2014-06-14(Sat)

自分のカネとひとのカネ ~貧困の原因を探る 7~

シリーズの7回目です。

私たちの日常生活では、自分のカネとひとのカネはハッキリ区別されます。区別しないと・・・・ドロボウとしてめでたく逮捕されます。

ところが、金額がどんどんどんどん大きくなっていくと、その区別が判然としなくなってくるのです。
とくに、国境を越えると、????なことが平然と普通に起きています。

私たちの稼ぎを食ってしまう3種類のシロアリ、アメリカシロアリ、国家のシロアリ、通津浦々のシロアリについてはシリーズ6の「シロアリいろいろ」で書きました。
なかでも、食い荒らす額の桁が多いのがアメリカシロアリです。

その実体をつかむ前に、いくつかの前書きを今日は書いてみます。

■■

新自由主義やグローバリズムに反対する人たちの中でも、実は大きく二つの流れがある。

一つは、お金なんかいらない。経済成長なんていらない。お金にできないものにこそ価値がある。という大ざっぱに言うと自給自足理想主義。

二つ目は、海外に流失している多額のお金を日本国内で使えば、日本はまだまだ経済成長できるし、財政も貧困もすぐに解決できる。という経済成長実現論。

この二つは、反グローバリズムという点では同じだけれども、理想とする社会像が正反対だったりして、あまり仲が良くない。
私の目にはどちらもいい話に見えるし、同時に欠点もあると思う。

自給自足派は、一足飛びに行けない理想郷の話であり、またその理想を語ることによって、今現実に起きている大収奪を見えにくくしてしまっている。究極的にはお金はいらないということと、目の前でとられているのを見逃すというのは、ぜんぜん違う次元のことだ。

経済成長派は、需要がどこまでも増え続けるという前提で話をしているように見える。たしかにお金をちゃんと回せば、供給を増やし続けることはできるだろうが、最終商品の需要はしょせん人間生活の中にあるのであって、人口があるていど決まっていれば、いくら新たな「必要」を考え出しても、いずれ頭うちになる。
最終的には、金利負担のない、すなわち成長の必要のない経済の姿を考え出さなくては、明るい未来はイメージできない。

だから、明日の姿と未来の姿として、両方を統合していくことが必要なのだと思う。
が、なかなかそういう提言を見かけないのが寂しいところだ。

「エンデの遺言」(講談社文庫)に出てくる、歴史上のいくつかの実験や、シルビオ・ゲゼルの「老化するお金」などは、大きな示唆を与えてくれる。この分野は、現実的な目をもちながら多くのひとによって考察を重ねていく必要がある。興味のある方は、ぜひこの本を読んで見ることをお勧めする。

とりあえず、ここで確認しておきたいことは、反新自由主義といっても一枚岩ではなく、これを区別して考えておくこと。それぞれのイイトコドリをするつもりにしておかないと、議論がごちゃごちゃになるということ。

■■

さて、本題の自分のカネとひとのカネ について。

ひとのカネをほぼ自分のカネにするにはどうしたらいいだろうか。
方法は4つある。

① 盗む
② 借りて返さない
③ 投資させる
④ 徴税する

①は簡単だが、いちおうこれは除外する。ただし、戦争やらかして奪うのは、ほとんどこれではないかと思われる。
ただ、今の日本でシロアリはこの方法ではなく、もっと楽なやり方をとっている。

②もかなり簡単だ。利子さえ払っておけば違法にはならない。貸さないとは言わせない、強制関係、従属関係があればすぐにできる。
イメージしやすいのは、稼ぎのいい子会社の利益を、強制的に親会社に貸し付けるようなもの。子会社の社員は自分たちが稼いだのに安月給で、借りた方の親会社の役員はゴッソリ報酬を手にしている。

③は、強制的にやらせるのは少し難しい。が、これも巧妙な仕掛けでかなりの額を投資させている。
これも会社で例えるなら、得意先から売上を回収する代わりに、その金額で得先の株を買うようなものだ。得意先は、代金は払わなくていいは、株は買ってもらえるは、ウハウハである。
ただし、これは投資なので、得意先が儲かったら配当は払うことになるし、買ってもらった株が大量になると経営にも口出しされるようにはなる。

④は、国内的なものである。税金、公的保険、年金など、国家権力によって強制的に徴収する。これはアメリカシロアリではなくて、国家のシロアリの管理するところになるが、国家のシロアリをしっかりと飼い慣らしておけば、国家を経由して②や③で貢がせることができる。

こうやって、アメリカシロアリは、日本人のカネ数百兆円を、まるで自分のカネのようにして使っている。
これがまさに、「植民地」ということなのだ。

属国とか植民地ということばが、政治スローガンのように大げさな表現だと思っている人も多いかもしれないが、そうじゃない。強制的にカネを貸し、返済を求めず、言われるままに投資までする。その額が国家予算の数年分、GDPの6割に及ぶ国は、正真正銘の植民地だ。

■■

それにしても、一応形式的には独立国で、独立した企業であるのに、どうやってここまで巨額の資金を「自分のもの」にすることができたのか。

そのルートは大きく二つあるらしい。

ひとつは、日本政府がアメリカ国債を買うという行為。円高防止のため、といって日銀がガンガンドルを買い、買ったドルでアメリカ国債を買う。その額実に100兆円にならんとしている。(政府は発表してない)
日本政府の国家のシロアリは、長年にわたってしっかりと飼い慣らされているので、惜しげもなくジャンジャン返済されない米国債を買いまくる。

この10年間だけでも、毎年毎年6.5兆円ばかり買い増し続けてきた。カネが余っているのならまだしも、日本政府も借金をして買っているのだから、バカもバカ、大馬鹿者としか言いようがない。

二つめは、輸出企業の売上だ。
輸出した商品の代金は、当然ながらドルで支払われる。年間の輸出は50兆円余り、この一定の割合が円に両替されず、ドルのまま使われる。ドルの通用する世界、つまりアメリカで、これまた米国債を買ったり、アメリカの銀行に預けられてアメリカ国内の企業に融資されたり、アメリカ国内での商取引や投資に回される。
ようするに、アメリカの稼ぎになるのである。

主にこの二つのルートで積み上げた「海外に置きっぱなしの資産」は、平成25年末の統計を見ると、総額で797兆770億円、負債を差し引いた純資産で325兆70億円にのぼる。1年間だけでも1割も増加している。

せめてこの3分の1でも日本に持ち帰って、国の分は国家予算に、民間の分は国内の投資に回せば、一気に景気は回復するはずだ、という経済成長派の言い分は、おそらく当たっているだろうと思う。
なにせ、1998年から延々とデフレを強制され、人為的な不況の中にあったのだから、いくら需要に限界はあると言っても当面は経済成長が可能だと思われる。

ただし、本気で3分の1でも国内に持ち帰ろう、なんてことを日本政府が言おうものなら、あっと言う間にスキャンダルや汚職疑惑が湧いて出てくる。ヘタをすれば、暗殺だってありうる。
属国、植民地というのはそういう扱いを受ける。

ではどうするか、というのは政治の課題であって、これは稿をあらためて書きたいと思う。

とにかく今日のテーマは、日本のカネはアメリカのカネ、その区別なんてほとんどない、ということを知っておいてもらいたい。
借りた金は返さなくちゃ、と考える真面目な読者の皆さんには理解しがたい世界が、ここには広がっている。



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