2010-08-31(Tue)

フィナンシャル・タイムズの「The wrong man for Japan」論説について

小沢氏の出馬は歓迎しつつも、気になることを書いてみる。

■フィナンシャル・タイムズの記事

反小沢の人々が、大喜びで引用しているフィナンシャル・タイムズの「The wrong man for Japan」という記事は、たしかに内政干渉そのものの、激烈とも言える小沢誹謗記事になっている。

英フィナンシャル・タイムズが、「小沢氏が日本の首相には良くない男だ」という根拠は、二つ。

一つは、対米従属ではないこと。これが「困惑させる外交の政治スタンス」だという。

二つ目には、それ以上の理由として、1993年に成立した連立政権を壊したことらしい。だから、今度も壊すに違いないと書いている。



最初におさえておくべきは、小沢氏が「壊した」のは新進党であり、それは細川・羽田の非自民連立政権が1994年に敗北してから4年後の1998年ことだということ。

1994年に羽田連立政権が敗北したのは、直接的には社会党のせいだ。
社会党の村山富市が、首相の座に目がくらんで、連立政権を裏切り、社会党そのものを裏切って、あろうことか自民党と手を結んだことが、原因だ。
その裏の立役者が、羽田政権に閣外協力と言いながら「自社さ」の根回しをした、さきがけの武村正義であったことも、比較的よく知られている話。

10年以上前のことで、しかも党首になった途端に新進党を解党したというイメージが強いために、あたかも小沢一郎が羽田連立政権を潰したように、よくよく知っているハズの日本のマスゴミも書き立てるが、意図的な誤解、というかデマの類である。



ただし、英フィナンシャル・タイムズとしては、こんな話は付け足しだろう。
本当に言いたいのは、一つ目の外交姿勢のほうだ。
それを、あまり正面から言うと露骨すぎるので、壊し屋のイメージを書いているだけだ。

ところが、やっぱりと言うべきか、日本のマスゴミは、この「外交姿勢」の中身についてはひと言も書かない。
日経だけが全文翻訳を掲載している。(これも、少々問題ありだが)

そこにはこう書かれている。
(以下引用)

「普通の国」として戦後体制を脱却し、米国に頼らない独自防衛を最初に唱えた政治家の1人だ。1990年代には小沢氏を「改革者」と持ち上げた米国だが、最近は冷淡だ。野党だった民主党が海上自衛隊のインド洋での給油活動に反対していたころ、シーファー前駐日米国大使は当時民主党代表だった小沢氏と会談することすら拒否された。小沢氏は中国の1党独裁政治には露骨な軽蔑(けいべつ)を示しつつも、対中関係強化には熱心だ。

(引用以上)

これこそが、英フィナンシャル・タイムズが「小沢はダメ」という最大の理由なのである。
それを、日本のマスゴミは、ひとっことも書かない。書けない。

ちなみに、こうした小沢の外交政策のスタンスについて、日経は「首尾一貫しない外交姿勢」と訳しているが、原文は、 confusing foreign policy stance  である。

confusing は「混乱させる」「困惑させる」であり、この文章が英国で書かれたことを考えると、「イギリスを困惑させる外交政策スタンス」というのが、直訳になるのではないか。
あるいは、外交政策であるから 「外交の相手方であるアメリカを困惑させる外交政策スタンス」であろう。

少なくとも首尾一貫しない ではない。内容の是非はともかく対米従属でないという点では、フィナンシャル・タイムズに書かれていることは首尾一貫しているのだから。


問題は、この記事が、「単細胞」と小沢に言われたアメリカからではなく、イギリスから出てきたことだ。
アメリカから、もっと激烈に反応があっても良さそうなものなのに、意外とおとなしい。

米、小沢氏出馬に警戒感 政治不透明化に懸念も

2010.8.26 ワシントン共同より引用

米シンクタンク戦略国際研究センター(CSIS)のニコラス・セーチェーニ日本部副部長は、小沢氏が最近の講演で米国人を「単細胞」と表現したことに触れ「対米外交は難しいのでは」と皮肉った。

(引用以上)

