2010-01-12(Tue)
日米密約の調査は本気モード
日米の密約に関する報告が2月下旬に延期されるようだ。
もともとは昨年の11月末にはレポートされるはずだったのだが、ここまで伸びているのはなぜだろうか。
新聞報道から推測することしかできないが、どうやら本気で調査しているせいのようだ。
この調査に対して、外務省から激烈な抵抗がされていることは、間違いないだろう。
もっと言うならば、外務省の中で「内戦」がおきているのかもしれない。
つまり、従米に染め抜かれた主流派と、アメリカに隷従することを苦々しく思ってきた反主流派がぶつかっているのではないか。
官僚が全面的に反抗したらなば、全く成果を上げることができないだろうから、それなりに情報を収集していると言うことは、そんなことを想像させる。
ただし、その流れがすべて国民のため、核を持ち込ませないため、沖縄から基地を追い出すためかというと、そうではないだろう。
むしろ、開き直って核も基地も自前で持つべきだ、という勢力もあるはずだ。
何よりも、今回の調査をしている有識者委員会の座長である北岡伸一氏がその代表である可能性が高い。
東大教授にして、コイズミ~フクダ時代に各種諮問委員をつとめ、コイズミ内閣の時には国連次席大使までやっている。
また、植民地経営に辣腕をふるった後藤新平に関する研究などもある。
そうしたことはふまえた上で、今回の調査は本気モードなのではないかと思われる。
ごまかす気ならば、「すべて処分されてしまいました」と言えばおしまいなのに、情報を小出しにしながら延々と引っ張っている。
そして、その情報小出しのタイミングが、日米が接触するタイミングとうまく合っているということ。
今回の延期発表も、岡田外相がハワイに向かうと同時に発表された。
その中身も、単に延期すると言うだけではなく、結構いろんなことがわかっている。
佐藤栄作首相とニクソン米大統領(いずれも当時)が交わした沖縄返還後の核再持ち込みを取り決めた密約について、密約文書を保管していた佐藤氏の次男、佐藤信二元運輸相から文書のコピーの提供を受けた(毎日新聞)
密約に関する多くの文書が破棄された痕跡がある。2001年4月の情報公開法施行前に、密約が明らかになることを恐れた外務省職員が破棄した可能性が高い(読売新聞)
旧大蔵省財政史室がまとめた「昭和財政史」(99年刊行)などで密約に関連する時期の記述が不自然に欠落していることに注目。実際には資料が財務省に残っている可能性がある(毎日新聞)
各紙は部分的にしか報道しないけれども、まとめてみると結構進んでいるということがわかる。
手の内をすべて晒してから交渉に入るのではなく、小出しにしつつジワジワいくのは正しい方法かと思われる。
表だって見える範囲で、鳩山内閣がアメリカと交渉する材料は、この密約調査と名護市長選挙だ。
市長選は誰が見ても影響絶大なのはまちがいない。
では、この密約がアメリカに対して圧力になるのだろうか。
アメリカではすでに公開されているものもあり、いまさら公開しても痛くもかゆくもないだろう、という議論もある。
だが、二重の意味でそれは違うと思う。
ひとつは、アメリカでどれだけ公開されているのか、国民にはいまだ明確になっていない。
それを一覧にまとめ、一目瞭然にするだけでも意味がある。
そうした、意味のあることをするんだ という意思表示こそが、飼い犬が手を咬むことになるだろう。
二つ目には、対アメリカというよりは、アメリカに寄りかかって権勢をふるってきた勢力のダメージは絶大だということ。
自民党というものが、この65年間何をしてきたのか。その中身が赤裸々になる。
7月の参議院選にも、非常に大きな力を発揮するだろう。
同時に、これは民主党内部にも効いている。
前原国交大臣や長島政務官のような連中には、この密約公開はイタイはずだ。
これまでのようにアメリカべったりの発言をすれば、密約をしてきたヤツらと同列に見られるからだ。
普天間基地の問題について、「年内年内」と騒いでいたのを、なんとか押さえきって5月まできっちり検討することになったのは、この密約調査があったからだと思われる。
そして、国内のアメリカのポチ勢力を押さえてしまうと、これを使って勢力を保ってきた米政権内の「知日」派の出る幕が無くなる。
そんなこんなで、日米密約の調査は、鳩山政権の通奏低音のようなもので、いろんな分野にじわじわっとプレッシャーをかけながら、目立たないけれども力になっている。
岡田との会談に臨むクリントンも、日本のマスコミのように「早期決着で政権交代の成果を印象づける岡田氏の狙いがさらに後退した格好だ。(共同)」とは思わないはずだ。
まだやるか・・・ と日本の本気モードに少々嫌気をさしている という感じはないだろうか。
********
さてさて、年末年始をはさんで、なかなか記事を書けない状態が続いている。
ひとつには、景気が悪すぎて、コマネズミのように走り回らなくては生きていけないということもある。
もう一つは、鳩山政権になってからの動きは、そうとう深読みしないと理解できない ということもある。
簡単に書けないのである。
少なくとも、ハッキリしているのは、日本史上初の民意による政権を活かさなくてはならないということ。
そのためには、7月の参議院でより強い意思表示をすること。
あの60年年代の激動の時代にも安泰だった自民党が、ひっくり返って瀕死の状態であるというこの現実を、ひっくりかえしてた私たち自身が一番分かっていない。
敵は、年末から意を決して総反撃にかかっている。
所詮民主党なんて・・・ と言うは易いが、いまやそれしか残っていない、いや、残してこれなかったのだから、その遺産をどう活かすか しかない。
なんとも難しい時代だけれども、「面白くこともなき世を面白く」 で行ってみよう。

