2016-12-01(Thu)
国民の7割は中小零細企業の社長と社員とその家族だ
私自身も零細企業の末端の個人事業主なので、実感をもって言えるのだけれど、政治が取り組むべき「中心課題」は、中小零細企業のことだと思う。
政権交代!というかけ声と、中小企業対策という地味っぽい政策が頭の中でつながらない人が多いかもしれない。けど、7割の国民の生活は中小企業の給料で支えられているってことに、もっと注目すべき。
その理由は、この図をみれば明らかだ。

(中小企業白書2011より クリックするとPDFにリンク)
企業数にして 中小企業が99.7% うち小規模企業が87%
従業員数は 中小企業が69.4% うち小規模企業が23.2%
世の経営者の99.7%が中小企業の社長であり、勤め人の69.7%が中小企業に勤めている。
この一大勢力に対して、これまで政治は正面から、日本の一大問題として取り組んできただろうか?
保守勢力は経団連に入って企業献金をバンバンしてくれる大企業に寄り添い、革新勢力は経営問題は自分たちのテーマじゃないと考えてきた。
その狭間で、実は国民の7割が属している中小零細企業のことが、なおざりにされてきた。
一番右のグラフは製造業のデータなので、単純に当てはめられないが、ここはごくおおざっぱに「従業員一人あたりの付加価値」を考えてみる。
大企業 52.3÷30.6=1.71
中小企業 47.7÷69.4=0.69
小規模 9.1÷23.2=0.39
つまり、大企業の従業員は小規模の従業員の 4.4倍の付加価値を稼いでいる。
当然ながら、それは給料に反映される。

(年収ラボ よりお借りしました)
ちなみに、中小企業と小規模企業の定義はこのとおり

中小企業の社員のほとんどは、全体の平均年収ももらえていない。
まして小規模にいたっては、社員5千人以上の超大企業の6割にすぎない。
これに福利厚生や退職金を含めれば、もっと大きな差が開くはずだ。
日本の最も大きく、広い格差感はここにあるのではないか。
1%vs99%という話は実感がともなわないが、30%vs70%のこの格差は、たぶん70%側の人はほとんど実感しているだろう。
■■
でも、中小企業が儲けていないんだから仕方ないじゃん と言われるかもしれない。
そうだろうか
日本の労働者は、会社が簡単に首切りをできないように、法律で守られてきた。
その代わりに、下請け、孫請け、ひ孫請けという仕組みを発達させ、景気が悪くなると社員の首のかわりに下請けを切ってきた。
1998年に派遣法が改悪されてからは、派遣社員という首切り要因が社内にも用意されるようになってきたが、産業構造としての下請け制度は何も変わっていない。
下請けは継続して仕事をもらうためには、基本的に元請けである大企業が利益を確保した「残り」でやりくりをしなければならない。家康の「百姓は生かさぬよう殺さぬよう」と同じことだ。
日本の場合は、資本家vs労働者という搾取よりも、元請けvs下請けという搾取のほうが激しい。
そこでの利益の偏在が、そのまま企業規模による格差になっている。
中小企業が儲けられないのは努力が足りないのではなく、大企業の利益を抜いた後の絞りかすから利益を生み出す という構造にある。ここに手をつけなれば、社員の給料の格差もなくならない。
もちろん、ここの企業で利益を上げてウハウハの中小零細もある。
ただ、ここで書いているのは政治の役割。つまり、ほとんどの企業に通用する話であり、希有な成功例はちょっとおいておく。
また、給与のグラフを一見してわかるように、男女の差も激しい。
元データが国税庁なので、年間103万円以上のパートアルバイトも含まれており、女性の収入が低いことの要因の一つではあると思う。ただ、そもそも女性が働きにくい、出世しにくい、同一労働でも賃金格差がある、などの要因が全部かけ合わさっての数字だから、やはり大きな問題だ。
ただこの問題は、また別の機会に考えてみたいと思う。
今回は、とりあえず中小企業のこと。
中小零細が、大企業の下請けから脱却するとか、元請け下請けという構造ではなく、対等な取引相手になるとか、現状ではどうしたらいいのか分からないことだらけだが、それを突破する方法を考えるのが、政治の役割ではないか。
そもそも、なぜ中小零細の立場が弱いかというと、技術革新する資金力がなく、自前で売る力が弱いからだ。
ではなぜ、技術革新が必要で自前で売るのが難しいのか。それは、日本にはモノがあふれているからだ。
貧困から急成長する高度経済成長期ならば、いるのかいらないのかよく分からないような技術革新はしなくても売れたし、膨大な広告費をかけなくてもものは売れた。
ところが今日では、資金力にものを言わせて客をつかんでいるところが、圧倒的に力が強い。また、客の望むように、あるいは客を欺すために技術革新を頻繁に行う必要がある。
こうなると、資金力のない中小零細は、大企業の言うなりになるしかない。
もうひとつ中小企業が苦しい理由として、新自由主義というか多国籍資本が資本を国外に持って行ってしまうということがある。
対外資産という名で、GDPに匹敵するほどのマネーを海外(主に米国)に置きっ放しにして、米国経済の潤滑油としている現状がある。
これを日本に持って帰り、日本でカネを回すようにすれば、そもそものパイが大きくなり、大企業による独占も相対的に低くなるだろう。
こうした 格差の原因を諸々考えつつ、抜本的な手を政治が考えなければ、中小零細はこれからの大きくは縮小していく日本経済の中で、ジワジワと真綿で首を絞められ、日本の7割を占める経営者も社員もその家族も、救われない。
そのため、少なくともまずやらなければならないのは、企業献金の禁止だ。
大企業からガバガバ献金されている政治が、こんなことに手をつけられるわけがないのだから。
■■
自由党が本気で政権を取りにいくつもりならば、中小零細企業の問題を中心課題として据えるべきではないか。
自民党がどんなに悪さをしても負けないのは、たぶんそれなりに中小企業対策をやっているからだと思う。
国民の7割をおさえているからだ。
その自民党の中小企業対策を、はるかに上回る政策を示すことで、社長と社員と家族の心をつかむことだ。
それができるのは、社長の気持ちも社員の気持ちもわかる党、自由党しかないだろう。
少ないスタッフでそうした政策立案をするのは無理かも知れない。
しかし、全国にはいろいろな能力をもった支持者が埋もれている。広く全国に呼びかけることで、そうした知恵を発掘し、アイディアを集積し、国民の7割が未来に希望を持てる政策を、ぜひ作ってもらいたい。
中小零細企業の問題を、中小企業庁と市役所に丸投げしているうちは、本当の政権交代は勝ち取れない。


