2016-10-22(Sat)
危ない地盤とは
地盤 といえば 地盤・看板・鞄 を思い浮かべる人が、このブログの読者には多いだろうけれども、今日の話は地震のおきる地盤。
昨日の鳥取地震は、大阪でもかなりの揺れになり、地面がゆらゆらと大きく長く揺れるのが体感できた。
夜になって事務所に戻ってみると、なんと棚からファイルケースが落ちていた。
震源からは170kmも離れているのに、驚きである。
思い起こせば、2011.3.11 東日本大震災の震源は700kmも離れているのに、あのときもうちの事務所は結構揺れた。
やはり、事務所のある江坂は、地盤が悪いのだ。
と、このように、地震が起きる度に「地盤がいい」とか「悪い」ということが話題になる。
家を建てるお施主さんからも、「うちの地盤は大丈夫ですか」と良く聞かれる。
実は、答えはそう簡単ではない。
なぜかというと、地盤には3種類あるからだ

地震が起きるのは、深いところ。今回の鳥取地震が10km、熊本地震が12km、阪神淡路が16km、そして東日本が24kmだった。絵で言うと、二重線になっている隙間くらい。
この深さでの「いい」ちじゃ「悪い」というのは、地震が起きやすいかどうか、ということになる。
活断層があるかどうか、とか、東日本のようなプレート型の可能性が高いかどうか、など。
プレート型については、ある程度可能性が高いか低いかは分かっている。でも、太平洋側はほとんどどこでも危ないし、しかも、いつおきるかは誰にも分からない。
断層型の場合は、これはもう、どこでも起きうる。
鳥取、なぜ大地震多い 気象庁「活断層なくても起きる」
2016年10月22日
「今回のような地震は活断層がない所でも起きる」。気象庁では午後3時40分から青木元・地震津波監視課長が記者会見した。震源付近で明確な活断層が確認されていないことや、地下の浅い場所が押し合って起きる「横ずれ断層型」であることを明らかにした。(引用以上)
ちなみに、上記の記事で「ひずみ集中帯」の印が描かれているのは、ちょうど島根原発から高浜原発にかけてである。
これまで原発の安全審査では、活断層はない、とか、これは活断層じゃなくて破砕帯だとかなんとか言って強引に「安全」にしてきたけれど、残念ながら「活断層なくてもおきる」と気象庁が断言してしまった。
■
話を地震波に戻そう。
震源で発生した地震波は、プレートの岩盤を何十キロも伝わって、地表面の近くまで到達する。
真上に行けば10kmくらいだけど、波動は全方向に進むから、横向きなら100kmとか1000kmとか進んでいく。
そして、あと100mくらいで地面だ、というところで、急に柔らかい地層に突入する。
絵で言うと、外側の線の太さにもならないくらい。
この層がどのくらい柔らかいかは、地質学でちゃんと分かっている。
産総研の地質図Navi というのを見れば、自分の家の地層は一目瞭然
https://gbank.gsj.jp/geonavi/
使い方は、ヘルプなどみて研究して下さい
この地図の凡例には難しい地層の名前がたくさん出てくるけれども、地震との関連では、「1万8千年前から現在まで」なのか、それより古いのか が運命の分かれ道。
「1万8千年前から現在まで」の場合は結構揺れやすい、それより古い時はわりと揺れにくい、ということ。
新しい地層は柔らかいので、地震の震幅がゆっくり大きくなる。ゆっさゆっさ
古い地層は固いので地震の震幅は小さくて早くなる。ガタガタガタガタ
さらに進んで、もう地表すれすれの数十メートルまでくると、ごく最近(数千年くらい)に堆積したり火山灰他積もったり埋め立てたりした表層地盤にぶち当たる。中には、ふわっふわのところも少なくない。
大阪平野なんかは 「プリン地盤」なんて言われている。
ここがフワフワだと、さらにユラユラが大きくなる。
最近はもっと便利なのができて、数百メートルからの深部地盤と、数十メートルからの表層地盤を、一気に診断してくれるサイトがある。防災科学技術研究所の地震ハザードカルテ。
http://www.j-shis.bosai.go.jp/labs/karte/
自分の家を探してクリック、診断ボタンを押すと、カルテを作成してくれる。
いちばん注目は、真ん中左にある「地盤増幅率」
これが1.5を超える場合は、ゆれが大きくなりやすくて、要注意。
ちなみに、うちの事務所が入っているビルの位置のカルテはこれ

