2008-11-04(Tue)

ダライ・ラマの方針転換と田母神幕僚長の論文


10月31日から再開していた中国当局とダライ・ラマ(代理人)の交渉が事実上決裂したようだ。今回の交渉は,ダライ・ラマ側からも決裂の意図があったように見受けられる。もちろん,中国当局は妥協するつもりは最初からない。

チベット対話 展望なく 打ち切りの可能性も
2008.10.31 東京新聞

それにしても,何で今決裂になるのだろうか。
この程度で中国への圧力になるわけがない。ならないからここまで何も解決していないこと,ダライ・ラマ自身が一番良くわかっているはずだ。

それに対し,あくまで話し合いの継続に期待したのは,誰あろうアメリカだ。

米国務省報道官、チベット問題対話に期待
2008.11.1 日経新聞

ちなみに,CIAの別働隊とも言われる統一協会の世界日報でも同様の主張になっている。

しかし,おおかたの予想通りダライ・ラマの各国行脚は,決裂報告の旅となったようだ。
日本の各紙はさかんにそのことを報じているが,CNNはまったくこれを無視している。
その代わりというわけではないが,CNNが中国関連で報じているのは,

中国側対台機関トップ、台湾を初訪問 経済交流を協議へ
2008.11.3 CNN

こうした報道などから想像するに,アメリカはアジアの覇権は中国に任せ,余計な問題にはもうクビを突っ込みたくない,というのが本音だろう。
もちろん,北朝鮮のテロ支援国家の指定解除も同じ脈絡だ。

そして,ダライ・ラマが,さらなる暴動や抵抗の勃発をもほのめかしながら交渉の決裂を大々的に発表しているのは,中国への圧力と言うよりは,アメリカへの圧力なのではないか。
中途半端にチベット亡命政府を支援しておきながら,使い捨てにして突き放したアメリカに対し,実は刃を向けている。

アメリカは,今や中国に財政を支えてもらっている。中国無しには一日も暮らせない国になっている。その中国に対し,いかにもバックにアメリカがいるような顔をして牙をむいたらどうなるか。
一番真っ青になるのはアメリカ自身だ。

中国にしてみれば,売り払いたくて仕方のないアメリカ国債を処分する口実ができる。

おそらくは,そこまで読んで,アメリカに交渉を仲介させようという狙いではないか。非常に高度な政治判断だと思う。
サミット議長国でありながら,G20の開催に何の相談もしてもらえなかったどっかの国の首相とは大違いだ。

G20と言えば,開催されるのが11月15日。
そして,亡命したチベット人の会議が開催されるのが17日。G20での各国の力関係を見定めて,もっとも有利になる決定をしようということでないだろうか。

いずれにしても,捨て身の方針であることは確かであり,自治も文化も認めないと言う中国当局の方針のもとで,さらなる流血にならないことを祈りたい。


さて,この問題と田母神のトンデモ論文と何の関係があるのか?
田母神と並べて書いてはダライ・ラマに申し訳がないが,アメリカに刃向かうつもりで中国と対立するという構造では,実は共通している。

自衛隊を円満定年退職した元幕僚長・田母神の問題論文は,御存知アパグループの懸賞論文だ。
そう,耐震偽装で大問題になったのに,何のおとがめも無しでいまだにマンションやホテルを造り続けている唯一の会社。安倍晋三の私的後援会・安晋会の副会長が経営する会社。

馬淵議員を呼びだしていたアパ元谷会長

アパは偽装を知っていた 安晋会の闇の中で

そして,アパ元谷会長はゴリゴリの右翼でもある。

アパグループのホームページリンクより

元谷会長の本の紹介 

その本の出版記念パーティーの様子
tamogami.jpg

さて問題です。この人は誰でしょう?
(左側は元谷会長)

出版記念パーティーの主賓が田母神幕僚長
その後行われた懸賞論文の1等も田母神幕僚長
それで300万もらうのも田母神幕僚長
その上めでたく定年で満額退職金もらうのも田母神幕僚長

もう一つ問題です。
できレースで300万もらうのは,収賄にならないのでしょうか?

この辺は,国会で徹底的にやってもらいたいところだ。


と,これだけでも大問題だけれど,もっと私が関心を持つのは「なぜ今か」ということだ。元谷やら田母神やら,こうした連中が以前からつるんでいたことは間違いないし,今回と同様のことを言い続けていたのも間違いない。
それが,今回このタイミングでマスコミにリークされたのは何故か。

以前から,このブログでは「アメリカの手先vs国内利権組織vs生活権」の三つ巴になる,と書いてきた。
この中の,国内利権・国粋右翼グループの火の手が上がったのではないかという気がするのである。

完全に確信犯であることは,わざわざ記者会見までして開き直って見せたことでも明らかだ。
しかも,その仕掛け人がアパの元谷会長。その元谷の著書を佐藤優が推薦している。これはやはり,アメリカの凋落を見て,いけいけドンドンの気分になったに違いない。

