2014-11-02(Sun)
日銀の異次元追加緩和の正体とは
10月31日に日銀は、国債をさらに30兆円、合計で80兆円買い取ると発表しました。
おカネが増えると株が上がる、ということで一気に株価は上昇。まるでアベノミクスが息を吹き返したかのような勢いとなりました。
しかし、この日銀の追加金融緩和は、二重のインチキが隠されているのです。それを、わかりやすく書いてみたいと思います。
■■
大きなお風呂屋さんを想像してください。ひのもと湯です。
大きなお風呂、入りに来るお客さん、番台のおっちゃん、お湯を沸かすボイラー などなど。
ひのもと湯のお風呂には、ぬるくて少ない目のお湯が入っていました。だからお客さんもあまり来ず、閑古鳥が鳴いていました。
そこで番台のおっちゃん(お名前は黒田さんというそうです)は、お湯を増やすことにして、異次元の湯量を実現すると宣言しました。それを聞いた近所のお客さんは、ゆったりお風呂には入れるぞと、ひのもの湯に押し寄せました。
番台のおっちゃんは、湯船にドバドバ水を入れました。そして、ボイラー室を管理しているおぢさん(こちらは麻生さんという方です)はボイラーに重油を入れました。そんなこんなで、ひのもと湯は賑わいを取り戻したようです。店長は鼻高々です。(ご想像の通り、店長は安倍さんといいます)
店長は、水を増やしたのを1本目の矢、ボイラーに重油を入れたのを2本目の矢とか言って、自慢しまくりました。
ところが、お客さんが増え始めてから1年ほどしたとき、店長とボイラーのおぢさんは、重油を入れるのをケチり始めました。とたんにボイラーの火は消えかかり風前の灯火です。
お風呂のお湯はすぐには冷めませんし、お湯の量はたくさん入っているのでお客さんはたくさん入っています。でも、何か月かすると、あれ?なんだかぬるいぞ、と思い始めます。
とくに、はるばる外国からやってきた人たちは敏感です。今やお客さんの3割は外国から。しかも長風呂をしないので、出たり入ったりする頻度は7割も占めています。この外国のお客さんが、少しずつ減りはじめました。徐々にすき始めたのを見た店長と番台のおっちゃんは焦りました。
そこで、思いついたのが、異次元の追加注水です。すでに湯量は十分入っているのですが、かけ流し状態になるくらい水をいれるぜ~ と宣言したわけです。
近所のお客さんは、おお~と驚いて、どどっとひのもと湯に押し寄せました。これが先週金曜日のことです。
しばらくはこの盛況は続くでしょう。でも、何か忘れていませんか? そう、ボイラーです。ボイラーの重油は麻生さんがケチったままです。ちょろちょろ焚いているところに異次元の注水をしたのですから、お風呂はぬる~くなるに違いありません。しらばくすれば、押し寄せたお客さんも気が付くはずです。しかも、お客さんがたくさん入っているから、もっと重油をケチってもいいだろうと、安倍さんと麻生さんは言っているのです。
たぶん、近いうちにぬるいぬるいとお客さんは逃げ出すでしょう。しかも、外国のお客さんは、近所の人でにぎわっているうちに、目立たないように先に出ていこうとしています。
最後にのこった人たちが、水ぶろの中でぶるぶる震えている様子が目に浮かびます。
こうなったら、店長も番台のおっちゃんも、おら知らね~ と逃げ出すのでしょうか。
■■
ボイラーの火こそが、実体経済、生産活動です。
実体経済にはお金を回さないどころか、消費税を上げてより回らなくさせておいて、株などの金融にだけじゃぶじゃぶとお金を注ぐ。これが、黒田さんが宣言した 異次元の追加緩和です。
しかも、宣言をしただけで、まだ本当にお金をつぎ込んだわけではありません。
本当に30兆円も余計に国債を買うのでしょうか。
ここに、二つ目のインチキがあります。
私たちが毎月払っている年金のおカネ。これはGPIFという名前で保管されています。このGPIFの多くは国債を購入し、株に12%、外債(主に米国債)に23%に回されています。
それが、株に25%も回します、というのも同じ31日に決定されました。プラス13%、金額にして約17兆円ですから、これまた株屋さんたちは大喜びです。 ところが、よく見てみると、こういうことだそうです。
国内株式を「12%」から「25%」
外国債券を「11%」から「15%」
外国株式を「12%」から「25%」
国債などの国内債券の割合を「60%」から「35%」