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もともとは昨年の11月末にはレポートされるはずだったのだが、ここまで伸びているのはなぜだろうか。
新聞報道から推測することしかできないが、どうやら本気で調査しているせいのようだ。
この調査に対して、外務省から激烈な抵抗がされていることは、間違いないだろう。
もっと言うならば、外務省の中で「内戦」がおきているのかもしれない。
つまり、従米に染め抜かれた主流派と、アメリカに隷従することを苦々しく思ってきた反主流派がぶつかっているのではないか。
官僚が全面的に反抗したらなば、全く成果を上げることができないだろうから、それなりに情報を収集していると言うことは、そんなことを想像させる。
ただし、その流れがすべて国民のため、核を持ち込ませないため、沖縄から基地を追い出すためかというと、そうではないだろう。
むしろ、開き直って核も基地も自前で持つべきだ、という勢力もあるはずだ。
何よりも、今回の調査をしている有識者委員会の座長である北岡伸一氏がその代表である可能性が高い。
東大教授にして、コイズミ~フクダ時代に各種諮問委員をつとめ、コイズミ内閣の時には国連次席大使までやっている。
また、植民地経営に辣腕をふるった後藤新平に関する研究などもある。
そうしたことはふまえた上で、今回の調査は本気モードなのではないかと思われる。
ごまかす気ならば、「すべて処分されてしまいました」と言えばおしまいなのに、情報を小出しにしながら延々と引っ張っている。
そして、その情報小出しのタイミングが、日米が接触するタイミングとうまく合っているということ。
今回の延期発表も、岡田外相がハワイに向かうと同時に発表された。
その中身も、単に延期すると言うだけではなく、結構いろんなことがわかっている。
佐藤栄作首相とニクソン米大統領(いずれも当時)が交わした沖縄返還後の核再持ち込みを取り決めた密約について、密約文書を保管していた佐藤氏の次男、佐藤信二元運輸相から文書のコピーの提供を受けた(毎日新聞)
密約に関する多くの文書が破棄された痕跡がある。2001年4月の情報公開法施行前に、密約が明らかになることを恐れた外務省職員が破棄した可能性が高い(読売新聞)
旧大蔵省財政史室がまとめた「昭和財政史」(99年刊行)などで密約に関連する時期の記述が不自然に欠落していることに注目。実際には資料が財務省に残っている可能性がある(毎日新聞)
各紙は部分的にしか報道しないけれども、まとめてみると結構進んでいるということがわかる。
手の内をすべて晒してから交渉に入るのではなく、小出しにしつつジワジワいくのは正しい方法かと思われる。
表だって見える範囲で、鳩山内閣がアメリカと交渉する材料は、この密約調査と名護市長選挙だ。
市長選は誰が見ても影響絶大なのはまちがいない。
では、この密約がアメリカに対して圧力になるのだろうか。
アメリカではすでに公開されているものもあり、いまさら公開しても痛くもかゆくもないだろう、という議論もある。
だが、二重の意味でそれは違うと思う。
ひとつは、アメリカでどれだけ公開されているのか、国民にはいまだ明確になっていない。
それを一覧にまとめ、一目瞭然にするだけでも意味がある。
そうした、意味のあることをするんだ という意思表示こそが、飼い犬が手を咬むことになるだろう。
二つ目には、対アメリカというよりは、アメリカに寄りかかって権勢をふるってきた勢力のダメージは絶大だということ。
自民党というものが、この65年間何をしてきたのか。その中身が赤裸々になる。
7月の参議院選にも、非常に大きな力を発揮するだろう。
同時に、これは民主党内部にも効いている。
前原国交大臣や長島政務官のような連中には、この密約公開はイタイはずだ。
これまでのようにアメリカべったりの発言をすれば、密約をしてきたヤツらと同列に見られるからだ。
普天間基地の問題について、「年内年内」と騒いでいたのを、なんとか押さえきって5月まできっちり検討することになったのは、この密約調査があったからだと思われる。
そして、国内のアメリカのポチ勢力を押さえてしまうと、これを使って勢力を保ってきた米政権内の「知日」派の出る幕が無くなる。
そんなこんなで、日米密約の調査は、鳩山政権の通奏低音のようなもので、いろんな分野にじわじわっとプレッシャーをかけながら、目立たないけれども力になっている。
岡田との会談に臨むクリントンも、日本のマスコミのように「早期決着で政権交代の成果を印象づける岡田氏の狙いがさらに後退した格好だ。(共同)」とは思わないはずだ。
まだやるか・・・ と日本の本気モードに少々嫌気をさしている という感じはないだろうか。
********
さてさて、年末年始をはさんで、なかなか記事を書けない状態が続いている。
ひとつには、景気が悪すぎて、コマネズミのように走り回らなくては生きていけないということもある。
もう一つは、鳩山政権になってからの動きは、そうとう深読みしないと理解できない ということもある。
簡単に書けないのである。
少なくとも、ハッキリしているのは、日本史上初の民意による政権を活かさなくてはならないということ。
そのためには、7月の参議院でより強い意思表示をすること。
あの60年年代の激動の時代にも安泰だった自民党が、ひっくり返って瀕死の状態であるというこの現実を、ひっくりかえしてた私たち自身が一番分かっていない。
敵は、年末から意を決して総反撃にかかっている。
所詮民主党なんて・・・ と言うは易いが、いまやそれしか残っていない、いや、残してこれなかったのだから、その遺産をどう活かすか しかない。
なんとも難しい時代だけれども、「面白くこともなき世を面白く」 で行ってみよう。

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