たぶん,この機に乗じて騒ぎ出す右翼どもがしばらくは騒がしいだろう。
が,ダライ・ラマの緻密で切実な戦略とかけ離れたずさんな騒動は,二重の意味で成功しない。

一つには,日本人はそこまでアホになっていないということ。いよいよ生活権を剥奪されきって,やけっぱちになってしまったら分からないけれども,まだそこまで心を破壊されきってはいない。

もう一つは,アメリカの凋落はニアリーイコール中国の覇権拡大だということ。アメリカに楯突くつもりで,侵略戦争の開き直りをやらなすなぞ,連中の立場に立って考えても愚策だ。
中国と対立構造になるのはチベット問題と同じかもしれないが,それをもって中国がアメリカを困らす口実にはならない。アメリカからも中国からも叩かれて終わるのがオチだ。

だから,この問題については,米中に任せておくのではなく,私たち自身が田母神や麻生や浜田の責任を問うことが大切だ。

その力をしっかりと示さないと,いくら問題は粛正されたとしても,力関係としては負け込むことになる。
しかも,当の本人は退職金+300万+全国アパホテル巡りで悠々自適の生活ときている。


このように,アメリカが凋落し,新しい力関係が作られていく中では,何か問題がおきたときの理解がとてもややこしい。

できる限り広く見渡して,生活と命を守るためにどうするべきか判断したい。




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政治は嘘をつく

政治は嘘をつく
そうやってうまく諸問題を乗り越える

武官は嘘とは無縁がよい
国防の職を全うしていただくのが職責である
説を曲げてはならない

平和と安全を求める人たちにお伝えします。
私たちはみなさんを支援します。
そして、アメリカと言う希望の灯は
かつてのように輝いているのかと疑っていたすべての人たちに告げます。
私たちは今夜この夜、再び証明しました。
この国の力とは、
もてる武器の威力からくるのでもなく、
もてる富の巨大さからくるのでもない。
この国の力とは、
民主主義、自由、機会、そして不屈の希望という
私たちの理想がおのずと内包する、
その揺るぎない力を源にしているのだと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さすがこの世の最強国家の領導のことばは、
かくも格調高い。
空気読むしか能のない左派・右派ともに
このような言葉とは無縁であろう。

黄色いエテ公の中で、ほくちゃんが一番偉いんだとわめいている自称幕僚長は、
歴史の中では、塵ひとつの痕跡も残せない。

アメリカ追従外交は、破綻しつつある。

すると、これ幸いに、大日本カルト帝国を賛美・正当化する者が頭をもたげる。

右から左へ、上から下へ、
この国のお猿さんたちは中庸と言う言葉を知らない。

知ってるのは、空気読むことだけ。

であるから行く先は決まっている。

またファシズムである。

従って、日本というものを知っている世界の投資家は、
日本に長期的投資はしない。
急場しのぎの当て馬でしかない。

まともな右翼なら、
論文の書き方すら知らない者が
幕僚長になっているのを見て、
反乱を起こすか、
より程度の高い論文を示し、
幕僚長の無知蒙昧を厳しく指摘するだろう。

中国・朝鮮では、
この程度の者が日本では幕僚長になれると知り、
これならかりに戦争になっても100%勝てるだろうと
喜んでいるだろう。

無能な者が高い地位につくとこうなるという見本だ。

No title

[右翼と言っても街宣右翼じゃなくてまともな右翼と保守論壇は活気づくでしょうね^^b

> ダライ・ラマの緻密で切実な戦略とかけ離れたずさんな騒動は,二重の意味で成功しない。

そもそも、

ダライ・ラマ → 本気で外交(コミュニケーション)
田母神氏 → 独り相撲(滅裂な放言)

この違いは際立っていると思う。

イラク派兵違憲訴訟では「アメリカ様のケツ舐めて何が悪い!」
そいでもって今度は「東京裁判?、あんなものはデタラメだ!」

これではちょっとねぇ...

> アメリカからも中国からも叩かれて終わるのがオチだ。

天木直人氏ブログでもバッサリやられていた。
国会に呼ばれたところで「ち、ちきショ~ッ!」と叫ぶのがオチだ。

何か見えてくる?

懸賞論文を主催したアパ代表は周知の安倍元首相の安晋会副会長。

ダライラマは前回4月に来日した時には空港近くのホテルで安倍晋三婦人と会っている。

安倍元首相自身はブッシュにオーストラリアで恫喝されて総理の座を放り出したとも言われている。

この3点を思い浮かべただけでも、最近の一連の流れは偶然ではないだろう。

どこから資金が出ているのかも想像出来る気がする。

事情聴取にさえ応じない危険な幕僚長が存在した自衛隊の存在も、改めて国民監視しないといけない。

また、小室哲也氏の任意同行の本当の目的が、ロス疑惑の故三浦氏の不当逮捕と、同じ目的でないことを願う。

PS 田母神問題は、なんだか麻生降ろしに舵をきった清和会と公明党のプレゼントのような気がする。
清和会と小沢代表が裏で手を繋いでなければいいのだが?心配。老婆心であることを願う。
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