2023-06-08(Thu)

カホフカ・ダムを破壊したのは誰か

ウクライナにとってもロシアにとっても、深刻なダメージとなるカホフカ・ダムを、一体だれが破壊したのか。
こちらの記事が、非常に詳しく報じている。


記事中で橋の中央部が決壊した様子が分かるツイートを紹介している。
6/4の写真で取水口になっているあたりが、決壊後の流れの中心になっている。


さらに、BBCが崩壊する4日前にすでに兆候があったと写真を公開している。


20230608-3.jpg

カーブしている部分の橋が4日前に落ちていたと言うのである。ここは上のツイートの写真の取水口の上部に当たる。たしかに、6/4の写真もよく見ると橋がなくなっている。

ところで、同じJSF氏の記事で、昨年11月のものがある


この記事では、昨年11月にウクライナ軍がダムの上にかかる橋を攻撃し、補給のできなくなったロシア軍がダムよりも北西側のヘルソンから撤退したときのことが書かれている。
ウクライナ軍がミサイルでダムの上部の橋を攻撃し、最後にはロシア軍が爆薬で橋を落としてヘルソンからウクライナが追撃してくるのを防いだ。

まず、ウクライナ軍がミサイルを集中させた箇所はこの部分だという。

20230608-2.jpg
(JSF氏の記事より引用)

直線の橋の部分は、ダムの真上にあるのでミサイルが貫通するとダムが壊れるが、丸印のとこだけは真下にダムがないので、そこをウクライナのミサイルは集中して狙った、という意味。
中央の丸は、まさに6/2に橋が落ちた箇所であり、ダムが決壊した箇所の直近だ。

そして、ロシア軍がヘルソンから撤退した後に破壊したのはこの部分だという。


この写真は最初のツイッターと方位が反対で、下が北だ。左側の写真の右端で橋がなくなっているので、ロシア軍が橋を爆破したのはウクライナ軍が攻撃した部分とは反対側である。
直下にダムがあるけれども、ミサイルではないのでダムには影響させずに壊したようだ、と書いてある。

以上から分かることは、ウクライナ軍がミサイルを集中させた箇所の直近でダムの崩壊は始まったということと、その部分はロシア軍は11月には橋の爆破をしていない、ということだ。

いくら命中精度の高いミサイルでも、集中的に攻撃したときに橋のカーブの部分は崩壊寸前の状態になり、ダム本体にもダメージを与えていた、と常識的には考えざるを得ない。
損傷を受けたダム本体が徐々にたわみを生じ、弱っていた橋が変形に耐えられずに崩落し、その後にダム本体が決壊した、というのが時系列の写真から推測されることだ。

ロシアは橋の一番ウクライナ側で11月に橋を爆破したので、今回の崩壊地点はロシア側になる。もし人為的な破壊だとすると、大量の爆薬を抱えてウクライナの工作員がどうやって侵入したのかという問題はあるので、ロシア側の疑いが濃くなるが、これも4日前から前兆があったことを考えると、人為的な爆破というのは考えにくい。

現段階で確定はできないが、昨年11月のウクライナ軍によるミサイル攻撃で損傷した箇所が、時間をかけてたわみを増大させ、決壊に至ったのではないか、と私は考える。


いずれにしても、この被害が甚大なものであり、戦争で苦しめられている国民をさらに追い詰めていることは間違いない。

反転攻勢をさけぶウクライナも、その惨状は一般に報じられいる戦闘の被害にとどまらない。


2022年のGDP(国内総生産)は前年比マイナス30.4%。かろうじて保たれているのは公共輸送機関やライフラインと、食料品店やレストラン、カフェなどの生活まわりのサービス分野ぐらいで、その他は農業を除いてほぼ麻痺状態にあると見てよいだろう。
(引用以上)

一刻も早く停戦、休戦を実現し、昨年だけで1600億ドルにのぼった軍事支援を、すべて生活再建のための支援とすることが求められる。
もっとも、アメリカは軍事費は天井知らずで出すけれども、生活再建には雀の涙しか出さないだろうが。




2023-06-07(Wed)

政党は急成長できるのか 大阪5区のことなど

今国会での衆議院解散はたぶんない、と前の記事で書いた

自民党内でも慎重論が強いようだし、あの山口3区戦争が決着つかないと、解散はできないだろう。

首相「非常に難しい判断」 山口新3区の候補者調整
2023年6月7日 産経新聞

山口県は選挙区がひとつ減るため、4区の安倍晋三の後継と、3区の岸田派の林芳正外相が公認争いをしている。
岸田は何が何でも林を推して安倍派を屈服させるだろうが、そう簡単ではない。時間がかかる。

とは言え、当分選挙はないよと高をくくっているわけにもいかず、少し足下の分析をしてみようと思う。
足下というのは、いまこの文章を書いている大阪市東淀川区を含む、大阪5区(東淀川、淀川、西淀川、此花)である。

自分の設計事務所があるという意味でも足下だし、前回の衆院選ではかなりがんばって活動したと言う意味でも、しばらく議員事務所で仕事をしたという意味でも、私にとっては足下と感じている。

前回、2021年10月の衆議院選挙では、以下のような結果だった。

20230607-3.jpg
朝日新聞より引用)

見ての通り、現職が3人もいる。普通に考えると、現職がどっか行くことはないので、次回も3人は立候補すると考えられる。

さらに、大阪ではこんな事情が生じている。

維新、公明の「金城湯池」で主戦論 衆院関西6選挙区、関係に揺らぎ
2023年5月14日 毎日新聞

これまで大阪で4つ、兵庫で2つの選挙区は、自民も維新も候補者を出さずに公明候補が議席を得てきた。
公明は、自民とは国政で、維新とは大阪で協力関係をとってきたからだ。
しかし、4月の地方選で大勝ちした維新は、もう公明とは組まない、と宣言したのである。
地方選での維新の票数を見ると、6選挙区すべてで公明は議席を失う可能性がある。

大阪5区もその一つであり、現職3人と維新候補の四つ巴になる可能性が高い。
そうなった場合、どのようなことが想定されるのか。

昨年7月の参院選の比例では、維新81332票、公明31853票で、約10:4の比率だったが、これには自民票が入っていない。(自民は自民に投票しているから)

今年4月の府議選では、東淀川と淀川は、維新、公明、その他の3候補だった。そのなかで維新は75000票、公明は31000票である。自民がでない場合でも、だいたい10:4程度になっている。自民票は連立を組む公明よりも維新に多く流れていることがわかる。(もちろん地方選だからという要素は強い)

次に共産だが、宮本の48000票は、比例票の投票先でいうと共産21000、社民2000、民主系の約半分で12000、それに維新から13000票程度が流れていると、私は推測している。

問題はれいわだ。大石の34000票は、比例でれいわに投票した1万の3.4倍もある。つまり、他党が候補を立てると、非常に苦しくなるということだ。
これも私の見立てだが、比例では民主系に入れた人が1万、維新が14000、程度が選挙区では大石に入れているのではないか。よって維新が候補を立てると、単純計算では 大石はかなり苦しくなる。

それに加えて、参政党が候補を出してくることが考えられる。参政党はれいわを狙い撃ちにしているようなところがあるうえに、大阪5区は参政党の本拠地である吹田の隣でもあり、おそらく出してくるのではないか。

詳細は明かせないが、これまでの数年間の分析から、各陣営の努力を考慮せずに、単純な票の流れを考えたときの私の見立ては以下の通り。

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(クリックで拡大)

このままでは、れいわは議席を失う可能性がある。

では、どう努力するべきなのか。
次に挙げるのは、2019年からのれいわ票の動きだ。

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(クリックで拡大)

こちらは右から左に時系列となっている。れいわの比例票の得票率は、2019年から見れば微増しているとは言え、全国平均とほぼ変わらない。(大阪の中では明らかに高い方だが)
現職議員の地元で、なぜ支持が広がっていないのか。私自身の反省も踏まえて、検証してみよう。

地元活動をしてこなかったかというと、必ずしもそうではない。
昨年の3月から5月は、怒濤のような「カジノ住民投票署名」で、れいわはよく奮闘した。事務所スタッフもボランティアも、本当によくがんばったと思う。署名運動の主体となった住民活動家のなかでも、れいわの評価はずいぶん上がったのは間違いない。
ただ、署名運動が終わるやいなや7月の参議院選に向けて走りだすことを余儀なくされ、運動を成果として集約することが十分にできなかった憾みはある。

参院選挙は、残念な結果ではあったが、れいわの知名度を上げるためには役に立ったはずだ。
だが、数字を見ると愕然とする。
2019年参院選の時と比べて、大阪府内の比例票の得票率は全く同じ、数にしてもわずか8%しか増えていない。
参政党に奪われた分を、新たに獲得したとも言えるが、大局的な党の支持というのは、そう簡単に激変するものではないのである。

下記のグラフは、自民党と社会党ができた55年体制以降の、衆議院の議員数の推移だ。ウィキペディアの表をすこし分かりやすく再構成した。

20230607-2.jpg

これを見てわかるのは、各党の議員数が大きく変わるのは、合併や分裂のときだけで、それ以外にはおよそ20%以内の変動に収まっているということだ。
唯一の例外は2009年の政権交代と、それが崩壊した2012年のときだけである。

つまり、有権者は「ちゃんと見て選んでいる」ということだ。
党、Party というのは読んで字のごとく、あるPart(部分)の代表ということ。得票≒議員数その党が言っていることに共感し期待してくれる人の数にほぼ比例している。
社会情勢や党の努力によってもちろん変動するけれども、その幅はほぼ20%以内。一気に何倍にもなるということはない。

唯一例外の2009年はリーマンショックを背景に、民主党が約3倍に、自民党が約1/3になったけれども、その過剰な期待を裏切った民主党は、3年後にわずか1/5以下に激減する。
そして、約2000万人の有権者が、政治に絶望し、選挙に行かなくなってしまった。無関心なのではなく、棄権しているのであり、良い悪いは別にして、これもまた選択なのだ。

特定の政党を大好きな人は、得票が伸びないのは「まだ知られていないからだ」と考えがちだが、実際は必ずしもそうではない。今訴えている内容を支持してくれる人は、これくらいしかいないのである。支持を広げるためには、何を訴えるのか、を考え直さなくてはならない。

こうして見てみると、2022年の参院選で、得票数を8%伸ばしたというのは、結構すごいことだったということがわかる。

問題は、参院選後である。
署名運動と参院選の成果を、組織化という果実に実らせる段階を、どう闘ったか。

れいわは、地方選で組織作りをする、という方針を立てた。
これ自体は、間違いでは無かったと思う。しかし、なかなか思うようには進まなかった。

とくに大阪5区においては、れいわが大阪市議選に公認した予定候補が二人そろって反旗を翻すという事態になった。
詳細は省くが、公認時点であきらかだったことを蒸し返して、恨みつらみをぶちまけて「反れいわ」の尖兵となってしまった。ただ単に、個人的な事情を優先するために責任をれいわに押しつけたのか、もともと候補を引き受けておいて、やり直しがきかない時点で卓袱台返しを狙っていたのか。。。。

