2007-08-31(Fri)

出産難民

9病院に断られ妊婦流産…奈良から大阪へ搬送中 
2007年8月29日 読売新聞

同じ奈良県の大淀病院の件が記憶に新しいが、またしても同様の事故が起きてしまった。
この人は、事故後も3回断られているので、12回のたらい回しだ。

ニュースだけ見た人は、奈良県はひどいところだとか、最近の病院は冷たいとか、救急隊は鈍くさいとか感じているかもしれない。

しかし、妊婦の方ならば、これが偶然の事件でないことを実感しているだろう。

出産難民 というウィキペディアの記事を見てもわかるとおり、日本中で産婦人科が不足しているのだ。

sankal.png
クリックで拡大(厚労省のデータから私が作成)

厚生労働省の統計で見ると、出産のできる病院は、1984年の2569から、1990年で2460、2005年には1616にまで減っている。
これは、出生数が減ったせいではないのか、という見方もある。

では、出生数を見ると、1984年が約149万人。1990年が122万人。2005年が106万人である。
出生数1万人当たりの病院数で見ると、84年が17.2人、90年が20.1人、05年が15.2人となる。

つまり、1990年までは、確かに出生数の減少によって産院施設が減っていたと言えるが、それ以降は、むしろ、生む場所が無くて出生数が減っていると言えなくもない。

いずれにしても、分娩を担当する医師の多くは、激務をこなしているのは間違いないようで、今回の事件も、医者や病院の責任にして済む話ではない。

医療制度改革とか、少子化対策とか言いながら、実はこんな結果を生み出す医療行政にこそ、もっとも責任がある。

医療の世界は、保険点数で報酬が決められ、その他医療法でがんじがらめに決められている。それは、医療である以上、何でもアリにしないのは当然かもしれない。 ただ、そうである以上、医療の構造的な問題は、まず第一に行政に、政治に問題がある。



この深刻な医療行政のトップに、舛添要一という無節操男が座った。 選挙中から安倍批判をして注目を集めていたが、おどろく無かれ、ただの選挙パフォーマンスだったと、自ら認めているのである。

僕は、舛添さんに「なぜ選挙のときから安倍批判になったのか」と聞いている。すると彼はこう答えた。
「それはね、田原さん。安倍首相の言っている『美しい日本』とか『戦後レジームからの脱却』、『憲法改正』などを話しても誰も聞いてくれない。これはだめだと思って、安倍批判を始めたらみんな聞いてくれるんですよ」
つまり、舛添さんは選挙戦略として安倍批判をやったのだ。実際彼は、憲法改正も、集団的自衛権も賛成で、決して反・安倍ではない。選挙戦術としての安倍批判だった。

nikkeiBP.net 田原総一朗のここだけの話

こんな無節操な態度を、「評価できる」という田原もたいがいであるが、とにかく、ウケねらいと口先だけは達者な、戦争派の舛添が医療のトップになったのだから、深刻な出産難民は、これからも増え続けるだろう。

もっとも、イラクでは、こんな日本でも超恵まれていると思ってしまうような、とんでもないことが進行しているのだが。
これについては、また別の項で書きたい。



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こんにちは。通りがかりのものですが。舛添厚がほんとにみんないいと思ってるのかなと思ってブログ見ていてきました。ただよくしゃべってテレビ受けいいだけじゃないですか?と、個人的に思います。外交ならわかるけど、厚生がわかると思えませんが。
出産難民のことは、今の医療の時事的問題ですが、医者ががんじがらめになっているということですが、逆で、地域の大学で教育を受けたのに都市部で開業したり、儲かりそうで安全そうな専門に流れる医者の体質が悪いのでは?忙しくて大変なんて、仕事してる人ならみんな同じですよ。産婦人科の給与なんて20代で4000万円もらってるのなんてざらなんですよ。このままでいけば健保は年金財政の二の舞になります。なら看護士や助産氏を格上げして、地域専属にし他方が、経済効率も手数も間に合うと思いますが。
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