2016-11-08(Tue)

都市のインスペクション ~怖いのは陥没だけじゃない~

今日は朝から、博多の陥没の話題でもちきりだ。

たしかに、蟻地獄のように駅前の大通りが陥没していく映像は衝撃的だ。
車や人が落ちなかったのが不幸中の幸いだった。

ところで、この記事を見ると、同じ地下鉄路線の工事で、これが3度目の陥没だという。

過去にも発生 福岡市地下鉄七隈線工事現場
毎日新聞2016年11月8日


2014年10月には今回の現場の西約400メートルの博多区祇園町の工事現場で車道の一部が長さ約4メートル、幅約3.5メートルにわたって深さ約3メートル陥没。水や土砂が流入した。
また、00年6月には同市中央区薬院で七隈線の工事に伴い、市道が長さ約10メートル、幅約5メートルにわたって深さ約8メートル陥没した。地下の掘削現場の両側に設けた土留め壁が壊れて工事現場に土砂が流入。市は、施工が不十分だったとして、業者を3カ月の指名停止にした。
 地下鉄工事に関係する道路陥没は各地で発生しており、05年6月には名古屋市中川区の高畑駅改良工事現場で道路が長さ約9メートル、幅約6メートルの範囲で約1メートル陥没し、周辺で700世帯が一時停電になるなど影響が出た。

(引用以上)

これはビックリ、全国でおきていると・・・
で、ちょっとググってみると、1990年には東京の御徒町でかなり大きな陥没があったらしい。
昨年は規模は小さいが大阪市でもやっている。

道路陥没は、地下鉄工事だけではない。
というか、規模はともかく、件数は圧倒的に下水管の老朽化によるものが多いようだ。

下水道老朽化で道路陥没、年3千件超 被害広がる恐れ
2016年8月27日 朝日


下水道管の老朽化による道路陥没が年3千件以上発生している。今後、高度経済成長期以降に大量に整備された下水道管が耐用年数を迎え、被害が広がる恐れがある。(略)
国交省によると、下水道管の老朽化や腐食が原因の道路陥没は04~14年度、年平均で4655件発生し、14年度は3313件あった。物損事故は年10件ほどあるという。

(引用以上)

ギリギリで持ちこたえているような場所がどれだけあるのか、なにせ土の中のことゆえそう簡単には分からない。
ロシアンルーレットのようだ。

道路の陥没に注意するには、下を見て歩かなければならないが、下ばかり見てもいられない。

外壁タイルや広告 国交省が落下の危険性を実態調査
ハザードラボ 2016年1月19日


災害発生時に避難経路として定められた道路沿いに建てられた建築物について、外壁タイルや広告板が落下する危険性がある建物について国土交通省が実態を調査した結果、約2万1500棟のうち、1781棟でタイルが崩れて負傷者が出るおそれがあることがわかった。
(引用以上)

なんと、築10年以上のタイル貼りビルの8.3%、12棟に1棟で剥落の恐れがあるという。
ビルやマンションの近くを通る時は、上もしっかり見て歩かなくてはならない。

上も下も見ながら歩いても、いきなり噴き出してくることもある。

水道管 老朽化が進行 1割以上が「期限切れ」
毎日新聞2015年12月31日


水道管の老朽化が進み、総延長の1割以上が法定耐用年数の40年を過ぎていることがわかった。整備が進んだ1970年代の水道管が更新時期を迎えているが、人口減による水道料金収入の落ち込みが影響して更新が遅れている。(略)
水道管の破損や水漏れなどのトラブルは13年度に全国で約2万5000件発生。

(引用以上)

水道管の更新はやられているけれども、老朽化の速度に追いついていない。
私も目撃したことがあるが、本管が破裂すると見上げるほど高く噴き上がる。

異変にそなえて耳も澄ませて歩かなければならない。
それでもどうにも逃げられない時もある。

関東の橋の3本に1本が“今すぐ”崩落してもおかしくない!? 「歩道橋・橋梁」老朽化の惨状
2015.06.08 日刊SPA


関東地方整備局が管理する道路橋2780箇所のうち、全体の3割強にあたる約940箇所が、高度経済成長期といわれる’55年から’73年にかけて建設されている。建築後40年を超えている
(引用以上)

もちろん危険なのは関東だけじゃない。むしろ予算のある東京などはマシな方だろう。
金のない地方自治体の橋は。。。。

古い橋を渡らないように、ぐるっと迂回して行くしかないか・・・
でも、本当に危ないのは橋だけなのか?

追悼 小林一輔さん、「コンクリートが危ない」と警鐘
2009/11/18 日経コンストラクション


山陽新幹線高架橋の現地調査を踏まえて、「ぼくがJR西日本の社長なら、いつ事故が起きるかと心配で夜も眠れないだろう」と語った。
(引用以上)

このブログの右下の方に、「コンクリートが危ない」という本がお勧めでリンクされているが、この著者の生前のインタビュー記事だ。
専門的でちょっと難しいかもしれないが、要するに、とくに1970年代までのコンクリートはかなりヤバいということ。

山陽新幹線のトンネルでコンクリートが落ちてきた事故はよく知られている。
あれは偶然の事故じゃなくて、コンクリートそのものが早くも寿命になっているということ。

その他、コンクリートで作られているものは、多かれ少なかれリスクを抱えている。

■■

もうどうなってるの?!?!? と思われるだろう。

なんでこんなことになっているのか。
恐るべきことだが、「都市のインフラや大規模建築を作る人たちは、誰一人として、老朽化した後のことを考えていなかった」 ということだ。

後のことはその頃の連中が考えるだろう。その頃には、俺たちは定年退職どころか、あの世に行ってるさ。
てなもんである。
冗談ではなくて、本当にそうとしか考えられないほど、インフラや大型建築は「更新」のリスクが考えられていない。

こんなリスキーな都市に、さらに地震と津波の可能性まで考えて暮らしていかなくてはならないとは。。。
まったくもって、大変な時代になってしまったものだ。

そこで、せめて自分の家だけでもリスクを診断しておこうよ、というのが「インスペクション」というもの。
横文字で言うから物々しいが、意味は検査ということらしい。

まあとにかく、専門技術を持った人間が住宅を検査することを ホームインスペクション という。
これまでは、一部の特殊な会社がこの業務を独占してきたが、先日、国交省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」というものを作ったので、それなりの知識と経験がある資格者なら、誰でもできるようになった。

「中古住宅を買いたいけれども、不安だから調べておきたい」 とか 「リフォームをするけれども、業者の言いなりじゃなくて、客観的に傷んでいるところを知りたい」 とか 「とにかく古くて不安なので、調べるだけでも調べておきたい」 なんていう依頼にホイホイと応じる仕事で、わが明月社でも取り組んでみようと思っている。

巨大な都市リスクからすると、小さな調査にすぎないけれども、とりあえず自分のシェルターだけでも安全ならば、少しは違うのじゃないかと思う。

とか書いているうちにも、博多の駅前陥没の復旧作業は始まっているようだ。
NHKのライブ映像
ギリギリまで乗り込んでいるミキサー車は怖いだろうなあ。
あとはせめて大地震がおこらないことを祈るばかりだ




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