2010-09-03(Fri)

産経の論調が変わっている【追記あり】

あれほど 小沢を撃ちてし止まぬ勢いだった産経新聞が、なんだかオカシイ。

【民主党代表選】小沢氏の剛腕警戒 自民内に首相続投望む声

2010.9.2 産経

民主党代表選が1日告示されたのを受け、自民党には、中堅・若手を中心に、「菅直人首相続投」に期待する「奇妙な空気」が強まっている。

(以下略)

これは、「菅首相のやり方は自民党と同じだ」と批判している小沢氏の主張を、思わぬところから後押しする話が登場したことになる。


俺が出るぞ! 前原氏“恫喝”に菅首相屈服 「脱小沢」放棄に反発

2010.9.2 産経

(略) 一連の駆け引きについて、前原氏周辺は「『剛腕』相手に弱気の虫がでてきた首相の背中を押した」と解説するが、実際は首相が前原氏の恫喝に屈服した格好だ。

(引用以上)

これまた、権力闘争だけに邁進する醜い前原の姿と、これに屈して自分から呼びかけた会談を自分で断った菅の奇行が説明されてしまった。

朝日や毎日やNHKが、精力的に小沢叩きを続けているというのに、頭目の産経はなにやらビビッているのか、別の作戦があるのか・・・


もう一つ、気になる記事が、

【オピニオン】小沢一郎氏の最後の戦い (マイケル・オースリン)

2010.9.2 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

(略) 日本では最も鋭敏な政治家の1人である小沢氏は、2年目の民主党政権が1年目同様、問題含みなものになることを理解している。能 力がないという党のイメージは、大衆の意識に消えることなく刻み困れてしまう。だからといって、自民党が再び権力の座に就くことにはならないだろう。しか し、それにより、多くの小規模政党の形成が促され、日本の政治的不安定な状態が予想以上に長期化することになる。

(以下略)

内容はたいしたことはないが、「政治とカネ」という黒魔術は一度も登場しない。
むしろ、小沢氏のほうにやや有利な書きようである。

ところで、この著者は、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の日本部長だという。
AEIは、アメリカ大使館のホームページでも、例のCSISなどと並んで主なシンクタンクとして紹介されている。ネット情報では、イスラエル系、ネオコン系で、共和党にも民主党(米)にも影響力を持っているようだ。

同じマイケル・オースリン氏は、参議院選大敗の直後、こんなことを言っていた。

ワシントン、第2の小泉待ち望む=民主党大敗で米政治専門家
2010.7.12 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

(略)ワシントンから見る限り、一貫した政策を提起するだけでなく、実行する能力があるという意味で、小泉純一郎元首相のような人物の登場をワシントンは5年間待ち続けている。

 個人的には、安倍晋三元首相は比較的一貫性のある方針を持ち、優れた(国内ではなく)外交政策を提起していたように思う。だが実行能力が欠けていた。福田康夫や麻生太郎といった元首相らの方針は一貫性がなかった。就任からわずか1カ月にして選挙で大敗を喫した菅首相は、鳩山前首相と同じ間違いを犯した。

 したがって、日本が自ら事態を収拾し、実行能力のある強力なリーダーシップを擁立するまで何もできることはないというのがワシントンの見方だ。
(中略)

 ワシントンの多くは、中国との関係はせいぜい技巧的なものにすぎないと考えている。そういった関係であっても築ければ幸運だ。一方、アジア最大の民主国家であり、世界第2位の経済大国である日本と協力することに全く違和感はない。むしろそれができないことは不満につながる。そのため米国が重要な価値を共有する同盟国に頼ろうと考えることは当然の欲求だ。
(略)
わたし自身、ワシントンは日本に「背を向けつつある」と感じてはいるが、それは単にワシントンが現時点でほかに選択肢がないと考えているからではない。日本政府の準備が整っていないのだ。


(引用以上)

michael_img.jpg

ここでオースリン氏の言う「頼る」「準備」が何を指すのか がポイントだろう。

コイズミを持ち上げている以上、アメリカへの忠誠度を測っているのは間違いないが、単純にそれだけでもなさそうだ。つまり、安倍晋三からこっち、ジャパンハンドラーズは日本の首相を締め上げ続けてきた結果、「どうもこれではうまくいかない」と思い始めているのではないか。

