2016-04-25(Mon)
北海道5区補選の結果をちょっと分析してみる
昨日の北海道5区補選、イケマキ候補の敗戦は残念至極。
とは言え、ここまで迫られたことに安倍晋三の心胆寒からしめたのは確かなようだ。
衆参同日選、首相見送り 熊本地震の対応優先
2016年4月25日 朝日
地震対策とか言ってるが、このタイミングなのだから本音は丸わかりだ。
候補者のキャラクターもばっちりで、野党共闘もそれなりに機能しているように、遠目には見えた。
たしかに、善戦だったと言えるのだろう。
しかし、善戦だったという総括からは何も生まれない。
現場を知らないものが言うのもおこがましいが、少し数字を睨んで分かることだけ書いておきたい。
資料は、開票結果、NHKの出口調査、北海道新聞の世論調査 それに古谷経衡氏の分析記事だ。
三つの基礎資料から数字を拾って一覧にすると下記のようになる。
(クリックで拡大)
上の表の政党支持率はNHKの出口調査記事から推定したもの。
2行目の支持率(棄権含)は、1行目に投票率(57.63%)を掛けたもの。棄権の支持者もカウントした。
各候補者の獲得率は、各政党支持者の何割がその候補に投票したか。これも出口調査の文言から推定。ただし惜敗率が実際に近くなるように少し調整してある。
下の表は公示直後に行われた世論調査から。
政党支持率は世論調査の数字そのまま。
投票行動率は、それらの人がどれだけ投票に行ったかの推定。上の表の支持率(棄権含)との比較である。
こうしてみると、イケマキ候補の野党共闘は、取るべき票はしっかりまとめており、自民党はむしろ支持者が投票に行かなかった率がやや高い。また大地の票が大きく自民候補のお役に立った形跡は無い。
よって、趨勢としては自民が苦しく、野党が勢いのある選挙だったと、数字からも想像することができる。
ではなぜ勝てないのかと言えば、野党が取るべき票を取っただけでは勝てない ということだ。
古谷経衡氏の記事(野党共闘は成功したのか?北海道5区補選分析)に、前回選挙との比較が出ているが、要するに自民党は前回とほぼ同じ票数で、野党は前回の民主+共産の票数なのである。
つまり、これでは勝てないということは、最初から分かっていたことなのである。
だからイケマキ陣営は、あえて(見え見えなのに)政党色を薄め、旗を隠し、市民選挙のような装いを凝らして無党派層の積み増しを狙ったのだろう。残念ながら、その成果は出なかった。
表の最後を見ると、世論調査で無党派だった43.5%のうち、選挙に行ったのが約3割。
その中の約7割がイケマキ候補に投票しているので、要するに無党派の約2割は獲得したと言うことになり、それはたぶん前回とほぼ同じだった。
後でも書くが、政党を隠すなどというのは有権者をちとバカにしたやり方ではないだろうか。
民進と共産が実態だというのは誰でもわかること。それを表に出さないことが無党派の取り込みになるというような発想は、もうやめるべきだ。
無党派を獲得できない理由は、他にあるはずだ。そこから目をそらして、こんなゴマカシに逃げてはいけない
■■
この表をいじって無党派の投票率を50%まで上げると、獲得率が同じならばイケマキ候補は逆転する。投票率50%x獲得率70%=35%の無党派層から投票をしてもらえば、ギリギリ勝てる目がある。40%なら勝てる。
これを全体の投票率にすると、約10%アップで68~70%程度と言うことになる。
選挙にすら行かない人も含めた無党派層の40%に実際に自分に投票してもらうにはどうしたらいいのか。
これが、これから選挙をたたかうための、全国でほぼ共通した課題ではないか。
最近の投票率などを見ていると、無党派の40%とか投票率70%と言うと途方も無い数字に見えるが、実はあの2009年総選挙は投票率69.28%だった。わずか7年前だ。
途方もない数字なのではない。この7年間で何かが失われ、何かが劣化してしまったのだ。
それは、私は「リアリティ」だと思う。
政策のリアリティ。明日のメシなのか、絵に描いた餅なのか、ということ。
それは、候補者が本気かどうか ではない。
近い将来に政権を取る可能性が見えるかどうか だ。
圧倒的多数の有権者とは普通の生活者であり、日々に追われて生きている。
