2007-06-28(Thu)

従軍慰安婦決議に頭を抱える安倍晋三

こんな記事を見ると、ちっとも頭なんて抱えてないようにも見える

首相「対応せず」・米下院の従軍慰安婦決議 日経新聞 07.6.27 

にもかかわらず、安倍晋三は内心では困りまくっているはずだ。なぜか。

米の慰安婦決議案、平沼氏らが批判声明…懸念示す向きも 読売新聞 07.6.27

米下院外交委員会でいわゆる従軍慰安婦問題に関する決議案が採択されたことについて、無所属の平沼赳夫・元経済産業相や自民、民主両党の国会議員は27日、国会内で記者会見し、「事実に基づかない決議は日米両国に重大な亀裂を生じさせる」などと批判する声明を発表した。

決議案の根拠となった1993年の河野洋平官房長官談話の再検証も改めて提案した。


安倍晋三の本心は、全く平沼と同じであろう。しかし、そう言いたくても言えないのである。
ここに安倍晋三の苦悩がある。

つまり、この時期にこの決議を採択したと言うことは、「平沼赳夫的なるモノを、アメリカは許さない」という意思表示であるからだ。

■■

この決議自体の意味は大きいが、しかし、アメリカ議会が正義のためにこの議決をしたとは、私はサラサラ思わない。なにせ、戦争と利権のことしか頭にないアメリカ国家のすることだ。必ず裏がある。

いろんなことが考えられるが、一番直接的に言えることは、日本の「反米右翼」は退場せよ、ということだ。
その意味では、アメリカにとっては、慰安婦問題は口実だったとも言える。

今後のアメリカの世界戦略、なかでも対中国戦略の中で、日本をどうしたいと思っているのか。そのために、日本の政治体制をどうしようとしているのか。
そうしたアメリカの意志の一つとして、今回の決議は見る必要がある。

平沼に代表されるゴリゴリの国粋右翼を、アメリカはきっぱりと拒絶し、コイズミ・竹中路線を受け継ぐ、アメリカのポチしか認めない、という意思表示なのである。
平沼赳夫などの、郵政民営化(米営化)に反対して、未だに「反省」しない反米右翼のアキレス腱が、従軍慰安婦という人権問題であったから、アメリカはそこを攻めてきたのである。

安倍晋三は、平沼的右翼体質と、コイズミ的ポチ体質を併せ持つ、特異なキャラクターを期待されて政権をとった。言い換えれば、対アジア的には居丈高な差別主義で貫かれ、対アメリカ的には奴隷根性のかたまり、ということだ。

平沼たちとは前者において一致し、コイズミ路線とは、後者において一致している。
だから、郵政民営化に反対した、いわゆる造反組は、安倍晋三に近い人間が非常に多い。平沼赳夫もそうであるし、衛藤晟一、城内実など、思想的には安倍とぴったり重なる連中だ。

ところが、このラインは、今、アメリカからきっぱりとノーを突きつけられた。

■■

それにしても、なんでアメリカは今更この連中に退場命令を下したのか。

これも、ものすごく単純に言うと「これからのアジアは、ジャパンではなくチャイナなんだよ」ということではないか。
これまでの、アメリカのアジア戦略は、反共の砦としての日本を中心にしたものであった。しかし、中国が、アメリカに対抗しうるほどの大国と化し、なおかつ、かつてのような「共産主義」を輸出する代わりに、安い商品を輸出するようになった現在、アメリカの戦略は大転換した。

この辺は、田中宇さんの「米中論」(光文社新書)に詳しい。

ともかく、数年前から始まっていた、このアメリカの戦略転換が、いよいよ日本国内の反米右翼の追放というところまで迫ってきたのだ。

郵政造反組の追放は、主に経済的な理由だった。郵政の米営化を見て見ぬふりさえすれば、すぐに許してもらえた。安倍晋三も、支持率を落としてまで、せっせと衛藤らの復権に尽力した。

しかし、今回の従軍慰安婦に関するアメリカ議会の決議は、チョットでも楯突くヤツは、金正日と同等の人権問題として追究するぞ、という宣言だ。

■■

もちろん、日本が慰安婦の問題にきちんと謝罪していれば、こうした決議が上がることはなかった。
誰よりも問題なのは、公式な謝罪もせず、補償もせず、強制連行の裁判ではすべて不当判決を下し、挙げ句の果てに、慰安婦問題をなかったことにしようと企む、日本の公権力と、国粋右翼であることは、言うまでもない。
彼らをかばうつもりなど、当然のことながら、全くない。

この決議は当然であり、その内容自体は、私もまったく支持する。

しかし、だからと言って、この決議を万歳で迎えるのは、早計過ぎるということだ。
そこに込められた、アメリカの戦略と意志を確認しておかなくては、今後の私たち民草が、何とかして生き延びていくための糧にはならない。

このアメリカの「命令」を受けて、安倍晋三がこれからどのように対応するか。平沼などに同調して反発すれば、次々と不祥事がリークされ、支持率は下がり続けるだろう。

安倍には、それはできない。「完全なポチになります。刃向かう平沼などのかつての同志は弾圧します」とアメリカに誓うしかない。
そして向かう先は、アメリカの対中戦略の捨て石としての日本だ。

中国やアジアとは、ほどほどの関係を続けながら、戦争のできる国になる。そして、いつでもアメリカの身代わりに鉄砲玉になることのできる国になる。

そうした国に、粛々として変化してゆくためには、徒にアジアの民衆の怒りをかき立て、9条を改変する前から紛糾の火種を作り出してしまう平沼赳夫的なるものは、跳ねっ返りであり、邪魔者として排除される。

こうして、私たちは戦争へと引きずり出されていくのだ。

■■

だから、平沼的なるモノが排除されることを、単純に喜んでいてはいけない。
国粋であろうが反米であろうが従米であろうが、戦争に前向きな連中を、権力の場から一人でも減らすこと。

そのために、まず最初の一歩は、7月29日に選挙に行くことだ。
戦争に反対する候補を、一人でも多く当選させよう。
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