とにかく、この事態のおかげで、れいわは最重点区である淀川区と東淀川区で地方選の候補を立てることができなかった。地方選を唯一の方針としていた中では、ほとんど流血の損失といえる。
(あの2人たちは、その流血を見てほくそ笑んでいるのだろうが)

いずれにしても、今言えることは以下のことだ。
まず、一つの政党が独自で伸ばせるのはせいぜい20%程度である。
そして、大阪5区においては独自勢力をつくるための大きな機会損失があった。

ここから導かれるのは、野党共闘しかないだろう、ということだ。

れいわは極端に野党共闘を嫌う。独自性を失って、自死に等しいと思っているのだろう。
しかし、共闘というのは、同じ組織になることでも、ずっと一緒になることでもない。
特定の目的のために、一時的に手を結ぶ契約にすぎない。

それに、れいわはもっと自信を持っていい。
自分たちこそが主流派なんだと胸をはって、共闘の軸になればいいのだ。
共闘したら自分たちが霞むなどと、情けないことは言わないでほしい。

共産党は比例順位をつけるので、惜敗率にかかわらずその順位通りに比例復活する。
つまり、宮本は選挙区に出る必要もなければ、どんな数字でも上がれるときは上がれるのである。

それでもなぜ選挙区に出るかというと、地方選のためだ。
組織の活性化を図って、地方選の票を固めるために、国政に候補者を立てるのである。
2015年までは、そのために全選挙区に候補を立ててきた。

先方の要望が分かれば、交渉の余地はある。
今やるべきは、れいわ大石を大阪5区の野党統一候補にすることだ。

と、私は思うのだけれども、賛同は少なそうだなあ・・・

2023-06-02(Fri)

韓ドラの隆盛と明るくない日本の未来

韓ドラがすごく面白い。

最初は、家族が見ていたラブコメを横から眺めていたのだけれども、なんだか日本のドラマと違うなあ、と思っているうちにどんどん気になりはじめた。
ドラマの要素をいくつか上げるならば、脚本、演出、役者、が3大要素だろう。
そのどれもが、日本のドラマとは大違いなのだ。

そもそも日本のドラマも家族に付き合ってみたくらいで、自分から進んでみたことはほとんど無いけれども、受動的とは言え結構な数のドラマは目にしてきた。
韓ドラの多くはそれらとは、まったく別物。

まず、脚本やストーリー。
何が違うと言って、長さが違う。
日本のドラマは実質40分くらいが10回なので、計400分。
対して韓ドラは、実質60分が(最近多いのは)16回で、計960分。2.4倍である。
ちなみにNHKの朝ドラが実質14分x130回で1820分。

朝ドラの半分もあるものを、わずか2ヶ月で集中して放送される。(韓国は週2放送なので)
しかも、途中にコマーシャルが入らない。(最近は入るケースもあるらしいけど)
めっちゃ濃厚に、小説1冊分くらいの物語が詰め込まれている。

伝統的ラブコメのストーリーは、努力する女性と財閥の御曹司のありえないロマンスみたいな、なんとなくお決まりのパターンがあったのだけれども、最近の作品は、もっと現実的になっている。
多くの作品には、格差社会への問題意識が通奏低音のように埋め込まれている。それがメインテーマではなくても、とってつけた逸話ではなくて、全体を通したサブテーマになっていることが多いように感じる。
もはやシンデレラストーリーが共感されないほどに、韓国での格差は厳しいのだろうと思う。

財閥と庶民の格差だけでなく、正社員と契約社員の格差やインターンの過酷さなど多くの作品で描かれている。
有名どころでは「未生(ミセン)」という作品がある。



もっと極端な格差を正面から描いたのが、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん」
題名からは想像できない物語だった。



どちらも、ドラマなので悲惨な結末ではないけれども、実際にどれほど大変なのか実感する。
韓国の自殺率は10万人あたり25人前後でOECDで最悪。10代~30代が増えているという。


ちょっと韓ドラからは外れるが、こちらのグラフを見ていただきたい

20230602-1.png
(Wikipediaより クリックすると拡大)

韓国の自殺者数が1998年頃から急増しているのがわかる。
1998年に何があったか。アジア通貨危機と、IMFによる支援(支配)である。
(正確には1997年末から)
IMFによる極端な新自由主義と緊縮財政を強いられた。
記事を引用する。


 韓国に乗りこんできたIMFは構造改革と称し、金融、貿易の保護政策をすべて撤廃させました。韓国人は経済の国家主権を失ったと嘆き、日本による植民地化に続く「第2の国恥」と呼んだのです。
 韓国人が失ったのは面子だけではありませんでした。IMFが実施した厳しい緊縮政策で、多くの人が職を失いました。
 経済が回復した後も、企業は非正規職の比率を高めたうえ、正規職に対しても「名誉退職」の名の下、40歳代定年制を導入するなど、厳しい姿勢を維持しました。
 IMF危機を境に韓国経済の国際競争力は格段に高まり、サムスン電子や現代自動車など世界に冠たる企業が登場しました。しかし同時に雇用の不安定、貧富格差など現在、韓国が抱える問題も生んだのです。
(引用以上)

ここから25年を経て、確かに韓国は一人あたりGDPで日本を抜き、大きく経済成長を果たした。
その裏側で、極めて厳しい社会格差が広がっていった。

韓ドラが面白いのは、その社会状況と無縁ではない。
というか、裏表の関係にあると言える。

あまりにも厳しい経済状況のなかで、世界で売れる商品を作る、という執念、根性、情念でもって韓国のエンタメは作られている。ジャニーズと吉本でお茶を濁しておけば、とりあえず日本人は見てくれるという、ふやけた日本の芸能界とは、根本が違う。

K-POPにしても、歌がうまい。数年間の徹底した訓練を勝ち抜かないと、デビューはできないからだ。
日本の自称「アーチスト」のような、音程さえ合わないくせに、格好つけて謳ってる連中は、そもそもデビューさえできない。
もっとも、あまりに厳しいので、K-POPアイドルの自殺者が絶えないのだが。


韓ドラの話に戻ろう。

韓ドラの演出で特徴的なのが、美しい映像と、あるあるの作法である。
ストーリーもさることながら、画面に見入ってしまうのは、どの場面をとっても切り取って壁に貼っておきたいような美しい映像が続いているからだ。
CGで作っている夜景ばかりでなく、場末の路地の場面でも、うまくぼかして色を調整し、光を使って美しい映像にしてしまう。

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(愛と、利と より)

なにやら、使ってるカメラが映画用で、日本のドラマとは別格なのだとか。
だが、たぶん原因はそれだけではない。以下は映画の話だが、ドラマにも同じ流れはあるのでなないだろうか。


こうした変化は、映画業界の労働組合が、スタッフの賃金上昇や保険加入などを要求し続けた結果だと思う。10年ほど前、最低賃金が厳守されるようになったり、時給計算してギャラを払うという方法が登場したりと、試行錯誤を繰り返していった。
大きく変わったのは15年。映画会社は「標準勤労契約書」を交わすことを義務づけられた。製作費をしっかりかけることで視覚的にも見栄えのある映像となり、ヒットにつながってきた。そのためさらに製作費をかけて、さらに見栄えのする映画を製作する流れは加速している。
(略)
疲れきった肉体状態で耐えるのが当たり前だった撮影現場が、今では人間らしい生活を維持しながら撮影を楽しめる環境になり、スタッフの笑顔が格段に増えた。肉体面と精神面の余裕が仕事の効率と柔軟なアイデアにつながり、クオリティー面にもいい影響を与えていると言える。
(引用以上)


韓ドラといえば。というような「あるある」が多い。
それを詰め込んだチャミスル(韓国の緑ボトルの焼酎)のコマーシャルがこちら。



これ以外にも、黒い帽子をかぶったら正体はばれない、とか、河原や橋の上で車で落ち合ったら絶対に敵に見つからない、とか、いろんな「作法」がある。
これらは、「これをやったらこういう意味」というお約束で、細かい話は省くという演出だ。
ただし、メインストリームを追っていくなかで、枝葉まで細かく描いてしまうと分かりにくくなるためだろう。
吉本新喜劇のように一番大事なギャグをお約束でお客さんに笑ってもらうのは論外だが、韓ドラの作法は、慣れてしまえばたしかに集中力が切られることがない。


役者の演技はどうか。
ド素人があれこれ言うのも失礼かも知れないが、韓国の役者には、なにか吹っ切れたものを感じる。
昨年話題になった「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」では、パク・ウンビンが自閉スペクトラム症を持つ天才新人弁護士を演じた。
解釈や演じ方によっては障がい者差別になりかねない難しい役を、かなり悩みながら演じたそうだが、映像を見ると吹っ切れている。



この人の演技を見たくて、1月に入院したときに何本かまとめて見てみたけど、ほんとに何にでもなれるのでは、と感じてしまった。
パク・ウンビンさんに限らず、韓ドラの役者さんは、格好つけずに役にのめり込んでいるように感じる。その辺は、制作側の情念と共通しているのかも知れない。

演技だけでなく、言葉の影響も大きいのだろう。
韓国語は日本語に比べると、極端に短い。
わたし が ネ だし、おなかがすいた が ペゴパヨ だ。
しかも、一気にしゃべるので、同じ意味を半分くらいの時間でしゃべっている。
その分、イントネーションが大事で、機関銃のようでありながら、歌のような抑揚があり、意味はほとんど分からないけれども、聞いていて気持ちが良い。

聞くと言えば、なんといってもOSTだ。
Original Sound Track の略で、挿入歌なのだけれども、もはやBGMの域ではなく、台詞や画面と一体のもうひとつの要素になっている。作品によっては、あたかもミュージカルのように歌詞が語りの役を果たしていることもある。

SONDIA とか イ・スヒョンなど、抜群に歌もうまい。



日本は曲を売るためにドラマとタイアップすることが多いが、韓ドラのOSTはほとんどドラマのために作られてオリジナルだし、OSTがひとつの音楽のジャンルになっているそうだ。
歌については、また気がむいたら、書いてみたい。


先ほどの自殺者数のグラフで、日本は10万人あたり20人未満となっているのだが、実はこれは誤魔化しだという見方が強い。


警察庁の「死体取扱数等の推移」を見ると、「変死体」の数は10年前には1万2747体だったが、一昨年は2万211体と約8000体増えている。比例するように自殺者数はこの10年間で8000人減っているのだ。
(略)
「ひと昔前は自殺に対する考え方も緩く、ある程度は自殺として処理していました。ただ、最近は、遺書などの具体的な証拠がなければ、自殺とは認めず、変死体として処理するようになったそうです。すると、見かけ上の自殺者数が減るだけでなく、司法解剖を行うので予算を要求しやすくなる。一石二鳥なわけです。このようなトリックは『統計の魔術』と呼ばれ、考え出した人が警察内部で出世していく」
(引用以上)

