2010-02-13(Sat)
クリーンなことは良いことか?
アンチ小沢のみなさんからは、いよいよ明月もヤキが回ったかと言われそうなタイトル。
小沢を正当化するためならば何でもありだ とか、たぶん言いたいだろうなあ。
でも、これは、小沢氏が検察から襲撃されるよりもずっと前から疑問に思っていたことだ。
■■
最近のニュースの関連で言えば、北海道5区で自民町村を破った小林議員陣営の選挙違反について。
刑が確定すれば小林千代美議員は連座制で失職の公算
2010.2.12 北海道365
昨年8月の衆院選で北海道5区から立起して当選した民主党・小林千代美議員陣営の選挙違反事件で、公職選挙法違反(買収約束、事前運動)の罪に問われた元連合北海道札幌地区連合会長・山本廣和被告(60)に対し、札幌地裁(辻川靖夫裁判長)は12日、懲役2年、執行猶予5年(求刑・懲役2年、公民権停止5年)の判決を言い渡した。
山本被告は、昨年5月下旬から衆院選公示後の8月下旬まで、運動員35人に時給700~900円の報酬を支払うことを約束した上、電話で有権者に小林氏の投票を依頼させた疑いで、昨年11月に起訴された。
公判で山本被告は、公示後に報酬を支払うことを約束して運動員に電話を掛けさせたことを認めたが、公示前は「選挙運動に当たらない」として起訴事実の一部を否認。弁護人は先月28日の最終弁論で「罰金刑が相当」と主張した。
12日午後3時30分から開かれた判決公判で、辻川裁判長は量刑の理由をこう述べた。
「公示前の電話掛けについても公職選挙法違反に当たる。公示前でも『小林の国政への再チャレンジをよろしくお願いします』など、投票を暗に呼びかける言葉を運動者の裁量で使わせており、事前運動罪並びに金銭供与約束罪が成立する。本件は組織的犯行であり、実際には払われてはいないものの、35人もの運動者に金銭供与の約束をし、その総額も261万円と規模が大きい。被告の犯行によって民主主義の根幹と言える適正な選挙の実施が害された。事件発覚後も(運動者に)口止めをするなど犯行後の情状も悪い。被告には病気の家族がいることなど酌むべき事情もあるものの、本件の犯行は悪質で結果も相当重い。以上のことから罰金刑ではなく、執行猶予を最長の5年とするのが相当な事案だ」
札幌地検は、衆院選で小林陣営の選挙対策委員長代行を務めた山本被告が、連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」に該当すると判断。山本被告の刑が確定すれば、札幌高検が小林議員の当選無効を求める行政訴訟を起こす見通し。検察が勝訴した場合、連座制が適用され、小林議員は失職する。(文、写真・糸田)
(引用終わり)
たしかに、12日間の公示期間以外に、予定候補への投票を呼びかけることは禁止されているし、公示期間内でも、候補者への投票を呼びかける選挙運動は完全タダじゃなくてはいけない。
お金を払えるのは、事務員、労務者、ウグイス嬢だけで、それも氏名を登録し、日当の上限も決まっている。
しかしだ、そもそも本当に12日間しか選挙運動をしない候補者が、この世の中にいるのか?