やはり、棚からファイルが落ちた原因が判明
「地盤増幅率」=2.16 である
■
さて、この数十メートルの表層地盤は、地震だけではなくて、地震も何もない時でも、建物に悪さをする可能性がある。
表層のなかの最表層、10mくらいまでのところがフワフワすぎると、建物が自分の重さで沈んでしまうというトンデモナイ現象がおきる。
大阪平野やウチの事務所がある江坂のようなプリン地盤は日本中にたくさんあって、ビル建築は言うに及ばず、比較的軽い木造建築でも沈下する。
ちなみに、大阪駅周辺を梅田というけれど、もともとは「埋田」だったらしい。
なので、必ずボーリングとかサウンディングという地盤調査をして、ヤバい時には地盤改良やら杭やらの対策をする。
ちょっと余分にお金がかかるけれど、こればっかりは手抜きすると、確実に後悔するのでしかたがない。
ただ、地震について言うと、10m程度の最表層が柔らかくても、地震の被害には影響しないという説もある。
勝手に沈下する状態では、地震の影響で家が傾くこともあり得るが、沈下対策をとっていればその心配はない。
もうひとつ、この最表層で地震の大々的な影響を被るのが、「液状化」というやつ。
東日本の時にディズニーランドや浦安の街がエラいことになったあれ。
建物が壊れるのではなくて、固かった地盤が一瞬でジェルのようになって建物が傾いてしまうという怪奇現象。
ここでは詳しい説明は省略
大阪府の場合はマップを公開している。たぶん、他府県も何か出しているのではないかと思うので、探してみていただきたい。
http://www.pref.osaka.lg.jp/kikikanri/detailed-figs/
以上、地盤には、地震の起こるプレート、地震動が伝わる深部地盤、建物が載る表層地盤 と3種類ある。
「ウチの地盤は大丈夫?」と聞かれても、簡単には答えられない分けはこういうこと。
簡単じゃなくてもいいから相談のってほしい、と言う方はどうぞご連絡を。
■■お知らせ■■
ストップ!TPP緊急行動 御堂筋大パレード
10月29日(土)
14:00~集会 15:15~パレード出発
靱公園・東園
(地下鉄「本町」28出口徒歩約5分)
http://loco.yahoo.co.jp/place/g-ErLFmcAX2hc/map/
主催:ストップ!TPP緊急行動・関西
連絡:stoptppkansai@gmail.com


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昨日の鳥取地震は、大阪でもかなりの揺れになり、地面がゆらゆらと大きく長く揺れるのが体感できた。
夜になって事務所に戻ってみると、なんと棚からファイルケースが落ちていた。
震源からは170kmも離れているのに、驚きである。
思い起こせば、2011.3.11 東日本大震災の震源は700kmも離れているのに、あのときもうちの事務所は結構揺れた。
やはり、事務所のある江坂は、地盤が悪いのだ。
と、このように、地震が起きる度に「地盤がいい」とか「悪い」ということが話題になる。
家を建てるお施主さんからも、「うちの地盤は大丈夫ですか」と良く聞かれる。
実は、答えはそう簡単ではない。
なぜかというと、地盤には3種類あるからだ

