2016-12-14(Wed)
「大企業は税金を払っていない」は本当か検証してみた(なぜ世界3位の経済大国が貧乏になるのか 3)
日本の法人税は高いというけれど、実は大企業はあまり払っていない という説がある。
本当かどうか、検証してみた。
まず、26年版中小企業白書から、大企業と中小企業の売り上げと経常利益を見てみる。

というわけで、売り上げで52%、経常利益で66%が大企業、ということになっている。
ちなみに、社員数で言うと大企業は全体の3割なので、社員一人あたりの経常利益は2倍以上ある。
次に、その利益に対して、どれだけ税率がかかっているのか。
どの会社にも同じ税率なのかどうか。

(ハフィントンポスト 玉木雄一郎氏の記事より クリックで拡大)
これは率のグラフなので、絶対額ではない。
名目上の税率である25.5%に対して、実際に払っている税率は一番左側の青い部分だけ。右側の何やかんやはオマケというか軽減されている分。
なるほど、たしかに資本金10億円をこえると、ガクンと税率が下がる。
連結法人なんて零細企業なみだ。
では、この税率でいったいどれだけの税金をそれぞれ払っているのか、これを探すのにちょっと苦労したのだが、国税庁の会社標本調査結果というところに出ていた。このページの総括表 を少し加工したものが下の表だ。

(クリックで拡大)
まず注目してほしいのは、いちばん右端。計算上の税額と、実際に払った税額の比率だ。中小企業は95%なのに対し、大企業になると控除がどっさりあって、資本金1位億以上で74%、連結法人に至っては46%だ。
額すると、中小企業の控除は2千億円弱なのに、大企業は3.5兆円近くも控除がある。
この控除は、特定の資産を取得したり、特定の費用を支出した場合に税額がオマケされる仕組みで、「特定の」が何なのかはこちらのページ に並んでいる。
まず税率もオマケされ、
さらにそこから「特別控除」でオマケされている。
このオマケがもうすこし公平になれば、数兆円の税収が見込めるはずだ。
■
もう一点、表のまんなかにある ⑤/⑥ も注目してもらいたい。
黒字と赤字の割合である。
中小企業に圧倒的に赤字が多いことがわかる。
「国民の7割は中小零細企業の社長と社員とその家族だ」 の記事にも書いた通り、中小企業の多くは大企業の下請けであり、下請けは元請けが利益を確保した残りでやりくりしなければならない。
必然的に、利益率は下がり、赤字も多くなる。
ここが本気でテコ入れされて、社員一人あたりの利益が大企業に近づけば、これまた一気に数兆円の増収になる。
その意味では、税金を充分に払っていないのは大企業だけでなく、中小企業もということになるが、そこには決定的な違いがある。
中小企業は儲かっていないから払っていない。
大企業は儲かっているけれども払っていない。
中小企業には、税金を徴収することよりも、払えるようにする ということが課題なのだ。
さらに、こんな問題もある。
日本の大企業・富裕層はタックスヘイブンで世界第2位の巨額な税逃れ、庶民には消費税増税と社会保障削減
月刊誌『KOKKO』編集者・井上伸のブログ 2015/9/7
http://editor.fem.jp/blog/?p=675
東証に上場している上位50社のうち45社がタックスヘイブンを活用し、ケイマン諸島だけの活用に限っても、日本の大企業は55兆円で、アメリカに次いで世界第2位の規模です。つづく、イギリス23兆円、フランス20兆円、ドイツ17兆円で、後に続く各国を合わせた額に相当するぐらい日本の大企業はタックスヘイブンを活用し税逃れをしているのです。
(引用以上)
上記ブログは政治経済研究所理事の合田寛氏へのインタビューで構成され非常に詳しいので一読をすすめたい。
この額は年々増えている

(井上伸のブログ 2016/4/6 より)
別のデータではこんなのもある。こちらは上場企業TOP50だけでなく日本全体の数字で、ただし証券投資だけの金額のようだ。
租税回避地 ケイマンに投資残高急増 日本から74兆円
毎日新聞2016年5月24日

(引用以上)
ケイマンだけでこれだ。毎年10兆円以上のカネが日本の徴税権が及ばないとこに逃げ去っている。
これを補足するだけでも、数兆円規模の税収になるだろう。
大企業の過剰なオマケを是正して、中小企業が黒字になるようにテコ入れして、タックスヘイブンに流れるカネを補足すれば、法人税だけでも10兆円からの税収が増えることになる。現在の日本の税収は52兆円くらいだから、なんと2割も増収だ。
そんなわけで、「大企業は(ちゃんと)税金を払ってない」 という噂話は 本当だった。
■
民進党が土壇場で転んだお陰もあり、今日の国会最終日にカジノ法案が通ってしまうらしい。
日本人の貯金が、トランプのお友達のところに どっと流れ出していく。
(カジノ推進法で一番喜ぶのは。。。)
沖縄では海岸ギリギリにオスプレイが墜落したあげく、米軍司令官は「被害与えなかったんだから感謝しろ」と副知事を怒鳴りつけた。
しかも、なんとビックリ 別のオスプレイも同じ日に胴体着陸をやらかしていたというのに。
米軍高官「被害与えず、感謝されるべき」 沖縄副知事に
2016年12月14日 朝日
別のオスプレイ、普天間に胴体着陸=米海兵隊
2016.12.14 時事通信
未来が見えないこの国。
息をするのも苦しい。
けれども、焦ってはいけない。


