2016-12-18(Sun)
溺れる犬を撃て ~日ロ会談をしくじった安倍晋三~
16日の夜、プーチンとの会談を終えた安倍晋三が、NHK『ニュースウオッチ9』、テレ朝『報道ステーション』、TBS『NEWS23』に相次いで生出演した。この光景を異様に感じた人は多かっただろう。
しかも、出ただけではなく主要マスコミは口をそろえて、「一歩前進」を演出した。
安倍首相が生出演『報ステ』『NEWS23』の異常な弱腰! 厳しい質問をせず、野党や元島民の批判VTRをカット
2016.12.17 LITERA
ここで注目すべきは、生出演したのが同じ時間帯にニュース番組をやっている日テレのZEROではなく、あえてTBSのNEWS23に出たことだ。これまでの応援をあえて避けて、いくら骨抜きにされたとはいえどちらかというと自分に批判的な番組にでたのはなぜなのか。
その疑問を頭において、今回の日ロ会談の結果について、どのような反応が起きているか見てみたい。
まず、大手マスコミは、先ほども書いたとおりで、一歩前進を肯定的に報じた。
こんなのが代表的だ。
安倍首相、共同経済活動「平和条約締結へ重要な一歩」
2016/12/16 日経
一方で地方紙などは、領土問題などが進展していないことなどを批判する論調が目立った。
そして、自民党幹事長の二階がこんな発言をして目を引いた。
自民幹事長「国民がっかり」=日ロ交渉に異例の不満
2016.12.16 時事
これが「お許し」になって、そのあとからボチボチと大手の中からも批判的な記事が現れ始めた。
■■
この日ロ会談と北方領土に対する批判は、これまでの安倍政権に対する批判とは、ぜんぜん性質が違う。
これまでのあらゆる批判は、もともと安倍政権に批判的な勢力が、個別の課題について批判をしてきた。
しかし、北方領土に関する批判は、安倍応援団、安倍政権を支えてきた勢力からの批判だということに注目しなければならない。
北方領土見渡す地元、思い交錯 元島民「裏切られた」
2016年12月17日 共同通信
北方領土問題は、他の領土問題と同じで、1945年の日本の敗戦処理のなかでわざと曖昧に残された問題だ。
米国が日本を支配しやすくするように、周辺諸国との紛争の種をあえて残された。
なかでも北方領土は多くの人が住んでいたため、尖閣や竹島よりもはるかに大きな問題として残った。
なので、米国の以降を忖度する従米右翼が率先して領土問題は課題にしてきた。
時給で雇われたカーキ色の街宣車も、北方領土を返せ、と叫び続けてきた。
こうやって、日本とソ連(当時)を争わせ、アジアでの冷戦構造を維持する道具としてきた。
その最先端にたってきた産経新聞は、さすがに今回の日ロ会談を「貴重な一歩」でまとめるわけにはいかず、大手の中でももっとも激しい批判の社説を書いた。
日露首脳会談 「法と正義」の原則崩せぬ 四島での共同活動は危うい
2016.12.17 産経新聞
日本にとって平和条約の締結自体が目的ではないということである。条約締結は、北方四島の日本への帰属や返還が決まることの帰結にすぎない。
(略)
両首脳は8項目の対露経済協力に基づく総額3000億円規模の事業などで合意した。領土で進展がなかった以上、これらは領土交渉の中での取引材料とはいえまい。
(引用以上)
と、安倍が誇らしげに語ってみせる 「平和条約への一歩」と「共同経済活動」という目玉を切って捨てた。
これまで「北方領土返還」を叫んできた人々にとって、今回の日ロ会談はそういうものだったということだ。
これまでも経済先行の案は出たが、経済協力を認めることはロシア(ソ連)の領有権を実質的に認めることになるからダメだ、というのが「北方領土返還」運動の考え方だった。
今回の安倍とプーチンの合意は、それを根っこからひっくり返すものだったわけで、熱心に返還運動をしてきた人ほど「裏切られた」と感じるはずだ。
