2021-06-01(Tue)

SDGs の本質は「百姓は生かさぬよう殺さぬよう」

新型コロナを契機として、新自由主義が変貌している。

グレートリセットとか、SDGsとか、ステークホルダー資本主義」とか、変なことを言い出している。
それどころか、「新自由主義の終焉」なんて自ら言ったりしている。
どうなってるんだろう。

ポストコロナ時代に、新自由主義から脱却するべき理由
2020年10月25日 Klaus Schwab 世界経済フォーラム


日本の経団連も、この路線にそのまま乗っかってる。
下の標題の頭についてる「。」は、新自由主義の終わりを意味しているらしい。

。新成長戦略
2020年11月17日 日本経済団体連合会


新自由主義の走狗である竹中平蔵も、ベーシックインカムだとか、一見らしからぬことを抜かしている。

しかし欺されてはいけない。
そもそも新自由主義というのは、企業活動に国家が介入しない、経済活動の自由放任主義で、極端な小さな政府を求めることだ、と理解されていることが多いけれども、ちょっとこれは違うと思っている。
これらの特徴は、あくまで「手段」のひとつであって、新自由主義の目的ではない。

新の付かない自由主義経済は、ザックリ普通の資本主義と考えていい。
では、何が「新」なのかというと、実はぜんぜん自由じゃないということだ。
超巨大資本、スーパー大金持ちにだけ有利なような土俵を作っておいて、その上でだけ「自由放任」にさせるのが「新」自由主義なのである。

だから、リーマンショックのようにその土俵が崩れかけると、これまで「小さな政府」とか言っていたその口で、「税金での救済」を命じる。国民生活の救済にはまったく目を向けない政府も、彼らに命じられると湯水のように公金投入する。
これが新自由主義の本当の姿である。

繰り返すが、新自由主義とは、超巨大資本が圧倒的に有利な土俵を、国や国の連合が言いなりになって作り、維持することである。

そこでは、並の資本家は、むしろ搾取される側となり、資本主義のシステムごと、丸ごと搾り取られ貧しくなっていく。
まさに、今の日本はこれだ。
日本国内でも、ホンのひとにぎりのスーパー大金持ちはどんどん儲かっているが、並の金持ちは徐々にすり減らしている。

日本が世界的に見ればまだまだ金持ち国だ、という幻想はもう捨てたほうがいい。
ウッドショックがいい例だ。
建築用の木材が、日本のような貧乏な国には入ってこなくなってしまったため、住宅建築に急ブレーキがかかっている。
単純な話で、アメリカや中国が高く買ってくれるのに、わざわざ日本みたいな安値の国に売る必要がなくなったのだ。



資本主義的な開発の余地が大きなフロンティアが残されている時代は、普通の資本主義が帝国主義国家とタッグを組んでどんどん膨張していくことができた。
しかし、世界中が概ね開発され尽くしてしまうと、資本主義は拡張発展ではなく、すでにあるパイの奪い合いになった。
そこで生まれたのが新自由主義だ。

資本主義は、拡大と再生産が前提だ。そうでないと、ガソリンの切れたエンジンよろしく、命脈が尽きてしまう。
しかし「新」自由主義は、再生産などお構いなし。すでにある財産を、いかに吸い上げるかだけだ。
すでにして巨大にふくれあがった地球上の資産を、ひとにぎりの超巨大資本にどんどん糾合していく過程こそが、新自由主義と言っていい。

そのためには、手段は選ばない。
戦争や恐慌は言うに及ばず、おそらくは疫病でさえ。

しかし、そんな新自由主義の行く末は、地球全体の貧困化であり、さすがの新自由主義も吸い上げる池の水が枯渇してくる。
また、世界の人々は日本人ほど奴隷化されていない人々も多い。反乱が相次いでいけば、これまでのようなやりたい放題はできなくなるかもしれない。

何より新自由主義にとっての誤算は5年前のトランプ大統領誕生だっただろう。
公然とアメリカファーストと言い、新自由主義にしぶとく抵抗するアメリカ大統領が登場するとは思ってもみなかったはずだ。
イギリスのEU脱退、ブレグジットもしかりだ。

大統領選挙や国民投票という場で、明らかな反新自由主義のうねりが見られるようになり、新自由主義陣営も体制の建て直しを図った。
そこで出てきたのが、冒頭に書いたような「変貌」である。



