2010-01-30(Sat)
東京地検特捜部の「事件の創り方」
皆さんご存じの、田中森一さん「反転」より、東京地検特捜部が、どうやって事件を「創る」のか、簡潔に説明している部分を引用させてもらう。
平和相銀事件の本質は、岸組による恐喝事件だったはずだ。それが銀行側の特別背任にすりかわった。本来、被害者が加害者になったようなものだ。その事件が、住銀の首都圏侵攻に大きく貢献したのは間違いない。結果的に、われわれ検事は、都心の店舗をタダ同然で住銀に買い取らせるために捜査をしたようにも見えた。伊坂はすでに亡くなっているが、古巣の検察にこんな騙し討ちのようなことをやられて、死ぬに死に切れなかったのではないだろうか。
この平和相銀事件を体験し、私は東京地検特捜部の恐ろしさを知った。事件がどのようにしてつくられるか。いかに検察の思いどおりになるものか、と。捜査に主観はつきものだが、それが最も顕著に表れるのが、東京地検特捜部である。
特捜部では、まず捜査に着手する前に、主要な被疑者や関係者を任意で何回か調べ、部長、副部長、主任が事件の筋書きをつくる。そして、その筋書きを本省である法務省に送る。東京の特捜事件は、そのほとんどが国会の質問事項になるため、本省は事前にその中身を把握しておく必要があるからだ。
特捜部と法務省のあいだでこのやりとりを経て、初めてその筋書きに基づいて捜査をはじめる。むろんいくら事前に調べても、事件の真相は実際に捜査してみなければわからない。実際に捜査をはじめでみると、思いもしない事実が出てくるものだ。だが、特捜部では、それを許さない。筋書きと実際の捜査の結果が違ってくると、部長、副部長、主任の評価が地に堕ちるからだ。だから、筋書きどおりの捜査をやって事件を組み立てていくのである。
最初からタガをはめて、現実の捜査段階でタガと違う事実が出てきても、それを伏せ、タガどおりの事件にしてしまう。平和相銀事件がまさにそれだった。岸組の恐喝という予期せぬ事実が発覚しても、それを無視し、筋書きどおりの平和相銀幹部の特別背任で押しとおした。
こうして筋書きどおりに事件を組み立てていくためには、かなりの無理も生じる。調書ひとつとるにも、個々の検事が自由に事情聴取できない。筋書きと大幅に異なったり、筋書きを否定するような供述は調書に取れない。調書には、作成段階で副部長や主任の手が入り、実際の供述とは違ったものになることも多い。だから、上司の意図に沿わない調書をつくっても、必ずボツにされる。なにより、まずは筋書きありき。検事たちは尋問する際も、筋書きどおりの供述になるよう、テクニックを弄して誘導していく。
こんなことは、大阪の特捜部では経験したことがなかった。私も手練手管を弄して、自分の描いた筋書きに被疑者を強引に追い込んでいたが、それはあくまで現場の捜査検事の見立てである。それが違うとなれば、いくらでも軌道修正してきた。東京のように、尋問もしてない上役の検事が、事実関係について手を入れるなどありえない。こうなると、もはや捜査ではない。よく検事調書は作文だといわれるが、こんなことをやっていたら、そう批判されても仕方ないだろう。冤罪をでっち上げることにもなりかねない。だから、私は東京地検特捜部にいても、このシステムには従わなかった。やはり異端児なのかもしれない。
(引用終わり)
以上。 解説不要。
この本は、タイムリーですね。
私も遅まきながら今頃読んでいるわけですが、まだの方はぜひご一読を
反転 闇社会の守護神と呼ばれて

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平和相銀事件の本質は、岸組による恐喝事件だったはずだ。それが銀行側の特別背任にすりかわった。本来、被害者が加害者になったようなものだ。その事件が、住銀の首都圏侵攻に大きく貢献したのは間違いない。結果的に、われわれ検事は、都心の店舗をタダ同然で住銀に買い取らせるために捜査をしたようにも見えた。伊坂はすでに亡くなっているが、古巣の検察にこんな騙し討ちのようなことをやられて、死ぬに死に切れなかったのではないだろうか。
この平和相銀事件を体験し、私は東京地検特捜部の恐ろしさを知った。事件がどのようにしてつくられるか。いかに検察の思いどおりになるものか、と。捜査に主観はつきものだが、それが最も顕著に表れるのが、東京地検特捜部である。
特捜部では、まず捜査に着手する前に、主要な被疑者や関係者を任意で何回か調べ、部長、副部長、主任が事件の筋書きをつくる。そして、その筋書きを本省である法務省に送る。東京の特捜事件は、そのほとんどが国会の質問事項になるため、本省は事前にその中身を把握しておく必要があるからだ。
特捜部と法務省のあいだでこのやりとりを経て、初めてその筋書きに基づいて捜査をはじめる。むろんいくら事前に調べても、事件の真相は実際に捜査してみなければわからない。実際に捜査をはじめでみると、思いもしない事実が出てくるものだ。だが、特捜部では、それを許さない。筋書きと実際の捜査の結果が違ってくると、部長、副部長、主任の評価が地に堕ちるからだ。だから、筋書きどおりの捜査をやって事件を組み立てていくのである。
最初からタガをはめて、現実の捜査段階でタガと違う事実が出てきても、それを伏せ、タガどおりの事件にしてしまう。平和相銀事件がまさにそれだった。岸組の恐喝という予期せぬ事実が発覚しても、それを無視し、筋書きどおりの平和相銀幹部の特別背任で押しとおした。
こうして筋書きどおりに事件を組み立てていくためには、かなりの無理も生じる。調書ひとつとるにも、個々の検事が自由に事情聴取できない。筋書きと大幅に異なったり、筋書きを否定するような供述は調書に取れない。調書には、作成段階で副部長や主任の手が入り、実際の供述とは違ったものになることも多い。だから、上司の意図に沿わない調書をつくっても、必ずボツにされる。なにより、まずは筋書きありき。検事たちは尋問する際も、筋書きどおりの供述になるよう、テクニックを弄して誘導していく。
こんなことは、大阪の特捜部では経験したことがなかった。私も手練手管を弄して、自分の描いた筋書きに被疑者を強引に追い込んでいたが、それはあくまで現場の捜査検事の見立てである。それが違うとなれば、いくらでも軌道修正してきた。東京のように、尋問もしてない上役の検事が、事実関係について手を入れるなどありえない。こうなると、もはや捜査ではない。よく検事調書は作文だといわれるが、こんなことをやっていたら、そう批判されても仕方ないだろう。冤罪をでっち上げることにもなりかねない。だから、私は東京地検特捜部にいても、このシステムには従わなかった。やはり異端児なのかもしれない。
(引用終わり)
以上。 解説不要。
この本は、タイムリーですね。
私も遅まきながら今頃読んでいるわけですが、まだの方はぜひご一読を
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