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政権交代!というかけ声と、中小企業対策という地味っぽい政策が頭の中でつながらない人が多いかもしれない。けど、7割の国民の生活は中小企業の給料で支えられているってことに、もっと注目すべき。
その理由は、この図をみれば明らかだ。

(中小企業白書2011より クリックするとPDFにリンク)
企業数にして 中小企業が99.7% うち小規模企業が87%
従業員数は 中小企業が69.4% うち小規模企業が23.2%
世の経営者の99.7%が中小企業の社長であり、勤め人の69.7%が中小企業に勤めている。
この一大勢力に対して、これまで政治は正面から、日本の一大問題として取り組んできただろうか?
保守勢力は経団連に入って企業献金をバンバンしてくれる大企業に寄り添い、革新勢力は経営問題は自分たちのテーマじゃないと考えてきた。
その狭間で、実は国民の7割が属している中小零細企業のことが、なおざりにされてきた。
一番右のグラフは製造業のデータなので、単純に当てはめられないが、ここはごくおおざっぱに「従業員一人あたりの付加価値」を考えてみる。
大企業 52.3÷30.6=1.71
中小企業 47.7÷69.4=0.69
小規模 9.1÷23.2=0.39
つまり、大企業の従業員は小規模の従業員の 4.4倍の付加価値を稼いでいる。
当然ながら、それは給料に反映される。