「百姓は生かさぬよう、殺さぬよう」という言葉は、徳川家康が言ったとされているが、実際は家臣の本多正信が本佐録という書物に書いた「「百姓は財の余らぬように不足になきように治むる事、道なり」が元らしい。

まあどっちでも良いのだが、要するにこの言葉のポイントは「生かさぬよう」のほうではなく、「殺さぬよう」あるいは「財の不足なきよう」のほうにある。
経営学の始めに習う「ゴーイングコンサーン」である。
イマドキ流で言うなら「サスティナブル」と言ってもいい。

百姓がみな飢え死にしてしまったり、あまりに頻繁に一揆を起こしたり、逃散して農地を放棄してしまったら、江戸時代の経済は崩壊する。
だから、百姓を「殺さぬよう」、「財の不足なきよう」治めることが、幕府にとっての生続ける絶対条件だったのである。

戦乱で荒れ果てた農地を整えて、幕府の基礎を作ろうとした本多正信が考えたことに、戦争と収奪で枯渇し始めた地球からどうやってより搾り取れるかと考えたスーパー大金持ちも、ようやく少しばかり思い至ったのだろう。

しかし、よくよく気をつけなければならない。
あくまでやろうとしてることは、「超大金持ちが有利になるための、新しい土俵作り」である。
キレイゴトの行間に、汚い企みがみっちり詰まっている。

貧困をなくす・飢餓をゼロに・すべての人に健康と福祉を・質の高い教育をみんなに・ジェンダー平等を実現しよう・安全な水とトイレを世界中に・エネルギーをみんなに そしてクリーンに・働きがいも経済成長も・産業と技術革新の基盤をつくろう・人や国の不平等をなくそう・住み続けられるまちづくりを・つくる責任つかう責任・気候変動に具体的な対策を・海の豊かさを守ろう・陸の豊かさも守ろう・平和と公正をすべての人に・パートナーシップで目標を達成しよう

こんなことがわずか10年で実現できるなどとは、よほど純粋な子どもでもない限り誰も信じていないだろう。
ただ、SDGsとりくんでま~す という免罪符を手に入れられるだけだ。
そして、官民挙げてSDGsの夢を振りまいていて民衆を慰撫している間に、とっとと新しい土俵を作ろうというのだ。



新自由主義が作ろうとしている新しい土俵は、おそらく二つの土台がある。

ひとつは、ガチガチの管理社会だ。
マイナンバーはもちろん、国民とさまざまなリソースを、国家が完全に管理し、必要に応じて統制したり動員できるようにすること。
竹中平蔵がガラにもなくベーシックインカムなどと言っている本音は、この管理体制の構築である。彼は、医療の徴兵的なことも言っている。

そしてもう一つは、ステークホルダーという言い方にもあるように、労働者という存在をなくしてしまおうということだろう。
すべての働く人を自営業者にして、今の雇用関係を、ぜんぶ下請け関係にしてしまうということだ。

低賃金のアルバイト以外は、ある程度稼ごうと思ったら自営業者になって、大企業と下請け契約するしかない。
そんな世の中を、新自由主義は作ろうとしている。

グレートリセットだとか、リモートがどうとか、新しい生活様式がどうとか、なにかコロナでガラッと暮らしが変わるような幻想を振りまいているのは、ここに向けての準備作業に他ならない。

かつて90年代の終わりに、非正規雇用をどっと増やされたときも、フリーターなる言葉が作られて、まるで「自由を手に入れる」かのようなイメージが世の中に蔓延した。でも実体は、「自由に首切れる」という意味のフリーだったのは言うまでもない。

欺されてはいけない。

新自由主義は全く変わっていない。
虎視眈々と、我々を、貧乏人から小金持ちまでをふくめて、がっつり搾取する、方法を準備している。
新しいのは、その搾取する方法だけだ。

SDGsだの、新しい生活様式だの そんなキレイゴトに耳を貸すな。
わずか5万円のベーシックインカムと引き替えに、生活の隅々まで国家に管理され、労働者としての権利をすべて奪われることになる。
コロナ禍を利用して、ヤツらはそれを本気で準備している。


今年の秋までに必ずある衆議院の総選挙は、そんな時代のまっただ中の政権選択選挙だ。
どんなに大きい選挙なのかを考えるほどに、そして野党諸氏にその危機感がない様を見るほどに、身震いを禁じ得ない。


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