コイズミのような鉄面皮の恥知らずは、そうそうたくさんいるモンじゃないということに、気がつき始めた。
安倍晋三は、言うことは聞かせたけれども、そのストレスで潰れてしまった。
福田康夫はなかなか言うことを聞かず、最後は突然消えてしまった。
麻生太郎はどっちつかずでノラリクラリした挙げ句、自民党最後の首相になってしまった。

鳩山由紀夫は、普天間問題で公然とアメリカに楯突いてきたので、ねじ伏せてやった。
そうして、ようやくたどり着いた菅直人なのに、周囲も含めて余りの無能さにため息も出ない。
まさに、開いた口がふさがらない というのが実感ではないか。

いくら言うことを聞かせてアメリカに都合の良い政策を飲ませても、あまりに無能であっては、それを実行することができない。
菅政権は、まさにそういう政権だということだ。


一方で、アメリカの事情は一刻を争う。中国が国債を買い支えてくれれば「幸運」だ。が、より一層日本のサイフに「頼ろうと考えるのは当然の欲求」だ。
自分の首相の座以外はいっさい関心のない菅直人は、エサで釣ることはできても、肝心の時に役に立たない。

アメリカが本当に欲しているのは、前原首相の誕生であろう。
しかし、激烈かつ卑劣なる小沢攻撃にもかかわらず、小沢一郎の勢力は非常に大きく、当面は前原首相の目はない。

こうなったら、しかたないので、しばらくは小沢首相にして、妥協しながら当面の2番底を乗り切ろう という作戦ではないか。

まずは産経からコロビはじめた日本のマスゴミ。
これから2週間でどのように変遷していくかを見ることで、間接的に彼らの親分である米国さまの意向が透けて見える。

もちろん、まだまだ予断は許さない。
権力にしか関心のない人間というのは、想像を絶する卑劣なことをする。
あの共同記者会見や公開討論での、現職総理大臣とはとても思えない発言の数々もそうだ。
よくもまあ、恥ずかしいと思わないもんだと、むしろ「菅」心してしまう。

このような表の事象だけならばいいが、他にも何をするか分からない危険がある。
自分のイスさえ守れれば、政策も誰と組むかも、一晩で変えてみせる特技をお持ちのようだから。

小沢氏も、今は必要以上にアメリカを刺激しないように、そうとう注意して発言しているようだが、選挙戦の勢いでつい激しい言葉を言ってしまうと、暗黙の妥協協定が吹っ飛ぶ可能性もある。
マスゴミが、わざと「普天間を白紙」みたいに言って、小沢氏があわてて訂正する場面があったが、今は充分に気をつけて発言されたい。

ozawa20100902.jpg


天木直人氏の発言も紹介しておきたい

小沢一郎の総理誕生を願うーM代議士へ贈る言葉

2010.9.1 天木直人のブログ より

(略) 小沢氏に今すぐ「さらば日米同盟」を言ってほしいとは求めません。それどころかいたずらに米国を刺激するような言動をすべきではない。

しかし、最後は日米同盟から決別し、憲法9条を掲げた平和外交が日本を救うのです。

そしてそれは小沢氏自身を救う事にもなる。


(以下略)

政治である以上、一定の妥協の上に結果が出る。
それは、しかたないことだ。

だからこそ、その妥協点が、何と何のせめぎ合いであり、どこが主戦場なのかをよくよく理解する必要がある。
鳩山氏が、普天間・辺野古問題を国民に投げかけた。国民運動を背景に、国民のチカラを背景にアメリカと交渉しようとした。
しかし、私たちは、その主戦場を理解しきれず、県民運動はついに国民運動とはならず、鳩山は倒れた。

その反省を、今改めてする必要がある。
今年の後半から、否応なくアメリカに対する財政的な援助をしなくてはならなくなる。
それも、半端な額ではないだろう。

それをどうするのか。
その時になっても「しかたがない」と後退し続けるのか。
そんな金があるなら、国民に回せ と叫ぶのか。

刻々と変わっていく状況を見ながら、こんなことを考えた。


■【追 記】

経済誌のダイアモンドオンラインに、興味のある記事が

「菅・小沢」の二択という悲劇
2010.9.3 岸 博幸 [慶應義塾大学大学院教授]