その意味で、このタイミングで内閣支持率が下がったのは大きな意味がある。
内閣支持率5ポイント下落
2016.12.18 共同通信
わずかに5%だけれども、この数字は、これまで安倍を応援してきた人が、裏切られたという思いで離れた可能性が高いのである。
■■
しかも、この日ロ会談にあわせて、アメリカは激しく反応した。
会談の直前には
大統領選でのハッキングについてオバマ大統領が徹底調査を指示
2016.12.14 GIGAZINE (元ニュースはワシントンポスト)
そして、会談の結果が出るや
ロシアのサイバー攻撃「プーチン氏が関与」オバマ大統領が報復措置を言明
2016.12.17 ハフィントンポスト
安倍がゴルフクラブを持って大慌てで参上したトランプと、温泉旅館にご招待してごまをすったプーチンを、まとめてぶった切っているわけで、いくら任期終了間際のオバマだとはいえ、安倍本人を含めて日本の政治家も官僚も肝が凍っているはずだ。
それでも北方領土を解決したということになれば、安倍の人気はうなぎ登りになるだろうし、トランプ政権の間は大丈夫だ、という読みで突っ走った。
これまでの従米路線=北方領土は解決してはいけない というセオリーが染みついている外務省をはずして、世耕をはじめとした官邸チームで無理矢理進めてきた。
その結果が、領土問題は進展しないどころか、実質的にロシアの領有を認めてしまうということになってしまった。
絶対逆らってはいけない米国の(現行の)政権に逆らい、ロシアにすり寄りながら、結局プーチンから突きつけられたのはこういうことだった。
共同記者会見、質疑応答部分の書き起こし
LOGMI
(プーチンの発言抜粋)
例えば56年、日本とソ連がこの懸案事項を解決間際になった時、56年の宣言を批准をしたわけですけれども、その時アメリカはこの地域に関心があり、その時の国務長官が言った。「日本がアメリカの国益に反するようなことがあれば、沖縄は完全にアメリカの占領下におかれる」ということは言われた。アメリカの国益にも関係していることが明らかです。
これはどういうことかと言いますと、例えばウラジオストクで、少し下にいきますと、大きな2つの艦隊があります。この分野でなにが起こるかを考えなくてはいけない。日本とアメリカの特殊な関係性を考慮する必要があるわけです。日米安保条約があるなかでどう関係を構築していくかはわかりません。 柔軟性について話すとき、それがなにを意味するかというと、日本側がすべてのこういった繊細な点を考慮してほしい。そして、ロシアが憂慮することを考慮してほしいということです。
(引用以上)
奥歯に挟まったものをとって翻訳すると こういうことだ。
「アメリカに沖縄を好きなようにされている日本が、もし四島を返還した時にそこを米軍基地にしないと保証できるのか? できないでしょ。」という意味であり、端的に言えば
「日ロ平和条約が実現できないのは、日本がアメリカの属国だからだ」 ということだ。
※12/19午後からのオスプレイ飛行再開に防衛省同意、という一事だけでもプーチンの指摘の正当性が証明されてしまった。
アメリカに逆らい、外務省にはそらみたことかと言われ、これまでの支持者に「裏切りもの」あつかいされ、ロシアにはアメリカの属国はいらないと言われ、安倍晋三はとんでもない窮地に追い込まれた。
■■
これまで安倍政権の打倒を叫び、安倍晋三をなんとかして引きずり下ろしたい、と願い行動してきた人たちにとっては、ここぞとばかりに責めたてるチャンス到来
なのだが、その動きは鈍い。
野党のホームページを見ても、共産党と民進党はかろうじて関連の記事はあるが、そんなに目立つものではない。社民党と自由党はトップページには日ロ会談の文字はない。
民間のリベラル系の団体も、ほとんど日ロ会談の失敗には触れていない。
日本の左翼・革新系は、日本国憲法を戴きながら、日本国という枠組みを否定してきたからだ。
