかに付加価値を生み出す。
ほとんどの原材料のコストは、同じものを再調達することが前提となっている。労働力だったら衣食住だし、部品や道具だったら再生産だ。そうでなければ、ほどなくして働く人は死に絶え、原材料も尽きてその産業は消滅する。
ところが、土から掘り出す資源については、再生産のコストを誰も負担しない。掘り出したり精製したり運搬したりするコストは支払うけれども、同じものを再生することは誰もしていない。コストゼロというよりも、踏み倒しといったほうが正確だろう。
だから、オイルは爆発的に付加価値を生み出した。
では、このなかでどの源泉の比重が大きいのかと言えば、これはもう圧倒的に資源エネルギー、石油である。
石炭蒸気機関で始まったと言われる産業革命が、石油というより効率の高い資源にとってかわることで、世界が激変する補との莫大な富、付加価値を生み出したことは、ここで言うまでもないだろう。
自然エネルギーと人間の工夫だけで付加価値を生み出してきた産業革命以前とは、成長の度合いが異次元だ。マルクスはこの大膨張の始まりの頃しか知らないから、人間の労働を付加価値の源泉と見た。それは間違っていないとは思うが、その後の展開は、人間の労働が霞んで見えなくなるくらい膨大な「石油」によって、膨大な付加価値が作り出されたのである。

(画像クリックで、引用元のページにリンク)
上記のグラフは年が対数になっており、実際の上昇カーブはもっとはるかに急激だ。しかも、これは一人当たりGDPだけれども、人口もどっと増えているわけで、石油の生み出した付加価値は、もうとんでもなく巨額だったわけだ。
では、これほどに膨大に生み出された付加価値は、人類みな平等で分配されたのだろうか。
もちろん、そんなわけはない。石油の再生原価を踏み倒すことのできたものが独占していった。
踏み倒すことのできた者とは誰か。石油を掘る利権を持っているもの、販売する利権を持っているもの、安く買う利権を持っているもの。要するに、産油国、石油メジャー、大きな工業である。
そのおこぼれは確かに庶民にもとどき、産業革命前と比べれば、モノという意味での生活水準は格段に上がっている。しかし、それはあくまでおこぼれであり、増加した付加価値のほとんどは石油の利権をもっている者たちが、石油の流れてくる上流から順にぶんどり独占した。その最後の絞りかすが庶民にも流れ着いたのである。
これが、マルクスのちょっと後の時代、1900年くらいまでのいわゆる産業資本主義の段階である。
このあと、さらに劇的な変化が起こる。それ自体は価値を生み出さない「カネ」が支配する、金融資本主義の時代だ。
これはもう大変なテーマなので、稿を改めたい。
とにかく、今日言いたかったことは、いくら付加価値が増えても、どんなに爆発的に増えても、けっしてみんなで仲良く豊かにはならないのだということ。
源泉がある以上、その源泉を握っているものが、生み出された付加価値のほとんどを独占してしまうのだということ。
会社や国や社会が豊かになれば、自分も豊かになれると錯覚している人が多いが、そんな優しい世の中だったらうれしいが、実際はそんなもんじゃない。
富の源泉はなにか、その蛇口を握っているのは誰か、ホースを抱えているのは誰か、大きな口に注ぎ込まれているのは誰か、それをハッキリと認識しないと、コロッと騙されて、言いように使われてほんのわずかな絞りかすをもらったあげく、喜んで「消費者」になり過剰に消費してまた貧乏になる ということから抜け出すことはできない。
次回は、石油という魔物をも飲み尽くす、「カネ」の世界について書いてみようと思う。
錬金術 ~貧困の原因を探る 3~