岸氏は、元経産省の官僚で、竹中・コイズミ時代に大活躍した人。竹中の秘書までやっている。
そういう立場、つまりアメリカの意向にそって発言しているであろうと思われる人の論説が、このようになるのだという意味で、非常に興味深い。

この論説は、一番重要な点をふたつ、意図的に隠してかいてある。その2点だけ付け加えて読めば 非常に参考になると思った。

① 鳩山政権を評して、「官僚を排除して政策経験のない政治家だけによる独善的な政治主導」というが、実態は<官僚のサボタージュ>が大きく、結果的に上記のようにならざるをえなかったという面を、この論文は意図的に見逃している。

②コイズミを評して、「財政再建については財務省にある程度頑張らせつつ、不良債権処理や郵政民営化などについては、官僚の意向を無視して政治主導で強引に進め」たと、褒めるのだが、コイズミの「政治主導」を本当に主導していたのはアメリカだったという公然のことを、これも意図的に隠している。

つまり、鳩山政権もそうであったし、もし小沢政権が誕生すれば、<官僚のサボタージュ>と<アメリカとのハードネゴシエーション>という、二重の苦しみの中で進んで行かなくてはならないということ。
そのことが、とりもなおさず、政権交代の意味でもあり、同時に政権のリスクでもある。

そこが変革のポイントなのであるから、逆に抵抗が最大になるのは当たり前。
国民の命と生活を守るために、その抵抗とどう向き合うのか、闘うのか、という立ち位置が全くない、というのが、この論説の最大の問題点。
まあ、岸氏の経歴を考えれば当然だが。

kishihiroyuki.jpg

そのことを踏まえて上で読めば、菅政権がなんなのかということを、なかなか的確に捉えているように思われる。
つまり、アメリカは菅をこのように評価しており、見限ったと言えるのではないか。

ちなみに、記事の最後に、「菅氏と小沢氏による2日の公開討論会、勝者はどっち?」というアンケートがあり、現時点では、 小沢 59.1% 両方敗者 26.8% どちらとも言えない 8.3% 菅 5.8%
という結果になっている。


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小沢一郎の羽振り

ここのところ小沢一郎の羽振りがいいみたいだ。鳩山・菅と続いた政権が「あまりに」ひどかったので、その「揺り戻し」が小沢に返ってきたということなのだろう。もしこのまま押し切って小沢が首相になったらなったで、また新たな、より決定的な「失望」がおとずれるのはま…

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No title

普天間基地問題の主戦場は来る沖縄県知事選挙に移っていると思います。
自民党や官僚側は、何としても自民党の知事候補を勝たせ、県民は基地の県外・海外移設など望んではいないという形に持っていくのに必死でしょう。
だから、いまの段階ではまだ、基地問題は必ずこうする、という言質を取られるようなことをいうのは得策ではないでしょう。

No title

金が欲しいというならやればいい
そのかわり円建てでネ!

No title

>鳩山氏が、普天間・辺野古問題を国民に投げかけた。国民運動を背景に、国民のチカラを背景にアメリカと交渉しようとした。
>しかし、私たちは、その主戦場を理解しきれず、県民運動はついに国民運動とはならず、鳩山は倒れた。

なんですかこれは。「最低でも県外」の鳩山に圧倒的な支持を与えたのは沖縄県民含め我々国民ですよ。その後の世論の帰趨がどうあれ、本当に覚悟があるのなら徹底的に交渉すればいいじゃないですか。ところが、はじめからそんな覚悟も何もなく、あっさりと従来案にかえっていったのは鳩山です。

こんな調子では、小沢首相が誕生して、実態としては菅政権となんにもかわらない政治を始めても、「国民の理解がたりない」「アメリカに恫喝されている」などといって小沢首相を免責するのではないですか。

今日のエントリなど、全体としてその予防線に見えてしかたがないのです。自民党や菅が妥協すると、アメリカのいいなり。小沢や鳩山が妥協すると、深い意図がある。国民の支持がたりないせい。

これでは、あんまりでしょう。
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