 だとすると、日本の自殺率は韓国を抜いてだんとつ1位だ。
緊縮財政に苦しめられながら、経済成長もできず、本気のもの作りもできない日本。
韓ドラの重苦しい通奏低音は、私たち自身の足下にこそ流れている。


2023-05-30(Tue)

6月解散、7月総選挙はあるか

■ 岸田文雄の行動原理

岸田文雄という人を観察していると、アホなふりをしてかなりデキルヤツだという気がする。
デキルというのは、もちろん良い意味ではなく、手強いということ。

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かつて、安倍晋三の「禅譲」を信じて服従したあげくに裏切られたことへの、恨みと反省が彼の行動の原動力になっている、と私は見ている。
国民の生活とか安全は度外視で、とにかく安倍派を抑えて権力基盤を固めることしか頭にない。
そのためなら、ハト派とかタカ派とかどうでもよくて、武器になる物はなんでも手にしようとしている。

何か一つの方向に一辺倒になることはなく、交渉のエサを手にしたら、どっちにでも転べるように周到に準備している。
安倍派は外務省や財務省を蔑ろにして、経産省や警察庁を頼りにした。自民党の旧来の支持基盤も大事にせず、統一教会、日本会議、創価学会などの宗教票に寄りかかった。

ところが、岸田は八方美人だ。
原発使い放題で経産省にすり寄り、防衛費倍増で防衛省にすり寄り、増税で財務省にすり寄り、権力機構にはあまねくエサをまいて飼い慣らそうとしている。
ちなみに警察庁は安倍と岸田の襲撃事件で、エサを与えずとも官邸にはまったく頭が上がらないはずだ。
(私は安倍暗殺の黒幕は岸田ではないかと、ニュースを聞いた瞬間に思ったが、今でも疑っている)

対外政策でもそうだ。
明確な対米従属にみえながら、この間お土産はまだ画餅の段階の防衛費倍増くらいのもので、保有している米国債も岸田政権になってからジリジリと減らしている。
直接の原因は円安対策だろうけど、中国がどんどん米国債の保有を減らして言っている近年、日本が買い支えないとドルは本当に崩壊してしまう。

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対ロシアも、岸田は完全に二枚舌である。
表向きはゼレンスキーをG7に招待して、NATOの東京事務所など作らせ、ロシアと対決しているかに見せつつ、実際はロシア経済分野協力担当大臣は頑として廃止せず、サハリン2などの投資も続けている。


直近ではこんなニュースも


こうしてみてくると、ある人物に似ているなあ、と感じる。
ドナルド・トランプである。

イデオロギーではなく、ディールで動く。
すべてはそのために準備される。
ただ、トランプの場合は「アメリカファースト」のためのディールだったが、岸田の場合はもっと小さくて、「自分の権力基盤」のためというのが、あまりにも情けない。

岸田文雄の行動原理をこのように見てみると、今起きていることがだいたい腑に落ちるのである。

■ 解散はあるか

では、そんな岸田は解散総選挙で、一気に権力基盤を固めようとしているのだろうか。
私の見立てでは、まだやらない、と思う。

<理由1>
これだけ準備した武器を、使う前に勝負に出るわけがない。
対外的には目立つ成果を上げ、対内的には安倍派の首根っこを確実に押さえる。
この二つをやりきる前に、解散総選挙という水物の勝負に出たのでは、何のためにこれまで準備したのか分からない

<理由2>
東京での公明党との角逐である。
報道では「大阪で維新に議席を奪われる公明が、東京28区での擁立をゴリ押しした」ことがことの発端とか言われているが、実際は萩生田のゴリ押しが原因のようだ。


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官邸が本気で調整する気ならば、できないことはなかっただろう。なにせ、学会票を失うかどうかの瀬戸際なのだから。
しかし、あえて萩生田の暴走を放置し、責任を全部押しつけて大騒ぎにしてしまったのは、(宏池会の)茂木幹事長である。
当然、岸田の意を受けてのことだろう。

これで東京で自公が分裂すると、東京だけでも自民の現職が7人ほど落選するかもと言われている。


岸田はこうやって安倍派のリーダー候補である萩生田の権力を削り取っている。
ただし、本当に学会票無しで、大負けしては自分自身の責任も問われるので、こんな状態で解散総選挙することはまずない。
党内で萩生田への批判が行き渡ってから、公明とは何らかの落とし所を見付けるだろう。

公明も、実は本気で自民とは喧嘩できない事情がある。


後藤組は、本山の墓石、墓苑の土地問題におけるいざこざを収めるボディーガードの役割を果たしていたのです。しかし、後藤組と本山、そして創価学会の間が近すぎたために問題が起こります。それを収めるために、公明党の都議会議員を異例に長く務めた藤井富雄と、後藤組組長の後藤忠政が密会した現場を映したビデオテープがあるというのです。これを嗅ぎつけたのは、自民党の亀井静香だといわれています。そして、亀井、野中の間で密会ビデオの存在が明らかになってから、公明党は一も二もなく自民党の軍門に下ったというわけです。
(引用以上)

いくら30年前のことでも、武闘派後藤組との密会映像は、ただでさえ退潮傾向の公明党・創価学会には大打撃となる。
持ちつ持たれつとは言いながら、根っこの部分は公明党が屈服しているのだ。
である以上、こんな便利な道具を、ディーラー岸田が手放すことはないだろう。

解散はないと考える<理由3>
息子をしばらく更迭しなかった。
安倍派との闘いにおいて、岸田の味方は限られているはずだ。官邸の中にも、安倍派の耳目は密に埋め込まれている。
その中で、身内の存在は貴重だったからこそ、少々アホでも側に置いていたのだろうが、もし、直近に解散を考えているのであれば、あのようなマイナス要素は速攻でぶった切ったはずだ。

時間的に余裕があるから、しばらく待てば沈静化すると高をくくっていたのだろう。
(まあ、他のことに比べたら、たしかに大した話ではないし)
土日を挟んで、急に更迭となったのは、たぶん翔太郎のほうが耐えられなくなって「パパ辞めさせて」と泣きついたのではないだろうか。

と思っていたら、やっぱりそうみたいだ。

「公邸で忘年会」の岸田翔太郎秘書官、心が折れて自ら「もう辞める!」母も“悪ノリ撮影”かばい切れず
2023年5月29日 FLASH

そんなわけで、私は6月会期末解散→7月総選挙は、たぶんない と見ている。
(外れたらゴメン)

とは言え、ここ大阪では維新が公明を切って、これまで自民も公明も候補を出さずに公明だけが立候補し当選してきた4つの選挙区にも、候補者を立てると言っている。
どこまで本気なのかまだ分からないが、私が今これを書いている東淀川区(大阪5区)もその一つであり、関心を持たないわけに行かないので、次回は大阪の状況を観察してみたい。


2023-04-28(Fri)

「権力」 この悩ましきもの

一昨日のながーい記事で、私はこのように書いた。(http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-1886.html

政治理念は理想を掲げながらも、実際の政策は絵に描いた餅を眺めるのではなく、現実的に確実によくしていくことを考えるべきだ。だから、どんぐりの背比べで良いから、政権交代が必要だ。

要するに、権力をとって政策を実現しないと、絵に描いた餅は食えないよ、ということだ。
権力を取れ。Power to the people! である

これはあまりにも自明なことなので、決して間違っているとは思わない。
しかし、同時に、権力の魔力とでも言うべきものにも目を向けなければならないとは思う。
今日は、ちょっとそのへんをメモしておきたい。

■秦の始皇帝と趙高

ウィキペディアによれば、趙高は始皇帝の寵臣。勤勉で始皇帝にその才能を寵愛され、始皇帝の身辺の雑務を全てこなしたそうだ。
始皇帝から見ればなくてはならない部下だったけれども、下々から見れば権力を一手に握って恐怖政治をおこなった悪者でしかない。始皇帝の没後は、遺書を偽造して自分が面倒を見ていた三男の胡亥を皇帝に据え、宰相を暗殺していよいよ独裁を強めていく。

馬鹿という言葉の語源は、趙高のこんなエピソードだという説がある。
跡継ぎに据えた胡亥を殺して自分が皇帝になろうと考えた趙高は、胡亥皇帝の前に「すばらしい馬を献上します」といって鹿を献上した。胡亥は「これは鹿だろう」と回りの臣下に言ったところ、臣下は「黙るもの」「馬です」「鹿です」と答える3つのグループに分かれた。趙高は、「鹿です」と答えた臣下は、自分のクーデターに従わないだろうと考え、えん罪をきせて殺害してしまった。
という話。

鹿を馬と言い張る趙高がバカなのか、馬ですと趙高にへつらう佞臣がバカなのか、意地をはって鹿だと言って命をおとした臣下がバカなのか、なかなか難しいけれども、権力には大なり小なり、そういう怖さがある。

つまり、権力を握ってしまうと、本人の望むと望まざるとに関わらず、密に群がるアリのようにいろいろ寄ってくるのである。それは仕えることで支配しようとする趙高型のアリもいれば、馬ですとへつらうアリもいる。
そして、上空から見ているだけではその実像は見えないのである。

■小説フランス革命

佐藤賢一氏の「小説フランス革命」を読んだのは、もう数年前になる。文庫だと全18巻の大部であるが、面白すぎて一気に読んだ記憶がある。
小説なのでもちろん脚色があるけれども、全巻を通して際立つのは、ロベスピエールの繊細さと真面目さだ。

ミラボーやダントンなど、豪快な同志と成しとげる革命の活劇は、まさに血湧き肉躍るドラマである。いや、史実であるだけに、ドラマよりも面白い。
しかし、1つの革命が成ると,その後には対立と粛正が待っている。主役が脇役に押しやられ、反革命の烙印を押され、粛正されていく。

それは、決して個人的な残虐さや趙高的な権力欲ではなく、革命に対する非妥協の真面目さが、かつての同志を次々と粛正する悲劇へとロベスピエールたちを押しやっていく。
私がこの小説で一番感じたのは 「真面目は怖い」ということだ。

真面目と権力が結合すると、思いもよらない悲劇が起きる。かもしれない。

■れいわ新選組

れいわ新選組のような、権力としてはまだあまりにも微小な存在に、あれこれ心配する必要はないのかもしれない。
しかしそれでも、国会議員というものは、確実に権力ではある。