要するに、外債(ほぼ米国債)を4%(5兆円)、外国の株を13%(17兆円)と、合わせて日本の株以上の大量買い増しをするというのです。とはいえ、いくら巨額のGPIFも総額は変わりませんから、その分は日本の国債を買う分を25%(32兆円)も減らすというのです。
GPIF 国内株割合25%に引き上げへ
NHK 10月31日
なんと驚きです。私たちが毎月毎月払ってためているはずの年金資金の、実に40%もが外国(ほぼ米国)に流出しているのです。いったい、この金は返ってくるのでしょうか。一度買ったら売ることを許されないのではないでしょうか。
また、日本の国債ならば、まわりまわって国家予算となって私たちに還流されることがないこともないですが、外国に投資したおカネは私たちのためには全く働いてくれないのです。
日銀とGPIFのバズーカ発表は、アメリカでのQE3終了の直後だったことに注意すべきです。アメリカでも同じように中央銀行(FRB)が大量に通貨を流す政策を行っていました。11月30日にそれをやめると発表したのです。当然アメリカでは流通するお金が不足することが予想されます。
これを補うのが、GPIF(私たちの年金資金)ということです。
そして、気が付かれたと思いますが、GPIFは国債を32兆円も売り払うというのです。
そうです。なんのことはない、日銀の異次元追加とは、GPIFが売り払う国債を日銀が買い取るというだけのことなのです。
追加緩和とGPIF改革で「総力戦」の構え
ロイター 2014年 11月 1日
要するに、日銀がGPIFから国債を買い取り、GPIFがその金で日本株と外国株と外国債券を買うということです。
しかも、日本株に回すカネよりも、外国(ほぼ米国)に回すカネのほうが多いのです。
もちろん、日本の実体経済には、1円もまわりません。
GPIF 26年度計画の変更 新旧対照
これを見ると、下のほうに小さく、プライベートエクイティファンドにも5%まで投資できる と書いてあります。
カーライルのようなところに投資して、米国の軍需産業を助けようという意味なのかもしれません。
いずれにしても、消費税を10%に決める間だけ好景気風になり、その後急速に落ち込んでいくでしょう。
その間に、日本株の3割を所有する外資は、さっさと売り抜けていきます。
繰り返しますが、異次元緩和とGPIFは、外資が日本株を売り抜ける間だけ株価を維持するために17兆円、直接外資に17兆円、米国債に5兆円。これだけの金を貢ぐのです。
その原資は、私たちが毎月払っている、年金の資金です。
黒田バズーカ2の標的は、①QE3終了で不足するアメリカの資金を補てんする ②外資が保有する日本株150兆円を売り抜けるまで高値を維持する ③一瞬だけ景気を上げて消費税10%を決定する この3つです。これだけです。
残されるのは、暴落した株券と、消費税10%の負担と、いっこうに良くならない景気と、枯渇して年金を満足に払えなくなったGPIFだけです。
■■
かつて「消えた年金」であれだけ問題になり国民は怒ったはずです。しかし、今、こんな由々しき事態が起きているのに、のんびりしたものです。
日本人は、60数年間あきらめて生きてきました。あきらめても飯は食えたからです。
もうそんな平和な時代は終わったということに、まだ気が付いていない人が多いようです。
そんな日本の中で、沖縄だけは違うようです。
「戦後民主主義」と「平和憲法」の裏の矛盾を一身に押し付けられてきた沖縄県民は、保革を超えて安倍政権に立ち向かっています。
11月16日に投票となる県知事選挙。オナガ雄志さんの勝利を信じていますが、敵も総力ですから安心はできません。
このオナガさんを先頭にした戦いで、重要な一翼を担っているのが、沖縄選出の衆議院議員である玉城デニーさんです。
保守の立場で基地問題に取り組んできた玉城デニーさんは、まさに保革連合の要にいるといってもいいでしょう。
その玉城デニーさんを、選挙直後の11月29日に大阪にお呼びします。
ぜひとも、多くの方に参加いただきたいと思います。
玉城デニー氏講演会
講演会は解散総選挙がほぼ確実のため、中止となりました。
詳細は、追ってお知らせいたします。
11月29日(土)18時開場 18時半開演 20時半終了予定
※玉城デニー衆議院議員のホームページはこちら http://d21tamaki.com/