北方4島がどちらに帰属しているべきなのか、これは私も分からないけれども、冷静に領土問題として考えれば良いことだと思っている。しかし、歴史的に「北方領土」=右翼 というレッテルがべったりと貼り付いているがために、左翼・革新系は「北方領土」と聞いたとたんにそっぽを向いてしまう。
せっかく安倍晋三が窮地に陥っているのに、それが「北方領土」だと聞いた瞬間に、無かったことにしてしまう。
「北方領土」なんて言葉を口にしただけで、自分も右翼に転向してしまうかのように思ってしまう。
その心情は、私もかつてそうだったので、よく分かる。
そういう風に国の枠組みを避けてきた人が、ここでにわかに日ロ会談を批判しても、このような反批判にあって立ち往生してしまう。
日露首脳会談を感情論で批判する人々
2016/12/17 月刊日本
特に問題なのが一部の左派言論人たちです。彼らは普段は竹島や尖閣諸島をめぐる日本国内のナショナリズムを批判しているにもかかわらず、今回の首脳会談では北方領土問題が進展しなかったとして安倍政権を批判しています。しかし、それは彼らが批判してきたナショナリズムそのものです。そうであるなら、日本政府が竹島を取り戻せないことや、尖閣諸島について中国に弱腰であることも批判しなければ辻褄が合いません。
(引用以上)
この月刊日本という雑誌は、「偏狭なナショナリズムに安易に妥協することなく、民族として、文化共同体として、高度な倫理を伴った自信を日本人にもたらしたいのです。声高に叫ぶ日本礼賛ではなく、奥歯を噛み締めて胸奥に秘めておく誇りを取り戻したい」という基本理念で、安倍晋三にも批判的な論陣を張ってきた自立保守の立場である。
もともと、安倍晋三のアキレス腱は、右翼・保守を支持層としながら従米を貫かなければならないことだ。
第1次政権では、その軋轢にたえられなくなり、突然の政権放棄となった。
いくら日本の右翼・保守陣営に従米保守が多いとはいえ、草の根レベルではそんなご都合主義で末端まで洗脳できるとは限らない。むしろ、大日本帝国の栄光を取り戻してくれるヒーローとして安倍晋三を持ち上げてきたのではないか。
そういう日本会議のオッチャン、オバチャンみたいな人たちにとって、今回の日ロ会談はかなりの衝撃だったはずだ。一気に「裏切りだ!」まではいかなくても 「えっ どうしちゃったの安倍さん?!」とは感じているだろう。
この機会に、こうした素朴な草の根右翼を安倍晋三から引きはがすことが、安倍晋三の一強支配を終わらせる道筋ではないのか。
そのためには、左翼・革新陣営は「右翼の反対」というアイデンティティーから一歩踏みだし、右翼が何を言おうが関係ない自らの立場をしっかりと作り直すことだ。
「反右翼」、すなわち「右翼の言うことは何でも無条件に反対」という立場でいる限り、素朴な保守や右翼の人たちとのつながりはできない。
■■
自由党は、本来そこで決定的に重要な役割を果たすことのできる立ち位置に、本来は立っている。
そもそも保守であり、日本の自主独立を願う人たちが集まっている党である。
事実、私が知って支持者の中だけでも、元日本会議という人が何人もいる。
そんな自由党と小沢一郎という存在は、日本会議を真っ二つに割って、分捕るくらいのポテンシャルを持っている。
また、左翼・革新勢力を「反右翼」の呪縛から解き放つ効能も併せ持っている。
永田町でどれだけ少数でも、金がなくても、自由党の力はまさにそこにある。
問題は、自由党自身がその自らの力と効用に、気がついているのか。その気があるのか、ということだ。
私が見る限りでは、日本会議を絡め取ってやるくらいの草の根運動をやる気は、自由党には無い。
永田町の党、議員の党、それらの党の政党間調整、そうした枠組みから出る気配は、私の感覚だけの話だが、感じられない。