その重責を真面目に背負うからこそ、気をつけなければならないこともあるはずだ。
一刻も早くこの世の地獄をなんとかしたい、そう真面目に焦るからこそ、見えなくなるものもあるのではないか。
寄ってくるアリさんたちの実像まで、目が届かないこともあるだろう。
それはたしかに、権力を背負っている当人達の責任ではないかもしれない。

それでもなお、私は「もっとエエ加減にやってほしい」と願ってしまう。
そして、周囲のアリさんのもっと先にいる人々に、しっかりと目を配ってほしい。
いつのまにか特権意識に馴らされていないか、何かがあるたびに振り返ってもらいたい。
国会が忙しすぎてそれができないのなら、国会など少々サボってもいいんちゃう とさえ思う。

これから、本気で政権交代を狙いに行けば、もっともっと大きな権力をになっていかなくてはならなくなる。
政権奪取のアカツキには、国家権力をまるごと操らなくてはならない。
今から限界ギリギリでは、本番でどうなってしまうだろう。

「山本太郎を疑え」と、かつて太郎さんは街宣のたびによく言っていた。最近はあまり聞かなくなってしまったけれども、その姿勢を忘れずにいてほしい。

「権力」
どうしてもほしいけれども、できれば触りたくない、けど触らなければならない、この悩ましきもの。

2023-04-26(Wed)

議員事務所スタッフを退職するので、ちょっと一息ついて振り返ってみる

久々のブログ記事になる。
昨年の1月から7月までの短期間ではあったけれども、れいわ新選組の議員秘書を務めることになり、退任後も非常勤スタッフとして一定の責任を負ってきたが、それも今月まで。
 
一区切りついたところで、少し大風呂敷を広げ、これまでの来し方を眺め、これからの行く末を考えてみたい。
 
■どうせ振り返るなら戦後史から

55年体制という言葉がある。1と1/2党体制とも言う。GHQが日本を直接占領していた時代が終わった3年後、1955年に左右に分裂していた社会党が統一され、保守政党である日本民主党と自由党も合同し、社会党が1/3、自民党が2/3の国会の議席をとっていた時代のことである。

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もろもろ変遷はあれど、1955年から1993年まで実に38年間も続いた。
この時代、一貫して自民党が政権をとり、そのかわり社会党が1/3を維持することで改憲を阻止し、一定の労働者の権利を確保していた。
よく言えば、安定した時代。悪く言えば、民主主義不在の時代だった。
 
自民党には大きな利権、社会党には小さな利権。不平等はあれど、それなりに国民に利益が循環していたと言う意味では、たしかに安定した時代だった。労働運動も活発に存在していたし、2度の安保闘争はじめ、国民的な運動もあった。日本人も、今では想像もできないくらい「もの言う民」だった。
 
その一方で、CIAの巨額資金で育成された自民党が独裁的に政権を握り、共産党がレッドパージで弾圧される中でGHQに後押しされた社会党が決して政権交代しない万年野党を務める、そんな「出来レース」の体制でもあった。
(CIA資金は陰謀論ではなく米国公文書で証明されている。参考→ https://www.fsight.jp/articles/-/46389
 
1950~60年代は、中国革命からわずか10年前後であり、共産主義革命というものが、左右を問わずあらゆる層にとってリアリティのあるものだった。日本の直接統治を終わらせた米国は、その後もアジアにおける反共の防波堤として日本を属国として支配下におき続けた。
55年体制は、まさにその支配体制そのものだったのである。
 
そんな政治=出来レースの腐臭を嗅ぎ取った国民は、世界でも類例のないほど政治に無関心になっていく。
それこそが、支配者の狙いであることに気付かずに。
 
国民がいかに政治に失望していたか、という象徴が、あの70年安保闘争の渦中で行われた1969年の総選挙において、社会党が歴史的な大敗をを喫したという事実だ。 
もはや政治に希望を持てない。何も期待できない。現在に続くその空気は、55年体制において意図的に醸成されたものだったのである。
 
■小沢一郎の登場
 
そのような時代に、政界に現れたのが小沢一郎だ。
まさに1969年の総選挙において27歳で初当選。20年後の1989年には47歳にして自民党幹事長に就任。55年体制の後半の自民党におけるエリートである。 
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自民党の裏も表も知り尽くした小沢だったが、ここからが普通の政治家と違っていた。普通の政治家は「いかにして自民党の利権を拡大し守っていくか」に腐心するのだが、小沢は「55年体制では日本に民主主義は生まれない」と喝破し、55年体制という安定的利権体制を壊しはじめる。
小沢一郎は1993年に新生党を作って自民党を分裂させ、非自民の細川連立政権を誕生させた。これが55年体制の終わりと言われているが、むしろ終わりの始まりと言うべきかもしれない。
 
小沢一郎の政治信条は、2大政党制であり、それを通じて日本に民主主義を根付かせるということだ。
ザックリ言うと、政治に理想を求めるのではなく、どんぐりの背比べでいいから2大政党が政権交代を競い合えば、少しはマシになるし、メチャクチャ酷いことはできない。そして、そういう政権選択ができれば、国民も政治に関心をもって、民主主義が根付く。という考え、だと私は理解している。
 
わたしも、ほぼ小沢流の考えに同意する。政治理念は理想を掲げながらも、実際の政策は絵に描いた餅を眺めるのではなく、現実的に確実によくしていくことを考えるべきだと思っている。
 
■非自民政権をつぶした社会党

しかし、事態は小沢の思うとおりには進まなかった。 ここからの非自民勢力の離合集散は、やたらとゴチャゴチャしていて、いちいち追いかける気がしない。
ただひとつ、はっきりしていることは、非自民政権から自民党が政権奪還する執念に協力したのが、なんと長年の55年体制のパートナーであった社会党だったということだ。
 
1994年、自民党に担がれた社会党の村山富市が首相になり、自社さ(自民党・社会党・さきがけ)連立政権が発足。 かつては非武装中立を唱えた社会党が、自衛隊合憲・日米安保堅持におおきく転向する。これが、社会党の事実上の終焉だった。 
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この後、共産党以外の非自民は大きく3つの勢力になっていく。

大量の離党者をだして、小政党になった社会党、あらため社民党。
社会党離党者を含めてもろもろの非自民勢力を集めた民主党。
小沢一郎を中心とした自由党。

小泉純一郎による旋風が吹き荒れていた2003年には、民主党と自由党が民由合併し、小沢一郎の指揮の下、2007年の参院選で大勝し、2009年の総選挙において、ついに政権交代を成し遂げた。

■民主党政権の崩壊と政治不信

これでいよいよ2大政党時代が始まるのか と思いきや、またしても小沢の思うようには事態は進まなかった。
政権選択を目前にして突如勃発した「西松事件」と「陸山会事件」で、小沢は集中砲火を浴び、同志であるはずの民主党幹部は後ろから石を投げつけた。

西松事件は完全なでっち上げであり、陸山会事件も不動産取引の日付がずれていただけの問題だったにもかかわらず、検察による弾圧、「極悪人小沢」の報道、さらには民主党幹部により政権運営から外されてしまう。(名ばかり幹事長で、政権にはタッチさせなかった)

小沢をはずした民主党政権は、辺野古基地建設、消費税増税、原発事故への無責任な対応や原発再稼働など、次々と公約を破り、国民の期待と信頼を踏みにじっていく。
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2大政党体制で民主主義を根付かせるどころか、期待を裏切る民主党の姿に、政治不信は極限まで深く大きくなってしまった。
国政選挙の投票率がわずか50%になってしまうのは、ここからである。
この当時の民主党幹部の大罪は許しがたい。
2012年にはついに野田佳彦が自民党と握って政権を放り出し、安倍長期政権が始まってしまう。

その推移は、皆さんの記憶にも新しいことと思う。

■小泉・竹中の新自由主義

55年体制を終わらせようとしたのは、実は小沢一郎だけではない。
動機はぜんぜん違うけれども、あと2つの流れがあった。
ひとつは、2001年に「自民党をぶっ壊す」と言って現れた小泉純一郎である。

90年代の政権交代劇が、元の木阿弥に戻ってしまったかに見えたところで、喜劇的に登場した小泉は、一見すると改革者の様に見え、大人気を博した。
しかし、その実体は、日本国内の利権を海外資本に格安で売り渡す新自由主義の手先だった。

普通の資本主義は、資本を投資して生産活動を行い、その過程で利益を吸い上げていく。いくら悪どい資本家でも、いくらかは地元に雇用や富を生み出す。
ところが、国内にある富を一方的に外資に売り渡す新自由主義は、ほとんどドロボウと同じで、ただただ貧困を生み出すだけだ。小泉政権下で、失業率は5%を超え、実質賃金は下降の一途をたどった。

その一方で、りそな銀行の実質国有化疑惑のような官製インサイダー取引などで、海外の金融資本は濡れ手に泡の莫大な利益を吸い上げていった。
大騒ぎした郵政民営化も、郵貯とかんぽの350兆円の資金を米国に献上するためのものだったことは、今や誰もが知るところとなっている。

小泉純一郎と竹中平蔵がやろうとしたことは、自民党が握っていた国内の利権を解体すると言う意味で55年体制の破壊ではあったが、その利権を国民に分配・環流させるのではなく、海外資本にひたすら献上したのである。
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あまりの悪政の収拾がつかず、小泉以降の自民党政権は安倍、福田、麻生と1年しか持たず、そこにリーマンショック(貪欲に食い過ぎた新自由主義が胃けいれんを起こして世界中に自分のゲロをまき散らしたあげく、自分たちだけ公金で治療を受けた)が直撃し、ついには政権交代へつながっていった。

■大阪維新という悪のトリックスター

55年体制を壊そうとしたもう一つの流れは、2010年に大阪に現れた維新である。橋下徹という派手なキャラクターを前面に出しながら、その実体は闇に包まれてきた。
大阪維新は資金の大半を政治資金パーティーで賄っている。(参考→ https://www.jcp-osaka.jp/osaka_now/9579
寄付と違ってパー券は誰が買ったかほぼ公表されないため、資金源がよく分からないのである。

維新の政治信条をひと言で表すなら 「俺たちにも利権をよこせ」である。
自民党の大きな利権と民主党の小さな利権に、大々的に手を突っ込んで、自分たちの利権を手に入れる。これに尽きる。
政策やスローガンは、そのために都合のいいものを選択しているにすぎない。

手始めが公務員イジメや労組の解体だった。そして、仕上がカジノである。彼らの狙っている利権は夢洲のIRカジノだけではない。シンボルとしての「合法」カジノをつくることで、大阪を裏カジノシティにすることが目的なのではないか。