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おカネが増えると株が上がる、ということで一気に株価は上昇。まるでアベノミクスが息を吹き返したかのような勢いとなりました。
しかし、この日銀の追加金融緩和は、二重のインチキが隠されているのです。それを、わかりやすく書いてみたいと思います。
■■
大きなお風呂屋さんを想像してください。ひのもと湯です。
大きなお風呂、入りに来るお客さん、番台のおっちゃん、お湯を沸かすボイラー などなど。
ひのもと湯のお風呂には、ぬるくて少ない目のお湯が入っていました。だからお客さんもあまり来ず、閑古鳥が鳴いていました。
そこで番台のおっちゃん(お名前は黒田さんというそうです)は、お湯を増やすことにして、異次元の湯量を実現すると宣言しました。それを聞いた近所のお客さんは、ゆったりお風呂には入れるぞと、ひのもの湯に押し寄せました。
番台のおっちゃんは、湯船にドバドバ水を入れました。そして、ボイラー室を管理しているおぢさん(こちらは麻生さんという方です)はボイラーに重油を入れました。そんなこんなで、ひのもと湯は賑わいを取り戻したようです。店長は鼻高々です。(ご想像の通り、店長は安倍さんといいます)
店長は、水を増やしたのを1本目の矢、ボイラーに重油を入れたのを2本目の矢とか言って、自慢しまくりました。
ところが、お客さんが増え始めてから1年ほどしたとき、店長とボイラーのおぢさんは、重油を入れるのをケチり始めました。とたんにボイラーの火は消えかかり風前の灯火です。
お風呂のお湯はすぐには冷めませんし、お湯の量はたくさん入っているのでお客さんはたくさん入っています。でも、何か月かすると、あれ?なんだかぬるいぞ、と思い始めます。
とくに、はるばる外国からやってきた人たちは敏感です。今やお客さんの3割は外国から。しかも長風呂をしないので、出たり入ったりする頻度は7割も占めています。この外国のお客さんが、少しずつ減りはじめました。徐々にすき始めたのを見た店長と番台のおっちゃんは焦りました。
そこで、思いついたのが、異次元の追加注水です。すでに湯量は十分入っているのですが、かけ流し状態になるくらい水をいれるぜ~ と宣言したわけです。
近所のお客さんは、おお~と驚いて、どどっとひのもと湯に押し寄せました。これが先週金曜日のことです。
しばらくはこの盛況は続くでしょう。でも、何か忘れていませんか? そう、ボイラーです。ボイラーの重油は麻生さんがケチったままです。ちょろちょろ焚いているところに異次元の注水をしたのですから、お風呂はぬる~くなるに違いありません。しらばくすれば、押し寄せたお客さんも気が付くはずです。しかも、お客さんがたくさん入っているから、もっと重油をケチってもいいだろうと、安倍さんと麻生さんは言っているのです。
たぶん、近いうちにぬるいぬるいとお客さんは逃げ出すでしょう。しかも、外国のお客さんは、近所の人でにぎわっているうちに、目立たないように先に出ていこうとしています。
最後にのこった人たちが、水ぶろの中でぶるぶる震えている様子が目に浮かびます。
こうなったら、店長も番台のおっちゃんも、おら知らね~ と逃げ出すのでしょうか。
■■
ボイラーの火こそが、実体経済、生産活動です。
実体経済にはお金を回さないどころか、消費税を上げてより回らなくさせておいて、株などの金融にだけじゃぶじゃぶとお金を注ぐ。これが、黒田さんが宣言した 異次元の追加緩和です。
しかも、宣言をしただけで、まだ本当にお金をつぎ込んだわけではありません。
本当に30兆円も余計に国債を買うのでしょうか。
ここに、二つ目のインチキがあります。
私たちが毎月払っている年金のおカネ。これはGPIFという名前で保管されています。このGPIFの多くは国債を購入し、株に12%、外債(主に米国債)に23%に回されています。
それが、株に25%も回します、というのも同じ31日に決定されました。プラス13%、金額にして約17兆円ですから、これまた株屋さんたちは大喜びです。 ところが、よく見てみると、こういうことだそうです。
国内株式を「12%」から「25%」
外国債券を「11%」から「15%」
外国株式を「12%」から「25%」
国債などの国内債券の割合を「60%」から「35%」
