2017-01-10(Tue)

金が天下を回らない件(なぜ世界3位の経済大国が貧乏になるのか 4)

金持ちが金を使えば下々も潤うはず というのが、竹中平蔵たちが唱えたトリクルダウンという説だった。

貧乏人から見るとこの理屈自体が屈辱的だけれども、考えてみれば「金を持っている人間が金を使う」と言うことは、たしかに経済を動かすことになる。

「金持ち」を単純に大富豪みたいに思うから屈辱なのであって、金を使う権限のあるもの、と考えれば、理屈時代は間違いではない。
大富豪の消費だけでなく、金融機関が企業に融資して、融資された企業がそれで事業を起こし、給料を支払い、儲かった金を再投資する、ということがグルグルぐるぐる高速回転すれば、確かに景気はよくなる。

もちろん、そんなに高速回転させても、そんなに需要があるのか?という問題はあるが、とにもかくにも、今のような給料が下がり続け、中小企業がどんどん苦しくなり、多くの国民の生活が圧迫されていく時代には、高速回転で景気がよくなるのは、望ましいことに思える。

では、金を使うべき人たちは、ちゃんと金を使ってるだろうか。
それを示す指標を 「マーシャルのK」 というらしい。

マーシャルアーツとK1の対決みたいな名前だが、もちろん格闘技とは関係ない。
これを考えるときには、逆数にしたほうが分かりやすい。(1÷「マーシャルのK」ということ)
この逆数のことを 貨幣速度 といい、「出回っているお金が、1年に何回使われるか」 を表している。

たとえば、10万円持っている米屋の親父が、隣の肉屋で1万円の買い物をしたら、0.1ってことになる。
年に10回買いに行けば 1.0 だ。
こんどは、肉屋の女将さんがその売り上げで隣の米屋で年に10万円の買い物をしたら、あわせて2.0 ということになる。

これを日本全国規模で計算したものが、貨幣速度。
で、その逆数がマーシャルのK てやつになる。
つまり、数が大きいほど、金持ちは金を使わずに無駄にため込んでいる、ということになる。

20170110-1.png
(独法経済産業研究所 HP)

アメリカでは出回っている金が、年に2回近くも使われるが、日本では半分くらいしか使われずに死蔵されていることが分かる。



そもそも、日本で出回っている金はいくらあるのだろうか。

これのことを マネーストック という。
なにやらいろいろ小難しい定義があるようだが、一般的に用いられているM3というもので考えると、およそ1000兆円ほどになる。
1000兆円もの金が出回っているのに、使われたのは約半分の500兆円強だったという話。
(この使われた総額が名目GDP)

これがどうやら、景気が良いと言われながら全然景気よくないという、不思議な現象の正体のようだ。
金はある。有りあまるほどある。でもそれが、中小零細企業まで回ってこない。

じゃあ、使われていない金はどこで何をしているんだ??
いくらなんでも、1000兆円という金が、タンス預金になっていることはないだろうし。

そこでちょっと調べてみると、「豚積み」 という容易ならざる言葉が出てきた。
なんだ 豚ってのは。

これは、銀行が自分の金を日銀に預けっぱなしにしておくこと らしい。
注意したいのは、銀行の自分の金であって、お客さんから預かっている金ではない。
銀行が企業として儲けた金のほう。

銀行が、銀行の銀行である日本銀行に、自分の金を預けている金額は、こうなっている。

20170110-2.png
(大和総研 HPより)

日銀に預けていること自体は問題ではない。
預けている金を裏付けにして、銀行はお客さんに融資するのだから、これはこれで無いと困る。
それはグラフの青いところまでであり、問題は赤い部分が激増していることだ。
赤い部分は、融資の裏付けではないのに無駄にため込んでいる金、すなわち豚積みということで、ざっと220兆円ほどある。

もちろん銀行も貸し出しをぜんぜん増やしていないわけではないが、日銀がせっせと発行している金の大部分は貸し出しには活かされていない。

20170110-3.png
(大和総研 HPより)

このグラフにある「預金残高」というのは、豚積みのほうではなくて、銀行がお客さんから預かっているほうの預金。
預かるほうはどんどん増えているのに、貸し出しは少ししか増えていない。その差額が預貸ギャップで、これがまた230兆円もある。

この差額でせっせと国債を買い、その多くを日銀に売り、その代金を日銀に預けっぱなしにして豚積みにしている、というスキームだ。
銀行は、国債の金利と、豚積み預金の金利(どっちも元は税金) で安定収入を得ている、というわけだ。
もちろん、そんな銀行の商売では、金は回転しないし、銀行員以外に何の恩恵もない。

