2020-05-09(Sat)

名も無きものたちの声

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小説フランス革命を読んでいます。

文庫本で18冊もあるのですが、面白すぎて読み終わるのがもったいないので、わざと少しずつ買い足しています。
今、11巻で8月蜂起、共和制樹立の直前です。

この本が止められない止まらない なのは、その時々のメインキャストが入れ替わりで主人公になるからです。
革命のライオンことミラボー伯爵、そしてバスティーユ陥落の英雄デムーリエ、ときにはルイ16世の視点で語られたかと思うと、ロラン夫人になったり、ダントンになったり、もちろんロベスピエールも欠かせません。

そうして臨場感と人間くささが充ち満ちる中で、革命が進行していきます。
デムーランやロベスピエールは恐がりで見栄っ張りの、ある意味普通の若者として描かれます。そのことが、なおさらにリアリティを生んでいます。

読み進めるほどに感じるのは、「今」とダブって見えることです。
ミラボーが小沢さんに見えてしかたがない(私生活ではないですよ)というのはおいといても、権力というものが何に依拠するものなのか、どこから生まれるものなのか、どう転がされてしまうものなのか、すごく実感できます。

フランス革命前は、王とカトリックの僧侶と貴族がフランスの権力のすべてでした。
それが、第三身分という名もないものたちが勃興し、貴族が王に対抗するために開催した三部会を牛耳り、軍の介入に対して1789年7月のバスティーユ陥落という象徴的な行動でその権力を握ります。

しかし、第三身分の中には、ブルジョワジーという名前のある集団と、それ以外の名も無きものたちがいました。
ブルジョアジーが権力を独占し、無謀な戦争を始めてしまったことに対し、名もなきものたちが武装蜂起したのが1792年8月の蜂起でした。
サンキュロットと言われますが、これはブルジョアジーのはいているキュロットをはいていない、非ブルジョアという意味に過ぎません。
やがてマルクスによって労働者階級と名付けられるわけですが、このときは自分たちの名前はまだ持っていなかったのです。

要するに、アンシャンレジュームにおける第三身分、市民革命の時代におけるサンキュロットなど、自らを積極的に集団として意識できなかった、それ故に名も無きものたちの集団が、次の時代を切り開いていくわけです。



あれから230年、身分(階級?)はひとつづつ繰り上がっているようです。
かつての貴族の位置に大企業と高級官僚が、ブルジョアの位置に上場企業のホワイトカラーや公務員がつき、中小零細企業や自営業や非正規労働者は名も無き集団になっています。

「市民のみなさん」という呼びかけがなんとなく白々しいのは、あきらかに「市民」の中に格差があるのに、それを見ないふりしているからです。
連合などの労働組合がまったく頼りにならないのは、一昔前のブルジョアに相当する人たちの団体にすぎないからです。

これを政党で考えると、わかりやすいですね。
もちろん自民党は貴族、立憲民主や国民民主はブルジョアを支持層としていることは間違いありませんが、注目すべきは公明党と維新です。

ポスティングやポスター依頼で地域を回るとわかりますが、公明党と共産党の支持者層はほぼ重なっています。
ブルジョアとは言えない家構えの多い街に行くと、共産党のポスターも公明党のポスターも多い。
これが自公政権の強さの秘密ですね。
昔で言うところの第一身分と第三身分を抑えているわけです。

大阪維新が強いわけもこれです。
維新は第三身分の中にある第一身分や第二身分への妬み嫉みを餌に肥え太ってきました、
(裏では第一身分にすり寄ってますが)、表向きはブルジョアジーをぶっ叩くことで第三身分の喝采を浴びているのです。
また、第一身分が独占してきた利権の一部を自分たちの子飼いに分け与えることで、基板を作っています。
反維新の急先鋒はほとんどが第二身分の「市民」や「リベラル」なので、反維新で騒げば騒ぐほど第三身分による維新の支持率は上がる、という皮肉な結果になります。