現職の議員や、そこら中に顔写真を貼りまくっているひとから、にっこり笑って「よろしくね」と言われたら、それは誰が聞いても「選挙で投票してね」に聞こえるだろう。
選挙運動をしない事務員は、本当に絶対に誰にも「○○さんをよろしく」と言わないのか。
自分の勤めている候補者を、だれにもよろしくとも言わない方が、よほど不自然ではないか。
ウグイス嬢も、車上での連呼のみが認められているのであって、車を降りたら一切選挙運動をしてはいけないのである。
足が地に着いた瞬間に、口をつぐまなくてはならない。
などなど、うだうだと書いたけれども、要するに言いたいことは、公職選挙法のこの部分は、極めてザル法であり、守っているんだから守っていないんだか、候補者も責任者も運動員もアルバイトも、じつは良く分かっていないのではないか、ということ。
ちょっとやり過ぎたかな、という感じがするということはあるだろう。
おそらく、小林議員の陣営も、後になって選挙違反だと言うことに気がついて、あわてて支払いをやめたのだろう。
だが、それが結果的に不払いへの不満からチクリにつながり、こういうことになったと思われる。
こういうザル法は何がいけないかというと、ケースバイケースで罪になったりならなかったり、検察の恣意的な判断ができてしまう、ということだ。
実際に支払った場合は運動員も口を割らずにバレる可能性が小さくて、少しでもヤバイと気がついて途中で支払いをやめると、たいがいバレるという矛盾した関係もある。
もうひとつ、この法律の主旨は、金持ちが有利にならないように、お金で運動員を雇わないようにしている、というものだけれども、お金持ちはどうやって運動員を出しているかというと、支援する会社の社員を派遣している。
公共工事を引っ張ってきてくれる候補者の陣営に、建設会社の社員が出ずっぱりで応援に行くというのは、日本全国どこでも見られる光景だ。
かれらが、ちゃんと休暇を取っているのか、はなはだ怪しい。
さらに、選挙運動をあまり規制しすぎると、現職や有名人ばかりが、ものすごく有利になってしまう。
などなど、問題アリアリのこの法律で、執行猶予が5年も付いた懲役刑まで科して、議員を失職させるということが、はたして妥当なのだろうか
■■
もうひとつ、クリーンじゃない話をすると、談合についてだ。
神栖の競売入札妨害:業者、談合の疑いも 複数関係者、県警に証言 /茨城
2010.2.13 毎日新聞
まだこんなことやっているのか、と怒り心頭の御仁も多かろうとは思う。
けれども、本当に談合というのは悪いモノなのか?
この事件では、
「入札は由波設計が2400万円で落札し、ほか4社は非公開にされていた落札予定価格2593万未満2400万円以上の範囲に収まっていた。」
ということで、談合はしていても落札予定の最低価格で落としている。
神栖市は、とりあえず、余計な税金を払ったわけではない。
ただし、情報を流した役人にワイロを渡しているならば、そのぶんは設計作業の手抜きになるので、これは×。
黒幕も某かの取り分を抜いているだろうから、これも×だけれど。
これまた何が言いたいのかというと、経済が縮小していく世の中で、競争入札を続ければ、デフレは止まらないということ。
デフレ、なんて横文字にすれば見た目はいいが、要するに賃金がどんどんドンドン下がっていくということ。
春闘がどうのこうのと言っている、大手の社員はまだ実感が薄いかもしれないが、地方で小さい工事の入札に関わるような中小企業やその下請けにとって、仕事が少ないなかでの競争入札は自滅行為に近い。
現場で作業する末端労働者の日当は、目も当てられない状態。まさにワーキングプアの問題がここにある。
かといって、偽装請負で問題になった大手企業のように、会社にカネをため込んでいるわけでもない。
地方の小さい建設業者や設計事務所なんて、倒産していないだけで御の字。
赤字覚悟で入札したら、あとは下請けを叩きまくるしか生き延びる道はない。
たしかに、日本の建設業にはムダは多い。
大きな建設会社のことをゼネコンという。この「コン」が何かというと、建設のコンストラクトかというと、そうではない。
コントラクト=契約のコンなのである。
つまり、商社が商品を右から左に流すように、資材や職人を右から左に流すのが建設会社の役目。
業界の仕組みがそうなっているから、下請け、孫請け、ひ孫請けという多重請負もあたりまえだし、資材も、メーカー、一次問屋、二次問屋、地元の資材屋さん、と何段階も通ってくる。
ここにムダがあるのは確かだけれども、こうやってムダをつくることで、たくさんの人間が飯を食えるようにしてきた、という面もある。
すべての建設会社が職人を正社員にして、資材をメーカーから直で購入したら、大量の失業者が生み出される。