(年収ラボ よりお借りしました)
ちなみに、中小企業と小規模企業の定義はこのとおり

中小企業の社員のほとんどは、全体の平均年収ももらえていない。
まして小規模にいたっては、社員5千人以上の超大企業の6割にすぎない。
これに福利厚生や退職金を含めれば、もっと大きな差が開くはずだ。
日本の最も大きく、広い格差感はここにあるのではないか。
1%vs99%という話は実感がともなわないが、30%vs70%のこの格差は、たぶん70%側の人はほとんど実感しているだろう。
■■
でも、中小企業が儲けていないんだから仕方ないじゃん と言われるかもしれない。
そうだろうか
日本の労働者は、会社が簡単に首切りをできないように、法律で守られてきた。
その代わりに、下請け、孫請け、ひ孫請けという仕組みを発達させ、景気が悪くなると社員の首のかわりに下請けを切ってきた。
1998年に派遣法が改悪されてからは、派遣社員という首切り要因が社内にも用意されるようになってきたが、産業構造としての下請け制度は何も変わっていない。
下請けは継続して仕事をもらうためには、基本的に元請けである大企業が利益を確保した「残り」でやりくりをしなければならない。家康の「百姓は生かさぬよう殺さぬよう」と同じことだ。
日本の場合は、資本家vs労働者という搾取よりも、元請けvs下請けという搾取のほうが激しい。
そこでの利益の偏在が、そのまま企業規模による格差になっている。
中小企業が儲けられないのは努力が足りないのではなく、大企業の利益を抜いた後の絞りかすから利益を生み出す という構造にある。ここに手をつけなれば、社員の給料の格差もなくならない。
もちろん、ここの企業で利益を上げてウハウハの中小零細もある。
ただ、ここで書いているのは政治の役割。つまり、ほとんどの企業に通用する話であり、希有な成功例はちょっとおいておく。
また、給与のグラフを一見してわかるように、男女の差も激しい。
元データが国税庁なので、年間103万円以上のパートアルバイトも含まれており、女性の収入が低いことの要因の一つではあると思う。ただ、そもそも女性が働きにくい、出世しにくい、同一労働でも賃金格差がある、などの要因が全部かけ合わさっての数字だから、やはり大きな問題だ。
ただこの問題は、また別の機会に考えてみたいと思う。
今回は、とりあえず中小企業のこと。
中小零細が、大企業の下請けから脱却するとか、元請け下請けという構造ではなく、対等な取引相手になるとか、現状ではどうしたらいいのか分からないことだらけだが、それを突破する方法を考えるのが、政治の役割ではないか。
そもそも、なぜ中小零細の立場が弱いかというと、技術革新する資金力がなく、自前で売る力が弱いからだ。
ではなぜ、技術革新が必要で自前で売るのが難しいのか。それは、日本にはモノがあふれているからだ。
貧困から急成長する高度経済成長期ならば、いるのかいらないのかよく分からないような技術革新はしなくても売れたし、膨大な広告費をかけなくてもものは売れた。
ところが今日では、資金力にものを言わせて客をつかんでいるところが、圧倒的に力が強い。また、客の望むように、あるいは客を欺すために技術革新を頻繁に行う必要がある。
こうなると、資金力のない中小零細は、大企業の言うなりになるしかない。
もうひとつ中小企業が苦しい理由として、新自由主義というか多国籍資本が資本を国外に持って行ってしまうということがある。
対外資産という名で、GDPに匹敵するほどのマネーを海外(主に米国)に置きっ放しにして、米国経済の潤滑油としている現状がある。
これを日本に持って帰り、日本でカネを回すようにすれば、そもそものパイが大きくなり、大企業による独占も相対的に低くなるだろう。
こうした 格差の原因を諸々考えつつ、抜本的な手を政治が考えなければ、中小零細はこれからの大きくは縮小していく日本経済の中で、ジワジワと真綿で首を絞められ、日本の7割を占める経営者も社員もその家族も、救われない。
そのため、少なくともまずやらなければならないのは、企業献金の禁止だ。
大企業からガバガバ献金されている政治が、こんなことに手をつけられるわけがないのだから。
■■
自由党が本気で政権を取りにいくつもりならば、中小零細企業の問題を中心課題として据えるべきではないか。
自民党がどんなに悪さをしても負けないのは、たぶんそれなりに中小企業対策をやっているからだと思う。
国民の7割をおさえているからだ。
その自民党の中小企業対策を、はるかに上回る政策を示すことで、社長と社員と家族の心をつかむことだ。
それができるのは、社長の気持ちも社員の気持ちもわかる党、自由党しかないだろう。
少ないスタッフでそうした政策立案をするのは無理かも知れない。
しかし、全国にはいろいろな能力をもった支持者が埋もれている。広く全国に呼びかけることで、そうした知恵を発掘し、アイディアを集積し、国民の7割が未来に希望を持てる政策を、ぜひ作ってもらいたい。
中小零細企業の問題を、中小企業庁と市役所に丸投げしているうちは、本当の政権交代は勝ち取れない。


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