2021-07-12(Mon)

植民地日本とMMT

 わかったようでわからないMMT。現代貨幣理論。 ぶっとい本を読むのは骨が折れるし、かといってチョコチョコッと演説やら聞いても、なんだか頭が整理されない。
 そんな梅雨空の脳にちょうど良い記事を見付けた。

MMTが日本に「公益民主主義」をもたらす理由
「租税国家論」に代わる「新たな物語」が必要だ 
島倉原 東洋経済 2019/10/17


20210712-1.jpg 筆者はあのぶっとい本の監訳者で、簡潔にMMTについてまとめている。
見出しを並べると、

MMTとは何か
MMTはどのような貨幣観を持っているのか
租税が貨幣を動かす
主権通貨国の政府に財政破綻のリスクはない
税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない
必要なのは「公益民主主義の物語」か
必要なのは「正しい貨幣観」に基づく発想の転換

チョコチョコと聞きかじってきたことを、ざっとまとめてもらった感じ。
それと、MMTと反MMTの議論にありがちな、感情的な部分がほとんどなく、とても読みやすかった。

経済や政策を語るときに、論理の部分と理念の部分をあるていど分けて話さないと、その論理はどんだけバイアスかかってるんだろうという色眼鏡で見てしまうことになる。
MMTと反MMTの議論はまさにこれで、どっちも自説の主張よりも敵を否定することの方に熱が入りすぎていて、しかも、「まともに相手にするのもバカらしい」みたいな小馬鹿にした空気が、これもどっちからも発散していて、ほんとに辟易することが多い。

さらにMMTの議論には、作り出した貨幣をどう使うか、でMMT派の中でもものすごく枝が分かれている。
ほとんどファシストみたいなのから山本太郎まで、とてもひとつのMMT派ではくくれない。

だから、MMTのことを知ろうと思ったら、それに同意するにせよしないにせよ、まずはドライに理論として見るべきだと思う。
そういう目で見ると、「税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない」までは、すっと頭に入ってくるし納得もできる。
しかし、最後の2節は、経済理論ではないので、なんだかしっくりこない。

私益最大化の論理に代わる「公益」が必要である。我々は、政府が果たす積極的な役割、および政府による我々の役に立つような貨幣の利用に、焦点を当てなければならない。
と言うのだけれども、公益第一なんてことが、経済理論で実現するわけもなく、なんの根拠もない願望にしか見えない。

MMTの貨幣観に基づいて、民主主義に基づく政府や通貨制度が公益のために果たしうる積極的な役割を認め、それらへのいわば信任投票として税金を理解する
要するに、「公益にもとると判断したら、民主的に政権を交代させて、前政権の決めた税金は払わない」 という意味で、信任投票と言っているだろうか。
しかし、「増税の目的は通貨に対する需要を増やすこと」なのだとも書いてあり、公益性への信任投票とは違うのではないか?

なんだか、最後の2節は、とってつけたようで、どうしても違和感があるし、理解もできない。



つまり、現実の経済を見ると、実はMMTの理論のようになっているじゃないか。主流派経済学のほうが幻影だよ。という部分は、理解できるのだが、ではそのMMTを現実の財政や金融政策に落とし込もうとすると、なんだかウニャウニャしてしまうのだ。

一番のウニャウニャは、何と言っても、インフレになったらお金を刷るのを止める、行きすぎたら増税して冷やす。と言う部分だろう。
だれが、どうやってそれを判断し、的確に梶をきるのだろう?
もし今の政権がMMTの考えで走り始めたら、菅義偉や麻生太郎がその役割を担うのだ。   大丈夫か????

仮に政権交代してとしても、枝野幸男やら立憲幹部の連中に、本当にできるのか???