また、これだけのリスクを負える会社は、そう多くない。
これまでの仕組みは、暇な時期や、過剰在庫などのリスクを、分散してきたのである。
良い悪いは別にして、そういう機能を無視して、いきなりその時点でのムダを排除しても、物事は進まない。
なかには、抜け駆け的に、ムダを省いてコストダウンする会社もある。
それはそれで良いことなのだけれども、実はそれは、社会的なムダを他社に負担させることで、自分だけ儲かろうという話でもある。
産業構造から変えなくては、日本の建設のムダは、根本的には無くならない。
建設現場でのムダ、というのもある。
先ほど建設会社の役目は、職人と資材を右から左に流すことだと書いた。
流すためには流し方、つまり技術が必要なので、まともな建設会社は技術ももっている。
ところが、技術無しに資材と職人だけ現場に放り込んで、あとはお任せで建物を造っている、マトモでない建設会社ももちろんある。
そこまで酷くなくても、技術があれば防げるムダは非常に多いと思う。
ムダで済めば良いけれども、手抜きになることも少なくないわけで、この部分はちゃんと手を入れていかなくてはならない。
だから、一般競争入札を無理にやってデフレを加速させていくよりも、技術水準の監視と教育に公は力をいれて、価格は役所で見積もりした予定価格でやらせればいいではないか、と思う。
希望する地元の業者が順番に請け負って、手抜きしたり大きなミスをしたら、順番からはずす。
市民にも公表する。
一方で、分かりやすい技術講習をどんどんやって、職人や監督のレベルを上げていく。
くだらん定期講習とかいうものを義務づけて、天下り団体に何万円も払わせるんじゃなく、もっと実のある講習を、末端労働者の給料でも行けるくらいの費用でやってほしい。
一円でも安くすることに血道を上げるのではなく、ほどほどの価格で、少しでも間違いの無いものを作る方が、長い目で見れば絶対に良いはずだ。
そのためには、一般競争入札なんてするのではなく、公然と談合するべきだ。
談合も公然とやれば、役人への贈収賄も無くなる。
今や、建設業界はダンピングの嵐になっている。
取るだけ取って、あとは野となれ山となれ。
品質二の次三の次。
最近私がやっている、木造の構造計算でも、とんでもなく安い値段でやっている事務所もある。
本来このくらいだろう、という値段の半分くらいだ。
ところが、その結果はどうなるかというと、たいがいは過剰設計になる。
鉄筋でも何でも多い目にしておけば、早いこと計算OKにできるからだ。
ちょっと試行錯誤すれば、正当に合理的な設計ができるのに、そんなことをしていたら時間がかかって採算が合わないから、鉄筋ドバッ、金物ドバッ である。
結局は工務店もお客さんも損をするのに、目先の数万円のダンピングに誤魔化される。
木造の構造計算は、むしろ売り手市場で技術者が足りないと言われているのに、業界全体がダンピングしているために、こうしたことになってしまっている。
愚かしいなとおもいつつ、その余波にクラクラになっている毎日だ。
こんなのは、ホンの一例。
私は、公共工事には何の関係もないけれども、一般競争入札で、これ以上業界のダンピングを推し進めることは、公共団体のつとめではないと思う。
明るくオープンで公平な談合を、ぜひ実現してもらいたい。
■■
と、まあ私は、選挙についても公共工事についても、クリーンな自由競争を信用していない。
だからといって、ダーティーが良いといっているのではない。
「クリーン」を強制するから、その裏面のダーティーが繁栄するのだ。
禁酒法とアルカポネの話を出すまでもない。
はっきり言って、ダーティーが無くなることはないだろう。
ただ、その闇の力だけで物事が決まっていくような、そんな見せかけの「クリーン」は信用ならないということだ。

にほんブログ村
小沢を正当化するためならば何でもありだ とか、たぶん言いたいだろうなあ。
でも、これは、小沢氏が検察から襲撃されるよりもずっと前から疑問に思っていたことだ。
■■
最近のニュースの関連で言えば、北海道5区で自民町村を破った小林議員陣営の選挙違反について。
刑が確定すれば小林千代美議員は連座制で失職の公算
2010.2.12 北海道365
昨年8月の衆院選で北海道5区から立起して当選した民主党・小林千代美議員陣営の選挙違反事件で、公職選挙法違反(買収約束、事前運動)の罪に問われた元連合北海道札幌地区連合会長・山本廣和被告(60)に対し、札幌地裁(辻川靖夫裁判長)は12日、懲役2年、執行猶予5年(求刑・懲役2年、公民権停止5年)の判決を言い渡した。