あのCSISにしてこの程度だ。
たしかに「単細胞」という言葉は褒められたモンじゃないが、どうも小沢一郎は、アメリカを試すために敢えて言ったのではないか という気もする。

つまり、アメリカの一部の層とは一定の合意ができている可能性を示唆していないか。
アメリカの経済崩壊は、凄まじい勢いで進行しているはずだ。
大量にマグマのように溜まった不良デリバティブが、これから吹き出して、高い山だったはずのアメリカはカルデラ湖のように陥没していく。

その決定的な状況証拠は、ドルの暴落を放置しはじめたことだ。
輸出を増やすという目的もあるだろうが、何よりも借金を棒引きにするには貨幣価値を下げるに限る。
ドル建ての借金は、ドルが半分になれば、借金が半分になったのと同じだからだ。

世界最高のドル建ての借金は何か。
それはもちろん、アメリカの国債だ。
だから、ドルが下がり続ければアメリカの国債は紙くずに近づいていく。
そんなものを、買う人はどんどんいなくなる。

いなくなると どうなるか。
アメリカは、財政破綻する。
イチコロだ。

それを阻止するためにはどうするか。
日本にアメリカ国債を買い支えさせ、中国になんとか売らないでくれと懇願するしかない。
そこまで、アメリカは弱い立場に陥っている。

そこを、小沢は突いたのではないか。
何の証拠もないし、中身も分からないが、どうも、そんな気がする。



もしそうだとすると、これは微妙な問題を生じる。
これまで、小沢氏を支持してきたのは、主に対米従属からの脱却を目指す勢力だからだ。
アメリカとナシをつけた というのは良いイメージにはならない。

しかし、考えようによっては、武力で対決するのでない以上は、何でも条件交渉である。
それが、良いか悪いかは、交渉された条件次第。

明日の小沢氏の政策発表に、それがどのように反映されるのか。
また、このまま順当に小沢氏が首相になったとき、どのような影響を及ぼすのか。

これは、他人事ではない。
鳩山の普天間をめぐる交渉も同じことだが、国民の圧倒的な声を背景に交渉するのか、首相が孤立してやるのかで、結果は大違いだ。
鳩山は全国民からの圧倒的な「辺野古反対」の声を期待したはずだが、情けないからそういう状況は作れなかった。

だから、仮にアメリカとの下交渉をしてから成立する小沢内閣であったとしても、その後の本交渉の正否は国民の声にかかっている。
逆に言えば、そのような国民への働きかけがあるかどうか、これが小沢内閣の真価を問われるとも言える。



小沢一郎の敵は、自民党でもなければ菅直人でもなく、アメリカ・マスゴミ・検察である。
アメリカというのは国民のことではなく、日本を操ろうとしている勢力のこと。
このなかの、検察にたいしてはほぼ勝利した。
アメリカに対しては、勝利はできなくとも、敵の弱みにつけ込んで条件交渉で黙らせた。(たぶん)
残るはマスゴミだけである。

そのマスゴミも、今日一日で論調が代わりはじめている。
「開いた口がふさがらない」とまで一方の候補者をこき下ろした、公正中立とは縁もゆかりもない朝日新聞ですら、すっかりおとなしくなってしまった。

しかも、各社が横並びで、小沢氏の記者会見発言を、全文掲載している。
いったいこれはどうしたことだ。

などなど、いろんな状況から、どうやらナシを着けたのではないか と予測する次第。
そして、仮にそうであっても、短兵急にアメリカに屈したなどの言うのではなく、その「ナシ」がどのように政策に反映されるのか、冷静に見極める必要がある と考えた。

見極めた結果、なるほどアメリカの弱みを突いたな ということであればアッパレだし、万が一逆であれば声をあげなくてはならない。
いずれにしても、国民が望むことを声高に唱えなくては。
もしも、国民の側を少しでも向いている首相になったならば、首相一人を孤立させてはならない。


