2016-01-27(Wed)

炊飯器の蓋から経済を考えてみる

たぶん1980年代だと思う。テレビコマーシャルで、炊飯器の蓋がはずれるということがセンセーショナルに宣伝された。
もちろん、はずして洗えば衛生的なのだろうが、私はあのコマーシャルを見て、日本の資本主義は峠を越えてしまったのだなと、その当時漠然と感じたのを覚えている。

なぜ蓋がはずれることと、資本主義の衰退が関係するのか。
蓋がはずれることに限らず、いわゆる「付加価値をつける」と言われることの多くが、経済をダメにしているのではないかと、私は考えている。なぜか。

資本主義の社会というのは、少しずつでも成長していないと成り立たない。
役人の給料などの社会的な費用が必要なので、生産活動がプラスマイナスゼロでは税金が賄えなくなり社会は破綻する。
逆に、プラスマイナスゼロの会社から税金をむしり取ったら、わが明月社のようにジリ貧で苦しまなければならない。

資本主義が社会を構成せず、国家も運営せず、むき出しの経済活動だけで成り立つのであれば別だが、そうで無い以上は必ず成長し続けなければならない宿命にある。
では、経済成長とは何かといえば、シンプルに考えれば生産-消費 のサイクルが拡大することだ。たくさん作ってたくさん売れる、ということ。
暮らしが豊かになるとか、人口が増えるとか、戦争や災害で一時的な欠乏が生じた後とか、そんな現象で経済は成長していく。

では、こういう方法はどうだろうか。
買ったものを半分捨てるという法律を作るのだ。確実に売り上げも生産も倍になる。成長率100%の妙案ではではないだろうか。

言うまでないけれども、買ったものを半分捨てる社会では、人々はどんどん貧乏になって必要以上のものを買うことができなくなり、必要最小限のものを買い、それでも半分捨てるから栄養失調になり、最後は死に絶えるに違いない。
ここから分かることは、成長してたくさん買ったものは、次のより多くの生産のために役立たなければ、貧乏になるだけだ、ということだ。

おいしいご飯を食べて健康になるのなら、それは生産効率のアップになるし、医療保険という社会的費用の節約にもなる。
しかし、必要以上に食べたり、使える炊飯器を捨てて新しいものを買う行為は、実は、先ほどの半分捨てる社会と本質的におなじなのだ。

必要を満たすまでは、経済は順調に成長するけれども、そのピークを過ぎると、無駄なものを買わせて無理矢理に売り上げを拡大し、成長していることにしてしまうのである。
1980年代というのは、まさにそのような曲がり角であり、あの蓋の取れる炊飯器の賑やかしいコマーシャルは、その象徴だったように思えるのだ。

もちろん、純粋に無駄なものというのはあまりなく、次の生産に寄与する面と無駄な面とがいろいろな割合で共存している。
例えば、携帯やスマホ。なるほど、生産効率のアップにも役に立っているだろう。しかし、個人が毎月何万も負担する以上の寄与があるだろうか。かなりの部分はただ消費され、多くの人は携帯やスマホのために貧乏になっている。

パソコンは、5万円で5年くらい使えるから、これは元が取れそうな気がする。
しかし、年賀状印刷しか使っていないようなパソコンは、経済的には捨てているのとほぼおなじだし、何より今は必ずネットがセットになり、これまた毎月数千円取られている。
ネットにつながったことにより、給料が数千円上がるような効率化ができているとは思えない。

今、あえて家計のことに話を絞っている。
スマホもネットも、会社では充分に元が取れているだろうが、「売り上げ」というのは最終的には家計だ。
工場や会社での需要は、あくまで何かを作って売るための中間なので、最終商品を家計が買ってくれなければ、これまた無駄な在庫を作るだけになり、やはり半分捨てる社会とおなじことになる。

こうして考えてみると、現在の日本の家族の暮らしは、恐るべき無駄だらけではなだろうか。
半分捨てる法律こそ無いけれども、食品は実際におびただしい量が捨てられている。聞くところでは、日本の食糧の2割以上にあたる1800万トンが廃棄され、その半分近くはまだ食べられる「食品ロス」だとか。

農水省の資料
(PDF開きます)

その他、家計で購入しているものを見ても、それは過去の生産拡大にはたしかに寄与しているけれども、次の生産の役に立つものがどれだけあるだろうか。
あってもなくてもいいものを、「欲しい!!」と思わされて、徐々に貧乏になりながら購入し、見せかけの経済成長を支えてきたのだ。

分かりにくいのは、全体のボリュームが大きくなっているので、いらないものに囲まれた日本人は、一見豊かに見える。
しかし、明らかに成長の速度よりも無駄を作る速度の方が大きいので、無駄を全部取り除いたむき身の姿では、80年代以降、徐々に貧乏になってきたのである。

そこに加えて、以前から指摘しているように、国際金融資本が日本の富をどばっと海外に流出させ、海外での売り上げは対外資産という美名とは裏腹に日本に持ち帰ることもできず、さらにはシロアリ官僚の皆さんが特別会計やら独法やらの隠れ資産にため込んでしまうのだから、これはもう貧乏にならない方がオカシイ。

世界を食い物にする国際金融資本や、シロアリ官僚などから解放されないと、自分たちが働いた対価をまともに手に入れることはできないのであって、まず第一義的にはこれを批判しなければならない。
と同時に、今はまだ夢物語かもしれないが、「ではどうするか」も考えるべきだと思う。

生きて生産するための需要は充足してしまった社会で、次の一歩はどう進むべきなのか。
この答えを探さなければ、いくら政権交代と言っても、いざ交代した後におろおろして、結局シロアリさんたちに手玉にとられることになる。

学術的なゲームや言葉遊びではなく、10年後の進むべき方向を、今から考えなくてはならない。

炊飯器の蓋のことを思い出しつつ、そんなことを考えている。



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No title

>政権交代
社さ自はお試しだった、、。そして社会党を消した。
民主党もやってみたら、官僚と経済界のタッグで大バッシングされちゃったじゃないですか、、。
だから今、戦争なんでしょう(恐)
JR東海の葛西は「そろそろ戦争して欲しいよな」と云ったそうですが、これが官僚と経済界の本音なんでしょう。
しかし現代は昔と違って戦争で失ったエネルギーを取り返せない時代なんだと思います。鉄砲の弾は飛び出したら、そこまでに得たエネルギーを霧散霧消させます。
さて戦争したい連中のお手並み拝見!
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