山本被告は、昨年5月下旬から衆院選公示後の8月下旬まで、運動員35人に時給700~900円の報酬を支払うことを約束した上、電話で有権者に小林氏の投票を依頼させた疑いで、昨年11月に起訴された。
公判で山本被告は、公示後に報酬を支払うことを約束して運動員に電話を掛けさせたことを認めたが、公示前は「選挙運動に当たらない」として起訴事実の一部を否認。弁護人は先月28日の最終弁論で「罰金刑が相当」と主張した。
12日午後3時30分から開かれた判決公判で、辻川裁判長は量刑の理由をこう述べた。
「公示前の電話掛けについても公職選挙法違反に当たる。公示前でも『小林の国政への再チャレンジをよろしくお願いします』など、投票を暗に呼びかける言葉を運動者の裁量で使わせており、事前運動罪並びに金銭供与約束罪が成立する。本件は組織的犯行であり、実際には払われてはいないものの、35人もの運動者に金銭供与の約束をし、その総額も261万円と規模が大きい。被告の犯行によって民主主義の根幹と言える適正な選挙の実施が害された。事件発覚後も(運動者に)口止めをするなど犯行後の情状も悪い。被告には病気の家族がいることなど酌むべき事情もあるものの、本件の犯行は悪質で結果も相当重い。以上のことから罰金刑ではなく、執行猶予を最長の5年とするのが相当な事案だ」
札幌地検は、衆院選で小林陣営の選挙対策委員長代行を務めた山本被告が、連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」に該当すると判断。山本被告の刑が確定すれば、札幌高検が小林議員の当選無効を求める行政訴訟を起こす見通し。検察が勝訴した場合、連座制が適用され、小林議員は失職する。(文、写真・糸田)
(引用終わり)
たしかに、12日間の公示期間以外に、予定候補への投票を呼びかけることは禁止されているし、公示期間内でも、候補者への投票を呼びかける選挙運動は完全タダじゃなくてはいけない。
お金を払えるのは、事務員、労務者、ウグイス嬢だけで、それも氏名を登録し、日当の上限も決まっている。
しかしだ、そもそも本当に12日間しか選挙運動をしない候補者が、この世の中にいるのか?
現職の議員や、そこら中に顔写真を貼りまくっているひとから、にっこり笑って「よろしくね」と言われたら、それは誰が聞いても「選挙で投票してね」に聞こえるだろう。
選挙運動をしない事務員は、本当に絶対に誰にも「○○さんをよろしく」と言わないのか。
自分の勤めている候補者を、だれにもよろしくとも言わない方が、よほど不自然ではないか。
ウグイス嬢も、車上での連呼のみが認められているのであって、車を降りたら一切選挙運動をしてはいけないのである。
足が地に着いた瞬間に、口をつぐまなくてはならない。
などなど、うだうだと書いたけれども、要するに言いたいことは、公職選挙法のこの部分は、極めてザル法であり、守っているんだから守っていないんだか、候補者も責任者も運動員もアルバイトも、じつは良く分かっていないのではないか、ということ。
ちょっとやり過ぎたかな、という感じがするということはあるだろう。
おそらく、小林議員の陣営も、後になって選挙違反だと言うことに気がついて、あわてて支払いをやめたのだろう。
だが、それが結果的に不払いへの不満からチクリにつながり、こういうことになったと思われる。
こういうザル法は何がいけないかというと、ケースバイケースで罪になったりならなかったり、検察の恣意的な判断ができてしまう、ということだ。
実際に支払った場合は運動員も口を割らずにバレる可能性が小さくて、少しでもヤバイと気がついて途中で支払いをやめると、たいがいバレるという矛盾した関係もある。
もうひとつ、この法律の主旨は、金持ちが有利にならないように、お金で運動員を雇わないようにしている、というものだけれども、お金持ちはどうやって運動員を出しているかというと、支援する会社の社員を派遣している。
公共工事を引っ張ってきてくれる候補者の陣営に、建設会社の社員が出ずっぱりで応援に行くというのは、日本全国どこでも見られる光景だ。
かれらが、ちゃんと休暇を取っているのか、はなはだ怪しい。
さらに、選挙運動をあまり規制しすぎると、現職や有名人ばかりが、ものすごく有利になってしまう。
などなど、問題アリアリのこの法律で、執行猶予が5年も付いた懲役刑まで科して、議員を失職させるということが、はたして妥当なのだろうか
■■
もうひとつ、クリーンじゃない話をすると、談合についてだ。
神栖の競売入札妨害:業者、談合の疑いも 複数関係者、県警に証言 /茨城
2010.2.13 毎日新聞
まだこんなことやっているのか、と怒り心頭の御仁も多かろうとは思う。
けれども、本当に談合というのは悪いモノなのか?
