2006-10-26(Thu)

構造計算について

何度か書いているけれども,私自身は木造住宅専門なので,マンションの構造計算などは,じつはよく分からない。ただ,建築と関係ない人よりは少しは分かるので,ちょっと解説している。

そんなわけだから,あまり詳細なことは,回答できないこともあるのでご了承願いたい。

さて,いくつかの質問に答えてみる。

藤田氏の主張は「計算書その3」を添付しているので、同制度は利用していないし、その議論は不要ということでした。
認定プログラムによる一貫計算を前提とした検査ではなかった、ということになるのでしょうか?
その場合、「利用者証明書を大臣認定書と同等と考えていた」という同社のコメントが腑に落ちません。
「一貫計算ではない場合、計算プロセスをすべて追ってチェックするのが基本だ」とする国交省の見解は妥当なのでしょうか?
また、「構造計算書その3」とはどのようなものなのでしょうか?



かの財団法人日本建築センターによると,大臣認定のプログラムを使った場合の構造計算書というのは,

構造計算書(その1) 入出力データ等をとりまとめた、建築物の構造設計に関する概要を把握することができる設計図書

構造計算書(その2) 構造計算プログラムによる構造計算に含まれない設計について、手書き等で補足説明した構造計算書

構造計算書(その3) 構造計算プログラムにより出力される全ての構造計算書

の3段階に分かれるらしい。そして,建物を建てるための確認申請の時は,

構造計算書(その1)及び構造計算書(その2)は必ず提出

構造計算書(その3)は「建築主事又は指定確認検査機関の求めに応じて提出する。」


で,(その3)という詳細な計算書を省略するためには

認定プログラムが適用範囲内で使用され、かつ、計算処理が正常終了した場合には、構造計算書の各ページのヘッダーに大臣認定番号・性能評価番号などが出力されます。

設計時に使用される個別計算的な使用や適用範囲外で使用された場合は、このヘッダーは出力されないようになっており、ヘッダーは適正使用を証明するものとなります。


ということで,省略する場合はこの「ヘッダー」がいわば大臣のハンコのような意味を持つわけだ。

それから,一貫計算うんぬんというのは,たぶん

確認申請における構造計算書の作成に使用される一貫検定プログラム(建築物が建築基準法施行令第3章第8節の当該部分に適合していることを検定するためのプログラム)

のことを指しているのだと思う。建築基準法施行令第3章第8節 といのは,建築基準法のなかで,構造計算について細かく定めてある部分だ。

ようするに,建築基準法に構造計算について決めてあることは,全部チェックするプログラム という意味にとれる。大臣認定プログラムは,この一貫検定であることが条件になっている。

以上から言えることは,大臣認定を取ったプログラムで,ヘッダーが印刷されていれば,詳細な計算書をチェックせずに確認検査でOK出してもよい,ということ。

逆に言うと,詳細な構造計算書を添付している場合は,大臣認定とかヘッダー云々は,少なくとも形式邸には関係ないということになる。
そうなると,何百ページもある計算書を逐一再計算していくことになる。

そして,イーホームズもERIも日本建築センターも川崎市もその他沢山の検査機関が偽装を見落としたわけだ。これは,仕方がないといっているわけではない。あってはいけないことだ。ただ,実情はそんなもんだということ。

ちなみに,利用者証明というのは,海賊版でなく正規の大臣認定プログラムを使ってますよ,という証明書らしい。これが,大臣認定書の代わりになるのかどうかは,私は知らない。
姉歯氏が活用して話題になったSS2(計算プログラム)のホームページに小さなサンプル写真が出ている。


次の質問

確認検査費用をその値段にしたのは、誰なんでしょうか?
結局安かろう悪かろうの建築行為と同様のアクドイ行為そのものが、確認検査機関でも行われていたことが大きな要因でもあるわけですよね。


これは,正確には分からないけれども,自治体が検査をする場合の費用は国に定められているから,それより大幅に高い値段は付けられないだろうとは思う。


次も,一般の人には分かりにくい点だ。

そこで、一つ、教えて頂きたいのですが、確認審査機関は、「構造図」のチェックはしないのでしょうか?姉歯物件の時、「1階と最上階の柱の断面が同じだった」という話を聞いたような気がします。構造の専門家じゃなくても、意匠屋でも、あるいは土木屋さんでも、「なんやこの図面は?」と思うと思うですが・・・

