2007-03-21(Wed)

今日も今日とて憲法を考える

ぶり返してきた寒さのせいか,このところ心身が冴えない。仕事だけは(ありがたいことに)忙しいので,ついついブログの筆も滞りがちだ。

白州次郎についての本は,このところ数多く出ている。数冊読んだが,個人的には,白州という人は好きにはなれない。ただ,憲法を考えるときに,必ず登場する人物であり,一つの基準になる人かもしれない。

「白州次郎の日本国憲法」という本がある。車雑誌の「NAVI」に連載されていたという,憲法に関する本としては異色のもの。原題も「日本国憲法とベントレー」といい,鶴見紘というライターが書いている。

以前に紹介した児島襄の「史録日本国憲法」は長すぎて読み切れない,という方にもお勧め。

また,著者の鶴見氏は,吉田茂や白州次郎の硬派ぶりを持ち上げる一方,憲法「押しつけ」論に対しては,

(「憲法改正の歌」で)「祖国の解体計りたり」と嘆く(中曽根)元首相の心に残った<解体像>は,それほど悲惨なものだったのだろうか。絶対君主制度としての天皇制の廃絶,軍国主義の根絶,そして封建制度の追放が,なぜ,計られた解体なのだろう? 解体前のそうした諸々が,日本国民の<祖国>であるならば,筆者には祖国は要らない。

と言い切る,自身もなかなかの硬派である。

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この本を読んでも,現憲法についての基本線は鮮明になる。

たしかに「押しつけ」には違いない。これは,事実経過から明らか。

しかし,「押しつけられ」ていなかったら,松本烝治の作った帝国憲法の焼き直しになったか,極東委員会の手によって天皇制が完全に廃絶されていたか,である。

ちなみに,松本烝治は自称リベラリストであるにもかかわらず,帝国憲法と大差ない草案を作った最大の理由は,そうしないと「自分が右翼に襲われて殺される」からだという。
これは,鶴見の本にも児島の本にも書いてある。

つまり,自分の保身のために作った草案であり,なおかつ右翼のテロによって「押しつけられた」草案だったということだ。

血盟団事件-5.15-2.26事件から引き続く,右翼のテロ。山本宣治を暗殺し,浅沼稲次郎を刺殺した右翼テロ。

当時の日本政府案=「自主憲法」は,この右翼テロの脅威を背景としたものだということを,しっかりと記憶にとどめたい。

今国会でもし「国民投票法案」という,名前からしてマヤカシの法律ができてしまい,ただでさえ頼りにならないマスゴミが,より一層言論統制され,金のある者,暴力を背景にした者だけがモノを言える世の中になったら,一体どういうことになるのか。


そもそも,天皇が1941年12月1日に開戦の決定について,こう言っている。

「私は立憲国の君主としては,政府と統帥部との一致した意見は認めねばならぬ,もし認めなければ,東条は辞職し,大きな「クーデター」が起こり,かえって滅茶苦茶な戦争論が支配的になるであろうと思い,戦争を止めることについては,返事をしなかった。
 12月1日に,閣僚と統帥部との合同の御前会議が開かれ,戦争に決定した,その時は反対しても無駄だと思ったから,一言も言わなかった。」(寺崎英成御用掛日記より,現代仮名遣いにて)

この文章は「日本の戦争責任とは何か」高濱賛著より孫引きさせてもらった。この本については,また別の機会に紹介したいが,この天皇の責任逃れの発言を,今風に聞いたらどうなるか。

もし仮に,アパグループの会長が,「耐震偽装に反対しても無駄だと思ったから一言も言わなかった」と釈明したら,どうだろうか。

誰一人として「そうだろう」とは言わないはずだ。それは,ふたつの理由がある。

一つは,子どもでも解りそうな話だが,最高責任(帝国憲法の言う大権)を負う者とって,「言っても無駄だから」という言い訳は通用しない,ということ。

もう一つは,アパの場合,右翼や軍部のクーデターというテロは考えられないからだ。(○○団のほうは知らないけれども)

前者については,天皇についてもまったく同じで,この発言をもって天皇に戦争責任がないという主張をするのは,倫理の崩壊に等しい。

その上で,考えなくてはならないのは,最高責任者であり,神ですらあった天皇にさえ,こんな言い訳をさせるのが「右翼テロ」なのである。

そして,右翼テロの脅威は,言論統制とセットだ。言論,報道がまだしも機能している間は,いかに凶悪なテロであっても,心と口を完全に塞ぐことはできない。

しかし,言論統制と右翼テロがセットになったとき,その効果は何倍ににもなって発揮される。


安倍晋三が強引に進めている「国民投票法案」というものは,まさにこうした事態を現出させるための「口封じ法案」であり,これが成立してしまったときには,加藤紘一の実家が放火されたような事件が,一層頻繁になっていくことは,それこそ火を見るよりあきらかだ。

憲法の論議をすることは,大いに結構。もちろんタブーなどではない。

だがしかし,「国民投票法案」は,議論するための法案ではない。議論を封じ込めるための,金と暴力がものを言う世の中にするための法案だ。

これを肝に銘じたい。
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