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No title

羽田政権を潰したのは小沢ですよ。
非自民政権内で小沢が民社党と公明党と謀り、統一会派を作り野党第一党の社会党の影響力を弱めようとしました。
それに社会党とさきがけが反発し、社会党は連立離脱になりました。
そこを自民党は狙い、自社さ政権が出来たんです。
野党第一党の社会党が連立を離脱し、羽田内閣が少数与党政権でガタガタになった原因は小沢が作ったんですよ。

No title

あとは、小沢幻想の試金石は、普天間問題ではないでしょうか。小沢氏はおそらく現行案に否定的な立場をとらざるを得ないでしょうが、そこで自ら打ち出す政策が、

>「小沢首相が誕生した場合には普天間飛行場の国外移設を主張することになる」(民主党の川内博史衆院議員)

というようなものに、本当になるのか、どうか。それならば、なぜ鳩山政権のとき、何もできなかったのか。

このあたりが、どうしても注目したいところです。

No title

考えすぎでしょう。アメリカの政治的行動が良くも悪くも単細胞なんてのは、小沢氏じゃなくても思いつく話です。この程度の放言は小沢氏はあちこちでしていますが、代表選出馬が囁かれている時期なので、大げさに伝えられただけです。もしかして板垣某のブログなどを信じているわけではないでしょうが、小沢氏は別にアメリカと合意なんぞしていませんし、そんなことをしなくとも代表選に勝てば首相になるのです。

今日のエントリの意図は良くわかります。いよいよ、小沢氏の首相就任が近づいてきて、現実の「小沢首相」が、外交においてなんら新しい路線を打ち出さず、これまでの外交路線の継続をしたときの、予防線なのでしょう

だいたい、なぜ自民党や菅なら対米従属と切って捨てるのに、小沢氏なら複雑な意図を忖度してあげるのか、その点で理解に苦しみます。竹下・海部・宮澤政権、細川政権、小渕政権、そして鳩山政権における小沢氏の外交面での活動を復習するだけでも、小沢氏が別に対米自立をとくに志向してきたわけでもなく、かといってことさら対米従属路線でもなく、伝統的な日本の日米関係の発展継承という路線に立っていることは、明らかだと思いますが。

No title

小沢一郎氏が完全な対米自立主義なのかどうかは疑問もありますが、それにおいて、鳩山前首相・菅首相はいかにも不手際・無策の感を免れえないので、小沢氏には、俺ならこうする、という落とし所がすでにあって、何かしら根回しは始まっているということはあり得ますね。

小沢氏の心中を想像する

小沢氏は、アメリカ崩壊からの被害をいかに最小にと苦慮してるのではと想像です。
そのためには、円をどんどん刷って米国製品(パソコンや農産物や時代遅れの武器くらいだけど軍隊用ではない国境警備用にと)を買ったり、日本国債という100兆円につき一兆円以上の利子がつく財産を買うように。

使い道のない米国債は、下記の宝くじ景品として国民にばら撒いてはどうか?(「減価して貨幣価値がゼロになる通貨」の地域通貨の減額分の宝くじの景品として。日本最大の無駄の陸上自衛隊を森林再生&災害救助隊として日本中の国有地&別荘付き土地や休耕田・耕作放棄地を食料自給率アップに活用したり)

それは国内的には、いかに日本の欠点を解消するのかであり、「政治と金」問題は、究極的には官僚支配との戦いであり、それなしには日本の再生はない。
①最先端の生産技術を利用しての資源獲得の武器に
②海外債権は世界一でありながら米軍思いやり予算や米国債等の米国に貢ぐ分の膨大さを手切れ金で解消
③エネルギー効率の優位性をもつ世界一の省エネ技術や半永久的な地熱発電の国家的な支援
④地続きの国境がないの空海の重点的に装備向上して、陸上自衛隊は上記の地熱発電や、下記の食料自給率アップの休耕田・耕作放棄地や森・川・海再生に使う
⑤本来の日本は海産物と米等で世界一食糧自給が可能な国として食料の自給自足可能
⑥戦後米国化のために違法行為がが横行の政治家・官僚の腐敗を以前に戻すことために国家戦略局をそのために利用すること(ここでの勤務を査定や天下りの条件に)

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