コイズミからアベノミクスに至るカイカクの犠牲になり、給料は下がり待遇は悪化し、もうノンビリ何十年先の政策を聞いている余裕はない。
明日、せめて2~3年で実現しそうな話でなければ、絵に描いた餅にしか見えないし、そんなものにわざわざ投票所まで行って票を入れようとは思わない。
北海道5区補選の場合、補選にもかかわらず本選と同じ投票率だったのだから、一般論で言えば充分高い投票率だったとも言える。
しかし、投票率も得票率も、ほぼ前回と同じだったと言うことは、あのイケマキ候補ですら、無党派層の目には絵に描いた餅にしか見えなかったのだ。
それは、候補や陣営の問題と言うよりは、やはり全国の野党共闘のもたつき感、バラバラ感のせいだ。全国ニュースを見ていれば、本気で政権とる気がないのは一目瞭然。
5区はたしかに野党共闘だけれども、実際は無所属だ。無所属ということは、国会に行ってもたったひとり。質問すらほとんどする機会がない。
無所属の候補がもし政権交代を言ったとしても、あまりにもリアリティが乏しい。
政権交代を目指すならば、政党を隠すなどと言うのは愚の骨頂だ。
政党が垣根を越えて協力し、そこに無党派の市民も合流する、という普通の姿を普通に見せればいいではないか。そうでなければ、政権をとって本当に政策を実現してくれるのだな、とは思えない。
繰り返しになるが、多くの有権者は「政権とりそうだ」「政権とる気まんまんだ」という臭いを感じなければ、投票には行かない。
ウナギの写真は食えないけれども、さばいて焼いていれば「近々食えそうだ」と言う予感がする。しばらくは煙の臭いでご飯を食べながら、我慢して待ってみようという気にもなる。
そこが、今回の北海道5区補選でも決定的に欠けていたということではないだろうか。
附記:ここで政党と書いているのは、今回の選挙に限って言えば既存の党のことだが、近未来を考える時は、既存の党だけでは無い。以前に書いたまったく新しい党の必要性とも関連する。漠然とした市民派や無所属ではなく、ポデモスやシリザのように明確に政権を目指す党でなければならない、ということ。


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とは言え、ここまで迫られたことに安倍晋三の心胆寒からしめたのは確かなようだ。
衆参同日選、首相見送り 熊本地震の対応優先
2016年4月25日 朝日
地震対策とか言ってるが、このタイミングなのだから本音は丸わかりだ。
候補者のキャラクターもばっちりで、野党共闘もそれなりに機能しているように、遠目には見えた。
たしかに、善戦だったと言えるのだろう。
しかし、善戦だったという総括からは何も生まれない。
現場を知らないものが言うのもおこがましいが、少し数字を睨んで分かることだけ書いておきたい。
資料は、開票結果、NHKの出口調査、北海道新聞の世論調査 それに古谷経衡氏の分析記事だ。
三つの基礎資料から数字を拾って一覧にすると下記のようになる。

(クリックで拡大)
上の表の政党支持率はNHKの出口調査記事から推定したもの。
2行目の支持率(棄権含)は、1行目に投票率(57.63%)を掛けたもの。棄権の支持者もカウントした。
各候補者の獲得率は、各政党支持者の何割がその候補に投票したか。これも出口調査の文言から推定。ただし惜敗率が実際に近くなるように少し調整してある。
下の表は公示直後に行われた世論調査から。
政党支持率は世論調査の数字そのまま。
投票行動率は、それらの人がどれだけ投票に行ったかの推定。上の表の支持率(棄権含)との比較である。
こうしてみると、イケマキ候補の野党共闘は、取るべき票はしっかりまとめており、自民党はむしろ支持者が投票に行かなかった率がやや高い。また大地の票が大きく自民候補のお役に立った形跡は無い。
よって、趨勢としては自民が苦しく、野党が勢いのある選挙だったと、数字からも想像することができる。
ではなぜ勝てないのかと言えば、野党が取るべき票を取っただけでは勝てない ということだ。
古谷経衡氏の記事(野党共闘は成功したのか?北海道5区補選分析)に、前回選挙との比較が出ているが、要するに自民党は前回とほぼ同じ票数で、野党は前回の民主+共産の票数なのである。
つまり、これでは勝てないということは、最初から分かっていたことなのである。