もちろん,柱の大きさや鉄筋の本数などを書き込んだ構造図というものがある。現場では,この構造図をみて実物を作っていくのだから,これが正しいかどうかが,一番の問題。

つまり,構造計算書というのは,構造図が正しいかどうかの証明ということ。
もちろん,1階と10階の柱が同じというのは,素人さんでもおかしいと思う。検査員の人も現場の人も,誰でもおかしいとは思ったはずだ。しかし,機械的に検査をしている場合,構造計算のつじつまが合っていれば,何か変だと思いつつも通ってしまっても不思議ではない。

姉歯氏は,国会の証言で偽装の手口をこう言っていた

要するに、重量を低減、単純に重量を低減して全体の総重量を抑えたという形が、当初はそういう形をとっておりました。

(構造計算ソフトが)SS2に変わりましてから地震力のデータが簡単に操作できるようになりましたので、1.0のところを0.5とか0.6とかという形で低減、単純にいたしました。


先のエントリーで書いたとおり,構造計算の手順は

1. 建物の形,大きさ,重さから,地震の時と台風の時に,どの部分にどのくらいの力が掛かるのか計算する。

2. 掛かる力には万が一を考えて安全率を1.5~2倍かける

3. 設計されている建物の各部分が,どのくらいの力に耐えられるのか計算する

4. 掛かる力(安全率みたもの)と耐えられる力を比較して,耐えられる方が大きければOK

ということだから,一番前提になる重量とか地震力を低減すると,1.の部分の数字が小さくなって,あとの計算は全て正しくても,必然的に弱~い建物でもOKということになっていく。

全くもって単純な偽装だが,建物重量とか地震力とか,一番最初に出てくる数字の誤魔化しに気が付くかどうか,に掛かってくる。なにせ,計算過程は正しいのだから。


それでも,実際のところ,構造をちゃんと知っている人が,きちんと審査すればやはり見抜けるはずだと思う。「あれおかしいな」と思って,計算書の要点を何回か読み返せば,たぶん気が付くはずだ。

これを,見抜けないのは,スピード優先のザル検査であるか,組織ぐるみ犯罪かのどちらかだろう。そして,藤田社長がこのような行動に出ていることを見ると,こういう可能性が見えてくる。

イーホームズはスピード優先のザル検査。
ERIや東日本住宅評価センターなどの,不思議と生き残ったところは組織ぐるみ。

あくまで可能性であるが。

※このくだりについて,らくちんランプさんから,訂正依頼があった。

当時の国交省の小川住宅局長が「機械的に処理する事が、民間検査機関に求められる業務なので、そのスピードは飛躍的にアップします」という内容の答弁を行っています。
ですから、スピードが速い=手抜きという論理は、誤解を招く以前の誤った法律解釈だと思います。


確かにその通りで,国の定めたプログラムで計算したものを国の定めた手順で検査していたのだから,責任は一にかかって国にある。
検査会社に,法的には何の問題もないし,現に藤田氏も耐震偽装で有罪になったわけではない。

にもかかわらず,イーホームズはお取りつぶしで,他の会社はゲンコツ程度ですんでいるところに,問題の深い根がある。

しかし,そのうえで,「鉄筋半分の図面を見たら,おかしいと感じるはずだ」という意見も,技術屋としては無視できない。確かに,私もそう感じるからだ。
だから,道義的に,人間藤田東吾として,結果としてザル検査になっていたことは省みてもらいたい。

いわば,A級戦犯の戦争責任とは違った,動員された兵隊の道義的責任のようなものだ。前者は耐震偽装の主犯であり公的に責めを負うもの。後者は結果として冒してしまっことに,人間として反省する問題だ。

それは,現在の藤田氏の戦いを,より説得力のあるものにするだろう。


もう一つ,耐震偽装では鉄筋の量ばかりが取り上げられたが,鉄筋だけ減らしても,ゼネコンはそれほど莫大な節約にはならない。これでは,偽装というリスクを冒すには見返りが少なすぎる。