なんでこれほどに心配するかと言えば、日本の民主主義なんて幻に過ぎないからだ。
一応選挙はあるけれども、地盤とカネとマスコミが圧倒的な力を持っている今の選挙制度で、民意が反映されることはほとんどない。
原発にしても税金にしても、世論と選挙結果が真逆な現実は、ずっと目にしてきたではないか。

20210712-2.jpg しかも、大きな決断は、決して日本だけの判断ではすることができない。1952年以降も、実質的にアメリカの植民地として徹底的に飼い慣らされてきた政界と官界は、ご主人様のご同意を得なければ、主要な政策判断はできない。
不用意に独断すれば、古くは田中角栄から、近くは小沢一郎まで、数多の政治家が徹底的に潰されてきたことも、私たちは知っている。

一国の財政や金融政策は、他国に多大な影響を及ぼす。
「インフレになったから国債をストップして増税しよう」と思った時に、米国から「アカンアカン、国際協調やで。あと半年は金融緩和と積極財政続けなはれ」と言われたら、誰が断れるだろう。
もっとうがって考えれば、積極的に円を暴落させるために、ハゲタカマネーが仕掛けてくることだってあり得る。そういう攻撃に遭ったときに、自立的に防衛する力と根性が、この国の政界官界にあるだろうか?

MMTが現実の政策に落とし込もうとすると、どうしてもウニャウニャしてしまうのは、信頼できる民主主義とセットじゃないと、制御不能になるリスクがあるからだ。と私は思っている。
民主主義というのは、ひとつは、植民地状態を脱して、この国の主権者の意思で動く国という意味と、もう一つは、その主権者の意思が的確に選挙結果に表れる選挙制度という意味の 二つの意味がある。

どちらも夢でしかない今の日本で、本当にMMTやって大丈夫なのか??
この疑問や不安は、もっともだ。私も同感。

MMTを主張するためには、MMTで日本経済を、日本の国民生活を救うためには、それとセットで最低限の民主主義を実現すること。対米従属に染まりきった政界と官界を一掃し、地盤とカネがなくても国会議員になることができる制度を作ることが必須条件だ。



ただし、MMT全般を適用するのは危険だとしても、それは積極財政を否定するものではない。

日本1人負けの長期不況のあげくコロナ恐慌に陥っている今、減税と直接給付を軸にして、庶民の生活需要から経済を復活させていくことは、まったく正しいと思っている。
MMTという大長刀と、当面の政策を同一視するのは間違いで、いくらMMTが嫌いでも、当面の積極財政に反対する理由にはならない。
仮に政権交代できずに当面は自公政権が続いたとしても、やらないよりは少しでもやったほうがいい。

むしろ心配なのは、政権交代したあげくに立憲・枝野が緊縮財政に吸い寄せられていくことだ。
彼らは本気で財政破綻にビビっている。というか、財政破綻の脅しにビビっている。もっと正確に言うと、財政破綻の責任を問われるという幻影に怯えている。
だから、ようやく公約に「消費税5%への時限的減税を”目指す”」とか何とか書くらしいが、イザとなったら財務省に恫喝されて「いやあ、目指してただけなんで、へへへ」と言って引っ込めそうな気がしてならない。

一度ならずも二度までも、というか、一度あることは二度ある というか、とにかく、10年前と同じことをやらかした日には、もう今度こそ日本の野党は壊滅する。
自公と維新と都民ファみたいなのだけで、この国の政策は決められていく・・・・・・
日本中が大阪化する。。。。。 恐ろしい。。。。。。。。。。。。。。。。

枝野のビビり(本人はリアリストと言ってるが)が、日本国民に引導を渡すことになるかもしれない。20210712-3
これが、私の今の一番の心配である。
「枝野 降りろ」の国民運動が必要なのじゃないか と真剣に思っている。

さすがに枝野打倒!とまでは言わないが、「お疲れさま、もう代表辞めて隠居して下さい」 と言いたい。

枝野幸男という漬け物石が取り除かれれば、立憲の中の風通しは一気に良くなって、小粒かも知れないが人材を活かすことができるだろう。
また、そうなれば山本太郎も突っ張り続ける意味がなくなり、話し合いによる共闘路線を取ることができる。(しなければならない)

どんなに遅くても、あと3ヶ月以内に衆議院の解散総選挙がある。
チキンレースも必要かもしれないが、もはや向き合うべきは国民だ。
顔の向きを変えなくてはならない。

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