だからイケマキ陣営は、あえて(見え見えなのに)政党色を薄め、旗を隠し、市民選挙のような装いを凝らして無党派層の積み増しを狙ったのだろう。残念ながら、その成果は出なかった。
表の最後を見ると、世論調査で無党派だった43.5%のうち、選挙に行ったのが約3割。
その中の約7割がイケマキ候補に投票しているので、要するに無党派の約2割は獲得したと言うことになり、それはたぶん前回とほぼ同じだった。
後でも書くが、政党を隠すなどというのは有権者をちとバカにしたやり方ではないだろうか。
民進と共産が実態だというのは誰でもわかること。それを表に出さないことが無党派の取り込みになるというような発想は、もうやめるべきだ。
無党派を獲得できない理由は、他にあるはずだ。そこから目をそらして、こんなゴマカシに逃げてはいけない
■■
この表をいじって無党派の投票率を50%まで上げると、獲得率が同じならばイケマキ候補は逆転する。投票率50%x獲得率70%=35%の無党派層から投票をしてもらえば、ギリギリ勝てる目がある。40%なら勝てる。
これを全体の投票率にすると、約10%アップで68~70%程度と言うことになる。
選挙にすら行かない人も含めた無党派層の40%に実際に自分に投票してもらうにはどうしたらいいのか。
これが、これから選挙をたたかうための、全国でほぼ共通した課題ではないか。
最近の投票率などを見ていると、無党派の40%とか投票率70%と言うと途方も無い数字に見えるが、実はあの2009年総選挙は投票率69.28%だった。わずか7年前だ。
途方もない数字なのではない。この7年間で何かが失われ、何かが劣化してしまったのだ。
それは、私は「リアリティ」だと思う。
政策のリアリティ。明日のメシなのか、絵に描いた餅なのか、ということ。
それは、候補者が本気かどうか ではない。
近い将来に政権を取る可能性が見えるかどうか だ。
圧倒的多数の有権者とは普通の生活者であり、日々に追われて生きている。
コイズミからアベノミクスに至るカイカクの犠牲になり、給料は下がり待遇は悪化し、もうノンビリ何十年先の政策を聞いている余裕はない。
明日、せめて2~3年で実現しそうな話でなければ、絵に描いた餅にしか見えないし、そんなものにわざわざ投票所まで行って票を入れようとは思わない。
北海道5区補選の場合、補選にもかかわらず本選と同じ投票率だったのだから、一般論で言えば充分高い投票率だったとも言える。
しかし、投票率も得票率も、ほぼ前回と同じだったと言うことは、あのイケマキ候補ですら、無党派層の目には絵に描いた餅にしか見えなかったのだ。
それは、候補や陣営の問題と言うよりは、やはり全国の野党共闘のもたつき感、バラバラ感のせいだ。全国ニュースを見ていれば、本気で政権とる気がないのは一目瞭然。
5区はたしかに野党共闘だけれども、実際は無所属だ。無所属ということは、国会に行ってもたったひとり。質問すらほとんどする機会がない。
無所属の候補がもし政権交代を言ったとしても、あまりにもリアリティが乏しい。
政権交代を目指すならば、政党を隠すなどと言うのは愚の骨頂だ。
政党が垣根を越えて協力し、そこに無党派の市民も合流する、という普通の姿を普通に見せればいいではないか。そうでなければ、政権をとって本当に政策を実現してくれるのだな、とは思えない。
繰り返しになるが、多くの有権者は「政権とりそうだ」「政権とる気まんまんだ」という臭いを感じなければ、投票には行かない。
ウナギの写真は食えないけれども、さばいて焼いていれば「近々食えそうだ」と言う予感がする。しばらくは煙の臭いでご飯を食べながら、我慢して待ってみようという気にもなる。
そこが、今回の北海道5区補選でも決定的に欠けていたということではないだろうか。
附記:ここで政党と書いているのは、今回の選挙に限って言えば既存の党のことだが、近未来を考える時は、既存の党だけでは無い。以前に書いたまったく新しい党の必要性とも関連する。漠然とした市民派や無所属ではなく、ポデモスやシリザのように明確に政権を目指す党でなければならない、ということ。


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