建物重量や地震力を減らして計算している以上は,構造体の全てが小さい。しかも,そんなことをする連中だから,構造体に限らず,抜けるところは全て抜いているはず。

耐震偽装マンションとは,単なる鉄筋の少ないマンションではない。

さて,安倍晋三の非公認後援会=安晋会の副会長さんは,どんなマンションを作ってきたのだろう。アパマンションの調査・追及が進むことを望みたい。

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藤田東吾氏、復活

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続く藤田社長の告発

「きっこの日記」を窓口として、イーホームズの藤田社長は告発してきたが、ついに「YouTube」を使って自ら訴えるという手に出た。マスコミの沈黙に対抗するかのように自らをさらけ出して告発する映像はやはり緊迫感がある。以前「YouTubeの可能性」という記事をエントリーし

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荻島耐震偽装問題

姉歯事件以降、耐震偽装問題は一部の建築士が引き起こした問題であって、収束したかのようにみえるが、札幌では荻島設計という無資格者の設計による耐震偽装問題が隠蔽されたままである。

http://moca555.blog95.fc2.com/blog-date-200805-1.html

きっこの日記に藤田氏のコメントが1-6ほど本人の言いたい事を言いまくっているが、構造実務者のおれから言うならお前ふざけるなと言いたい 当然姉歯が一番悪いが検査機関としてザル通しして確認を降ろしてきたe-hはどうなんだ、正義の味方よろしく首相官邸に出向き たった8cm厚のバインダーに3物件の構造計算書を持ってきていかにも俺はみたいなポーズを取って騒ぎ立てているが、原因はe-hのザル申請許可が原因だろ姉歯も申請はe-hに出してくれなど言いわれた事自体に会社経営者として恥と思うのが道理
今姉歯耐震偽造のせいで仕事の時間は2倍に増え、実入りは半分になった状態だ。姉歯は第一だが、藤田の経営したe-h、経営者の藤田も姉歯と同列の犯罪者だよ。それと姉歯がプログラムを改ざんしたとSS2側が当初言ってたが建築構造屋にそこまでの知識は無いと思うが、このブロブ見学者でアセンブラを逆コンパイルしてルーチンを読み取ってコードを書き換えきれる人いる?。

確認検査機関に求められている業務

明月さん、こんにちは。
>それでも,実際のところ,構造をちゃんと知っている人が,きちんと審査すればやはり見抜けるはずだと思う。「あれおかしいな」と思って,計算書の要点を何回か読み返せば,たぶん気が付くはずだ。

 この下りは、いち早く訂正しないと、大きな問題に発展すると思いますよ。
 そもそも、それまで行政が独占していた確認検査業務を民間開放する際に、国会で当時の国交省の小川住宅局長が「機械的に処理する事が、民間検査機関に求められる業務なので、そのスピードは飛躍的にアップします」という内容の答弁を行っています。
ですから、スピードが速い=手抜きという論理は、誤解を招く以前の誤った法律解釈だと思います。
また、この件に関連した記事を私の1月18日のブログ「国土交通省の山本住宅局長を、早急に証人喚問せよ」
http://blogs.dion.ne.jp/spiraldragon/archives/2684154.html のコメント欄の中にある、建つ三介さんのコメントをお読み下さい。
尚、この件につきましては、出来れば上に紹介した建つ三介さんにお問い合せの上、早急に正確な記述に訂正されることを切に願います。「いわいわブレーク」
URL:http://blogs.dion.ne.jp/ivanat/

役所上がりの建築士には偽装を見抜けない

>実際のところ,構造をちゃんと知っている人が,きちんと審査すればやはり見抜けるはずだと思う。「あれおかしいな」と思って,計算書の要点を何回か読み返せば,たぶん気が付くはずだ。

民間建築確認検査機関の一級建築士のかなりが、役所上がりと聞いています。

・役所で建築確認行政をしてきたものの大部分は学卒・院卒で直接役所に入った者で、そうした連中は学生時代の演習と建築士試験で構造設計を少しばかりやっただけで、構造設計を実務経験としてやってはいない。まして構造計算ソフトが導入された後は操作実習に力を入れてPC頼りっぱなしじゃないか(笑)

・戦前の内務省時代や戦後しばらくは役所の施設の設計は国や都道府県の建築部の建築士が自ら設計していたが、それも昔のこと。今や全て外注で、役所内部で図面を引く建築士はいない。

以上の理由で、役所上がりの実務経験の無い「一級」建築士では、構造設計の偽装を見抜く力はまず無いと思わざるを得ません。
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