カジノは賭け事をすることが本当の目的ではない。巨額のアンダーグランドマネーの出入り口なのである。日本だけでも20数兆円といわれるアングラマネー。そうした非合法資金を自由に「貯金」したり「引き出し」たりできる場所。
大阪を世界的な裏金融センターにする。それが維新の本当の狙いなのではないか。私はそう考えている。
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大阪においては、民主党は維新の最初の一撃で壊滅し、自民党もこの12年間で弱体化を余儀なくされてきた。維新による利権奪取の企みは着々と進行している。
もちろん、言うまでもなく、よりあくどく別の一部が横取りするのみならず、カジノのように新たにダーティーな利権を開発して独占するということをしているのであって、国民、府民の利益には全くなっていない。

大阪の成長を止めるなと叫びながら、何も生み出さずに利権だけを吸い取って、大阪の成長を止めているが大阪維新なのである。

■安倍と維新の悪魔合体

維新の実体は、このような利権よこせ運動なのだが、これに目をつけたのが安倍晋三と菅義偉だった。
2012年に政権奪還した安倍自民党は、民主党を壊滅させた維新に注目した。二度と政権を奪われないために、維新と連係することを模索した。
小うるさい自民党内の宏池会(いわゆる鳩派)よりも、明確に利権で動く維新のほうが操りやすいと考えた面もあるだろう。
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安倍派に厚遇された維新は、日本維新の会として国会議員を増やし、その政党助成金を大阪に還元することで、さらに大阪の利権構造を強固にしていく、という「好」循環を確立していく。

安倍政治は意外と複雑な要素があり、ひと言で言い表せないが、資本家の大きな利権=自民党のカウンターパートを、労働者の小さな利権=社会党・民主党から、ダーティーな利権開発=維新に置き換えようとした点で、安倍と維新が最終的に55年体制を葬ったと言える。
もちろん、改憲から独自核武装を念願としていたという点でも55年体制のような妥協の政治ではなかったとは言えるのだが。

■安倍晋三暗殺と岸田の野望

安倍晋三は退任後も院政を敷いて、菅、岸田をコントロールしてきたのだが、突如として安倍暗殺という大事件が起こった。
ニュースが流れたとき、私は応援演説にまわっていた議員に同行して、れいわ新選組の街宣車に乗っていた。たしかに暗殺には驚いたけれども、本当に驚いたのは、暗殺よりもその後の「反統一教会キャンペーン」だった。明らかに「安倍派排除」の意図が働いていたからだ。
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その後の、推移を見ても、萩生田や高市などの安倍派後継と見られる大物議員がやり玉に挙げられ、生き残りはしたものの、派手な動きは封じられている。
ここでは詳細は省くけれども、その他諸々の状況証拠から見て、岸田文雄は、「安倍派排除」を狙っている。というか、ほとんどそれしか頭にないのではないか。
安倍派を排除するために統一教会も攻撃し、安倍派を排除するために立憲を取り込もうとしてきた。

これに焦ったのが維新だ。
万が一岸田派と立憲が組んで、安倍派と維新が排除されると、カジノの認可が下りないかもしれない。それは維新にとっては死刑宣告に等しい。
だから今回の地方選に、維新は決死の覚悟で取り組んだ。候補者を倍増させ、共倒れの危険を顧みずに競い合わせた。そうやって実力を見せつけ、岸田に売り込んだ。

終わってみれば維新は大勝。なかでも、高市の奈良県と世耕の和歌山県で維新は自民に勝ち、安倍派の顔に泥を塗った。結果を見た岸田は、地方選前半戦の直後、速攻でカジノを認可した。
維新は安倍派から岸田に乗り換え、岸田は維新を使った安倍派を牽制しながら徐々に追い詰めていく。

■希望なきポスト55年体制

これが、現在の日本のおおまかな状況だと私は考えている。
55年体制は、1993年から30年かけて跡形もなく崩壊した。
万年野党でもいちおう労働者の党があり、不平等ながらも安定してそれなりに暮らせるという、55年体制の良い面は完全に雲散霧消した。
なのに、政権選択をできるようには、まったくなっていない。何のために55年体制を失ったのかわからない。

立憲があまりに情けないからだ、という批判はその通りだろう。かつて、政権を奪取した故に、えん罪で大弾圧された小沢一郎を、庇うどころか座敷牢に入れるがごとき扱いをした民主党幹部が、いまだに大幹部に座っているような立憲民主党に、なにごとかができるわけがない。私は1ミリも期待していない。
せめて、「国民のみなさま、公約を破って申し訳ありませんでした。消費税は5%に戻します」とでも頭を下げるのならばともかく、枝野に至っては「消費税減税なんて二度と言わない」とふんぞり返っている。

このどうにもならない状況を打開し、どうしようもない立憲民主党を後ろからケツを蹴飛ばすために生まれたのが「れいわ新選組」である。私は2019年の初めごろ、当時まだ自由党の共同代表だった山本太郎氏から、そのような主旨で党を作るという話を聞いた。
正直言って、「無謀だ」と思った。
小沢一郎と山本太郎のダブルネームでも、全国で100万票なのに、1人では議席を失うのではと心配した。

しかし、蓋を開けてみればあの「れいわフィーバー」で、228万超(4.55%)の得票となった。それでも太郎さんの読みには届かず、本人は落選となってしまった。
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■れいわ新選組

あれから4年。2021年総選挙にて約225万(3.86%)、2022年参議院選挙にて約232万(4.37%)。
2021年の衆院選は山本太郎と書けるのは東京都民だけだったので、やや得票率が下がっているのは仕方ないとしても、2019年よりも2022年の方が得票率が下がっているのは、なぜなのか。
党名もそれなりに浸透し、日曜討論やら国会中継でも目立つ発言をしてきたのに、なぜ得票率が伸びるどころか下がってしまったのか。

2019年のフィーバーでは、数値的には限定的でも、明らかに新しい層、これまで政治に期待していなかった層にれいわ新選組の言葉が届いた。私は自由党かられいわ新選組の変化を当事者として目の当たりにしたので、それは皮膚感覚でも分かる。
(こちらの記事では、詳細に分析されている → https://note.com/miraisyakai/n/n63072e1a61e8

しかしその後、知名度に比例して期待度は上がっていかなかった。
強烈な喪失感、虚無感を抱く人々に希望を感じさせた一方で、現実の政治過程で力になるほどの支持は集まってこない。
その点を、れいわ新選組は真剣に総括するべきではないか。

私は、その最大のキーワードは「政権交代」だと思っている。
かつて、山本太郎は「政権交代」という言葉を連発していた。後援会(太郎Sネットワーク)の会員への手紙でも「政権交代しようぜ」みたいなことが書かれていた。

しかし、今れいわ新選組のHPを見ても、政権交代の文字はない。めったに耳にすることもない。
いくら崇高に理想を掲げても、政権をとらなければ実現できない。その自明のことを、有権者は骨身に染みて分かっているのに。
政権交代の戦略とリアリティがない。それが、れいわ新選組に決定的に欠けているものだ、と私は感じている。

■政権交代!

今のれいわ新選組を見ていると、単独で政権とる気なのか??と思える時がある。あまりにも、他党との連携などに無関心なことが多いからだ。れいわだけで固まってしまう傾向が強いように見える。
それならそれで、その戦略を示し、なんだかできそうだ、と思わせてくれればいいのだが、それもない。

小沢一郎は、2003年の民由合併から2007年の参議院選で政権交代のリアリティを見せることで党代表になり、ついに本当に政権交代を成し遂げた。
民由合併前の自由党は、500万超の小沢支持票でもっていた個人商店であり、今のれいわ新選組とそれほど変わらない。小沢一郎にできたことが、山本太郎にできないということはない。というか、その戦略のリアリティの演出をこそ、小沢氏に教えを請うてもらいたいと切に願う。
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(太郎さんが勝手に作って小沢さんがおおウケしたポスター)

「あれ、ほんとにできそうだぞ」と思わせられるかどうか、そこにれいわ新選組の行く末がかかっていると思う。

■困難でも取り組まなければならないこと

もうひとつ、れいわ新選組に欠けているのが「組織作り」だ。
オーナーとかなんとかいう制度をつくってようだが、すべて党本部 というか山本太郎と会員の1対多の関係になっているだけで、辛口で言わせてもらえばファンクラブの域を脱していない。
今回の地方選が組織作りの始まりだ、という話もあったけれども、選挙ボランティアと、支部や市区委員会的な組織作りは別物だ。きっかけにはなるけれども、ここを始まりとして、党が一定の責任と支援をしながら地方組織を意識的に作っていかなければ、結局ファンクラブに戻ってしまうだろう。

今回当選したところでは、議員を中心に何かしらの継続的なものはできるだろうけれども、関西のように2人しか当選できなかったエリアでは、落選したところでも組織作りを始めなければ、今回の挑戦がゼロに帰してしまう。

サポーター組織と支部組織は違う。サポーターは議員や候補者を中心にしてお手伝いする人の集まりだが、支部組織は、ひとり一人が活動主体だ。
オカシオ=コルテスだって、1人のスターとサポーターという関係ではなく、ジャスティス・デモクラッツやブランニュー・コングレスという市民団体組織が主体的に活動して生み出したのだ。(参考→ https://www.netflix.com/jp/title/81080637
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私が勤めていた議員事務所でも、カジノ署名運動などで主体的な動きの萌芽はあり、それが参議院選、地方選につながっていったけれども、そういう事例かなり限定的だった。大きくは、まだまだ国会議員の活動を支援する集まりにとどまっているように思う。



いやはや、久しぶりに書いたので、ほんとに長くなってしまった。
もはやここまで読み進めてくれている人がいるのか、わからないので、そろそろ終わりにしよう。
5月からは、一歩引いたところから、それでもしつこく諦めずに、見て、聞いて、書いて、行動していこうと思う。
 

2023-01-01(Sun)

新年のごあいさつ

2023年賀状
2022-11-04(Fri)

憲法集会で真っ先にロシア非難を叫ぶことへの強烈な違和感

 昨日11月3日の憲法集会にふらっと行ってきた。大阪は扇町公園で、約3000人の参加。コロナになる前は最大で2万人が集まったこともあるから、かなり少なく感じたけれども、それでも最近では大規模な方だ。

 1時間ほどで集会は終わり、二手に分かれてデモ。おかしなもので、二手の分け方を見ると、共産党系と旧社会党系になっている。たった3000人なのだから分ける必要もないだろうに。
 私は体調を考えてデモは参加しなかったのだが、会場から出て行くところだけ見送って写真など撮っていた。宣伝カーが先頭になって、シュプレヒコールを始めた。近頃は、短いコールを繰り返すのが流行だが、この日はオールドタイプの ○○は○○をやめろ 式のシュプレヒコール。まあ、それも別にいい。

 しかし、そのシュプレヒコールが始まった瞬間に、私は強烈な違和感を感じた。一発目のシュプレヒコールが 「ロシアは侵略をやめろー」だったからだ。
 集会が ロシア糾弾集会だとか、発言内容でロシア非難がバンバン出ていたのならばわからなくはない。あまりしっかり聞いていなかったけれども、話の中には出ていたとしても、全体としてそんな内容ではなかった。発言のほとんどは岸田政権への非難であり、大石あきこ議員のアピール(代読)では、自衛隊がウクライナにドローンを提供していることを実質的な参戦だと断罪していた。