共産党はたしかに第三身分を基盤としていますが、支持が伸びないのは、共産主義が怖いのではなくて、お上品すぎるからではないかと私は考えています。
政権にすり寄ったり、地方政治を牛耳ったりして、手っ取り早く利権を引っ張ってくれる公明党や維新のほうが、メシを食わせてくれるのです。

リベラルは今や特権階級だという指摘があります。これをネトウヨの中傷だと片付けてしまってはいけません。
決してネトウヨではない私の目から見ても、やはりそうなのかなと思えます。
ここまで書いたように、「自分は市民だ」と思っている人の多くは、やはり230年前のブルジョアの地位を占めています。
もっとわかりやすく言えば、「普通」にしていたら生きていける人たちです。



そんな「市民」にそっぽを向いて、名も無き集団に向き合ったのが、れいわ新選組でした。
お上品な常識論すらかなぐり捨てて「金を刷れ」と叫び、この世の「普通」では生きられない、生きにくい人ばかりを選りすぐって候補者に据えました。
その試みに、私も期待をしました。

しかし残念ながら、思ったほどの支持は得られませんでした。
これまでしかたなくリベラルや共産党に入れていた票を奪回することはできましたが、投票に行かない4000万人にはほとんどアプローチできずに昨年の参院選は終わってしまいました。

「お、次はどでかいことをやらかずぞ」と思わせるとこまでできなければ、残念ながらこの蜂起は失敗だったと言うべきです。
成果はありますし、地歩は築きましたが、蜂起としては失敗です。

失敗の原因はともかく、その後のれいわ新選組の動きには、私は一言も二言も言いたいことがあります。
なぜなら、不発に終わった蜂起を、そのままダラダラと続けるのは下策だからです。
一度撤収して再起を期すか、とりあえずの地歩をしっかり固める工作をしなければなりません。
そうでないと、「結果を残せなかった」という失望感だけを多く残してしまうからです。

れいわ新選組の参院選後の総括をどうしたのか、私は明確な形では見聞きしていません。
二名の当選を果たしたからには撤収はできないとして、それならば地歩を固めるために宣伝と組織作りをしたのかといえば、まったくそれはありませんでした。
地方組織を禁止したからです。

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その結果が、ずっと1%台の支持率です。
この連休に「れいわ新選組を勝手に応援」宣伝カーで大阪5区を何日か走りましたが、参院選の時のような街ゆく人からの反応はもはやありません。

コロナ恐慌にたたき込まれている市井の人々は、とにかく正論よりも明日のイエとメシが問題なのです。
そのリアルな不安と恐怖に、もっとも寄り添えるれいわ新選組のはずなのです。
もちろん発表している政策は、もっとも手厚い補償を要求しています。

でも、今すぐに求められているのは、言葉ではなくて現ナマです。
当面はできもしない大盤振る舞いを語っても、たぶん耳を傾けてくれる人は、困っていない人だけです。

であるならば、今やるべきは、野党は一枚になって、具体的な修正案、つまり「少しでも多く、少しでも早く」の方法を考え、官僚を説き伏せ、自治体を説得し、結果を出すことです。
それができなければ、絵に描いた餅よりは、まだしもアベノマスクのほうがマシ、と思われてしまいます。



れいわ新選組の「最低限でも5%減税を野党共闘の条件に」は、まったく正しい方針です。
しかし、正しいことがいつも最適ではありません。

ショックドクトリンによる安部官邸による独裁がいよいよ進行している今、期間限定で原則を取り下げてでも、野党が役にたっている、れいわ新選組がその中心にいる ということを見せる必要があります。
組織としての形はどのみち無いのだから、形式よりも実質です。
仮に野党がひとつに合流しても、その中で名も無き第三身分に声が届くのはれいわ新選組の派閥だけです。形なんかどうでもいいから、その実態を無くしてはいけない。まったく見捨てられるようなことになってはいけない。
今は孤立を望んで正論を吐くだけのときではありません。

と、まあいろいろ考えながら小説フランス革命を読んでいると、毎晩ついつい寝不足です。
今夜はこのへんで




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