私はここ数年、生活の党~自由党を応援して、実際に動いてきたけれども、自由党の理念には賛同するけれども、自由党の運動論には賛同できない という結論に達しつつある。
自立と共生 という小沢イズムは、日本の独立と他国の平和 であると私は理解している。その理念の人々の組織を作るにはどうしたらいいのか、再考する必要がある。
日ロ会談で安倍晋三が自ら招いた危機も、年が明けることには適当にごまかされて、うやむやにされてしまうかもしれない。
この国で、安倍晋三やり方じゃダメだ と危機感をもやす人たちは、これを機会に「反右翼」からの脱却を試みてほしい。
私自身はこの脱皮に7年くらいかかったけれども、安倍晋三の「おかげ」で、急速な変化が期待できる。
日ロ会談の失敗は、安倍政権を倒すほどの出来事ではあるが、彼我の現状を鑑みると、まずはそこから始めるしかないのだろう。
しかしそのうえで、この安倍の危機を責め立てることは、できうる限り、手の及ぶ限りやる必要がある。
この危機をぬくぬくと乗り切らせると、安倍晋三は底なしの独裁者になってしまう。それが許されていると思い込んでしまう。
北方領土の返還に期待し、日ロ会談の結果に「えっ」と思った人たちの意見に耳を傾け、これまで左翼とか革新と自覚してきた人たちこそが、溺れる安倍を叩くべし。
そして、叩くことによって生まれる「国という集団への責任」に向き合うことだ。
(注)
「溺れる犬を撃て」 は周知の通り魯迅が言った「打落水狗」である。打てよりも撃てのほうがターゲットを絞るイメージなのでちょっとかえた。べつに銃で撃てと言う意味ではない。もちろん。
魯迅は「フェアプレーはまだ早い」という論考の中で、信義の通用しない中国を侵略する帝国主義に対しては、こちらもフェアプレーなどありえない、と言っている。安倍晋三のようなまったく信義の通用しない者に対し、安倍さんも同じ人間じゃないか などという博愛主義は私はまったく持ち合わせていないので、魯迅のこの言葉を援用させてもらった。


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しかも、出ただけではなく主要マスコミは口をそろえて、「一歩前進」を演出した。
安倍首相が生出演『報ステ』『NEWS23』の異常な弱腰! 厳しい質問をせず、野党や元島民の批判VTRをカット
2016.12.17 LITERA
ここで注目すべきは、生出演したのが同じ時間帯にニュース番組をやっている日テレのZEROではなく、あえてTBSのNEWS23に出たことだ。これまでの応援をあえて避けて、いくら骨抜きにされたとはいえどちらかというと自分に批判的な番組にでたのはなぜなのか。
その疑問を頭において、今回の日ロ会談の結果について、どのような反応が起きているか見てみたい。
まず、大手マスコミは、先ほども書いたとおりで、一歩前進を肯定的に報じた。
こんなのが代表的だ。
安倍首相、共同経済活動「平和条約締結へ重要な一歩」
2016/12/16 日経
一方で地方紙などは、領土問題などが進展していないことなどを批判する論調が目立った。
そして、自民党幹事長の二階がこんな発言をして目を引いた。
自民幹事長「国民がっかり」=日ロ交渉に異例の不満
2016.12.16 時事
これが「お許し」になって、そのあとからボチボチと大手の中からも批判的な記事が現れ始めた。
■■
この日ロ会談と北方領土に対する批判は、これまでの安倍政権に対する批判とは、ぜんぜん性質が違う。
これまでのあらゆる批判は、もともと安倍政権に批判的な勢力が、個別の課題について批判をしてきた。
しかし、北方領土に関する批判は、安倍応援団、安倍政権を支えてきた勢力からの批判だということに注目しなければならない。
北方領土見渡す地元、思い交錯 元島民「裏切られた」
2016年12月17日 共同通信