 そんな集会の後のデモで、一発目のシュプレヒコールが「ロシアは侵略をやめろ」なのは、非常に恣意的であり、歪んだ意図を感じた。
 まず、日本で行われる憲法集会なのだから、日本の責任を明確にすべきであり、日本政府や日本の政治について語るべきだろう。その上で、ロシアの侵略を非難するのは当然としても、ウクライナや背後のアメリカ、NATO,日本に対して無非難なのは間違いだ。

 赤十字国際委員会の、この記事を見てみてほしい

すべての紛争当事者は、紛争下に置かれている住民に対して、日々の生活を営むのに十分な量の飲み水や生活必需品を継続的に提供しなければなりません。
しかしながら、紛争が7年目に突入したウクライナ東部ドネツク州のドンバス地方では、水を入手することが容易ではありません。
水インフラが脆弱で老朽化し、維持管理が困難であることに加えて、戦闘の激化により断水が発生しやすく、また作業員が給水設備に近づけなくなっているからです。
(引用以上)

「ロシアの侵略で、水もないのか。ロシアはひどい。」と思われるだろうか。
記事の日付をよく見てもらいたい。2021年4月28日、ロシア侵略の10ヶ月も前である。

 2014年から8年間にわたって、ドンバス地方の独立を主張する勢力に対し、ウクライナ軍が軍事攻撃を続けてきたのだ。もちろん、ドンバスの独立が正しいのかどうかは、他国民である我々が軽々に評論すべきではない。それは世界中にある独立運動についても同様だ。
 しかし確かなことは、軍事力を持って独立を求める勢力があり、それに対してウクライナ軍が軍事的に制圧しようとして、内戦が続いていたといういことだ。その結果、水すら手に入らないほど、ドンバス地方は被害を受けてきたのだ。

 おそらく、日本の報道を見ている大多数の人たちは、今年の2月にロシアがドンバスに侵略して、ドンバスをボロボロに破壊したと思っているだろう。そして、「ロシアは侵略をやめろ」と叫んでいる。
 しかし、2度にわたる停戦合意すら守らず、戦争を続けたのは、少なくとも一方的に独立派ではない。もちろんロシア軍そのものは参戦していない。(今の米軍やNATOと同じで、実質参戦だろうが)

 戦争が起きたときに、事情も歴史も知らないままに、プロパガンダに乗せられて一方だけを弾劾することは、非常に危険なことだ。「ロシアは侵略をやめろ」の叫びの延長線上に、欧米軍需産業の大儲けや、自衛隊の実質参戦があることを肝に銘じなければならない。平和を願う憲法集会のシュプレヒコールの一発目がこれでは、何をやっているのだと言いたくなる。

 しかも、このシュプレヒコールの裏には、「野党共闘の誤魔化し」があるように思える。大石議員のアピールでも「維新と立憲民主の悪魔合体」について触れていたが、今や立憲民主党は野党なのかどうかも疑わしいところまで後退してしまった。経済的には自民党よりもはるかに緊縮派なので、国民民主党よりも始末が悪い。

 日本の課題について、もはや闘う気力を無くした立憲民主と、その他の野党や市民との折り合いを付けるために、とりあえず無難にロシア非難でもしておこうか、という意図が感じられるのだ。どう考えても、大阪の憲法集会のシュプレヒコールで批判すべきは、1番に岸田政権や自公政権であり、2番に維新である。それを誤魔化すために、ロシアを使ったのではないか。そう思えてならない。

 ちなみに、立憲が維新と手を組むなどと言い出したからか、私の地元の吹田市ではかつて小沢一郎の秘書だった馬場慶次郎という市議が、市民と歩む議員の会という無所属市民派の会派から、大阪維新の会に寝返った。市民と歩む議員の会は2人になり、交渉会派から外れてしまった。
 小沢一郎の「自立と共生」を掲げておきながら、正反対の維新に寝返るなど、まったくもって無節操きわまりない。恥ずべきことに、私たち生活フォーラム関西の会員でもあり、フォーラムとしてもケジメを付けなくてはと私は思っている。

 共産党の市議が最近の経緯を書いているので、参考までに

 立憲民主が維新にすり寄る「悪魔合体」は、こうした現象を津々浦々で生み出していくだろう。国政だけの問題ではなく、足下から日本のリベラルが崩れていくのである。

11月とは思えない炎天下の扇町公園で、そんなことを鬱鬱と考えた。

2022-09-01(Thu)

秘書のおつとめは一段落

今年1月から務めてきた、国会議員秘書の仕事は7月いっぱいで一段落、公設秘書からは外れることになった。
クビ になったわけではなくて、そろそろ建築設計にもどらなくては、仕事のやり方を忘れてしまいそうなので、お願いして辞めさせてもらった。

公設第1秘書は、普通は国会議員会館に詰めて議員活動の補佐をするものだけれども、私の場合はずっと大阪に貼り付きで、秘書と言うより事務局長という立場で議員の留守を守ってきた。
留守とは言っても、この7ヶ月間はシュトルム・ウント・ドラング、怒濤の日々だった。

候補者が議員になったので、駅近の少し大きな事務所に引っ越しをすることから始まって、混乱を極める事務処理を整理する間もなく、3月からカジノ住民投票署名が始まった。
始めは半信半疑で片足を突っ込んでいた署名の準備会だったが、突っ走る市民の熱気にあてられて本腰をいれることに。
しかも、山本太郎が「やろうぜ」と言って週末毎に大阪にやってくることになったので、大阪勢も否応なく総力戦に。
私個人としては、カジノを止めたい思いもさることながら、これが成立すれば維新に対する強烈なボディブローになるという確信があり、フラフラになりながらも走り続けた。
ロジの部分だけしっかり押さえて、実行部隊はボランティアにがんばってもらおうと思っていたが、そうばかりも言っておられず、平日はロジ、週末は署名現場という2ヶ月間、そろそろ老境にさしかかる私の脆弱な体力は限界に迫ってきた。

やっていて実感したのは、まぎれもなく市民が引っ張った運動だったと言うこと。
初めから政党として組織決定で運動にとりくんだのはれいわ新選組だけで、社民や無所属市民派の議員など、個人単位での取り組みがあるだけだった。それが中盤以降、乗り遅れてはなるまじと共産、立憲、自民も議員や地区組織単位でぞくぞくと取り組み初め、終盤の追い上げにつながった。
これは、市民が決意を固めて、しっかりと準備を整え、確認を持って突っ走れば、あやふやな政党は後から着いてくる、ということの実証だった。

私もたいがい疲労困憊だったが、私より1~2歳上の住民投票所名を求める会の事務局長は、それこそ不眠不休に近い奮闘をしていた。よく生きてるなと感心したほど。
各地での街頭署名などの予定が求める会のHPに毎日更新されるのを、私はれいわボランティア向けの掲示板に転記していたのだが、その量が日増しに増えて、しまいにコピペするだけでも一苦労に。

政治や市民運動に関わるのはれいわ新選組が初めてという人たちにとっては、今回の署名運動は「外海(そとうみ)」に出る機会になったかもしれない。
れいわボランティアだけの内輪ではなく、さまざまな運動経験をしてこられた方とコラボすることで、これまでの「山本太郎 ↔ ボランティア」という一極の関係から、それぞれ自立して動き出すきっかけになったのではないかと思う。

(署名運動の成果やその後の経過、そして参院選についてもつらつら書いたのだが、なんと消えてしまった! 書き直す気力と時間がないので、幻の原稿にしてそろそろ締めくくろう)

一点だけ、現在観光庁の「特定複合観光施設区域整備計画審査委員会」なるところで、大阪府の計画案を審議している。その委員は以下の通りだが、審査内容も、いつ委員会を開いたのかも公表されていない。
委員長 竹内 健蔵 東京女子大学現代教養学部教授
委員長代理 山内 弘隆 武蔵野大学経営学部特任教授(一橋大学名誉教授)
委員 朝岡 大輔 明治大学商学部准教授(京都大学経営管理大学院客員准教授)
委員 大橋 弘 東京大学大学院経済学研究科教授
委員 河島 伸子 同志社大学経済学部教授
委員 樋口 進 国立病院機構久里浜医療センター院長
委員 古谷 誠章 早稲田大学理工学術院教授
委員 矢ヶ崎 紀子 東京女子大学現代教養学部教授

新自由主義的な学者や、元電通や元観光庁や、なかなか焦臭い顔ぶれだ。
せめて、全国民にさらして、衆人環視なのだという自覚は持ってもらおう。

カジノ住民投票署名が5月25日まで、それとラップして参院選の準備と本番。あれやこれやでヨレヨレになって7月が終わり、あれこれの引き継ぎもようやく片がつき、とりあえずのお役御免となった。
議員事務所には名目上は顧問という形で足の指一本残すけれども、本業は建築家へ復帰する。
短い公務員生活が終わったので、また月末の焦燥との闘いでもある。
それでもやはり、建築設計は楽しい。自分の判断でものを決める感覚は、その判断がちっぽけなものであったとしても、代えがたいものがある。
17年間、何度も廃業の危機に瀕しながらもこの仕事を続けている所以である。

建築も政治も、楽しさをかみしめながら、もう一度味わっていこう。




2022-08-15(Mon)

あらためて天皇の戦争責任を問う

日本にあるもので、もっとも子どもの教育に悪いものは何かと聞かれれば、迷うことなく「天皇制」と答える。

「1人を殺せば犯罪者だが、100万人を殺せば英雄」を、まさに地で行ってるのが昭和天皇であり、象徴天皇制だ。
究極の無責任の象徴。
自殺したヒットラーのほうが、まだしも潔いといえるかもしれない。

日本の子どもたちは、これを「尊い」とか言われて育つのだから、ひどい話だ。

天皇制には、もうひとつ際だった特徴がある。
「保身」である。

天皇や天皇制には、それ自体の思想性はない。
あるのは存続の意思と、そのためのきわめて柔軟(無節操)な「保身」である。
存続するためならば、どんな勢力とでも手を結ぶ。
処世術の鬼である。

軍部が強ければ軍につき、沖縄を初め国中が焼き尽くされ、自国民が何十万人も黒焦げにされても保身(国体護持)のためには意に介せず、負けたとたんにマッカーサーに擦り寄り、捨て石にした沖縄を、またしても米国に売り渡した。

手を携えて戦争を遂行した戦犯がまつられている靖国神社へも、自分だけは無関係化のように行かないという。
靖国神社は戦犯だけを葬って、戦犯の魂の牢獄にして、負の遺産として末代まで残すべきだと私は思っている。
その意味で、天皇は靖国神社に行くべきなのだが、自分だけはちゃっっかり「戦後民主主義」に乗っかってしまうところが、さすが処世術の鬼である。