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1.原価がタダの自然エネルギー
2.余分の原価がかからない人間の工夫
3.再生のための原価を支払わない資源エネルギー
ようするに、新たな価値を生み出す力を持っているのにコストがかからないもの、ということだ。
自然エネルギーも無理にたくさん集めようとすると収拾コストかかさんでしまうが、農業のように基本的にコストゼロで利用する場合は、種を作物に変化させるという付加価値を生み出す。
人間の工夫は、人間が明日も生きるための衣食住などのコストはかかるけれども、それは工夫をしてもしなくても同じなので、工夫をすることによって余分なコストはかからない。
種を播くにしても、時期や条件を工夫することで収穫を多くすることができるわけで、これも明らかに付加価値を生み出す。
ほとんどの原材料のコストは、同じものを再調達することが前提となっている。労働力だったら衣食住だし、部品や道具だったら再生産だ。そうでなければ、ほどなくして働く人は死に絶え、原材料も尽きてその産業は消滅する。
ところが、土から掘り出す資源については、再生産のコストを誰も負担しない。掘り出したり精製したり運搬したりするコストは支払うけれども、同じものを再生することは誰もしていない。コストゼロというよりも、踏み倒しといったほうが正確だろう。
だから、オイルは爆発的に付加価値を生み出した。
では、このなかでどの源泉の比重が大きいのかと言えば、これはもう圧倒的に資源エネルギー、石油である。
石炭蒸気機関で始まったと言われる産業革命が、石油というより効率の高い資源にとってかわることで、世界が激変する補との莫大な富、付加価値を生み出したことは、ここで言うまでもないだろう。
自然エネルギーと人間の工夫だけで付加価値を生み出してきた産業革命以前とは、成長の度合いが異次元だ。マルクスはこの大膨張の始まりの頃しか知らないから、人間の労働を付加価値の源泉と見た。それは間違っていないとは思うが、その後の展開は、人間の労働が霞んで見えなくなるくらい膨大な「石油」によって、膨大な付加価値が作り出されたのである。

(画像クリックで、引用元のページにリンク)
上記のグラフは年が対数になっており、実際の上昇カーブはもっとはるかに急激だ。しかも、これは一人当たりGDPだけれども、人口もどっと増えているわけで、石油の生み出した付加価値は、もうとんでもなく巨額だったわけだ。
では、これほどに膨大に生み出された付加価値は、人類みな平等で分配されたのだろうか。
もちろん、そんなわけはない。石油の再生原価を踏み倒すことのできたものが独占していった。
踏み倒すことのできた者とは誰か。石油を掘る利権を持っているもの、販売する利権を持っているもの、安く買う利権を持っているもの。要するに、産油国、石油メジャー、大きな工業である。
そのおこぼれは確かに庶民にもとどき、産業革命前と比べれば、モノという意味での生活水準は格段に上がっている。しかし、それはあくまでおこぼれであり、増加した付加価値のほとんどは石油の利権をもっている者たちが、石油の流れてくる上流から順にぶんどり独占した。その最後の絞りかすが庶民にも流れ着いたのである。
これが、マルクスのちょっと後の時代、1900年くらいまでのいわゆる産業資本主義の段階である。
このあと、さらに劇的な変化が起こる。それ自体は価値を生み出さない「カネ」が支配する、金融資本主義の時代だ。
これはもう大変なテーマなので、稿を改めたい。
とにかく、今日言いたかったことは、いくら付加価値が増えても、どんなに爆発的に増えても、けっしてみんなで仲良く豊かにはならないのだということ。
源泉がある以上、その源泉を握っているものが、生み出された付加価値のほとんどを独占してしまうのだということ。
会社や国や社会が豊かになれば、自分も豊かになれると錯覚している人が多いが、そんな優しい世の中だったらうれしいが、実際はそんなもんじゃない。
富の源泉はなにか、その蛇口を握っているのは誰か、ホースを抱えているのは誰か、大きな口に注ぎ込まれているのは誰か、それをハッキリと認識しないと、コロッと騙されて、言いように使われてほんのわずかな絞りかすをもらったあげく、喜んで「消費者」になり過剰に消費してまた貧乏になる ということから抜け出すことはできない。
次回は、石油という魔物をも飲み尽くす、「カネ」の世界について書いてみようと思う。
錬金術 ~貧困の原因を探る 3~


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