2007-09-03(Mon)

シンプルな戦争 その2

先日から2回ほど、本屋で足が痛くなるまで資料探しをした。

何を探したかというと、以前のエントリー(ある日 自衛隊が消えたら・・・)で書いた、

さあ、改めて、日本は侵略されるのか。
もちろん、丸腰になる以上は、国連で永世中立国の宣言をするという前提だ。
そのうえで、いったい誰がどうやって攻めてくるのか。
軍隊が無いと侵略される、と宣う方々は、具体的に論証する義務がある。


について、論証した本がないかどうか、探していたのである。

正直言って、探せば結構あるのではないかと思っていた。
いくらなんでも、感情論だけで日本の防衛政策が決まっているというのでは、あまりに情けない。
形だけでも、具体的な「脅威」について書いた本が、10冊やそこらはあるだろうと思っていたのだ。

しかし、ない。

軍隊の装備などについて書いた本はある。
小川和久、江畑謙介などの、テレビでもよく見たような人たちの本は、この分類だ。
しかし、もし戦えばどうなる、というシミュレーションはできても、「本当に攻めてくるのかどうか」は、軍事オタク評論家の分析ではわからない。

誰でもが言うように、戦争は政治の延長だからだ。
いくら軍事力を持っていても、政治的な理由なしに、戦争も侵略もおきない。
そして、もちろん、その政治決定の背後には、経済的な要求があることも言うまでもない。

その部分が、ほとんど抜け落ちているのだから、なかなか貴重な本ではあるが、やはり軍事オタクの書、と言わざるを得ない。


数的に一番多いのは、「脅威はある」という「前提」にたって、どうするこうする、と論じている書物だ。
これは、目次を見ただけで、本棚にバック。

日下公人の本には、ご丁寧にクラウゼビッツのかの台詞が引用されているのに、その政治的な戦争の必然性はすっ飛ばされている。

前提を検証できずに、危ない危ない、と叫ぶ者を、デマゴーグという。

もう一つ、この類型の亜種として、日米安保論は山ほどあった。
これも基本的には、「脅威はある」という前提での議論であり、私の疑問には何も答えてくれそうにない。

軍事オタク型と、脅威デマゴーグ型の両方を兼ね備えたのが、石破茂だ。漫画も含めて沢山書いているが、やはり、中国や北朝鮮が攻めてくるのは当たり前、という論法は変わらない。


目的としては、ほぼ「脅威の説明」にちかい本は、兵藤二十八などのキワモノが何冊か。

惨憺たる有様だ。 今回は防衛白書を見るのを忘れたから、断言はしないが、どうも日本の防衛政策は、漠然たる不安に基づいて決められているようだ。

一応、「脅威」を正面からテーマにした本は、2日間探した中では、志方俊之の「日本はこのままでは生き残れない」くらいだった。
志方仕方がないから、これを購入した。内容は読んでみてからの話だが、実はもうあまり期待していない。

パラパラとめくってみると、「国家消滅の三段階」なるセンセーショナルな節がある。
しかし、書いてあることは、「日本国内で首相の靖国参拝に反対するような国論の二分がある」ということで、これはトインビーの言う国家消滅の第二段階だというのである。
つまり、国論が決して二分されない北朝鮮のような国以外は、国家消滅の第二段階ということだ。

なんとも、くだらない本を買ってしまったのかもしれない。
いっそのこと、兵藤のような、極端なキワモノのほうがおもしろかったかも。


経済、政治、軍事を網羅して、いかに日本は脅威に直面しているか、ちゃんと説明してくれる本はないのだろうか。
揶揄しているのではなく、本気で探しているのである。

本稿をよまれた右翼諸君、知っていたら教えて欲しい。
ただし、軍事オタクにすらバカ呼ばわりされるような「原発襲撃」とか言ってるような、超低レベルな本はやめてほしいが。

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拒否できない日本 アメリカの日本改造が進

 古の中国の諺に「一を聞いて十を知るを是、真の賢人という」・・・とあるがこの本の著者は正にこの通りの優れた洞察力を持つ人物だと思う。 一建築科の学生としてアメリカと中国の間で取り決められた、「建築家の資格制度を国際的に統一する取り決め」に付いて多いに疑問

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とりあえず、武力行使を安直に肯定することはその戦火がとどまることなく広がり続けて、いづれ自分の身にも及ぶのではないかと最近ひしひしと感じます。
もう手遅れかもしれませんが…。

はじめまして。こんなページ↓ありますが。
「 教えて!goo 日米同盟???」
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1140366.html

もうとっくに知っていたらスミマセン。

主は民主党主義者なんで・・・言うだけ無駄ですよ。
ほっときましょうw
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/kouan/image/BOX_KOA0022.pdf

中立国の戦い―スイス、スウェーデン、スペインの苦難の道標 (光人社NF文庫) (文庫)
飯山 幸伸 (著)
http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%AD%E7%AB%8B%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84%E2%80%95%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%80%81%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E3%80%81%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%8B%A6%E9%9B%A3%E3%81%AE%E9%81%93%E6%A8%99-%E5%85%89%E4%BA%BA%E7%A4%BENF%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%A3%AF%E5%B1%B1-%E5%B9%B8%E4%BC%B8/dp/4769824637

脅威がある云々の前に、非武装では国際的に永世中立は認められません。
スイス等の事例を調べてみては如何でしょうか。

ありがとうございます。3冊とも図書館にもあるようなので、早速読んでみます。

田岡俊次さんの本がいいんじゃないでしょうか。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/250-2469651-8978655?%5Fencoding=UTF8&search-type=ss&index=books-jp&field-author=%E7%94%B0%E5%B2%A1%20%E4%BF%8A%E6%AC%A1

この人のHPが参考になった。
http://zarathustra.blog55.fc2.com/blog-category-10.html

軍事関係の本を探しているのなら右翼じゃなくて軍オタに聞いたほうがいいと思います。松村劭という人の本とジョセフ ナイの国際紛争というのを読んでみるといいと思います。それと、軍事系のサイトがあるので貼っときます。http://mltr.free100.tv/
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