これが「清く正しい」生き方だと、子どもたちに刷り込まれる。

私はこのブログでも何回も書いてきたが、「天皇の戦争責任」を曖昧にしたことが、戦後の日本をダメにした、と考えている。他にも要因はあるけれども、なんといってもダントツのナンバーワンである。

8月15日

私たちは、単に不戦の誓いをするだけでなく、戦争をやらかした奴らの責任を忘れない、その思いを新たにしたい。




2022-07-09(Sat)

お悔やみ申し上げま せん

日本で他殺で死ぬ人は、年間300人近くいる。
どんな人でも、理不尽に殺されたのだから、哀悼の意を表すべきだという人は、毎日毎日殺された人のために、哀悼の誠を捧げ続けていただきたい。
私はそんな考えでは無いので、縁もゆかりも無い人が殺されたからと言って、お悔やみなど申し上げる気はさらさら無い。
まして、私の中では悪い政治家No.1の人物であればなおさらだ。(橋下徹氏と同率1位)

だからと言って、安倍晋三暗殺を、私が喜んでいるかというとそんなことはない。
瞬間的に想起したのは、2.26事件だ。
血盟団テロから2.26クーデターへの道は、民主主義という妥協の知恵を一瞬で破壊し、排外と強権と戦争への道へ日本を突き落とした。
安部銃撃の報を聞いた瞬間、いよいよその行程に入ってしまったのか、と戦慄した。

あらゆる暴力は許せない、とも言わない。
この世には、どうしようもない暴力にさらされて、生きるためにやむにやまれぬ暴力もある。
大きな暴力は見えにくく、小さい暴力は見えやすい故に、軽薄な「暴力反対」は、大きな暴力だけをはびこらせることになる。

それでもなお、テロで生きやすい世の中は作れない。間違いなく。
テロによる政治は、皮肉なことに、安倍晋三がやろうとしていた強権と恫喝の政治と同じだ。
理想を強制する政治は、その理想が間違っていようが正しかろうが、絶対に生きやすさは生み出さない。

もう一点、安倍暗殺を喜ぶわけにいかない理由。
安倍晋三には、生きて地獄を味わってもらいたかった。
名誉も生きる意味も失って、天命を全うするまで、苦役を担ってもらいたかった。

もともとロクでも無い日本の政治を、ほんとにどうしようも無いことにしてしまったのは、小泉純一郎(私的悪政治家No.2)と、安倍晋三だ。
安倍晋三の大きな暴力で、どれだけの人が殺されたか。
こんなにあっさりと死んでいい人だとは、思えない。

これから、安倍晋三を英雄化する動きが、マスコミを総動員して始まるだろう。
絶対に屈しない。
絶対に哀悼の意など表しない。
断固として、お悔やみなど申しあげ ない!

************

明日、7月10日は参議院選挙の投票日
暴力と忖度で大政翼賛政治は始まりかけている今、どこに投票すべきかは明らかだ。
萎縮せず、忖度せず、何が起ころうが「国民の生活」を守ろうとする根性のある政党は、残念ながら一つしか無い。

れいわ新選組

全国どこでも 2枚目は「れいわ」
東京の1枚目は 「山本太郎」
大阪の1枚目は 「やはた愛」

あと1日
こんな時代に突入してしまったからこそ、選挙戦、悔いのないようにやりきりたい

2022-07-05(Tue)

山本太郎

10年前に大阪市で原発市民投票をやっていたとき、天神橋筋商店街の練り歩きで見たのが、生の山本太郎を見た初めだったと思います。

その1年後、なんと参議院議員に当選し、ニコリともしない当選の会見が印象的でした。第2の山宣にしてはいけない、と思いました。1929年3月、治安維持法の改悪に反対し国会で孤軍奮闘していた山本宣治は、右翼に暗殺されました。太郎を殺されてはいけない。その思いは、今日でも変わりません。

自由党の共同代表になり、何度かお話しする機会もあり、大阪での街宣準備のお手伝いなどしていましたが、この数ヶ月は何の因果か、たとえて言うなら支店長代理と本社の社長のような関係でした。
中にいるほうが意外と接点は少なく、太郎さんと話をする機会はありませんでしたが、大変な仕事をしているのだなあ、ということはわかりました。

その山本太郎が、ピンチです

退路を断って衆議院議員を辞職し、東京で参議院選挙に臨んでいるのですが、組織のある候補に追い上げられ、6人の当選枠から押し出されそうです。
ここで落選してしまうと、暗殺されなくても、政治的に抹殺されてしまいます。れいわ新選組という、唯一空気を読まない、大政翼賛会に取り込まれない政党も、存立の危機になります。

私自身は、あまり焦らないようにしています。ウクライナ侵略を、あろうことか、自国の戦争につなげようという自民党や右翼のやり方に、焦らないわけではないです。そんな右翼につられて、ウクライナ国民に「もっと戦え」と平気で言ってしまう野党にも、愕然とします。

それでもやはり、焦ってはいけないと、常に自戒しています。どんなときでも、結果を見て次を考える、絶望せずに少しでも良くする、という保守のやり方を学ぼうと思っています。
その点では、今の太郎さんやれいわ新選組から発散される焦燥感は、必ずしも同調できない部分もあります。
にもかかわらず、それでもなお、

山本太郎を失うわけにいかない

と思います。
東京にお住まいのみなさん、7月10日、参院選の1枚目には「山本太郎」と書いてもらえないですか。


2022-04-21(Thu)

生活フォーラム関西 2022年度総会のお知らせ

市民によるオザワイズムの継承と実践をかかげて、2014年の9月に、小沢一郎さんを大阪に招いて始まった生活フォーラム関西。
なんやかんやで、8年目です。

小沢さんと山本太郎さんとの共同代表だった自由党時代が全盛期で、お二人が立憲とれいわに別れてしまってからは、正直いって足が遠のいてしまった方もおられるようです。

それでも、私は9年前に書いたこの文章は、今でも生きていると思っています。

一郎+太郎=日本の未来 が逆証明されている
2013-08-07 反戦な家づくり

なんで小沢一郎と山本太郎は、露骨な弾圧にさらされるのか。
それは、明らかに彼らは共産党や社民党とは「ちがう」からだ。

「ちがう」のは政策ではない。
政策は、今や共産党も社民党も生活の党も山本太郎も、ほとんど変わらない。
どこが違うのか探すのに骨が折れるくらいだ。

「ちがう」のは、以下の三点だ

1.体制を変える気があるかどうか
2.それが本気かどうか
3.それに現実味があるかどうか

この三つの条件がそろったとき、「平和」に見える日本の様相は一変する。
マスメディアが先鞭を付け、検察・警察が牙をむき、裁判所までが一体になって襲いかかってくる。
これは、2009年からの陸山会事件の実相を知っている人ならば、誰もが実感したことだ。

(引用以上)

今、小沢さんは「数は力」を求めて立憲に入り、太郎さんは「生活が第一」の政策を貫くためれいわを立ち上げました。これは、一つの大きな政治潮流の裏と表だと、私は思っています。

そんなわけで、れいわ新選組の活動にどっぷり浸かっている今日この頃の私ですが、オザワイズムを再確認するという意味でも、生活フォーラム関西の総会に期待しています。

今回の総会は、以下の顔ぶれの来賓に参加していただけます

青木愛参議院議員
大椿ゆうこ 参議院予定候補
つじ 恵 参議院予定候補
大石あきこ衆議院議員

大石さんには、30分ほど国会報告をしてもらいます。
真面目な話やら国会裏話やら・・・・

詳細は以下の通り

日時 : 4月24日(日) 午後2:00開場、2:30開始
場所 : PLP 会館 4階小会議室( JR 天満駅、メトロ扇町駅)
参加費 : 無料 (*当日年会費:2,000 円を受け付けいたします。)
申 込 : クリックすると申込フォームにリンク 

会場があまり大きくないので、必ず上記から申込みして下さい。

また、会員以外も参加いただけますが、太郎も一郎も好きだ、と言う方はぜひ会場で入会して下さい。


2022-04-20(Wed)

自衛戦争であっても戦争は拒否する

連日流れるウクライナの惨状。

たしかに侵略を始めたのはロシアだ。

ウクライナは自衛戦争だと言える。

だからこそ、はっきりとわかった。

自衛戦争であっても、戦争は悲惨だ。

自衛戦争であっても、戦争は拒否する。

少なくとも、それが国という単位である限り、私は自衛戦争をも拒否する。

軍だけでなく、市民にまで武器を渡し、出国を禁じ、国のために死ねという指導者を拒否する。

もっとやれ もっとやれと 次々に武器を送り込む「同盟国」を拒否する。

いまや

かつては非武装中立と言っていた人々が、ウクライナ頑張れと声を張り上げる。

かつては自衛隊は違憲と言っていた人々が、自衛隊を使って国を守ると断言する。

今日のウクライナは、明日の日本かも知れない。

攻めてくる明日の敵国は、今日の同盟国かも知れない。

どの国とどの国 そんなことはどうでもいい。

自分が生まれた国だろうと、行ったこともない国だろうと、

国家などのために死ぬことを 殺されることを 私は断固拒否する。
2022-02-28(Mon)

ウクライナ ウクライナ

ウクライナを2回並べたのは、間違いではない。
2つの面からウクライナを見ているからだ。

ロシアの侵略をうけて恐怖におののくウクライナ民衆と、米ロの代理戦争としての内戦を米国側で戦ってきたウクライナと。

私は西側の報道も、もちろんロシアの報道も常に眉唾で見ているが、それにしてもロシアの侵略行為は隠しようがない。そもそもロシア自身が認めている。

プーチンは、「(ドンバスの共和国の指導者の訴えを受け)8年間ウクライナ政権による虐待、ジェノサイトにさらされてきた人々を守るため、特殊軍事作戦を実行する」ために他に方法がなかったと言いながら、ドンバス地方どころか、ウクライナ全土にミサイルを撃ち込み、少なくとも三方から地上軍を侵攻させた。
標的は軍事施設だけとも言っているが、これも映像を見る限り、程度は解らないが住宅などの民間施設やインフラが犠牲になっているのは間違いない。

両陣営とも、一部のネオナチや大ロシア主義で積極的に戦争に荷担している人々以外は、意に反して兄弟国との戦闘をやらされている。砲撃におびえるウクライナ国民のみならず、そうした両国の兵士もふくめて、戦争の犠牲者が一刻も早く、解放されることを祈る。