地震が起きるのは、深いところ。今回の鳥取地震が10km、熊本地震が12km、阪神淡路が16km、そして東日本が24kmだった。絵で言うと、二重線になっている隙間くらい。
この深さでの「いい」ちじゃ「悪い」というのは、地震が起きやすいかどうか、ということになる。
活断層があるかどうか、とか、東日本のようなプレート型の可能性が高いかどうか、など。
プレート型については、ある程度可能性が高いか低いかは分かっている。でも、太平洋側はほとんどどこでも危ないし、しかも、いつおきるかは誰にも分からない。
断層型の場合は、これはもう、どこでも起きうる。
鳥取、なぜ大地震多い 気象庁「活断層なくても起きる」
2016年10月22日
「今回のような地震は活断層がない所でも起きる」。気象庁では午後3時40分から青木元・地震津波監視課長が記者会見した。震源付近で明確な活断層が確認されていないことや、地下の浅い場所が押し合って起きる「横ずれ断層型」であることを明らかにした。(引用以上)
ちなみに、上記の記事で「ひずみ集中帯」の印が描かれているのは、ちょうど島根原発から高浜原発にかけてである。
これまで原発の安全審査では、活断層はない、とか、これは活断層じゃなくて破砕帯だとかなんとか言って強引に「安全」にしてきたけれど、残念ながら「活断層なくてもおきる」と気象庁が断言してしまった。
■
話を地震波に戻そう。
震源で発生した地震波は、プレートの岩盤を何十キロも伝わって、地表面の近くまで到達する。
真上に行けば10kmくらいだけど、波動は全方向に進むから、横向きなら100kmとか1000kmとか進んでいく。
そして、あと100mくらいで地面だ、というところで、急に柔らかい地層に突入する。
絵で言うと、外側の線の太さにもならないくらい。
この層がどのくらい柔らかいかは、地質学でちゃんと分かっている。
産総研の地質図Navi というのを見れば、自分の家の地層は一目瞭然
https://gbank.gsj.jp/geonavi/
使い方は、ヘルプなどみて研究して下さい
この地図の凡例には難しい地層の名前がたくさん出てくるけれども、地震との関連では、「1万8千年前から現在まで」なのか、それより古いのか が運命の分かれ道。
「1万8千年前から現在まで」の場合は結構揺れやすい、それより古い時はわりと揺れにくい、ということ。
新しい地層は柔らかいので、地震の震幅がゆっくり大きくなる。ゆっさゆっさ
古い地層は固いので地震の震幅は小さくて早くなる。ガタガタガタガタ
さらに進んで、もう地表すれすれの数十メートルまでくると、ごく最近(数千年くらい)に堆積したり火山灰他積もったり埋め立てたりした表層地盤にぶち当たる。中には、ふわっふわのところも少なくない。
大阪平野なんかは 「プリン地盤」なんて言われている。
ここがフワフワだと、さらにユラユラが大きくなる。
最近はもっと便利なのができて、数百メートルからの深部地盤と、数十メートルからの表層地盤を、一気に診断してくれるサイトがある。防災科学技術研究所の地震ハザードカルテ。
http://www.j-shis.bosai.go.jp/labs/karte/
自分の家を探してクリック、診断ボタンを押すと、カルテを作成してくれる。
いちばん注目は、真ん中左にある「地盤増幅率」
これが1.5を超える場合は、ゆれが大きくなりやすくて、要注意。
ちなみに、うちの事務所が入っているビルの位置のカルテはこれ

やはり、棚からファイルが落ちた原因が判明
「地盤増幅率」=2.16 である
■
さて、この数十メートルの表層地盤は、地震だけではなくて、地震も何もない時でも、建物に悪さをする可能性がある。
表層のなかの最表層、10mくらいまでのところがフワフワすぎると、建物が自分の重さで沈んでしまうというトンデモナイ現象がおきる。
大阪平野やウチの事務所がある江坂のようなプリン地盤は日本中にたくさんあって、ビル建築は言うに及ばず、比較的軽い木造建築でも沈下する。
ちなみに、大阪駅周辺を梅田というけれど、もともとは「埋田」だったらしい。
なので、必ずボーリングとかサウンディングという地盤調査をして、ヤバい時には地盤改良やら杭やらの対策をする。
ちょっと余分にお金がかかるけれど、こればっかりは手抜きすると、確実に後悔するのでしかたがない。
ただ、地震について言うと、10m程度の最表層が柔らかくても、地震の被害には影響しないという説もある。
勝手に沈下する状態では、地震の影響で家が傾くこともあり得るが、沈下対策をとっていればその心配はない。
もうひとつ、この最表層で地震の大々的な影響を被るのが、「液状化」というやつ。
東日本の時にディズニーランドや浦安の街がエラいことになったあれ。
建物が壊れるのではなくて、固かった地盤が一瞬でジェルのようになって建物が傾いてしまうという怪奇現象。
ここでは詳しい説明は省略
大阪府の場合はマップを公開している。たぶん、他府県も何か出しているのではないかと思うので、探してみていただきたい。
http://www.pref.osaka.lg.jp/kikikanri/detailed-figs/
以上、地盤には、地震の起こるプレート、地震動が伝わる深部地盤、建物が載る表層地盤 と3種類ある。
「ウチの地盤は大丈夫?」と聞かれても、簡単には答えられない分けはこういうこと。
簡単じゃなくてもいいから相談のってほしい、と言う方はどうぞご連絡を。
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ストップ!TPP緊急行動 御堂筋大パレード
10月29日(土)
14:00~集会 15:15~パレード出発
靱公園・東園
(地下鉄「本町」28出口徒歩約5分)
http://loco.yahoo.co.jp/place/g-ErLFmcAX2hc/map/
主催:ストップ!TPP緊急行動・関西
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