この事件では、
「入札は由波設計が2400万円で落札し、ほか4社は非公開にされていた落札予定価格2593万未満2400万円以上の範囲に収まっていた。」
ということで、談合はしていても落札予定の最低価格で落としている。
神栖市は、とりあえず、余計な税金を払ったわけではない。
ただし、情報を流した役人にワイロを渡しているならば、そのぶんは設計作業の手抜きになるので、これは×。
黒幕も某かの取り分を抜いているだろうから、これも×だけれど。
これまた何が言いたいのかというと、経済が縮小していく世の中で、競争入札を続ければ、デフレは止まらないということ。
デフレ、なんて横文字にすれば見た目はいいが、要するに賃金がどんどんドンドン下がっていくということ。
春闘がどうのこうのと言っている、大手の社員はまだ実感が薄いかもしれないが、地方で小さい工事の入札に関わるような中小企業やその下請けにとって、仕事が少ないなかでの競争入札は自滅行為に近い。
現場で作業する末端労働者の日当は、目も当てられない状態。まさにワーキングプアの問題がここにある。
かといって、偽装請負で問題になった大手企業のように、会社にカネをため込んでいるわけでもない。
地方の小さい建設業者や設計事務所なんて、倒産していないだけで御の字。
赤字覚悟で入札したら、あとは下請けを叩きまくるしか生き延びる道はない。
たしかに、日本の建設業にはムダは多い。
大きな建設会社のことをゼネコンという。この「コン」が何かというと、建設のコンストラクトかというと、そうではない。
コントラクト=契約のコンなのである。
つまり、商社が商品を右から左に流すように、資材や職人を右から左に流すのが建設会社の役目。
業界の仕組みがそうなっているから、下請け、孫請け、ひ孫請けという多重請負もあたりまえだし、資材も、メーカー、一次問屋、二次問屋、地元の資材屋さん、と何段階も通ってくる。
ここにムダがあるのは確かだけれども、こうやってムダをつくることで、たくさんの人間が飯を食えるようにしてきた、という面もある。
すべての建設会社が職人を正社員にして、資材をメーカーから直で購入したら、大量の失業者が生み出される。
また、これだけのリスクを負える会社は、そう多くない。
これまでの仕組みは、暇な時期や、過剰在庫などのリスクを、分散してきたのである。
良い悪いは別にして、そういう機能を無視して、いきなりその時点でのムダを排除しても、物事は進まない。
なかには、抜け駆け的に、ムダを省いてコストダウンする会社もある。
それはそれで良いことなのだけれども、実はそれは、社会的なムダを他社に負担させることで、自分だけ儲かろうという話でもある。
産業構造から変えなくては、日本の建設のムダは、根本的には無くならない。
建設現場でのムダ、というのもある。
先ほど建設会社の役目は、職人と資材を右から左に流すことだと書いた。
流すためには流し方、つまり技術が必要なので、まともな建設会社は技術ももっている。
ところが、技術無しに資材と職人だけ現場に放り込んで、あとはお任せで建物を造っている、マトモでない建設会社ももちろんある。
そこまで酷くなくても、技術があれば防げるムダは非常に多いと思う。
ムダで済めば良いけれども、手抜きになることも少なくないわけで、この部分はちゃんと手を入れていかなくてはならない。
だから、一般競争入札を無理にやってデフレを加速させていくよりも、技術水準の監視と教育に公は力をいれて、価格は役所で見積もりした予定価格でやらせればいいではないか、と思う。