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本当かどうか、検証してみた。
まず、26年版中小企業白書から、大企業と中小企業の売り上げと経常利益を見てみる。

というわけで、売り上げで52%、経常利益で66%が大企業、ということになっている。
ちなみに、社員数で言うと大企業は全体の3割なので、社員一人あたりの経常利益は2倍以上ある。
次に、その利益に対して、どれだけ税率がかかっているのか。
どの会社にも同じ税率なのかどうか。

(ハフィントンポスト 玉木雄一郎氏の記事より クリックで拡大)
これは率のグラフなので、絶対額ではない。
名目上の税率である25.5%に対して、実際に払っている税率は一番左側の青い部分だけ。右側の何やかんやはオマケというか軽減されている分。
なるほど、たしかに資本金10億円をこえると、ガクンと税率が下がる。
連結法人なんて零細企業なみだ。
では、この税率でいったいどれだけの税金をそれぞれ払っているのか、これを探すのにちょっと苦労したのだが、国税庁の会社標本調査結果というところに出ていた。このページの総括表 を少し加工したものが下の表だ。

(クリックで拡大)
まず注目してほしいのは、いちばん右端。計算上の税額と、実際に払った税額の比率だ。中小企業は95%なのに対し、大企業になると控除がどっさりあって、資本金1位億以上で74%、連結法人に至っては46%だ。
額すると、中小企業の控除は2千億円弱なのに、大企業は3.5兆円近くも控除がある。
この控除は、特定の資産を取得したり、特定の費用を支出した場合に税額がオマケされる仕組みで、「特定の」が何なのかはこちらのページ に並んでいる。
まず税率もオマケされ、
さらにそこから「特別控除」でオマケされている。
このオマケがもうすこし公平になれば、数兆円の税収が見込めるはずだ。
■
もう一点、表のまんなかにある ⑤/⑥ も注目してもらいたい。
黒字と赤字の割合である。
中小企業に圧倒的に赤字が多いことがわかる。
「国民の7割は中小零細企業の社長と社員とその家族だ」 の記事にも書いた通り、中小企業の多くは大企業の下請けであり、下請けは元請けが利益を確保した残りでやりくりしなければならない。
必然的に、利益率は下がり、赤字も多くなる。
ここが本気でテコ入れされて、社員一人あたりの利益が大企業に近づけば、これまた一気に数兆円の増収になる。
その意味では、税金を充分に払っていないのは大企業だけでなく、中小企業もということになるが、そこには決定的な違いがある。
中小企業は儲かっていないから払っていない。
大企業は儲かっているけれども払っていない。
中小企業には、税金を徴収することよりも、払えるようにする ということが課題なのだ。
さらに、こんな問題もある。
日本の大企業・富裕層はタックスヘイブンで世界第2位の巨額な税逃れ、庶民には消費税増税と社会保障削減
月刊誌『KOKKO』編集者・井上伸のブログ 2015/9/7
http://editor.fem.jp/blog/?p=675
東証に上場している上位50社のうち45社がタックスヘイブンを活用し、ケイマン諸島だけの活用に限っても、日本の大企業は55兆円で、アメリカに次いで世界第2位の規模です。つづく、イギリス23兆円、フランス20兆円、ドイツ17兆円で、後に続く各国を合わせた額に相当するぐらい日本の大企業はタックスヘイブンを活用し税逃れをしているのです。
(引用以上)
上記ブログは政治経済研究所理事の合田寛氏へのインタビューで構成され非常に詳しいので一読をすすめたい。
この額は年々増えている

(井上伸のブログ 2016/4/6 より)
別のデータではこんなのもある。こちらは上場企業TOP50だけでなく日本全体の数字で、ただし証券投資だけの金額のようだ。
租税回避地 ケイマンに投資残高急増 日本から74兆円
毎日新聞2016年5月24日

(引用以上)
ケイマンだけでこれだ。毎年10兆円以上のカネが日本の徴税権が及ばないとこに逃げ去っている。
これを補足するだけでも、数兆円規模の税収になるだろう。
大企業の過剰なオマケを是正して、中小企業が黒字になるようにテコ入れして、タックスヘイブンに流れるカネを補足すれば、法人税だけでも10兆円からの税収が増えることになる。現在の日本の税収は52兆円くらいだから、なんと2割も増収だ。
そんなわけで、「大企業は(ちゃんと)税金を払ってない」 という噂話は 本当だった。
■
民進党が土壇場で転んだお陰もあり、今日の国会最終日にカジノ法案が通ってしまうらしい。
日本人の貯金が、トランプのお友達のところに どっと流れ出していく。
(カジノ推進法で一番喜ぶのは。。。)
沖縄では海岸ギリギリにオスプレイが墜落したあげく、米軍司令官は「被害与えなかったんだから感謝しろ」と副知事を怒鳴りつけた。
しかも、なんとビックリ 別のオスプレイも同じ日に胴体着陸をやらかしていたというのに。
米軍高官「被害与えず、感謝されるべき」 沖縄副知事に
2016年12月14日 朝日
別のオスプレイ、普天間に胴体着陸=米海兵隊
2016.12.14 時事通信
未来が見えないこの国。
息をするのも苦しい。
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