2016-02-15(Mon)

たとえば署名運動の有効性を考えてみる

いろんな集会に行くと、入り口で多種多様な署名を集める人たちが並んでいる。
頼まれればなんとなく書いたりするけれども、さて、それが厳密にどういう署名なのかは理解していないし、集まったことでどのような効果があるのかもわからない。

ネット署名にいたっては、なんとかorgとかいうサイトから、次から次へ署名の要請メールが送られてくる。もう訳が分からない。
たしかに署名はカネもかからないし、時間もいらない一番簡単な運動参加かもしれない。
書いたことによって、そこから問題に関心を持つかもしれない。
そのような効用は否定できない。

また、こんな記事もあって、ちょっとビックリ。こんな効果もあるのか。。。と。
署名運動の効果を考える(愛知県保険医協会)

ここで書かれている結論はなんと、署名用紙が「魔法の『増患』ツール」だというのだ。
患者に「病院の窓口負担権限を求める署名用紙」を送ったところ、良い医者だと思われて患者が増えた、というお話。
まあ、悪いことではないけれども、「増患ツール」と言われると、患者側の立場としては鼻白んでしまう。

こんな例も含めて、署名運動にどんな効果があるのかを考えることは、なかなか良い頭の運動になるはずだ。

■■

まずは、署名で求めている項目が、そのまま実現するケース。また、満額回答でなくとも、それなりに要求が叶えられるケース。
それはどのくらいあるのだろうか。

これを考えるには、まず55年体制という戦後の政治の枠組みを理解しておく必要がある。
自民党と社会党という1.5大政党制であり、米国や英国の2大政党制とは違う形での調整機構があった。
2大政党制は政権交代によって、極端に流れないように調整してきたが、日本の1.5大政党制は、自民党が政権を独占しつつ、社会党が要求窓口になって自民党に若干の妥協を迫る、というシステムだった。

その背景にあったのは、ひとつには戦後復興から高度経済成長へと進んだ経済的なゆとりであり、もう一つはあまり国民を怒らせると共産主義革命を起こされるかもしれないという警戒感だった。
そんな中で、(意地の悪い言い方をすれば)自民党は社会党を「アドバイザー」として国民の生活を保障する政党となり、長期安定政権を築くことができた。

このような55年体制下では、社会党を窓口とした要求は、それなりに実現される可能性があった。署名運動もテーマによっては実効性があったのである。
もちろん、あらかじめ大枠は自民党と社会党の間で決められていたようだが、署名を積み上げることで社会党も強くでることができたから、妥協ラインを押し上げることができたと想像できる。

この55年体制が崩れたのは、一つにはソ連崩壊で「共産主義」に対する警戒が薄れたこと、さらに、経済成長に陰りが出て経済的なゆとりがなくなったこと、これらが1990年代の始まりとともに一気に進行したことによる。
そんな時代要因のまっただなかで、小沢一郎氏が妥協の1.5大政党ではなく、政権交代の2大政党を目指して新進党を作り、自民党長期政権を倒したことで、名実ともに55年体制は終わりを告げた。

とどめを刺したのは、社会党が自民党と連立政権を組むという驚天動地の出来事で、これによって社会党は自らの使命を自ら断ち切ってしまった。

■■

さて、こうして崩壊した55年体制の後には、小沢氏が思い描いた2大政党制はやってこなかった。
国民の中にそのような基盤がないところに、政党の枠組みだけ2大政党にしたとことで、長続きはしなかったのだ。

結局、自民党と民主党の1.5大政党制に後戻りしたあげく、民主党は社会党ほどに庶民の要求窓口にはならず、自民党も妥協しながら政権を維持するという手法をとらなくなっていった。
その集大成が小泉政権だ。

首相官邸が権力を掌握し、独裁的にものごとを進めていく現在も行われているやりかたは、小泉政権で確立された。
もはや55年体制など跡形もなく、文句を言う自民党内勢力に対して刺客候補を送るという苛烈な手法で権力を手に入れた。

こうなると、署名運動というものは直接的な効果を持ち得なくなる。
まず、政権に直にとどく窓口がない。かつての自民党と社会党のような妥協のためのシステムがないのだから、積み上がった署名は提出先に積み上がったままになる。

もちろん、個別課題の中には成果を得たものもあっただろう。
いくら小泉以降の自民党でも、国民が死に絶えてしまっては働いてGDPを稼ぐものも、税金を払うものもいなくなるということは無視できないわけで、まったく何に一つ妥協がなかったとは思わない。

しかし、署名運動は直接の効用としては、ほぼ意味がなくなったと言えるのが、この時期からだ。
受け取った官邸や省庁は、そのまま公安にまわして、住所氏名を記録することにしか使っていないだろう。

■■

このような非妥協な自民党をさらにパワーアップさせたのが、2011年の原発事故だったように思う。
なにがパワーアップかというと、「国が無くなってもいい」と自民党の一番深いところで決断したのではないか。
これまでは、いくら独裁でも「日本を自分の縄張りとして維持する」という前提はあった。利権の源泉は「日本」なのであり、それが潰れてしまっては困る、ということが前提だった。

しかし、3.11以降は、民主党も自民党も、「日本を維持する」「再生産する」ことをあきらめているように見える。
10年から20年くらいのスパンで、今ある資産を絞れるだけ絞って、絞りかすはアジアの東端に捨てる、という決断をしたように見える。

この決断は、自民党のなかでも、もし気がつけば動揺するし造反もあるだろう。
だからこそ、安倍政権は極端な独裁をしき、閣僚にはスネに傷があって逆らえないし、そもそもそういう深いことを考えない連中ばかりをわざと集めている。

ここまで事態が来ている中で、署名運動をする意味が何か残っているのか、私には分からない。

私が考えつく逆転のシナリオは、やはり10人ー100人ー1000人だ。
それにつながるような署名であれば、それは意味があるかもしれない。
それ以外に署名を集めて官邸に差し出すのは、みすみす名簿を敵に渡すことにしかならないのではないかと、私は危惧している。




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No title

署名をするなら10人ー100人ー1000人を作り出せる人の為にするべきですね、
 アジアの東にウチ捨てる覚悟を安倍は未だ躊躇しているような気がしますね。石破はきっと捨てるでしょう。そんな覚悟を感じる人間だな。ミンスは全体で捨て切れていないなぁ、、。だから岡田と仲間は未だフラフラしている。覚悟が出来ないんでしょう。
まぁ、されても困るんですがね(悲)
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