とにもかくにも、銀行の自分の金(豚積み)と預かった金(預貸ギャップ)で、実に500兆円もの金が滞留していることがわかった。
まったく動かないわけではないが、総額1000兆円のうち、半分がきわめて動きの鈍い状態になっているのだ。



しかし、これだけならば、まだマシなのである。

追い打ちをかけるような数字がある。

20161206-2.png

(財務省「本邦対外資産負債残高」より作成)

対外資産 である。
これについては、以前の記事書いたのでくわしくはそちらを見ていただきたい
 →なぜ世界3位の経済大国がどんどん貧乏になっているのか(その1)

資産を持っているのになんで貧乏? と思うかもしれないが、外国に置きっ放しの資産は日本の経済を潤してはくれない。
外国(ほぼ米国)の経済には大いに貢献しているけれど、日本ではまったく回転しない。

純資産にして340兆円ほどが、日本国内の経済にとっては、死蔵されている。
出回っているお金のうち、1/3もの額がお出かけしたまま帰ってこないのだから、苦しくなるのは当然だ。

もうひとつ、経済波及効果という重大な問題があるのだが、それは次回にするとして、ここまでで分かったことは、トランプは非常に合理的だと言うこと。
トランプが、米国で生産しろ、米国に投資しろ、と言っているように、日本の政治家は、日本で雇用を生む生産に投資しろ、と銀行と企業を脅しあげるべきなのだ。



これまでのシリーズ

なぜ世界3位の経済大国がどんどん貧乏になっているのか(その1)

人手不足なのに給料が上がらない不思議(なぜ世界3位の経済大国が貧乏になるのか 2)


「大企業は税金を払っていない」は本当か検証してみた(なぜ世界3位の経済大国が貧乏になるのか 3)




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No title

>トランプが、米国で生産しろ、米国に投資しろ、と言っているように、日本の政治家は、日本で雇用を生む生産に投資しろ、と銀行と企業を脅しあげるべきなのだ

企業が、日本国内での投資(設備投資など)を増やすことが、景気が良くなるための最大のポイントであることは間違いないと思います。問題はどうすればそうなるのか?ということです。

ケインズ主義者(デマンドサイド派)は政府が公共投資を増やせ(そうすることで乗数効果により企業が投資をするようになる)と主張しているし、新自由主義者(サプライサイド派)は企業が投資をしやすくするために法人税を安くしたり経済的規制を緩和しろと主張しています。

ちなみに、前者(ケインズ主義的な経済政策)がアベノミクスの二本目の矢であり、後者(新自由主義的な経済政策)がアベノミクスの三本目の矢で、安倍政権は、一本目の矢であるリフレ派的な経済政策は行ったものの、二本目の矢は多少放って(ただ安倍政権は、一方で緊縮財政もやっているので、効果が相殺されていると思いますが)、三本目の矢はあまり放っていないといった感じでしょう。

ネットでの経済政策に関する様々な人々の論争は、殆ど経済学オタクどうしの自尊心維持のための宗教論争になっていますが、この経済政策こそが、唯一絶対の経済政策だといった絶対的な正解があれば、どの国も経済政策で苦労【注1】はしないし、貧困問題も簡単に解決できるんですけどね。もっとも、殆どの新自由主義者は、貧困は自己責任だと信じているので、殆どの新自由主義者は貧困問題を解決する気など全くないのでしょうが。

【注1】・・・例えば、お隣の韓国のように、GDPは増えても低所得層は激増するようなパターンも多いです。…物凄く簡単に言えば、人件費を安く抑え【労働賃金の安い非正規雇用労働者を増やしたり、労働賃金の安い国外の企業にアウトソーシングするなど】て、薄利多売をすることによりGDPが増えるパターンです

選挙闘争的に言えば、経済政策にいかにうまいキャッチコピーをつけるのかということが重要になります。経済政策の良し悪しは、その道の専門家でないと分からないし、その道の専門家の意見も通常、多様ですからね。

例えば、民主党が政権を取った時の「コンクリートから人へ」というキャッチコピーは、その経済政策【注2】が正しいのか間違っているのかはともかく、うまいキャッチコピーだったと思いますよ。ただ、「コンクリートから人へ」というキャッチコピーはもう賞味期限切れになっているので、「コンクリートから人へ」というキャッチコピーをもう一度使っても多くの有権者には受けないと思いますが。

【注2】・・・「コンクリートから人へ」というのは、人材育成への投資と、社会保障を充実すれば個人消費が増え、そうなれば企業の投資活動も活発化するだろうといった狙い。…ねじれ国会や東日本大震災の影響もあり、その政策はかなり中途半端なものになり、結果が出たとも言い難いですが
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