ただ、現状を知りたいと思ってニュースをかき集めても、どれが本当なのかなかなか分からない。

たとえば、キエフより東にある第2の都市ハリコフについては、こんな感じだ

ロシア軍がハリコフ中心部に侵攻 市内の集合住宅を砲撃して住人女性1人が死亡 砲撃当時、地下には60人が避難で全員無事
2/27(日) 16:44 ANN

 ロシア軍がウクライナ第2の都市ハリコフの中心部に侵攻し、集合住宅などが砲撃された。ウクライナメディアは、ロシアの軍用車両が27日ウクライナ北東部人口140万人あまりのハリコフの市街地に入ったと伝えた。
 ウクライナ軍との戦闘が現在も続いていて、ウクライナ軍の攻撃を受けてロシア軍の車両が燃えているという情報もある。
 また、ウクライナ内務省によると、ロシア軍がハリコフ市内の集合住宅を砲撃し、住人の女性1人が死亡、20人が救助されたということだ。砲撃を受けた当時、地下には60人が避難していて全員無事ということだ。
(引用以上)

ウクライナ、ロシアとの対話で合意 前提条件は設けず
2022年2月27日 19:06 日経

 ロシアのプーチン大統領は27日、核戦力を含む軍の核抑止部隊に任務遂行のための高度な警戒態勢に移行するようショイグ国防相らに指示した。核戦力をちらつかせ、対ロ制裁を強化した欧米をけん制する狙いとみられる。ウクライナ大統領府は27日、ロシアの代表団と停戦協議を行うと明らかにしたが、緊張は高まっており、協議の成否は不透明だ。
 ロシア国営テレビによると、プーチン氏は「北大西洋条約機構(NATO)から攻撃的な発言がなされている」と述べ、欧米への反発をあらわにした。一方、米国防総省高官は27日、記者団にプーチン氏の指示について「不必要であるだけでなく、緊張に拍車をかける措置だ」と批判した。「誤解が生じるととても危険だ」とも語り、偶発的な核使用にも懸念を示した。
 一方、ウクライナ大統領府は同日、ベラルーシとの国境地帯でロシア側の代表団と前提条件なしの停戦協議を行うと明らかにした。前提条件なしの対話はウクライナのゼレンスキー大統領が呼びかけていた。多数の市民が犠牲になる本格的な市街戦を避けたい考えがあったとみられる。
 ただ、ウクライナ各地では戦闘が続いている。ウクライナメディアは27日、内務省幹部の話としてキエフ近郊のブチャで約30台のロシア軍装甲車が進軍していると伝えた。ウクライナ政府によると同日、北東部にある同国第2の都市ハリコフにもロシア軍が侵攻し、一時市街戦になった。
(引用以上)

ハリコフでロシア軍撃退とウクライナ表明
2022/2/27 20:22 共同(リビウ)

ウクライナメディアによると、ウクライナ内務省当局者は27日、東部ハリコフに侵入したロシア軍部隊を撃退したと表明した。(引用以上)

ロ軍、ウクライナ第2の都市に突入 首都攻防激化―プーチン氏「核抑止力引き上げ」
2022年02月27日23時34分 時事通信

 【モスクワ、イスタンブール時事】24日にウクライナへの本格侵攻を開始したロシア軍は27日、制圧を目指す首都キエフ一帯で、ウクライナ軍と激しい攻防戦を繰り広げた。北東部の第2の都市ハリコフでも戦闘が発生。ロシア側は南部の2都市も包囲したと主張し、一気に攻勢を強めている。ロシアのプーチン大統領は27日、核戦力を念頭に「抑止力」を特別態勢に引き上げるよう命じた。(中略)
 ウクライナ当局は、ハリコフ中心部にロシア軍部隊が突入し、ウクライナ軍と交戦していると明らかにした。ハリコフ周辺部でも衝突が起き、当局は市民に対し「決してシェルターを出てはいけない」と呼び掛けている。
 タス通信によると、ロシア国防省は同国軍がウクライナ南部へルソンと南東部ベルジャンシクの2都市を完全に包囲したと主張した。その他の各地でも攻撃が続き、民間施設が被弾するケースも相次いでいる。
 一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は27日、「ロシア代表団がウクライナとの交渉のため、ベラルーシに到着した」と表明し、停戦交渉を始める姿勢を示した。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ベラルーシ国内での交渉には応じられないとしつつ、ポーランドのワルシャワなど5都市を開催地の候補に挙げ、ロシア側に提案したことを明らかにした。
 ゼレンスキー氏はその後、ベラルーシのルカシェンコ大統領と電話会談し、ロシア代表団との交渉を「前提条件なし」にウクライナとベラルーシの国境地帯で行うことに同意した。
(引用以上)

もっとも激戦になっていると言われているハリコフについては、120万人の都市なのにライブカメラ映像が見当たらない。
キエフのライブカメラはたくさん有り、それらを見ると、たしかに人の出は少ないし、今日の昼の映像だと遠方に上がっている煙は見えるが、以外と普通に人が歩いている。



恐ろしいのは、各国で「反戦」を語りながら、いのちの危機にある住民や兵士を道具のように泥沼に引きずり込む動きが激化していることだ。

「もっと多くの武器供与を」 米首都デモ、ウクライナ支援強化訴え
2022/2/27 産経

米首都ワシントン中心部のホワイトハウス前でデモが開かれた。数百人が参加し、バイデン米政権に一層厳しい対ロ制裁を要求。ウクライナを守るため「もっと多くの武器供与を」と支援強化を訴えた。参加者は青と黄色のウクライナ国旗を掲げ、ロシアのミサイル攻撃などで民間人にも被害が出ていると非難。「ウクライナと連帯する」「今すぐプーチンを止めろ」と声を上げた。(引用以上)

日本でもテレビでコメンテーターが平気で同じようなことを言っている。
「じゃあ おまえが銃もって行けよ」と言いたくなる。
武器を供給されて死んでいくのは、ウクライナとロシアの民衆(兵士含む)なのだ。

今他国がやるべきなのは、武器の供給ではなく、停戦の仲介だ。
一度はフランス、ドイツが仲介して締結したミンスク合意まで立ち戻り、NATOとロシアとの等距離中立を確立する以外に、現実的にウクライナが平和に生きていける道はない。

ただし、それを主導する大統領は、国内のネオナチから命を狙われるだろう。
ウクライナのネオナチは、昨日今日できたぽっと出ではなく、ウクライナの歴史と社会に残念ながら根付いているものだということが、2016年にオリバー・ストーン監督によって作られたこのドキュメンタリーを見るとわかる。題字をクリックすると映像のページにリンクしている。無料で公開されている。


(以下説明文を引用)
ウクライナの歴史と近年に起こされたカラー革命と呼ばれるクーデターの仕組みを解説しています。2016年に制作されたドキュメンタリーです。
2014年、キエフのマイダン独立広場で起こされた虐殺は、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領を追放するために起こされたクーデターだったのです。

西側メディアはヤヌコーヴィチ政権とロシアを加害者として描いています。しかし、本当にそうだったのでしょうか?
このクーデターにより、炎上したウクライナは、2004年のオレンジ革命、2014年の反乱、そして民主的に選ばれたヤヌコビッチ政権の転覆につながりました。
この悲劇を西側メディアは民主主義の革命として大きく取り上げましたが、実際にはウクライナに戦後生き延びたネオナチ民族主義者と米国務省によって脚本・演出されたクーデターであったことが知られています。
この様なカラー革命は世界中至るところで起こされています。それは如何にして起こされて来たのでしょうか?
そのテクニックをオリバーストーン監督は、分かりやすく描いています。(引用以上)

私が停戦のために一番心配していいるのは、ネオナチをとおして米国がウクライナのゼレンスキー大統領に圧力をかけ、容易に停戦協議に着かせないことだ。
実際、26日から何回も「協議の用意がある」と言いながら、いざロシアが協議に乗るとゼレンスキーなんやかんや理由を付けて拒否している。

ただでさえ米国はそうした間接的侵略を常套手段としているうえに、大統領がバイデンであるという大きなリスクがある。
つまり、あのハンター・バイデンの親父だということだ。



バイデン氏は、2009年にオバマ政権の副大統領に就任して以来、ウクライナの親欧米派の民主運動と深く関わり、“脱ロシア”の動きを後押ししました。

しかし2014年の政変で、ウクライナのクリミアをロシアが併合した当時、アメリカの情報機関は、ロシア軍とみられる武装集団による秘密工作を事前に察知できず、「情報戦で敗北を喫した」と批判されました。
またその頃、次男のハンター・バイデン氏がウクライナのガス会社役員に就任して多額の報酬を受け、後にトランプ前大統領が職権を乱用してウクライナのゼレンスキー大統領にバイデン氏親子の捜査を求めたとされる、いわゆるウクライナ疑惑の発端になりました。(引用以上)

文中の「親欧米派の民主運動と深く関わり」というのは、普通の言葉にすれば、「ネオナチ勢力に資金供与して指導育成していた」ということになる。その張本人が大統領になってしまったのだ。
もちろんこの戦争の直接的な責任はプーチンにある。核の脅しまで振り回す暴虐ぶりだ。
その上で言うと、米国の大統領が、よりによってバイデンでなければ、ここまで事態は悪化しなかっただろう。

最期に、ウクライナから避難しないことを選択した山本さん(仮名)のインタビュー記事を紹介したい。


山本 (略) ソ連崩壊以降、ロシア人とウクライナ人は、国は違っても血のつながった親族同士のような関係だったわけです。それが互いに血を流す状況に追い込まれている。プーチン大統領がそういった行為を実行したことに腹立たしい部分もありますし、それに目をつぶっているクレムリン(官邸)や周り、声を挙げないロシア人に対しても憤りを感じています。

――戦地となるのに、山本さんがすごく落ち着いていらっしゃるように窺えます。

山本 22年ここにいますし、実はつい先日もロシアの方に行ってきたばかりなんです。コロナの検査もそうですが、入国審査で別室に連れて行かれたりとか、国をまたぐような移動をしているとロシアとウクライナの情勢を肌で感じることも多いので、慣れてしまっているというのもあると思います。
 ここ1カ月ほどで、急にロシアがウクライナを囲むように軍を配置して「とんでもないことを始めた」と世界では見られていますが、8年間この状況というのはずっと続いてきました。ウクライナ人にとっては8年間継続してきた中で、その一端が激しくなってきているという感覚なので、それほど慌ててもいなかったです。「ロシアならやるかもしれないな」という方向での心構えはあったと思います。(引用以上)

「反戦」が好戦的で非人道的で核武装まで求めるやつらに乗っ取られている今日、冷静に、現実的に事態を把握し、とにかく一人でも多くの命を救うためにどうすれば良いのか、それを考え求めるということを、私の大原則としたい。
そのために、いろいろとソースを集めてみた。

下手人プーチンを決して許すものではないが、「プーチンを倒せ!」と叫んでウクライナ民衆の命を踏みにじるような奴らから「反戦」を取り戻し、一刻も早い停戦を求める。

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