北方領土問題は、他の領土問題と同じで、1945年の日本の敗戦処理のなかでわざと曖昧に残された問題だ。
米国が日本を支配しやすくするように、周辺諸国との紛争の種をあえて残された。
なかでも北方領土は多くの人が住んでいたため、尖閣や竹島よりもはるかに大きな問題として残った。
なので、米国の以降を忖度する従米右翼が率先して領土問題は課題にしてきた。
時給で雇われたカーキ色の街宣車も、北方領土を返せ、と叫び続けてきた。
こうやって、日本とソ連(当時)を争わせ、アジアでの冷戦構造を維持する道具としてきた。
その最先端にたってきた産経新聞は、さすがに今回の日ロ会談を「貴重な一歩」でまとめるわけにはいかず、大手の中でももっとも激しい批判の社説を書いた。
日露首脳会談 「法と正義」の原則崩せぬ 四島での共同活動は危うい
2016.12.17 産経新聞
日本にとって平和条約の締結自体が目的ではないということである。条約締結は、北方四島の日本への帰属や返還が決まることの帰結にすぎない。
(略)
両首脳は8項目の対露経済協力に基づく総額3000億円規模の事業などで合意した。領土で進展がなかった以上、これらは領土交渉の中での取引材料とはいえまい。
(引用以上)
と、安倍が誇らしげに語ってみせる 「平和条約への一歩」と「共同経済活動」という目玉を切って捨てた。
これまで「北方領土返還」を叫んできた人々にとって、今回の日ロ会談はそういうものだったということだ。
これまでも経済先行の案は出たが、経済協力を認めることはロシア(ソ連)の領有権を実質的に認めることになるからダメだ、というのが「北方領土返還」運動の考え方だった。
今回の安倍とプーチンの合意は、それを根っこからひっくり返すものだったわけで、熱心に返還運動をしてきた人ほど「裏切られた」と感じるはずだ。
その意味で、このタイミングで内閣支持率が下がったのは大きな意味がある。
内閣支持率5ポイント下落
2016.12.18 共同通信
わずかに5%だけれども、この数字は、これまで安倍を応援してきた人が、裏切られたという思いで離れた可能性が高いのである。
■■
しかも、この日ロ会談にあわせて、アメリカは激しく反応した。
会談の直前には
大統領選でのハッキングについてオバマ大統領が徹底調査を指示
2016.12.14 GIGAZINE (元ニュースはワシントンポスト)
そして、会談の結果が出るや
ロシアのサイバー攻撃「プーチン氏が関与」オバマ大統領が報復措置を言明
2016.12.17 ハフィントンポスト
安倍がゴルフクラブを持って大慌てで参上したトランプと、温泉旅館にご招待してごまをすったプーチンを、まとめてぶった切っているわけで、いくら任期終了間際のオバマだとはいえ、安倍本人を含めて日本の政治家も官僚も肝が凍っているはずだ。
それでも北方領土を解決したということになれば、安倍の人気はうなぎ登りになるだろうし、トランプ政権の間は大丈夫だ、という読みで突っ走った。
これまでの従米路線=北方領土は解決してはいけない というセオリーが染みついている外務省をはずして、世耕をはじめとした官邸チームで無理矢理進めてきた。
その結果が、領土問題は進展しないどころか、実質的にロシアの領有を認めてしまうということになってしまった。
絶対逆らってはいけない米国の(現行の)政権に逆らい、ロシアにすり寄りながら、結局プーチンから突きつけられたのはこういうことだった。
共同記者会見、質疑応答部分の書き起こし
LOGMI
(プーチンの発言抜粋)
例えば56年、日本とソ連がこの懸案事項を解決間際になった時、56年の宣言を批准をしたわけですけれども、その時アメリカはこの地域に関心があり、その時の国務長官が言った。「日本がアメリカの国益に反するようなことがあれば、沖縄は完全にアメリカの占領下におかれる」ということは言われた。アメリカの国益にも関係していることが明らかです。
