2017-01-17(Tue)

慰安婦像はウィーン条約違反か?

韓国での従軍慰安婦像をめぐって、少し前から声高な論議がされている。

激しくなったのは、年末に釜山の日本領事館前に設置されてからだ。
12月28日に市民団体が設置したものを、一度は釜山市が撤去したところ猛烈な抗議の嵐となり、30日には一転して認めることになり、31日には除幕式が行われた。

これに対し、日本政府はかなり強行に反発し、1月9日は長嶺駐韓大使を帰国させてしまった。
大使の召還は国際的にも大きなインパクトであり、良い悪いは別にして、公的な大事件にしてしまった。

そもそも、なぜ年末のギリギリに像の設置がなされたのかと言えば、もちろん、日本の防衛大臣である稲田朋美が辛抱できずに靖国神社に参拝したからだ。
稲田の支持者の中では「正義の闘い」であるはずの真珠湾攻撃を「反省」しに行かされた稲田は、そのままでは極右の支持者に申し訳が立たないため、帰国した翌日の29日に矢も楯もたまらずに靖国に飛んでいった。

日韓合意の交渉の中で岸田外相は、「当時の軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している」 と言っているのだから、その当事者を神とする神社への参拝は、客観的に考えても合意の趣旨に反していると言わざるを得ない。
韓国ではかなり多くの人が「反しているどころかぶちこわしだ」と感じたわけで、一度は撤去した釜山市も一転して認めるという方向になってしまった。

像を建てるという運動の是非はここでは論じない。
ただ、日本が「10億円出したのだから像を撤去せよ」と言うことは、やはり何かをはき違えている。
これは想田和弘 さんが言う通りだと思う。




10億もらったら原爆ドーム撤去する?
という話だ。

筋論はそういうことなのだが、一点だけ、国際問題にしてしまった日本政府が主張する「ウィーン条約違反」という点はどうなのだろうか。これは、上記の筋論だけでは決められない問題ではある。

ウィーン条約の22条にはこのように書いてある。

第二十二条
1 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
2 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
3 使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。


このなかの2が問題になっている。
ここには 「侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護」 「公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止」 について接受国(今回は韓国)に責務がある ということ。

慰安婦像は、侵入や損壊にはならないし「安寧の妨害」にもなりそうにないので、「威厳の侵害」ということになる。
さて、領事館の前に慰安婦像を建てることが、「威厳の侵害」になるのか。

例えば、日本人を明示するような人形に五寸釘を打ち込んであるとか、侮辱的な落書きがしてあるとかならば、まあ該当するのかな とは思う。
あまりたくさんの人数でなかったが、映像に映っているような国旗や似顔絵を燃やしたりするのも、その是非は別にして、「威厳の侵害」になるような気はする。

しかし、像を建てること自体は、これ以上無いほどの静かな無音の抗議であり、これが条約違反と言うことになれば、大使館に抗議デモするのも全て条約違反と言うことになってしまう。それはいくら国際条約でもそこまでの自由迫害は許されまい。というか、ウィーン条約とてもそこまでのことは想定していないとするならば、やはり慰安婦像をそっと設置すること自体は、条約違反にはあたらないのではないか と思うのである。



ところで、結局この問題は、退任寸前のオバマ政権の預かりになったようだ。

約1年前に、やっとのことで日韓合意にもちこんだオバマにすれば、最後の最後で何してくれんねん! てなもんであろう。
日本は「おいそのへんにしとけ」と言われれば、相手が退任寸前の国務長官でも平伏するけれども、韓国はそんなことをするとタダでさえ大統領弾劾で臨時政権なのに、とんでもない大混乱になるかもしれない。

外交部の尹炳世長官が、ケリーにおしこまれて
「国際社会では外交領事公館の前に施設、造形物を設置するのは国際関係の側面から望ましくないというのが基本的立場だ。場所問題に知恵を集める必要がある」
と発言したところ、

韓国外交部長官「釜山の少女像望ましくない」発言に韓国野党「辞任すべき」
2017年01月16日 中央日報


ということになっている。
大使館や領事館の前だけは撤去する、というところを落とし所にするというのが、どうやらケリーと韓国外交部の作戦だったようだが、安倍の大使召還などの強攻策が、そうした一時休戦を許さない情勢に押しやってしまったようだ。

基本的に従米のはずの潘基文までが

慰安婦合意 少女像撤去と関係なら誤り=潘前国連総長
2017年1月16日 朝鮮日報


と言っており、むしろ今ボールは日本側が持っている状態のようだ。
報道はされていないが、ケリーは当然ながら日本にも「ここまでにしろ」と命じているはずで、その線で動けるのかどうか、オバマもトランプも回答を待っている。

ケリーから指示されたのはおそらく、他の場所の像には触れずに、また条約違反だと居丈高にならず、大使館や領事館の前だけは外交慣行上撤去してほしい、と頼むというラインだろう。
その内容を、韓国側の外交部長官は、先走って口にしてしまったのだろう。

トランプも中国に対しては一定の緊張関係を作ろうとしており、米軍を補完する日韓軍事同盟は必須だと考えているはずだ。
それを乱すものは、米つきバッタであろうと安倍晋三であろうと、許されはしない。

支持率をつり上げて延命に必死の安倍政権であるが、従米をとるのか、これまでの支持層である極右をとるのか、実は選択を迫られている。どちらもロクなもんじゃないが、そんな状態で安倍晋三はかなりピンチなのだ。
27日のトランプ会談までに結論を出さなければならない。そしておそらく、安倍自身は従米をとる決断をしているだろう。

安倍晋三を本気で追い落としたいのであれば、その動きをよくよく注意して見ておかねばならない。
子どものケンカのように、単純に貶していればいいというものではない。


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誰が言ったかが問題!

>接受国は、侵入又は損壊に対し・・・・・
とありますように,「侵入または損壊に対して」接受国は対策を講じるべきでしょうが,慰安婦像設置は,侵入でも損壊でもないので,接受国は何をする必要もないと,考えます。

法律的にはよく分かりませんが,これは日本国憲法九条の第一項と第二項の構造似ていると思います。すなわち,
 第二項 前項の目的を達成するために・・・・・というときの,「前項の目的」を達成するためにと同じで,前項の目的以外については知らないわけです。
 したがって明らかに自衛隊の存在は憲法違反ですが,接受国はウィ-ン条約22条に違反しているわけではありません。
 結果論を申し上げれば,誰がそれを言ったかで偽情報,言いがかり,偽指摘,曲解であるかないか,が判断できます。内容はどうでもイイのです。
 何しろ首相が嘘を言っても辞任させる声がちまたに溢れないお国柄ですから。
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