要するに、外債(ほぼ米国債)を4%(5兆円)、外国の株を13%(17兆円)と、合わせて日本の株以上の大量買い増しをするというのです。とはいえ、いくら巨額のGPIFも総額は変わりませんから、その分は日本の国債を買う分を25%(32兆円)も減らすというのです。
GPIF 国内株割合25%に引き上げへ
NHK 10月31日
なんと驚きです。私たちが毎月毎月払ってためているはずの年金資金の、実に40%もが外国(ほぼ米国)に流出しているのです。いったい、この金は返ってくるのでしょうか。一度買ったら売ることを許されないのではないでしょうか。
また、日本の国債ならば、まわりまわって国家予算となって私たちに還流されることがないこともないですが、外国に投資したおカネは私たちのためには全く働いてくれないのです。
日銀とGPIFのバズーカ発表は、アメリカでのQE3終了の直後だったことに注意すべきです。アメリカでも同じように中央銀行(FRB)が大量に通貨を流す政策を行っていました。11月30日にそれをやめると発表したのです。当然アメリカでは流通するお金が不足することが予想されます。
これを補うのが、GPIF(私たちの年金資金)ということです。
そして、気が付かれたと思いますが、GPIFは国債を32兆円も売り払うというのです。
そうです。なんのことはない、日銀の異次元追加とは、GPIFが売り払う国債を日銀が買い取るというだけのことなのです。
追加緩和とGPIF改革で「総力戦」の構え
ロイター 2014年 11月 1日
要するに、日銀がGPIFから国債を買い取り、GPIFがその金で日本株と外国株と外国債券を買うということです。
しかも、日本株に回すカネよりも、外国(ほぼ米国)に回すカネのほうが多いのです。
もちろん、日本の実体経済には、1円もまわりません。
GPIF 26年度計画の変更 新旧対照
これを見ると、下のほうに小さく、プライベートエクイティファンドにも5%まで投資できる と書いてあります。
カーライルのようなところに投資して、米国の軍需産業を助けようという意味なのかもしれません。
いずれにしても、消費税を10%に決める間だけ好景気風になり、その後急速に落ち込んでいくでしょう。
その間に、日本株の3割を所有する外資は、さっさと売り抜けていきます。
繰り返しますが、異次元緩和とGPIFは、外資が日本株を売り抜ける間だけ株価を維持するために17兆円、直接外資に17兆円、米国債に5兆円。これだけの金を貢ぐのです。
その原資は、私たちが毎月払っている、年金の資金です。
黒田バズーカ2の標的は、①QE3終了で不足するアメリカの資金を補てんする ②外資が保有する日本株150兆円を売り抜けるまで高値を維持する ③一瞬だけ景気を上げて消費税10%を決定する この3つです。これだけです。
残されるのは、暴落した株券と、消費税10%の負担と、いっこうに良くならない景気と、枯渇して年金を満足に払えなくなったGPIFだけです。
■■
かつて「消えた年金」であれだけ問題になり国民は怒ったはずです。しかし、今、こんな由々しき事態が起きているのに、のんびりしたものです。
日本人は、60数年間あきらめて生きてきました。あきらめても飯は食えたからです。
もうそんな平和な時代は終わったということに、まだ気が付いていない人が多いようです。
そんな日本の中で、沖縄だけは違うようです。
「戦後民主主義」と「平和憲法」の裏の矛盾を一身に押し付けられてきた沖縄県民は、保革を超えて安倍政権に立ち向かっています。
11月16日に投票となる県知事選挙。オナガ雄志さんの勝利を信じていますが、敵も総力ですから安心はできません。
このオナガさんを先頭にした戦いで、重要な一翼を担っているのが、沖縄選出の衆議院議員である玉城デニーさんです。
保守の立場で基地問題に取り組んできた玉城デニーさんは、まさに保革連合の要にいるといってもいいでしょう。
その玉城デニーさんを、選挙直後の11月29日に大阪にお呼びします。
ぜひとも、多くの方に参加いただきたいと思います。
玉城デニー氏講演会
講演会は解散総選挙がほぼ確実のため、中止となりました。
詳細は、追ってお知らせいたします。
11月29日(土)18時開場 18時半開演 20時半終了予定
※玉城デニー衆議院議員のホームページはこちら http://d21tamaki.com/


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