これはどういうことかと言いますと、例えばウラジオストクで、少し下にいきますと、大きな2つの艦隊があります。この分野でなにが起こるかを考えなくてはいけない。日本とアメリカの特殊な関係性を考慮する必要があるわけです。日米安保条約があるなかでどう関係を構築していくかはわかりません。 柔軟性について話すとき、それがなにを意味するかというと、日本側がすべてのこういった繊細な点を考慮してほしい。そして、ロシアが憂慮することを考慮してほしいということです。
(引用以上)
奥歯に挟まったものをとって翻訳すると こういうことだ。
「アメリカに沖縄を好きなようにされている日本が、もし四島を返還した時にそこを米軍基地にしないと保証できるのか? できないでしょ。」という意味であり、端的に言えば
「日ロ平和条約が実現できないのは、日本がアメリカの属国だからだ」 ということだ。
※12/19午後からのオスプレイ飛行再開に防衛省同意、という一事だけでもプーチンの指摘の正当性が証明されてしまった。
アメリカに逆らい、外務省にはそらみたことかと言われ、これまでの支持者に「裏切りもの」あつかいされ、ロシアにはアメリカの属国はいらないと言われ、安倍晋三はとんでもない窮地に追い込まれた。
■■
これまで安倍政権の打倒を叫び、安倍晋三をなんとかして引きずり下ろしたい、と願い行動してきた人たちにとっては、ここぞとばかりに責めたてるチャンス到来
なのだが、その動きは鈍い。
野党のホームページを見ても、共産党と民進党はかろうじて関連の記事はあるが、そんなに目立つものではない。社民党と自由党はトップページには日ロ会談の文字はない。
民間のリベラル系の団体も、ほとんど日ロ会談の失敗には触れていない。
日本の左翼・革新系は、日本国憲法を戴きながら、日本国という枠組みを否定してきたからだ。
北方4島がどちらに帰属しているべきなのか、これは私も分からないけれども、冷静に領土問題として考えれば良いことだと思っている。しかし、歴史的に「北方領土」=右翼 というレッテルがべったりと貼り付いているがために、左翼・革新系は「北方領土」と聞いたとたんにそっぽを向いてしまう。
せっかく安倍晋三が窮地に陥っているのに、それが「北方領土」だと聞いた瞬間に、無かったことにしてしまう。
「北方領土」なんて言葉を口にしただけで、自分も右翼に転向してしまうかのように思ってしまう。
その心情は、私もかつてそうだったので、よく分かる。
そういう風に国の枠組みを避けてきた人が、ここでにわかに日ロ会談を批判しても、このような反批判にあって立ち往生してしまう。
日露首脳会談を感情論で批判する人々
2016/12/17 月刊日本
特に問題なのが一部の左派言論人たちです。彼らは普段は竹島や尖閣諸島をめぐる日本国内のナショナリズムを批判しているにもかかわらず、今回の首脳会談では北方領土問題が進展しなかったとして安倍政権を批判しています。しかし、それは彼らが批判してきたナショナリズムそのものです。そうであるなら、日本政府が竹島を取り戻せないことや、尖閣諸島について中国に弱腰であることも批判しなければ辻褄が合いません。
(引用以上)
この月刊日本という雑誌は、「偏狭なナショナリズムに安易に妥協することなく、民族として、文化共同体として、高度な倫理を伴った自信を日本人にもたらしたいのです。声高に叫ぶ日本礼賛ではなく、奥歯を噛み締めて胸奥に秘めておく誇りを取り戻したい」という基本理念で、安倍晋三にも批判的な論陣を張ってきた自立保守の立場である。
もともと、安倍晋三のアキレス腱は、右翼・保守を支持層としながら従米を貫かなければならないことだ。
第1次政権では、その軋轢にたえられなくなり、突然の政権放棄となった。
いくら日本の右翼・保守陣営に従米保守が多いとはいえ、草の根レベルではそんなご都合主義で末端まで洗脳できるとは限らない。むしろ、大日本帝国の栄光を取り戻してくれるヒーローとして安倍晋三を持ち上げてきたのではないか。