希望する地元の業者が順番に請け負って、手抜きしたり大きなミスをしたら、順番からはずす。
市民にも公表する。
一方で、分かりやすい技術講習をどんどんやって、職人や監督のレベルを上げていく。
くだらん定期講習とかいうものを義務づけて、天下り団体に何万円も払わせるんじゃなく、もっと実のある講習を、末端労働者の給料でも行けるくらいの費用でやってほしい。
一円でも安くすることに血道を上げるのではなく、ほどほどの価格で、少しでも間違いの無いものを作る方が、長い目で見れば絶対に良いはずだ。
そのためには、一般競争入札なんてするのではなく、公然と談合するべきだ。
談合も公然とやれば、役人への贈収賄も無くなる。
今や、建設業界はダンピングの嵐になっている。
取るだけ取って、あとは野となれ山となれ。
品質二の次三の次。
最近私がやっている、木造の構造計算でも、とんでもなく安い値段でやっている事務所もある。
本来このくらいだろう、という値段の半分くらいだ。
ところが、その結果はどうなるかというと、たいがいは過剰設計になる。
鉄筋でも何でも多い目にしておけば、早いこと計算OKにできるからだ。
ちょっと試行錯誤すれば、正当に合理的な設計ができるのに、そんなことをしていたら時間がかかって採算が合わないから、鉄筋ドバッ、金物ドバッ である。
結局は工務店もお客さんも損をするのに、目先の数万円のダンピングに誤魔化される。
木造の構造計算は、むしろ売り手市場で技術者が足りないと言われているのに、業界全体がダンピングしているために、こうしたことになってしまっている。
愚かしいなとおもいつつ、その余波にクラクラになっている毎日だ。
こんなのは、ホンの一例。
私は、公共工事には何の関係もないけれども、一般競争入札で、これ以上業界のダンピングを推し進めることは、公共団体のつとめではないと思う。
明るくオープンで公平な談合を、ぜひ実現してもらいたい。
■■
と、まあ私は、選挙についても公共工事についても、クリーンな自由競争を信用していない。
だからといって、ダーティーが良いといっているのではない。
「クリーン」を強制するから、その裏面のダーティーが繁栄するのだ。
禁酒法とアルカポネの話を出すまでもない。
はっきり言って、ダーティーが無くなることはないだろう。
ただ、その闇の力だけで物事が決まっていくような、そんな見せかけの「クリーン」は信用ならないということだ。

にほんブログ村
- 関連記事
-
- 付加価値って何? ~貧困の原因を探る 1~ (2014/05/07)
- なんで働いても働いても楽にならないのか考えてみた (2014/03/20)
- 限界を露呈して、暗い来年を垣間見せるアベノミクス (2013/12/22)
- 国際協力銀行の分離国有化は何かオカシイ (2011/02/26)
- 100歳以上と預金封鎖 (2010/08/25)
- 消費税は資本主義の敗北宣言 (2010/07/06)
- アメリカ国債と売魂=菅内閣 (2010/06/15)
- クリーンなことは良いことか? (2010/02/13)
- 「外為特会」の見直しは画期的なニュース(報道されないけれど) (2010/02/01)
- なんだか臭うパラマウントのテーマパーク計画 (2009/07/16)
- 「緑のオーナー」 問題の根っこ (2009/06/06)
- デフレ・ギャップ なんて無い (2009/02/09)
- 日本経済にトドメを刺す「無税国債」と「政府紙幣」 (2009/02/08)
- 木の家の敵=農林中金の実態 (2008/12/08)
- ドル帝国の崩壊 (2008/10/25)