そういう日本会議のオッチャン、オバチャンみたいな人たちにとって、今回の日ロ会談はかなりの衝撃だったはずだ。一気に「裏切りだ!」まではいかなくても 「えっ どうしちゃったの安倍さん?!」とは感じているだろう。
この機会に、こうした素朴な草の根右翼を安倍晋三から引きはがすことが、安倍晋三の一強支配を終わらせる道筋ではないのか。
そのためには、左翼・革新陣営は「右翼の反対」というアイデンティティーから一歩踏みだし、右翼が何を言おうが関係ない自らの立場をしっかりと作り直すことだ。
「反右翼」、すなわち「右翼の言うことは何でも無条件に反対」という立場でいる限り、素朴な保守や右翼の人たちとのつながりはできない。
■■
自由党は、本来そこで決定的に重要な役割を果たすことのできる立ち位置に、本来は立っている。
そもそも保守であり、日本の自主独立を願う人たちが集まっている党である。
事実、私が知って支持者の中だけでも、元日本会議という人が何人もいる。
そんな自由党と小沢一郎という存在は、日本会議を真っ二つに割って、分捕るくらいのポテンシャルを持っている。
また、左翼・革新勢力を「反右翼」の呪縛から解き放つ効能も併せ持っている。
永田町でどれだけ少数でも、金がなくても、自由党の力はまさにそこにある。
問題は、自由党自身がその自らの力と効用に、気がついているのか。その気があるのか、ということだ。
私が見る限りでは、日本会議を絡め取ってやるくらいの草の根運動をやる気は、自由党には無い。
永田町の党、議員の党、それらの党の政党間調整、そうした枠組みから出る気配は、私の感覚だけの話だが、感じられない。
私はここ数年、生活の党~自由党を応援して、実際に動いてきたけれども、自由党の理念には賛同するけれども、自由党の運動論には賛同できない という結論に達しつつある。
自立と共生 という小沢イズムは、日本の独立と他国の平和 であると私は理解している。その理念の人々の組織を作るにはどうしたらいいのか、再考する必要がある。
日ロ会談で安倍晋三が自ら招いた危機も、年が明けることには適当にごまかされて、うやむやにされてしまうかもしれない。
この国で、安倍晋三やり方じゃダメだ と危機感をもやす人たちは、これを機会に「反右翼」からの脱却を試みてほしい。
私自身はこの脱皮に7年くらいかかったけれども、安倍晋三の「おかげ」で、急速な変化が期待できる。
日ロ会談の失敗は、安倍政権を倒すほどの出来事ではあるが、彼我の現状を鑑みると、まずはそこから始めるしかないのだろう。
しかしそのうえで、この安倍の危機を責め立てることは、できうる限り、手の及ぶ限りやる必要がある。
この危機をぬくぬくと乗り切らせると、安倍晋三は底なしの独裁者になってしまう。それが許されていると思い込んでしまう。
北方領土の返還に期待し、日ロ会談の結果に「えっ」と思った人たちの意見に耳を傾け、これまで左翼とか革新と自覚してきた人たちこそが、溺れる安倍を叩くべし。
そして、叩くことによって生まれる「国という集団への責任」に向き合うことだ。
(注)
「溺れる犬を撃て」 は周知の通り魯迅が言った「打落水狗」である。打てよりも撃てのほうがターゲットを絞るイメージなのでちょっとかえた。べつに銃で撃てと言う意味ではない。もちろん。
魯迅は「フェアプレーはまだ早い」という論考の中で、信義の通用しない中国を侵略する帝国主義に対しては、こちらもフェアプレーなどありえない、と言っている。安倍晋三のようなまったく信義の通用しない者に対し、安倍さんも同じ人間じゃないか などという博愛主義は私はまったく持ち合わせていないので、魯迅のこの言葉を援用させてもらった。


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